機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神   作:申業

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コルドバより。その時間、意外な番組が流されていた。
ある番組の特集という言い方がより正確であろう。
それは、2ヶ月も前に遡(さかのぼ)るもので、
かの『円卓会議』において、ダグ・バーテルソンが発した「演説」が、
スペイン語に翻訳され、現地の声優に声を当てられている。
テレビのコメンテーターと思われる小太りの紳士が知った風な口調で、
パクス・プランターナ──ラクス・クラインの治世──が、
生んだ弊害(へいがい)だの、旧国際連盟・連合の理念だのを持ち出し、
これを支持する一方、
バーテルソンの軍人という立場を考えると、
自身を棚に上げた発言であるとの非難を述べる女性もおり。
白熱する議論。
12時に始まった番組が、もう30分余りもこのコーナーに費やしている。
「番組の構成としてどうなんだ?一体」
シーザー・ルチアーノは苦笑した。
「……まったく、驚いたものだ。バーテルソン。
彼は一体…………マルティン・ルターにでもなりたかったのかねぇ?」
傍らに眼を向ければ、そこにはノエル・ド・ケグの姿がある。
「自分は、単なる人気取りの為の詭弁(きべん)としか思いませんが」
ノエルは少し伏し目がちにそう述べた。
「ヤン・クールカのような本物ではないと?」
「……ええ」
そうは言いつつも、ノエルの動きは一度止まった。それで、
「私は……ヤン・クールカという人をよく知りませんが」
などと付け足したときには、
その間に違和感を覚えたルチアーノの顔が、彼の方へ向いていた。
「……だとしても、話ぐらいは聞いているでしょう?」
ルチアーノはそう笑うが。
「人伝(ひとづて)に聞く人物評では、限界があります」
「それは分かるがね」
髪の毛一本たりともなきルチアーノの頭頂部を、
毛のように細長い指が撫でる。
「……トリポリでの話も聞いたろう?」
「いえ、まだ……仔細(しさい)には」
「おう、そうか……それなら話しておこうか」
ノエルが頭を垂れる中、
「……まあ、『限界はある』がね?ハハハ」
なんて笑うルチアーノであった。


PHASE-14 Distance(1/7)

──6日の0時頃に起こした襲撃で、

トリポリを陥落させたフレイヤ大隊は、その後の対策として、

変則的であるが隊をおおよそ2つに分けた。

分隊の片方はアルメイダを暫定リーダーとする昼間組、

もう片方はハビエルが暫定リーダーの夜間組。

実のところ、あまり好ましい割り振りではなかった。

夜間を健康上の問題──酒が飲みたかっただけだろうが──により、

隊長アルメイダが拒否したのがことの発端。別の言い方をすれば元凶。

出来れば夜間組のリーダーに俺が回りたかったのだが、

ハビエルは(名目上とはいえ)艦長と副艦長が同時間帯にいることは、

旗艦防衛上の問題で避けるべきと主張して譲らなかった。

無論、実際には、

戦艦業務に関して言えばハビエルに次ぐナンバー2たるクィルを、

お気に入りゆえアルメイダが手放さないと承知してのことだったが。

案の定、クィルに加えて、

ハビエルとやや不仲で、かつ実務派のモンキーベアが昼間組に回った。

こうして、戦艦内のバランスはそれなりに保たれた。

問題はモビルスーツ部門。

俺はまず、ワイリーかアレハンドロのどちらかには、

少なくとも俺とは別の組に回ってもらいたかった。

戦力が偏ることを懸念して、だ。

しかし、そこはアルメイダが譲らない。

オランでの一件以来、アレハンドロを気に入ったらしく、

昼間組に必要だと言い張り、アレハンドロもあっさり回りやがった。

ワイリーは仕方がない。

復帰したとはいえ病人。夜間警備は難しいと判断された。

結局、夜間組には、

ダスティンの小隊、ヴァイデフェルトとダイが入った。

ラグネルは自身の希望で昼間組に。理由は知らない。

こうして、ややバランスを欠いた形にはなったが、ひとまず分かれた。

迎えた6月7日。夜。

夜間組との交代時間に際して、

アルメイダの提案(命令?)で、息抜きとして街に繰り出した昼間組。

戦艦《フレイヤ》のブリッジは、そのとき、

普段とは異なる顔触れが並んでいた。

まず、艦長席にはルイス・ハビエル。心なしか表情が硬い。

副艦長席には、ちゃっかりダスティン・ホークが腰かけている。

元々CIC電子戦を担当していたゲルハルダス・ズワルトが、

操舵手を兼任し、

CIC索敵担当はダイ・フーディーニが暫定的に務める。

オペレーターはマユ・ヴァイデフェルトが再び代行。

他に、本来はダスティンの小隊に属していた、

ジェシー・シフなる隊員が、人員不足の為に副操舵手に転任。

こうして、辛うじて頭数を揃えた状態であった。 

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