機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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PHASE-09 意志を貫く力(4/7)

「要するに、私にクールカ隊長を止めろと……命令される訳ですか?」

「いえ、そういう意味では……」

慌てて訂正すれば、ホルローギンは意地悪に笑った。

「いえいえ……すみませんね。あまりにも大真面目におっしゃるから、

少しからかってみたかったんですよ。

別に怒ってはいませんから。ご安心くださいな」

そう言い、ゆっくり握っていたボールペンをテーブルに置いた。

「しかし、まあ……それは無理でしょうな」

黒い皮製とおぼしき回転椅子の背もたれへ、

ゆっくり背中を押し当てるホルローギン。

「……馬鹿は死ぬまで治らない、と申しますし」

ボールペンを握っていた右手が、今度は自身の眉を掻いている。

「隊長は馬鹿ではないと思いますが!」

祈るように合わせたリョウの指先に力が入る。

ホルローギンも面食らった様子で、目を見開く。

そんな相手に我を通す程は強くないのがリョウで、すぐに、

「偉そうに言って……すみません」

と、そう頭を垂れた。

ただ、彼女が次にその頭を恐る恐る上げたときには、

「随分……隊長を信頼されているようで」

ホルローギンはそう笑いかけていた。

「まあ、だからこそ……というのがアナタの気持ちでしょうが」

手を下ろしたホルローギン。胸の前にて2本の腕を交差させる。

「……グナイゼナウ攻略は、クールカ隊長にとっても悲願。

せめて、そこまでは自分に……と言って譲りますまい」

「たとえ、死ぬことになっても……ですか?」

「んーーー」

ホルローギンの首がやや縦に傾けられた。

「クールカ隊長を呼び止めて、そうと問うなら彼は……

そうですね。戦場に立つ時点で、もうリスクはあるとか何とか、

言うでしょうなぁ」

「……そんな」

頭を下げたリョウの顔に、暗い影が覆う。

「……彼は焦り過ぎているのですよ。兎にも、角にも。

アーモリー・ワン襲撃も、予定では6、7月の予定だったものを、

こんなに早めてしまった。病が発覚したばかりに、ね。

その上、最期まで己の病を隠し通すおつもりときている。

お陰で私は……弁解に困りましたよ。ハハハ」

そう笑ってみせど、リョウの表情は曇ったままで。

「一番苦しいのは、クールカ隊長ご自身でしょう。当然です。

病の苦しみ、周囲の不理解、その上、娘さんとも会えないのだから」

このホルローギンの『娘さん』というフレーズに、

リョウが反応する。

「……ご存知なかったので?」

「いえ……ただ、あの……」

目を右に逸らして、考えを巡らすこと数秒。

「秘書の方が、

クールカ隊長を軍務を蔑ろにして、娘と会うような男だとか……

おっしゃっていたのを、思い出して」

「そんなこと……おっしゃっていましたっけ?秘書官殿は」

「あっ……いえ、ホルローギンさんとのお話が終わった後で、

そう言われまして……」

ホルローギン2度目の瞠目。そして、今度は少しニヤけた。

「いえ……内容自体は私の失言なのですがね……

どうにも嘘が下手だ。私という男は……

まあ、しかし、そうでした、そうでした。

あのとき、私たちに知らせてくれたのは、君でしたね。リョウ」

納得の表現として、ポンと手を打つやり方があるが、

にしても、本当にやるヤツがいるとは……

ホルローギンは顔を綻ばせたままに、2、3度手を打った。

「リョウ……アナタ、ひとつ。頼まれてくれませんか?」

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