機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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「だるまさんがころんだァ~なんて、ふざやがって。
お望み通り、傍観決め込もうかと思ったんだがな」
ワイリーは語る。
「お嬢ちゃんが頑張ってんのに……ほっとけねぇだろ?」
『……スケベっすねぇ。ワイリーおじさん』
「オメェには言われたかねぇよ。アレハンドロ!」
地面に降り立つ、彼の《ゲルググ》。戦場を広く見渡す。
頭頂部を削り取られて倒れる《ドヌ・ゾド》を筆頭に、
モビルスーツの累々たる屍がそこには転がっていた。
「無茶、したんだなぁ。ずいぶんと」
掠れる声。
『……副長は?』
ダイの声。
「ああ……まだ、戦ってたよ。敵とな。
今、敵は本拠地を捨てて、地中海側へと逃避を始めやがった。
《フレイヤ》にも敵が迫ってっからな。その抑えだろうぜ」
『そう……ですか……』
ダイの声には力がなかった。《ゲルググ》の足がそちらへと進む。
「なあに、しおらしい声出しやがって」
歩み寄ると、《ゲルググ》はその手で頭を掴んだ。
髪の毛を引っ張るように雑に持ち上げていく。
「オメェも頑張ったんだ……あとで褒めてもらえや。副長によ」
そんな話をしているところ、少し離れた場所で爆発が起きるのだった。


PHASE-13 新しき旗(2/7)

「カタ……ついたらしいな」

空を飛ぶ《ウィンダム》数機の様子を見て、俺もそれを察した。

「親バカじゃねぇが、うちの部下は優秀だろ?なあ?

……こちらも、終わりにしようか?」

カーテナを胸の前に構え、相手を見つめる。

『……あぁ、その通りだな』

そのとき、俺は始めて相手のパイロットの声を聞いた。

低い声だった。聞き取りにくいほどに。

「アァッ?」

俺が聞き返すと同時に、ヤツは腰の位置にて構えた鎌を手放した。

『カーテナの二つ名は慈悲と聞く……オマエ、シン・アスカだな?

少し、話を聞いてもらおう』

「……命乞いかよ?」

『あぁ……概ねその通りだ』

両手で握っていたカーテナから、左腕を離した。

その手を腰へ。ヤツが、逃走を図ったときの為の飛び道具として。

『まずは名乗らせていただこう。

私はパヴァロッティ・ギボンという者だ』

「……脱走兵の、か?」

『知られているとは思わなかった……話が早い』

ゆっくり両手を振り上げるギボンの機体。

『……俺は脱走兵であり、神とやらの手下ではない。

つまり、義理立てして、命を落とす必要もない訳だ』

「どのみち、敵には違いねぇんじゃねぇのか?」

『俺は上官から救援に行けとは命じられたが、

心中しろとは言われていない。撤退させてもらう。

勿論、海側へも、本拠地にも向かわないから、

オマエの部下や同僚に手を出すこともしない。

進路がおかしいと見れば、容赦なく撃ち殺してくれた構わん。

だから……』

「見逃せってのか?俺に」

ピックを2本抜いた。

「何のメリットが有って……そんなこと!」

『なら……ひとつ、教えておこう。君らが知らぬ情報を』

「……情報だぁ?」

足を少し自分の方へと引き寄せた。

相手が動きを見せれば、砂をかけてやれるぐらいに。

『ネイト・アガレスは、一月以上前に死んでいる。

ここの拠点としての価値も、そのときから下がっていた。

ザフトの連中にはきっと「明けの砂漠」は教えていないらしいがな』

「……はぁ?」

思考停止を地でいくことになるとは、我ながら思わなかった。

『情報は与えた……次は何が欲しい?答えろ。シン・アスカ』

ピックをゆっくりと腰へと戻す。カーテナは背中へと戻す。

「そうだな……じゃあ、例えば……」

足を引く。ゆっくりと。

「……テメェの命だ!」

まずは思いっきり足を前に出した。砂ぼこりで視界を防がんと。

次いで、ボールを投げるように荒っぽく、カーテナを振り投げた。

旋回しながら飛んでいくカーテナ。

ギボンは砂をかけられる直前、右の足で鎌を蹴りあげていた。

それは見えた。

ヤツの左手のビームシールドが、カーテナを弾く。

前に出るギボン。横から刈るように振り回されるビームの鎌。

しかし、まあ、その間、俺もぼうっとしていた訳ではないから。

左手でピックを抜いた。今度は1本だけ。

1本で十分だった。ヤツの右手首を切り落とすには。

空いた右手で鎌を奪い、逆(さか)しまにもヤツ自身を切りつければ、

回避が間に合わず、左腕をも犠牲とした。

切り落とされた左肘の下から、ビリビリと小さな稲妻が走っている。

「言葉を返すようだが……何がしてぇんだ?テメェ」

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