機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神 作:申業
「……驚かないんですね?」
リョウの説明に、確かに聞いて三者のいずれをも表情を変えなかった。
「まあ……考えられない話ではありませんでしたし」
ホルローギンが口を開く。首を後ろに勢いよく倒しながら。
「……アモンは去ったのでしょう?そう、聞いていますが」
「あぁ……俺たちがいた時点で確認が取れている。間違いない」
ノエルがそう断言すれば、
リョウの方を向いていたホルローギンの目が、そちらに向いた。
もっとも、ホルローギンは話を続ける為、視線はすぐに戻されたが。
「アモンがいない以上……出張るのも当然でしょう。
何なら、クールカ隊長の参戦とてあり得たと、私は見ています」
「でも、それって……」
リョウの表情が硬くなる理由を知らないノエル。
怪訝な顔つきでリョウを見つつ、コーヒーを口に流す。
「クールカには、ギボンとカトリーナをつけてやったんだ。
戦力としては申し分あるまい」
オートクレールはそう語るが。
「……クールカ隊は、
一連のプラントとのいさかいで苦戦を強いられた。
二人をつけたとはいえ、手放しに評価できるものではありませんよ」
「エリサベト・ハッシなど……戦闘に参加していないものも、
多かったと聞くが?」
ノエルの詰問に、今度はホルローギン、見もせず。
「そうは言っても……前回の一戦は、脱走兵内部でも意見が割れて、
戦力を調達できない状況でしたからね。
辛うじて手を貸してくれたカーン・カーァは部下と共に討たれ、
ザガリー・ジャッカスはグナイゼナウ近海の爆発に巻き込まれて、
損害だけを出し、引いていった。
実質、クールカ隊のみでプラント相手に戦っていたような節さえある」
ホルローギンはボソボソと語るが、顔にはどこか自信の色があり、
言い終わるとリョウと見合わせて、共に頷いた。
「……あまり、苛めないでくださいな」
「それもそうか。ハハハ」
呑気そうに笑うオートクレールに対し、
ノエルは厳しい表情を浮かべ、その顔を右手で覆い隠した。
「どう……なんですか?ドナウアーさんというのは?」
リョウのそんな問いが、ノエルに右手の隙間からふたつの瞳を覗かせた。
「雑な質問だな」
「……すいません」
「そう邪険に扱うなよ~、ノエル。友達なくすぞぉ~?」
オートクレールはなおも笑うばかり。振り返るノエル。
「俺も、気になるしなぁ~、オマエとヤツの関係がなぁ。
えらく、ヤツはオマエを持ち上げていたが」
右手をゆっくりと顔から剥がし、テーブルへ置く。
音を立てぬよう滑らかに。
「……別にボディガードという以上の意味も、関係もありませんよ。
少なくとも、私はそう認識しています」
そう語りながら、何故か襟を正すノエル。
「なんだ、デキてるのかと思っていたよ。フフフ」
オートクレールのそんな下卑た笑い方にも、
ノエルは動じる様子なく、ただ目を伏せていた。
「まあ……深い関係があれば、トリポリに残して帰るなんて判断、
しませんもんねぇ……」
そうホルローギンは語るが……
戦場に戻る。
「伏兵……か」
そう呟いたときには、準備は終わっていた。
ビームガンを向ける。
瓦礫(がれき)の下から覗く、赤い目の存在に向けて。
躊躇をする理由はない。迷わず、ただ引き金を引くだけ。
しかし、
「なっ!」
弾かれたビーム。シールドが防ぐのとは、少し事情が違う。
ビームは文字通り、弾かれた。
ビニール傘が雨を弾くように、光が分散し、地面に飛び散った。
『何に声出してんだ?ダイ』
そう語るアレハンドロは正面の敵に手一杯と見えて、
振り向く余裕はない。
丁度、彼は《ワイルドダガー》との交戦中であった。
「いや……これは!」
やがて地面が隆起を始めた。
咄嗟に引き下がるダイ。
それはもう、《アビス》の背に、そのバックパックが接触する程。
『何だよ!攻撃されたと思ったじゃねぇか!』
「違う。だが……」
小さな瓦礫の山を押し上げて、その大きな図体が姿を現す。
それは平たい頭に、大きな瞳、小さな目……
次第に上がっていくと、見えてきたのは口から腹部にかけて伸びた、
鼻を思わせる巨大な管。
それと共に、ひとつがモビルスーツの胴体ほどもありそうな、
大きな腕が2本、地面を押し出すようにして姿を現す。
そこまで来れば、アレハンドロの目にも入ったらしい。
『何だよ?ありゃ!』
「俺に聞くな!」
『って、そういう意味じゃ……』
話している間もビームガンを撃ち込むが、やはり効果はなく。
そのうちに全容が明らかになると、
それは並みのモビルスーツの数倍以上はあろうという、
ゾウに似た、巨大なモビルアーマーであって……