機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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6月6日。コルドバにて。
駆け込むリョウ。向かうドアの前には、男が一人。
ハリネズミ頭の男ことトゥーッカ・マンニッコ、その人である。
「ノエルさんは?」
息の乱れた声で問うリョウに、マンニッコは即答する。
「中にいる」
「わかりました……失礼します」
そうして中に入ると、先日同様に、
テーブルを隔てて向き合うように座るノエルとホルローギン、
そして部屋の奥にオートクレールの姿がある。
子どもっぽく笑うホルローギンに、頭を垂れるリョウであったが、
すぐに頭を上げて、
「先程、報告を受けて……」
そう語り始めた。
「昨晩、トリポリがザフトに攻撃された話か?」
「……え?」
「その話なら、さっきから話題に上がっている」
リョウへ向け、ガンを飛ばすノエル。
「……驚かれ…………ないんですね」
三人しかいない部屋を見渡すリョウ。
「……ネイト様が先々月に息を引き取られた今となっては、
トリポリの拠点としての意味合いはやや薄れていますからね。
もっとも……ザフト側にその情報がいっているかは、また別問題ですが」
片手間に紅茶を飲みながら話すホルローギン。
「よく隠し通したものだよ……彼らは」
そう呑気そうに爪を切るオートクレール。
未だ呼吸の乱れが収まらないと見えたリョウは、半ば呆然としていた。
「……というよりは、『明けの砂漠』がザフトを信用していない、
そのことの顕(あらわ)れかもしれませんね」
ティーカップをゆっくりテーブルに置くホルローギン。
「ひとまず、君の知っていることを話してくれ。リョウさん」
そう微笑みがちに、ホルローギンはリョウの方へ向き直った。
「はい、それが……」


PHASE-11 海上の狼煙(4/7)

『夜にしちゃ随分と……明るい街じゃねーか』

ワイリーが笑っていた。

『オランとは、えらい違いだぜ』

『……流石にそこを比べるのは、可哀想ですよ。ワイリーさん』

『そうかぁー?ダスティン』

……俺は《ヴェスティージ》のコクピットにて、

ラジオ代わりにそんな二人のやり取りを聞いていた。

まあ、耳はそっちに向きながらも、目は別の場所を見ていたが。

オランを絶った俺たちの船団は、地中海を進んでいた。

適当な場所で戦艦は、その身を海中から出した。

さながら、海面から顔を出す鯨のように。

それから、敵との遭遇を警戒して、

俺の《ヴェスティージ》とダイの《Im/A-P》が、

それぞれ《フレイヤ》の左右に陣取った。

カモフラージュの為に、皆色を黒一色に変えたりしてさ。

《フレイヤ》の上では、ホーク小隊の《ジズ》3機が巡回しているし、

下では、アレハンドロの《アビス》が、

コバンザメのように張りついて、下からの攻撃にも備えている。

そんな中々の警戒体勢が敷かれる横で、平然と、

『オランだって、元は確か大きな街だった筈だぜ?

……何とかって小説の舞台にもなってたし』

『カミュの「ペスト」のことが言いたいんですか?』

『おう。それだ、それだ』

などと話す、ワイリーとダスティンが少し羨(うらや)ましかった。

『……ふざけやがって』

と小声で言う辺り、ダイのお気には召さなかった様子だが。

『すっかり意気投合って感じですね……お二人とも』

そう声をかけるのは、ヴァイデフェルト。

ダイの後だからか、心なしか声が優しげに聞こえるもので。

『ホントなら、

俺の方は「小隊長様ァ゛~」と頭下げなきゃなんねーんだがな』

『やめてくださいよ。堅苦しい。ワイリーさんのが先輩ですし、

僕からした「お兄さん」みたいなもんですよ』

『ほぉー、「おじさん」と呼ばなかったな。誉めてやろう』

ワイリーの物言いに笑いを堪えるのが大変だった。

『……何歳違うんですか?』

『おー、ヴァイデフェルトちゃんよぉー、

そんな不毛な質問しちゃう?』

『すみません……でも、気になるじゃないですか?』

……そんな話が続く一方で、陸が確実に近付いてくる。

先程までは街が見えるといえど、遠くに見える灯台のようで、

光としか捉えられなかった。

だが今は見える。

砂浜を照らす街角の外灯に、疎らながら通り過ぎる車の影。

更に奥には、ドミノのように並んだ長方形の高層ビルが。

実を言えば、サイズの問題で先に目に入ったのは、ビルの方だった。

『……フッ』

とは、ダイの咳払い。何気ないところが、少し震えており、

緊張した顔が目に浮かぶようであった。

さあ、ここからは俺の仕事で。

「……そろそろだぞ?みんな。構えろよ」

そう軽い檄を飛ばして。

直後、案の定と、砂の下で何かが蠢(うごめ)いたかと思うと、

そこからビームが飛んでくるのだから……

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