機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神 作:申業
言葉を失い、動きすら一瞬止まってしまった《Im/A-P》を見下ろし、
その巨大モビルアーマーのコクピットで彼は言った。
「絶景哉(ぜっけいかな)、絶景哉……」
フェルディナンド・ドナウアー、これ以上ないという笑顔にて。
「何分、ワタクシ……普段は水中での戦いを主にしておりますから、
こう陸上で、しかも敵を見下ろす構図……
優越感、といっては、いくらか下品ですがねぇ。
いやぁ……モビルアーマーと聞いた折は、
どうなることかと身構えましたが。これはいい。素晴らしいですよ」
なんて聞き手のいない自分語りが始まって。
その間も、ダイの攻撃は続いているが、ダメージはない。
「傷付かぬ体……羨ましい限りです。
ワタクシも今年で35歳!心身ともに衰えを感じてしまいますから」
ドナウアーが嬉々として語る横で、アレハンドロとダイが、
『データで見たぜ、コイツは……《ドヌ・ゾド》だ!』
『あぁ……知ってるよ!俺だってな!』
『気ィつけろ!ティンドゥフじゃ、シゲル隊が……』
『知ってるっての!』
なんていさかいを起こしているが。
続いて動いたのは、ダイでも、アレハンドロでもなく、
ラグネルの《ガイア》だった。
欠損した後ろ足をものともせず、三本足で地面を蹴った。
頭部に螺旋(らせん)を描いた光が、角となって、
《ドヌ・ゾド》のボディへと突き刺さる。
……突き刺さる筈だった、というべきだろうか。
『!?』
角の先端部が《ドヌ・ゾド》のボディに抵触した瞬間に、
それが鹿のもののように枝分かれたしたかと思うと、
勢いで前に出る《ガイア》と《ドヌ・ゾド》との間にあって、
押し潰されるように霧散した。
『……こんなことが!』
『サンマルティン!退け!』
ダイすらそんな声をかけたが、流石に遅すぎた。
太い幹がごとき右腕が動き、《ガイア》の頭を荒っぽく掴むと、
ヌンチャクでも振るうみたいに、地面へと叩きつけた。
フェイズシフト装甲に守られた《ガイア》のボディは、
地面に頭から叩きつけられようとも、損傷らしい損傷はないが、
中にいたラグネルはその限りではなく。
それから《ガイア》は動かず、
『おい!サンマルティン!返事をしろ!』
なんていうダイの呼び掛けに、答えも返さない。
「可哀想に……苦しむ暇もなかったなら、幸いですが」
そう言い、ゆっくり手を離させるドナウアー。
壊れた玩具を手放すように、
横たえられた《ガイア》はそれでも動かない……
『……クソッ!』
そう語りながらも、何故かビームガンを戻すダイなのだった……