機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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PHASE-13 新しき旗(5/7)

物事には、陰と陽があるものと、言われる訳だが果たしてどうか。

清廉(せいれん)とした白く幅広のローマ橋に対して、

薄汚れた暗褐色の煉瓦(れんが)が積まれた狭い一戸建て。

車の中、3人が一定間隔を置いて座り、

下手をすれば、吹き込む風の音が搭乗者の声より大きかった、

あのスペースに比べて、

その店は、ひとつのテーブルに対して5個も6個も椅子が並び、

机上には皿の端が飛び出るばかりに料理が乗せられている。

それでも座れない客がいるほどごった返しており、

座っている者もいくらかはパイプ椅子やら風呂場の椅子やらで、

周囲と顔の高さが違っていたりする。

声も大きい。外の音なぞ聞こえやしない。

馬鹿に騒ぐ連中の声が、スピーカー等のノイズよろしく不透明にて、

一人飲みの俺には耳障りにすら感じた。

凍える風の代わりに、香ってくる様々料理の入り雑(ま)じった臭い。

試しに並み居る群衆の合間を目で抜いて、

ドアのガラスから外を見るに、

ルシア・アルメイダとマアト・クィルの横顔が見えた。

そのうちにアルメイダがタバコを口にくわえると、

ガラスの端から手だけが現れ、火の点いたライターを近付ける。

流石のアルメイダも、煙を吹きかけては可哀想と思ったのだろう、

ドアへ背を向け、2、3歩離れていった。

その隙を埋めるように、1歩前に出て、顔を出したのは、

先程の腕の主アレハンドロ・フンボルトで。

マアト相手に笑う彼が、

窓辺で見ていたパーディタ・ラドクリフに睨まれていようとは、

気付いていないと見える。

慌てて向かいのルアク・パームシットが、何やら宥めている様子。

ただ、俺の場所からは何を言ってるかまでは聞こえない。

同じテーブルに腰かけたラグネル・サンマルティンが、

俺に気付いて見つめ返す。

笑えばいいものを、まるっきり無表情であるから妙に気味が悪く、

逃げるみたいに顔を逸らした。

ため息をコップの内に押し込め、

例によりノンアルのビールを流し込む。

あては、シャワルマとかいうパンの肉詰めみてぇなヤツだ。

要領はバーガー系と同じ。

細く刻まれて中に挟まれた、薄緑やら紫色したサラダが、

口の端から溢(こぼ)れていく。

慌てて左手をコップより剥(は)がし、口元を覆った。

親指を折り曲げ、掌と口の合間に入れ、

唇の隙から覗く紫玉ねぎの一切れを、口の中へと押し込む。

「……意外と可愛いところがあるのね?副長さん」

隣の席に腰かける女。スカートの端は押さえつつも、素早く。

椅子の揺れる様に目を取られ、座る女の腰辺りを一瞥したところで、

俺は、側に置いたままになっていた右手の厚みより、

細くしか残っていなかったコップのビールを、

オーバーリアクションにも振り上げて、喉の奥へと流していった。

空になったガラスコップを、やや荒っぽくテーブルに戻せば、

そんな俺の左腕に、女の右腕が伸びて、

真っ直ぐに伸びた4本の指が、くすぐったいぐらいに二の腕を撫でた。

「やっぱり軍人さんて、スゴい腕よね」

そう話しながら、左手をも添える女。

「太い腕が好きなら……ボディービルダーとでも、付き合えばいい」

「嫌よ。ああいう人種は、体のケアとか五月蝿(うるさ)くて、

腕枕もしてくれないのよ?」

「……もう付き合った後かよ」

呆れて顔を背けつつ、左腕を上げて後ろ髪を掻く。

手を振り払ってやるつもりが、尚一層引き寄せやがった。

「あとあと、こういうナチュラルな感じの筋肉の方が好き。

なんかー、ボディービルの人って、ちょっと太すぎてやだー。

腕なのか、太股(ふともも)なのか……わからなくなっちゃう」

「……知るかっての」

今度こそ振り払い、背を向け、横顔で店内を見渡した。

幾人かはこちらを見ており、目を合わせると逸らしやがる。

特にひどいヤツが二人。

目を逸らす瞬間に、鼻を押さえて笑うザイロ・モンキーベア。

それと、目が合うなり、満面の笑みでサムズアップした、

ワイリー・スパーズ。

空のコップをフルスイングで投げつけてやりたかったが。

「あら、ワイリーさんだっけ?あの人……

ダメなのよ。この辺りで、あんなサインしたら」

そう笑いながら、両肩に手を置く女。

「おい、通訳……やたら馴れ馴れしいが、

たまたま現地スタッフを募集しただけで、自分もクルーて顔すんなよ。

オマエは……」

右手が後ろから伸び、俺の口を覆った。

「……アンジェリカて、言ったでしょ?」

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