機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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『アレハンドロ!背中は預けた!』
との宣誓と共に、斬りかかるダイ。
『ざけんじゃねぇが……いいぜ!行けっての!』
そう答えるアレハンドロの《アビス》には、
頭上を飛んでいた《ウィンダム》のビーム砲が撃ち込まれていた。
動ける状態ではない。
『うおおおおお!』
ダイの《Im/A-P》は何の武器も構えていなかった。
それは、ただの体当たり。所謂ショルダータックルである。
「一体……何の算段あって……」
ドナウアーは首を傾げていた。
勢いよくぶつかった《Im/A-P》であるが、
《ドヌ・ゾド》は一切揺すられることも、まして後ずさる訳もなく。
「……何ですか。自棄(やけ)でも、起こしたんでしょうか」
そう呑気そうに、顔を掻いていると、
体当たりをかましたダイの機体は横に逸(そ)れた。
そこには別の民家がある。
「いやはや……」
《ドヌ・ゾド》の腹部が光り輝いた。
次の瞬間には、その光は空中で蛇のように折れ曲がると、
ダイの方へと襲いかかる。
咄嗟にビームシールドを展開するが、直前で再度歪曲。
シールドには触れもせずに、その手前で折れ曲がって、
コクピットを直撃せんとした。
「……2人目」
そう呟くドナウアーだが、そう思い通りにはいかず。
《Im/A-P》の胴体は確かに両断された。
ただ、自ら分離させた、という意味で。
『殺られるかよ!くそったれぇぇ!』
分断された足が、下に転がっていた屋根の破片とおぼしき煉瓦を、
切り上げ、《ドヌ・ゾド》へぶつけた。
「……おっと」
声は出たが、所詮は小さな破片に過ぎず。巨体を動かすことはない。
頭と思われる平たい部分にぶつかり、粉々に割れて、
足下へ落ちていった。
「……くだらない小細工を!」
今度は右腕を振り上げて、前へ出る。
丸太のような重さを持って、《Im/A-P》の方へと降り下ろされた。
ただ回避は、間に合った。前に出るダイ。
分離していた上半身と下半身が、数歩踏み込んだ先で合体。
手には……いつ掴んだのか?何か石ころのようなものが握られていた。
拳を握り、上にした親指を折り曲げて、立てる。
そんな指の勢いで弾かれた石が今度は腹部の辺りに炸裂した。
「おちょくって……いるのでしょうか?」
腕は一本ではない。
先程前に出した左腕が横から迫り、叩(はた)くように、
《Im/A-P》を襲うが、これまた遅く、回避されてしまう。
スッと上空まで飛び上がる《Im/A-P》。
「厄介……ですね。これは……」


PHASE-12 砂漠の巨獣(5/7)

おおよその予想はついていた。そして、当たった。

礫(つぶて)などという、威力のない武器でも表装に傷がついた。

なるほど、悔しいがアレハンドロの判断は正しかったらしい。

《ドヌ・ゾド》の装甲はヤタノカガミを応用したもの。

ビーム兵器をほぼ無効化する一方で、実体のある武器には脆い。

もっとも、フェイズシフト装甲の一般化により、

実弾兵器はモビルスーツからほぼ消えたが。

《ヴェスティージ》は鈍重な《ドヌ・ゾド》には有利に立ち回れて、

かつ実体の剣を持っている。

だからアレハンドロはチョイスしたのだろう。

……今は副長が乗っていて、こちらまでは来ないみたいだが。

そして、ぶつけられた際の反応から、

コクピットの位置も大体分かった。

頭だ。頭にあるらしい。

でなければ、腰に当てられても無反応だった敵が、

頭にぶつけられた際は動きが遅れたことの説明がつかない。

全く……

『「手間かけさせやがって」』

一瞬、ほんの一瞬だが、思考が停止した。

同じ台詞を、同じタイミングで敵が吐くという偶然。

そして、この一瞬が……命運を分ける。

『君子、危うきに近寄らず……ですよ』

相手のパイロットがそう呟く意味が、すぐには理解できなかった。

すっかり出遅れてしまった。

何せ俺は、アレハンドロの《アビス》を襲っていた、

《ワイルドダガー》らが後ずさるところを見るまで、

その意図に気付いていなかったのだから。

『退けよ!ダイ!』

アレハンドロは叫んだが……

『もう、遅いですね』

例えるなら、それは噴水。それも大きな。

元々、《ドヌ・ゾド》のボディに、縦笛のような等間隔でもって、

多くの穴が空いていること自体には気付いていた。

しかし、ティンドゥフの戦場では使われていなかった。

恐らく、味方を巻き込む愚を犯さぬ為であったろう。

ビームを弾くボディと、変則的な角度で放たれるビーム。

十分、脅威になりうる。

まさか、まだ……かくし球を用意していたとは。

全身の穴という穴から、ビームが吹き出していった。

それも生き物みたいに1本1本が折れ曲がったり、丸まったり。

シールドは構えていたさ。当然だ。

しかし……それで凌げるレベルの話ではない。

機体を分離させた瞬間に、下半身は3本のビームが、

芋虫みたいに身を捩(よじ)らせて襲い、破壊した。

シールドの目前で歪曲した1本が、

アッパーカットみたいな勢いでアゴから顔面を貫く。

2本が両肩を切り裂いて、

1本がコクピットの縁を削った。

『ダイ!』

そう叫んでいたアレハンドロも、無事では済まなかった。

両肩のシールドが大きいお陰でダメージは少ないが、

右目と左足を貫かれ、体勢を崩した。

ただ、アレハンドロはまだ距離があったから、

モビルアーマー形態に変形して、

以降のダメージを受けないという策が出来たが。

近くで転がっていた、《ガイア》も同様。

無抵抗のまま、左肩から左膝の辺りまで、1本線を描くように、

切られてしまったから。

……そして、俺の《Im/A-P》は、地面へと叩きつけられる。

回避は、しようとしたさ。努力はした。

ただ、肩を刻まれた際、爆発の勢いで機体が前に出てしまい、

そこで少し前屈みになったところ、

またビームが頭上で折れ曲がり、バックパックを破壊した。

黒い煙を上げながら、下へ落ちていく間にも、

網目状に展開されるビームの噴水に、

体を滅茶苦茶に切り刻まれた。

ビームシールドを張る両腕が、まず犠牲になる。

Uターンしたビームが肩の少し下を撃ち抜くと、右手は落ちた。

以来、主に右側から上半身を撃たれまくった。

コクピットこそ無事だったが、胸やら首やらに傷だらけ。

砂の上に落ちたときには、

落ちた衝撃もあり、左腕が離れていった。

『中々……使い慣れぬものです。まったく。

建物を多分に破壊してしまった。これでは……どちらが侵略者か、

分からないものです』

余裕綽々と講釈垂れる男の声が聞こえてきた。

虫酸が走る、というのはこういう気持ちを言うのだろう。

いや、あるいはヤツの本心だったかもしれないが、それでも……

『一応、止めを差して然るべきでしょうか?達磨(だるま)さん』

《ドヌ・ゾド》の足が此方へと向く。

「副長……副長さえ、いれば、こんなヤツ……こんなヤツにィ」

そう語る自分が惨めだった。

自分の言葉が、場面がフラッシュバックした。

【何が歴戦の英雄……何が伝説のパイロットだ。

そりゃ、自分は戦果も挙げられるハズだ。

部下を省みず、強敵ばかりを相手にしゃしゃり出ていけばなぁ】

我ながら、よく言ったものだ。

「……いざ、自分の番だと、これだもんな」

覚悟をして、目を閉じようとした瞬間、

画面の端で、《ガイア》の黒いゴーグルに光が灯るのが見えて……

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