機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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ワンショットキルというのは、はっきり言えば幻想だ。
西部劇の中だけの話。
頭や心臓は外しても、
例えば足の1本でも失えば、歩みを止める人間とは違う。
モビルスーツに痛みはない。
あるとしたら、コクピットを直撃したときぐらいのもの。
それも今じゃ、コクピットの位置にしろ、
頭か胴体か、胴体にしろ胸か腰か、場所が様々であるから、
やはり前情報なしでは狙うことさえ難しい。
……クールカ様なら、それでも一撃で仕留めるなんて離れ業(わざ)、
見せてくださるのだろうが、私にはとても。
まあ、それでも……大抵の敵は少ない手数で捌(さば)けるようには、
なった。
さっきみたいに、《ジズ》ならコクピットの位置も割れているし。
しかし……いや、だからこそか。あの男には絶望しか感じられない。
私はやらないから、本当のところは知らないのだけれども、
チェスや将棋の「詰み」に近い感覚だ。
あの機体──《ヴェスティージ》の反応速度。
さっきまで、呑気にテメェの部下に指示を出していた余裕。
いや、誘っているのかもしれない。
私が隙をついてヤツ自身、または部下に攻撃を仕掛ける、そのときを。
さっきから、ヤツの進行方向には大きなブレがない。
こちらが正確な位置を悟られぬように、
毎回銃身を数センチ動かして、
若干違う角度から撃ち込んでいるにも関わらず。
おそらくは、かなり早い時点で、こちらの大体の位置を察した模様。
あとは確実にこちらを仕留められるように、
間合いを詰めつつ、こちらの正確な位置を探っている。
近付いているなら仕留められるか?
否。相手の反応速度を見れば、分かる。
ヤツは、寸でのところでも、十分自己防御が間に合っている。
あれでは、何度撃ち込んだところで、勝算はほぼ無い。
であるから……


PHASE-11 海上の狼煙(7/7)

「……もっと近付いて来い!至近距離で撃ち殺してやる!」

そう念じながら、音を立てぬよう銃を地上に起き、

《ヴェスティージ》に向けて撃ち込んだ。

引き金を引くにも指ではなく、

本来は敵を自分の側に引き寄せる為使う、

モビルスーツ用の銛(もり)とでもいうべき、ロケットアンカーを、

絡ませ、引き絞ることで。

手で握っていない分、精度は落ちるが、何ら問題なし。

腕という押さえを失ったライフルは、

反動により揺れに揺れ、

アンカーを引き寄せることで最低限回転することだけは避けたが、

必然的に砂や埃(ほこり)、

あるいは巻き添えになったビルの部品なんかを巻き上げた。

敵もこちらの位置を悟るだろう。

それでいい。それが目的。

アンカーを強く引き、ライフルを胸元まで手繰り寄せ、

そこから数歩、わざとらしくならない程度に音を立てながら、

横に動いた。

聞こえない筈はない。気付かない筈はない。

「来い……来い。来い。殺してやる。殺してやる」

すぐに反撃は来た。

ビームライフルだろう。砂嵐の上に撃ち込まれる。

「……もらったァァ!」

武器は左手のビームライフルショーティー・ダブルバレル・モデル。

横にならんだ2つの銃口が、

筒状のサイレンサーにより音を消されながら発砲される。

銃身は横に倒されている。

胸から腰にかけて撃ち込めば、まずコクピットを潰せる。

それでダメならアンカーか、スナイパーライフルで頭を潰すだけ。

「私の勝ち……私の……」

勝利を確信し、ビルの隙間から顔を出して、

《ヴェスティージ》を捕捉した瞬間、悟った。

負けていたのは、私の方だと。

「クトゥ……ルフ……」

口にした瞬間に、ガトリングは回り始めていた。

斜めに、半ば飛ぶように動いた、

私の機体の上半身がモロにガトリングで直撃。

穴だらけになり、消し飛んだ。

……幸い、射角の問題で、コクピットそのものは助かったが。

機体が横倒しになる衝撃で、

私自体の体も倒れて、ヘルメットも割れた。

眠るように横たえられた私の顔の側には、割れたガラスが散乱していて。

続いて、何かが倒れてきた衝撃があった。

メインカメラのなくなった今となっては確認できないが、

おそらく、ビルか何かだろう。

それからも2つや3つ、上へ覆い被さるように倒れてきた。

まるで、私を埋葬するみたいに。

『スナイパー対策は、嫌という程してきたんだ。

……ヤン・クールカのことでな。

運が悪かったと思いな。《ダガー》のパイロットさんよ』

そんな《ヴェスティージ》のパイロット──シン・アスカの声を聞いた。

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