機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神 作:申業
『お見事』
とドルゴンがおだてれば、クールカは、
『いや……小さい』
のみ応じた。
『……小さい?』
ドルゴンがそう聞き返した。
『爆発が小さすぎる……これでは……』
クールカの不安は的中。突如雲の下から2本の赤いビームが飛び出す。
片やクールカを、片やドルゴンを狙ったようだ。
まず、ドルゴンの方は間に合わない。
シールドを張るも無意味で、片足を吹き飛ばされてしまう。
他方、クールカの方には余裕があった。
それはもう、回避するだけでなく、
傷ついたビームライフルらしき銃が煙を上げつつ落ちていくのを、
確認できるぐらいに。
『……武器を囮(おとり)にしたか。なるほど。
オマエにしては珍しい策だ。機体まで透明にしてな。
もっとも……データにないモビルスーツという時点で、
おおよその見当はついていた。
シン・アスカ……カーン・カーァを仕留めたオマエの機体だとな!』
流れていく雲の切れ間から、その姿が顕になった。
赤と金のクールカ機と対比されるような、
青と白の機体──《ヴェスティージ》である。
『下がれ、ドルゴン……相手が悪い!』
言われたときにはもう、
ドルゴンとやらの《ウィンダム》は引いていたが。
《ヴェスティージ》の左手にはビームピックが握られている。
即座にピックが指から離れる。当然回避に動いたクールカ。
しかし、間に合わなかったのか、『ズレた』のか、
ピックがビームライフルを直撃。
小さな稲妻を走らせるライフルを投げ捨て、後ずさるクールカ。
「……遅ェ」
そう離れちゃいない。一歩踏み出せば、
それは《ヴェスティージ》のスピードである。
手離されたライフルがその足先に当たる程のアズ・スーン・アズ。
間合いは詰まった。
すぐ右手を振り上げた。旗のように上へ向けて真っ直ぐに。
旗の代わりに握られた新手のビームピックが襲いかかる。
もっとも、流石にこれは回避された。
間髪入れず、ピックを放(ほう)った。
グーをパーにするだけの、最低限の動作でもって。
旋回するピックがクールカ機に近付く中、本体も暇しちゃいない。
顔のビームガンをけしかけた。
シールドでも張る……かと踏んだのだが。
首が動いた。凝った首を軽く回すときみたいに、微かに。
モビルスーツ、というか機械にしては滑らか過ぎるほどに。
前の戦場で見たパヴァロッティ・ギボンの機体がこうだった。
あまりにも繊細。あまりにも微細。
しかし、その些細(ささい)な動きがあるばかりに、
こちらの攻撃が当たらないのだ。
それは投げつけたピックについても同様。
捻(ねじ)るように動かした肩、腕がこれを避けた。
「またかよ!」
ならば、とビームガトリングを振り上げる。
いや、振り上げようとしたときには、もう遅かった。
噛み合わせたワニの歯のようなデザインをした、
クールカ機のアイマスク状の部位が動いた。
口を開くように、上下に分かれたのだ。
下には魚の鱗みたいな小さなパーツが並んでいた。
これが一斉に飛び出してくるのである。窓ガラスが割れるみたいに。
落ちた鱗には小さな刃が付いていた。見逃しかねないほど小さな。
慌てて身を引きつつビームシールドを展開するが、
完全には間に合わなかった。
顔にいくらか突き刺さり、頭部が損傷。煙も上がる。
クールカ機はこれと同時に、腰から2本の剣を抜いていた。
逆手に握った剣同士を胸の前にてクロスさせ、そのまま、
『うおおおお!!』
とか何とか叫び声を上げ、突進してくる。
勢いに押されて、シールドを持つ手が後ろにいき、機体も後退。
その隙を突き、右側の剣が切りつけてける。
回避はおろか、逆の手のシールドを張ることも間に合わない。
だから、誰かさんみたいに上体を反らした。
無論、焼け石に水。胸から下腹部辺りまで一文字に切り裂かれる。
クールカやギボンの機体みたいにはいかなかった。
それでも、コクピットまでは刃は届かずに済んだ。
浅く……そして、気持ち太刀筋が左に逸れていたこともあって。
『これで、チェックだ』
右の刃が弓ならば、左のそれは矢のようで。
手首を折り、剣先をこちらに向ける。後は前に突き出すだけ。
左の刃が迫る中、俺は……推進機を止めた。
背中で、
『探したぜェェ!こんのォォ、《フリーダム》もどきがァァァ!!』
なんて女の叫び声(怒鳴り声?)を危機ながら……