機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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PHASE-13 新しき旗(1/7)

《ドヌ・ゾド》の背中が砂の大地に落ち込んだとき、

アレハンドロの《アビス》は片足で立っていた。

いや、正確には片足だけではない。

背もたれに身を預けるみたいに傾いた体は、

2枚のシールドが杖となり、鼎(かなえ)みたく支えられていたから。

少し離れたところに、ダイの《Im/A-P》も仰向けで転がっていた。

ラグネルの《ガイア》も、《ドヌ・ゾド》の残骸の横、

老いた犬がごとくふらついて歩いている。

「命拾いつーんだろうなァァ!……ダイッ!」

乱れた息で吠えたアレハンドロ。

ダイの返答こそしなかったが、

ゼェゼェ漏れる息が返事の代わりに聞こえてきた。

「いや……まだ……終わってねぇのかッ!これェェ!!」

アレハンドロの目は後ろを向いていた。

それはさながら、親からはぐれた子羊を狙うハイエナの群れ。

ビルの隙間から、何匹もの《ワイルドダガー》が4本足で立っていた。

「おいおい……参加者がいっぱいいるぜェ?」

『……「参加者」?』

「あぁ……」

最前列にいた《ワイルドダガー》が、地面を掘る素振りを見せた。

クラウチングスタートでもするみたいに、尻を上げながら。

「ダイよォ~……俺が、だるまさんがころんだつーからよ。

言い終わるまで、動けるだけ動けや」

『……ハァッ?』

「何だよ?もう、ころんでっから無理ってかァ~?

いいから、動けってのォ。言うぜェ~?だるまさんがァァァ~……」

《ワイルドダガー》の足が、強く地面を蹴った。

『おい!アレハンドロォ!』

ダイは叫んだ。声が裏返る程に。

だのにアレハンドロは……振り返りもしない。

「…………ころんだァ!」

そこまで言って始めて振り返る。

ダイには見えていなかったのだろう。

彼の右手から伸びたビームサーベルが。

頭上より2発のビーム砲を涎(よだれ)のように垂らしつつ、

飛びかかる《ワイルドダガー》。

まさに、一瞬の稲光(いなびかり)。

《アビス》というコンパスが、シールドというペンでもって、

地面に円を描く中、

飛びかかった大きな犬は、その首を落とされていた。

そして、その2滴の涎は《アビス》には当たらず、

地に落ち、陽炎(かげろう)みたいな燻(くすぶ)る煙を上げた。

「知らなかったか?だるまさんがころんだってよォ~、

鬼が言い終わったら、もう、動いちゃいけねぇんだぜ?」

回った反動から、シールドが地面より離れていた。

また勢いが、《アビス》の体を前屈みにする。

杖をつくみたいに手を前に出せば、自然、

ビームサーベルが《ワイルドダガー》の腹を貫いて。

「さァ~……2回戦と行こうかい?」

まだまだ敵はいる。見えているだけでも5、6機はいる。

「だるまさんよォ~……」

『俺はだるまじゃねぇ』

「じゃあ、返事しなきゃいいじゃねぇーか、おい!」

さあ、敵がまた前に出た。傷ついた《アビス》の胸から光が。

「そっちは後……何が残ってる?結局残った脆弱なハートか?」

『何、言ってやがるッ……』

胸から放たれたビーム砲マグヌス・バラエーナ。

真っ赤に光り、《ワイルドダガー》らに向かい飛んでいくが、

まるで当たらない。

「……ビームガンはまだ使えるか?」

『無理だ。首が逝(い)って、照準が合わせられん』

「マジかよ」

かくいう《アビス》も限界は近かった。

ビームを放つ胸からは、煙が上がっている。

「……こっちも、ギリギリだってのによォ」

残った片側のミサイルが、肩より離れていった。

こちらは迫り来る敵の1機に命中、その動きを止めた。

ただし、敵はあと4機も迫ってきている。

最後の支えだった片足が、後方の《ダガー》の狙撃で撃ち抜かれた。

これを皮切りに、体勢を崩す《アビス》。

幸運にも倒れる瞬間に逸れた弾道がかえって、敵の1機を倒したが、

それでもまだ3機いる。

「鬼さん……もうダメかも」

不思議と笑みが溢(こぼ)れていたアレハンドロ。

しかし、《ワイルドダガー》の重量がのし掛かると共に、

諦念(ていねん)から、遂に目を閉じてしまう。

「ストップ……って、聞く訳ねぇか」

『ええ……これはゲームではないので』

ラグネルの声が、

閉じかけたアレハンドロの目蓋(まぶた)をこじ開けて。

そして《ガイア》の角が、馬乗りになった敵を払い除(の)けた。

《ドヌ・ゾド》に潰された頭、

しかし、歪な角度なれど角は伸び、敵を突き刺した。

「サンキュー……サンマルティン。それから……」

残り2機。狙撃していたヤツを含めれば3機か?

しかし、件のスナイパーは、もう倒されていた。

背中からビームサーベルに貫かれて。

更に前進中だった2機も、尻からビームに撃ち抜かれて倒される。

それは、そう……

「ワイリー先輩。待ってましたぜ」

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