機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神 作:申業
ダイ・フーディーニと、始めて会ったのは2年前。
あの頃のアイツは、黒い髪をしていたのを覚えている。
髪も短かったからな。
一見すると、別人と言われても不思議はなかっただろう。
ただ、キツネ顔だからな。頬からアゴにかけてのラインが、
やや二等辺三角形染みた細長いのが特徴的だから。
「よろしくお願いします」
と、店先で深々と頭を下げるもので、
「そう、畏(かしこ)まるなって。人が見てるからよ」
なんて軽く叱ったのを覚えている。
さて、そのときは面接……という程、大したことではなかった。
ただ、部隊に編入されるより先に、個々で話しておきたかった。
立ち寄ったのは、所謂ファミレス。
白い煉瓦の壁に囲まれた清楚な空間ながら、
濃い色の木製テーブルと中身の黄色い綿が少し見える赤ソファーから、
チープさを感じずには得られない空間。
これで出てくる料理が遅いとか、店員の態度が悪ければ、
帰ってやろうかと思ったが、
「意外に……庶民的なお店を選ばれるのですね」
なんて不器用に俺を褒める、ダイの無邪気な笑顔に、
俺も毒っ気を抜かれた。
「……そりゃ、中隊の副長ごとき、大した給料じゃねぇからな」
苦笑気味に笑う俺は、
2、3先のテーブルでタバコを吸うオッサンに目がいった。
なるほど、喫煙・禁煙のくくりはないらしい。
そう近いところじゃないから、
流石に煙がこちらに届くことはないだけマシだが。
「んまぁ…………それだけ軍人ってのは、儲からねぇって話だよ」
「それ、教官にも言われました」
「あっ、マジ?」
口を拳で押さえて笑うダイの態度に、何となく品の良さを感じた。
「じゃあ……オマエが軍人を目指した理由は何だ?」
ダイの顔つきが変わる。
拳を開き、ゆっくりとテーブルの奥へ引っ込める。
「少し、失礼な言い方になるかもしれませんが……
考えるんです。いつも、自分ならどうするかを。
ニュースを見ていて思います。
もっといい選択ができたんじゃないかって」
「……というと?」
「例えば、税金の話とかしているでしょう?
タバコを吸う人の割合は減っているからって、
年々、税率が上がっている。でも、税収は増えていない。
嫌煙家が増えた今のご時世じゃ、
タバコの増税に反対する人が少ないのが原因でしょうけど、
もっと税の取り方があるんじゃないかなって。
例えば、そんなことを」
無論、タバコを吸っていたオッサンがいたから、
そんな話になったのだろうが……
「それと軍務に何の関係がある?」
「軍隊にしても、そうです。
僕は今の方面軍という体制がベストとは思いません。
戦時中でもないのに軍事費は拡大して、
ほぼ徴兵同然の制度に国民は反発、政権の支持は下がっている。
何より、プラント本国の守りが手薄になっている。
これでは、本国を叩きに来られたら、守りきれません」
「今の大国は……東ユーラシアを除いて、
国の一部にザフトの基地があり、方面軍がそこにある。
プラント本国を叩きにかかれば、その時間に方面軍がその国を攻める。
システム上、問題はない気がするが?」
「……元々、人口の少ないプラントが世界の警察を気取るには、
無理があると思います。
それなら、むしろプラントは本国のみに戦力を集中させていた方が、
テロリストなどへの対応も取れるのでは?
方面軍が強いといっても、物量では他国の方が上。
総力戦になれば、どのみち勝ち目は薄いのですから、
自ら不利な状況に持ち込ませるべきではないと考えます」
「まあ……わからんではないがなぁ……」