機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神 作:申業
さあ、推理を始める。敵の位置。
足音は聞こえなかったところを見るに、ほとんど動いてはいまい。
となると……
「……あの辺りか」
飛んで一気に市街地へと入る。その間、相手が放ってきたのは3発。
1発目は機体が上昇した瞬間を襲ってきた。
飛び上がった際に右足首の横を、黄緑色した光が通り過ぎていった。
そして2発目。飛び上がった体が前進を始めたときだった。
ビームシールドを前方に展開しつつ、進んでいた。
これには流石にヒヤリとした。
何せビームシールドと脇腹の隙間を抜いていったのだから。
あと数センチ、ズレていれば、
コクピットも無事ではなかったかもしれぬ。
ただ、3発ともなれば、敵の位置におおよその確信ができる。
相手を試すように左足をつき出せば、予想通り、撃ち抜いてきた。
「……やっぱな」
市街地に降り立つ。
ビルの影に隠れるなどせず、適当に4、5歩ばかり足を前に出した。
当然、ビーム攻撃が飛んでくるが、まだ気持ち遅い。
ギリギリとはいえ、ビームシールドの防御が間に合う程度には。
「まだだ……まだ遠い」
一気に間合いを詰める手もあるが、レーダーの反応からして、
ミラージュコロイドを使われているのは明らか。
接近したところで、視認するより先に撃ち殺されるのがオチだろうて。
ただ、ビームライフルの射程では、まだ不安が残る。
やるとすれば、あと数メートルは近寄らねば……
『副長!……指示を!!』
ダイの声である。
『おい、ダイ!オマエ、ちょっとタイミングつーもんを……』
「いいんだ。アレハンドロ」
敵は……恐らく一機ではあるまいが。
「モビルスーツ隊……サーベラス陣形を取りつつ、市街地まで前進しろ。
そして、ここからの指示は……ダイ!オマエに任せる!」
ダイの吐息が聞こえた。
『えっ!』
と思わず、アレハンドロさえ声を上げ。
「ホーク小隊とヴァイデフェルトには、《フレイヤ》を守ってもらう。
ダイ!オマエがアレハンドロ、ラグネル、ワイリーを連れて、
先を急げ!俺も目下の敵を撃退次第、援軍に向かう!」
『……しかし』
「俺は『大したことない』んだったな?……オマエはどうだ?」
1秒程度、ダイの返答は遅れたが、そのうち、
『了解しました』
という小声での反応が聞けた。
俺は思わず口角を上げたが、すぐに表情を引き締めた。
仕方あるまい、状況は進展してはいないのだから。
この間、敵の狙撃手は鳴りを潜めていたが、
そもそも通信中、味方の声以外の音まで耳は拾いにくい。
この数秒で、狙撃ポイントを変えてきた可能性は否定できない。
「下手には、動けないか」
どこからとも知れぬ視線を感じた体がむず痒(がゆ)かった。
『……ダイさんの下で、攻め手に回れとのお達しですよ。ワイリーさん』
少しの笑い声を漏らしつつ、ダスティンが呼びかけた。
「アスカのヤツ……俺が病人なの忘れてやがんな。こんちくしょー」
文字に起こすといくらか攻撃的な内容であるが、
実際のワイリーはニヒルに笑いながら、冗談めかしく言っていた。
『ワイリーさん!』
ダイの声。
「……先に行ってな。コイツの機動力ならすぐに追い付くからよ。
副長の指示なんてイチイチ守んなくていーんだよ」
ワイリーの返答に、舌打ちするダイの声が聞こえた。
『いいんですか?』
尋ねるダスティンは半笑い。
「……いいんだよ。今は敵に夢中で、俺の声なんざ聞こえてねーよ」
『ひどーい』
「いや、そこは俺とアイツの……信頼関係がよ」
そんな話をしているうちに、発進シークエンスは始まる。
パーディの声が聞こえていた。
「……あ~あ。さっさと退役しちまうんだったなぁ。
まさか、足落とされたまま、戦場に駆り出されるとはなぁ~」
『信頼関係でしょ?それも』
「……だから、ヤなんだがな」
ヘルメットのガラス部分が下り、ワイリーの顔が覆われる。
「『割り切れよ』ってか?畜生」
レバーに手をかけるワイリー。
『発進、どうぞ!』
「……ワイリー・スパーズよ。《ゲルググ》、出ちゃうかんな!」