機動戦士ガンダムSEED C.E.81 ナイルの神 作:申業
「クールカ……さんよぉ……」
『何だ?アスカ』
「……こんなこと、語るだけ無意味かもしれない」
敵は待ってくれはしない。片側からギボンの鎌が振り翳(かざ)され、
逆側からはカトリーナが針先から光線を飛ばしてくる。
両手にシールドを張り、耐えるばかり。
「……だが、あえて言わせてもらう。
『過去にとらわれたまま、戦うのはやめろ』。
アンタの目指す先に、アンタの望むような未来はない……
現実を見ろよ。俺と同等……いや、それ以上の力を持つアンタが、
高尚な理想を持ったアンタが、今やってることはなんだ?」
ギボンとカトリーナ、シールド1枚挟んで2つの機体が密着してきて、
ぶつかりあった刃と盾、針と盾とが火花を散らす。
「プラントじゃ体制批判しても……アフリカじゃ擁護かよ。
使いっ走りさせられて、無闇に人の命を奪い……」
『御託並べてんじゃねぇよ!カーン・カーァを殺ったテメェが!』
カトリーナは、もう一方の針をシールドの隙間にねじ込み、
胴体を狙う。しかし、
「……だから、そういうことさ」
片手を曲げた。カトリーナの方じゃない。ギボンに向けた方の腕だ。
半ば凭れるように鎌を振り下ろした敵は、
こちらが手を引くと、ドミノ的に前屈みに体勢を崩す。
だが、それは副産物に過ぎない。
左手を曲げて、半身を後ろに引いた。それは振り上げる為。
上半身の左半分が後ろに引けば、自然と前に出るのは右の下半身。
その勢いに乗せて、空手の前蹴りみたいに、
針と針の隙間から、カトリーナの機体の胸部を蹴り込んだ。
やはりフェイズシフト装甲を採用しているらしく、
蹴ったぐらいじゃ表面には傷はつかない。
ただ、勢いそのものが消えた訳ではないから、
カトリーナの機体は押し出され、
仰け反るように背中側へと飛ばされていく。
「所詮、闘争とは憎悪を生むだけ。力は何かを傷つけるだけ」
右の裏拳をギボンの顔面に見舞ってやった。
「『自由』とか、『正義』とか……そちらこそ、御託は止(よ)せよ。
こんなもん、喜劇にもならねぇ!」
返す刀で、鎌を奪い、カトリーナの方に投げつける。
それと同時、ギボンの腹に左足で、馬のような後ろ蹴りを入れながら。
「……まるで、ドン・キホーテだぜ。アンタ」
《ヴェスティージ》の顔を、一瞬だけ上に向けた。
見下ろすクールカを睨み返すみたいに。
それからすぐに左を向いた。ビームガトリングを押し当てる。
『ドン・キホーテ……か』
ビームシールドは、ギボンも張っていた。
蓋をするように、ガトリングの砲身と接地する形で。
とはいえ、ほとんど無意味で。
車輪のように回り始めたガトリングの砲口は線香花火みたいに、
瞬く間に飛び散った涙滴型のビームが、
顔や肩、また手や足にまで振りかかり、
当たると共にその身を焼き、あるいは貫いた。
ベイゴマみたいに徐々に回転速度を落としていくガトリングが、
その動きを止めるより先に、穴だらけになったギボンの機体が、
力をなくして地面へと落ちていった。
追い討ちする訳じゃないが、まだ回っていたガトリングからは、
なおもビームが排出されていき、
そのいくらかは、ギボンの機体の上へ雨みたいに振りかかった。
『クソ!!』
カトリーナが背後より迫る。
肩口についていたビーム砲が矢のように飛んでくるが、
軌道が直線であるから、回避には苦労しなかった。
瞬時に身を翻し、ビームピックを投げつける。
両腕を覆う殻がこれを弾くが、
その際、咄嗟に手を大きく開いてしまったカトリーナ。
胸元の辺り、守りがお留守になる。
別に見越してたって訳じゃないが、しめたとばかりに、
背中のモビィ・ディックを撃ち込んでやった。
流石に回避動作をカトリーナも取ったが、間に合わず、
首から上が消し飛んだ。
『気取りやがってよォォォ!』
モビィ・ディックの一撃が打ち止めるより先に、
機体を前進させ、カトリーナとの間合いを詰める。
右手でカーテナを抜き取るのも忘れない。
『こんのォォォォ、腐れチ○ポ野郎がァァァァァァ!!!』
何をするかと思ったら、針が飛び出してきた。
正直驚いたさ。目蓋が上がるのを感じるぐらいには。
吹っ飛んできた2本の針が、何を起こすかと思えば、
突然発光したのである。
後に映像で確認したが、ヤツの針の根本には、
手榴弾なんかにある、ピンとよく似た形状のものがあった。
早い話が閃光弾の役割を兼ねていたようである。
『くたばれよォォ!クソがァ!』
カトリーナ機の胸部と肩口にあった計4門のビーム砲が、
閃光に紛れるように一斉に火を吹いた。が、
「そんな子供騙しが、効くかっての……」
上に飛んで回避。
そして、まだビーム垂れ流してるカトリーナ相手に、
なくなった首の部分めがけて、刃を突き立てた。
……ほとんど、ただの体当たりであったが。
とにかく、そのままカトリーナもギボン同様、
地面めがけて落ちていくのだった。
「答えを急ぎ過ぎなんだよ。どいつも……こいつも!」