遺船を漕ぐ   作:雨守学

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第10話

神様、どうか、

生まれ変わりがあるのだとすれば、

またあの人の傍に居させてください。

そして出来ることならば、

あの人と同じ『人間』で居させてください。

 

『司令官』

 

と、自分の口で呼ばせてください。

 

 

 

 

 

 

『遺船を漕ぐ』

 

 

 

 

 

 

待ち合わせ場所に、青葉は――神社という、小さな神社を指定した。

着いてみると、青葉は先に着いていたようで、願い事をしている最中であった。

声をかけるのもなんだと思い、待つことにしたのだが……。

 

「どんだけ願っているんだ……」

 

かれこれ五分以上、青葉は願いっぱなしなのである。

俺が確認してから五分であるから、もっと前から願っているのかもしれないと思うと、やはり只者ではないのだと、少し戦慄する。

 

「よし……」

 

願い事を終えた青葉が振り向く。

俺を見て驚くだろうなと、この五分の間で予想していたが、青葉は知っていたと言うようにして「お待たせしました!」と言うだけであった。

 

「随分長い願い事だったのだな」

 

「いえ、あれは感謝していたのです」

 

「感謝?」

 

「以前、青葉の願い事を叶えてくださって……。ここの神様ではないかもしれないのですが、見かけた神社には必ずこうしてお礼をしているんです」

 

「どんな願い事なんだ?」

 

「内緒です。ふふ」

 

そう言うと、何が嬉しいのか、青葉は満面の笑みを見せた。

 

「それよりも、司令官から青葉に会いたいだなんて。何か情報が欲しい、とかではないのですか?」

 

大淀と違い、察しがいいな。

 

「あぁ、まあ……。実は……」

 

「あきつ丸さんの事、じゃないですか?」

 

「え?」

 

「この前……恋人の鈴谷さんとデートする前に、大淀さんと会いましたね? その帰り、家の前であきつ丸さんと会って、彼女に愛美さんの記憶が本当に存在していると確信した……。そうですよね?」

 

そう。

あきつ丸は愛美なのだと知ったあの日から、俺はあきつ丸――延いては愛美の事が気になって仕方がなくなったのだ。

だが、あれから愛美は家へ来なくなった。

霞とは会っているものの、俺とは会いたくないのだと漏らしているようで、その理由を霞には話していないようであった。

霞もそれ以上の事を聞くのは野暮なのだろうと、理由を問い詰めることはしなかったようだ。

 

「あ、あぁ……そう……なのだが……」

 

そんな事よりも、俺はゾッとしていた。

いや、見られていることは……まあ、良くはないのだけれど、それはいいとして……。

青葉が、俺と鈴谷が付き合っているのだと知っていることに驚いた。

――いや、知っていて平然としていることに驚いたのだ。

俺はてっきり、青葉は俺に――だからこそ、平然としていることが驚きというか……なんて言ったらいいのか……。

 

「というよりも、司令官、鈴谷さんと恋人になったのですね」

 

俺はドキッとした。

 

「青葉はてっきり、もがみんを選ぶのだと思っていましたよ」

 

そう言うと、当てが外れたと言うようにして、青葉はがっくり肩を落とした。

その様子に、俺は安堵するわけでなく、ただただ不思議に思っていた。

妄想だとか、一目惚れだとか、いろいろ言われたからこその気持ちであった。

 

「まあ、それは置いておいて。あきつ丸さんの事ですよね。青葉、資料も持ってきましたので、なんでも聞いてください」

 

青葉はバッグから、おおよそ50枚ほどにも渡るA4の資料を俺に渡した。

インデックスもついていて、なるほど分かりやすい。

 

「ご存知の通り、青葉、大淀さんの依頼であきつ丸さんを調べていました。継承の艦娘である可能性があったからです。接触し、彼女の言動から、継承の艦娘であることはすぐに分かりました。継承元が愛美さんである可能性が出て来たのは、彼女自身が記憶の話の中で『愛美』という名前を出したからです。資料の10ページにその事が書いてあります」

 

まるで講義でも受けているかのようにして、俺は言われた通り10ページを捲った。

なるほど、確かにその事が書いてある。

愛美という名前もそうだが、愛美の特徴、愛美の過去に関する情報が無い事が、愛美の魂を継承している可能性があると言う根拠になっているようであった。

 

「資料、見てもいいか?」

 

「はい、どうぞ」

 

ページをぱらぱらとめくる。

海軍への報告書として作られたであろう資料は、(仮)とされてはいたものの、それはそれは立派なものであった。

 

「…………」

 

だが、俺の知っている以上の事は、何も書かれていなかった。

 

「……ありがとう。参考になった」

 

そう言って、資料を返してやる。

本当は知っていたんだ。

何も得ることは無いと。

ただ、愛美の事が気になって、居てもたってもいられなくて、とりあえず、愛美を調べていたという青葉にコンタクトを取ったのだ。

 

「悪かったな、わざわざ。これから時間あるか? 良かったら何かご馳走させてくれ」

 

そう言って微笑んで見せてやると、青葉は俯き、何やら悲しそうな顔を見せた。

 

「青葉?」

 

「青葉……司令官のお役に立てませんでしたか……?」

 

「え?」

 

「司令官の表情……青葉に気を遣っている表情です……。何か分かると思って呼んでいただいたのに、何も得ることはなかった……。違いますか……?」

 

間違ってはいないが、青葉が気に病むことではない。

 

「そんなことはない。収穫はあった」

 

「例えばなんです……?」

 

「……俺の知っていることと、お前が掴んでいる情報に相違はないか確認できた」

 

「それはつまり、司令官の知っていること以上の事は知れなかったと言うことですよね……? 司令官は、何か自分の知らない事を知るために、青葉を呼んだのではないのですか……?」

 

俺は何も返せず、思わず視線をそらしてしまった。

 

「……やっぱり。青葉……司令官のお役に立ちたいのに……ごめんなさい……」

 

そう言うと、青葉は目に涙を浮かべた。

 

「お、おいおい……。どうしてお前が気に病むんだ……」

 

「だって……青葉は司令官のお力になりたくて……でも……なれなくて……」

 

「役には立ったといっているだろう。それに、俺の役に立とうなどとしなくとも、別に――」

「――駄目なんです!」

 

青葉の声が、杜に響き渡る。

一瞬の静寂。

冷たい風が、俺たちの間を横切っていった。

 

「駄目なんです……」

 

青葉は顔を上げると、潤んだ瞳で俺を見つめた。

 

「青葉は……貴方に出会った時から……いえ、この命を授かった時から……貴方の為に生きると決めていたのです……。貴方のお役に立つこと……それが青葉の成すべきことなんです……」

 

まただ。

何故俺の為にそこまでできるのか。

妄想だとか、一目惚れだとか、そう言う次元ではない。

もっと、何か重大な何かが、青葉を動かしているのだ。

俺の知らない、何か――。

 

「……仕方がありません」

 

青葉は鞄から、もう一冊の資料を取り出した。

表題には『雨野勉に関する調査書』と書かれていた。

 

「これは、ある人に依頼されて作ったものです……。青葉、依頼された仕事は、誰の仕事でも受けますし、依頼人の秘密は厳守します。それが例え、海軍を敵にするような情報であっても、秘密は守り通すつもりです……」

 

青葉は涙を拭うと、真剣な目で俺を見つめた。

 

「しかし、貴方は別です……。『貴方の為になること』であれば、裏切りでもなんでもしましょう……!」

 

これがその決意だと言うようにして、資料を俺に手渡した。

資料の中身は、なんてことない(訳ではないのだろうが……)俺の事がびっしりと書かれているのみであった。

 

「これを依頼したのは……」

 

「はい……あきつ丸さんです……」

 

青葉は、依頼を受けた経緯について話し始めた。

 

 

 

きっかけは、大淀さんから依頼を受けたことに始まります。

 

「あきつ丸さんを調査してほしい……ですか……?」

 

「えぇ。あきつ丸さん……というよりも、彼女と接触して、陸軍の情報を得る事が目的です」

 

「依頼を受けることは吝かではないのですが、あきつ丸さんから情報を抜くと言うのは、具体的にどういった情報でしょうか?」

 

「基本的には何でもいいのですが、出来ることならば、彼女が継承の艦娘であるかどうか……それを見極める情報が欲しいです」

 

「継承の艦娘……ですか……」

 

「実は――」

 

説明されたのは、司令官もご存知の通り、陸軍が開戦以前に、深海棲艦からの攻撃を受けた可能性があると言う件でした。

もしそれが事実ならば、陸軍は何もかも知っていて、あきつ丸さんを海軍に寄越したのではないか、と疑っていたのです。

 

「とにかく、なんでもいいので、何か分かり次第、情報を流してほしいのです」

 

随分ふんわりとした依頼でしたが、難しい依頼でも無かったので、受けました。

 

あきつ丸さんに接触するのは難しくありませんでした。

偶然を装って、彼女に話しかけただけですから。

 

「あれ……? あきつ丸さん……?」

 

彼女がいつも通っているという――霊園の入口でのことです。

 

「青葉殿……」

 

「偶然ですね。お墓参りですか?」

 

「えぇ……まあ……。知り合いの軍人が、ここに眠っているのであります」

 

「そうでしたか……。青葉は……そのお知り合いの方には失礼かもしれませんが、――霊園には幽霊の目撃情報が多数あると聞きまして、取材を――」

 

もちろん、嘘でした。

今思えば、バレバレな嘘だったかもしれません。

それでも、あきつ丸さんは傷心していたのか、無理して作った笑顔で「そうでありましたか」と返すだけでした。

 

「もしかしたら、今日、そのお知り合いに会えるかもしれません。何か伝えておくことはありますか?」

 

青葉の冗談に、あきつ丸さんは初めて、心からの笑顔を見せてくれました。

それがきっかけで、何度か会うことになりました。

 

そんなある日の事です。

いつもは青葉からあきつ丸さんへ連絡を取っていたのですが、初めてあきつ丸さんの方から、会いたいのだと連絡がありました。

待ち合わせ場所のカフェに着くと、指定された時間の一時間前だと言うのに、あきつ丸さんはもう座っていました。

 

「お待たせしました。待ち合わせ時間、14時であってましたよね?」

 

「えぇ。いつも青葉殿が先に来られていましたので、今日は早く来てみたのであります。それにしても、一時間前に来るとは思いませんでしたが……」

 

「逆によく一時間以上前に待とうと思いましたね」

 

「それでも、青葉殿はこの時間に来られたではありませんか」

 

「まあ、そうなんですが……」

 

いつもと違い――いつもは、少し暗い感じなのです、あきつ丸さん。

その日に限っては……というよりも、その日を境に、明るくなったのです。

もがみんと遊ぶようになったと聞いていましたから、そのせいかもしれません。

まあ、そんなことはどうでもいいのです。

本題はここからです。

 

「青葉殿に依頼をしたいのであります」

 

「依頼、ですか……」

 

「とある方を調べて欲しいのであります。本人に気が付かれず、こっそりと」

 

そう言って、あきつ丸さんは一枚の写真を見せてくれました。

若い人たちの集合写真で、その中の一人を指していました。

それが司令官、貴方です。

 

「雨野勉という人であります。今は小説家で、最上殿が担当している先生がこの人にあたります」

 

「はぁ……。して、この人とあきつ丸さんはどういった関係で?」

 

そう聞くと、あきつ丸さんはわざとらしく照れたふりを見せました。

 

「お恥ずかしながら、一目惚れなのであります。この前、お見かけいたしまして……。この写真よりはもっと大人になっておられましたが」

 

「へぇ、確かにかっこいい人ですよね」

 

それだけだったら良かったのですが、ここからです。

 

「それに……実は……これはもっと恥ずかしい事なのでありますが……」

 

今度は本当の赤面でした。

 

「自分はこの人を、夢に見ることがあるのです……。自分は人間で、名前は雨野愛美……。雨野勉は、雨野愛美の旦那さんにあたる人なのであります」

 

夢、と聞いて、継承の艦娘を思いました。

しかし――。

 

 

 

そこまで言って、青葉は閉口した。

 

「どうした?」

 

「……いえ、すみません。続けますね」

 

 

 

大淀さんにその事を連絡すると、大層驚かれていました。

そこで青葉は、霞ちゃんの事を聞きました。

なるほど、あきつ丸さんが継承の艦娘である可能性が、そして、愛美さんが継承元である可能性があることが分かりました。

 

それからは、あきつ丸さんの依頼通り、司令官を監視していました。

そして――。

 

 

 

「そして……司令官に一目惚れしました……」

 

それは嘘だ。

だが、青葉もそのことが分かっているのか、申し訳なさそうにしていた。

 

「……以上が、青葉の知っているあきつ丸さんに関する全てです」

 

そう言い終えると、青葉は様子を伺うようにして、俺を見つめた。

 

「そうか……。それは、知らなかったことだ」

 

「お役に……立てましたか?」

 

「あぁ。自分の信念を曲げてまで……いや、或いは曲げていないのかもしれないな……。とにかく、俺の為にありがとう、青葉」

 

そう言ってやると、青葉は再び目を潤ませた。

 

「……一つ質問なのだが」

 

「は、はい! 何でも聞いてください!」

 

「一目惚れだと言ったな。あきつ丸が持っていたという写真を見た時は、何故一目惚れしなかったんだ?」

 

「写真の司令官が若くて、その時はピンと来なかったのです」

 

「そんなに古い写真だったのか」

 

「古い……のかもしれません。多分、大学生……くらいではないかと思います……」

 

「大学生の頃の写真……だとして、何故あきつ丸はそんな写真を持っていたのだろうか……」

 

「それは……同人誌に挟まっていたとか……」

 

「同人誌?」

 

「えぇ、司令官の同人誌です。大学時代に書かれた。確か、陸軍の処分品の中にあったとかなんとか……」

 

陸軍……。

確かに、あきつ丸は俺の同人誌を見つけたと言っていたが、写真のことまでは言っていなかった。

あくまでも、俺に近づくきっかけとして利用しただけだ……と、たまたま発見しただけだと言っていたが……。

 

「司令官の知り合いに、陸軍関係者がいるのではありませんか?」

 

「え?」

 

「司令官の同人誌を持っていて、おそらくその写真に写った人物です……。心当たりはありませんか?」

 

「いや……。尤も、卒業後は交流が無かったものだから……」

 

「あ……」

 

青葉は何か気が付いたかのように、零した。

 

「そう言えば、同人誌の最後の方に……名前が書いてあって……」

 

「何て名前だ?」

 

「それが……『雨野勉』と……。草書体……というより、あれはサインのような……」

 

「サイン……俺の……?」

 

それを聞いた時、記憶の奥底にあった一つの思い出が、目を覚ました。

 

 

 

 

 

 

「サイン?」

 

「はい。いただけませんか……?」

 

「俺のサインか? して、何故?」

 

「今の内貰っておかないと……勉さんには会えませんから……」

 

「どういうことだ?」

 

「……案外鈍いですね。人気小説家になってしまうから、今の内にサインをもらっておこう……って、言っているんです……」

 

そう言うと、自分でも臭い事を言ったのだと分かって恥ずかしくなったのか、『佐伯』は顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

「フッ……がめついな」

 

「私は……勉さんのファン第一号です……。それくらいの事は……してもらって当然かと思います……」

 

普段のオドオドした態度からは想像できない、らしくない我が儘だと思った。

 

「分かったよ。俺ので良ければ」

 

「ほ、本当ですか……?」

 

「嘘を言ってどうする」

 

「あ、ありがとうございます! じゃあ……ここに……!」

 

同人誌の端に、いつか書いてやるのだと練習したサインを書いてやる。

 

「ほら」

 

「わぁ……ありがとうございます……! やけに手慣れてましたけど……練習しました?」

 

「……どうかな」

 

「ふふっ……」

 

「笑うな……」

 

普段は見せない彼女の微笑みは、珍しいものであったのだろうが、今ではあまり思い出せない。

ただ、最後に言われたこの言葉だけは、引き出しの中に大切に――それこそ、思い出せないほど深い場所に、仕舞ってあったらしい。

何気ない、一言だ。

 

「大切にしますね」

 

 

 

 

 

 

我に返る。

青葉が心配そうに、こちらを覗き込んでいた。

 

「し、司令官……?」

 

「佐伯……『佐伯ゆうみ』だ……」

 

「え?」

 

「その同人誌の持ち主だ。どうして今まで忘れていたのだろうか。そうだ。佐伯ゆうみだ……!」

 

「佐伯……ゆうみ……?」

 

「確か、事故にあったとかで……大学を辞めたんだ……。どうしてそいつの同人誌が陸軍に……」

 

「陸軍に入られたとかですかね……?」

 

「そんな奴ではない。いつもオドオドしていて、体もあまり強くなかったんだ」

 

ここに来て佐伯か……。

どうして今まで忘れていたのだろうか。

俺のファン第一号は、まぎれもない佐伯だったはずなのに。

 

「一応、その佐伯さんについて調べてみましょうか? あきつ丸さんに関する何かが分かるかもしれません。それこそ、継承の事とか……」

 

「そうだな……。そうしてもらえるか? 俺も大学の奴らに連絡を取ってみる」

 

「分かりました! 青葉、この命に代えてもその依頼を完遂して見せます!」

 

「いや、その命は大切にして欲しいものだが」

 

「そんな、青葉の命を大事に思ってくれるなんて……」

 

「そりゃそうだろ。せっかく友人になったのだしな」

 

「司令官……」

 

「とりあえず、色々分かってよかったよ。分かり過ぎて、頭ん中ぐるぐるしているくらいだ。今日のところはこれくらいにしておいて、どうだ? 飯でも行かないか?」

 

「あ、はい!」

 

社に一礼し、俺たちは神社を後にした。

 

 

 

飯屋へ向かう途中、ふと、気になったことを青葉に問いかけた。

 

「そう言えば、俺の為になるなら、裏切りでもなんでもしましょうって言っていたが……」

 

「はい、その言葉に嘘偽りはないです! 司令官に隠し事はしません。なんなら、青葉のスリーサイズでもお教えしましょうか?」

 

「いや、それは別に……」

 

「えー!? 青葉、割と自信あるんですけどねぇ……」

 

冗談を言う青葉。

悪いと思いつつ、水を差した。

 

「だったら、海軍が俺に隠している『何か』の事も、言えるか?」

 

少しでも動揺を見せるかと思ったが、青葉は何食わぬ顔で、こうはっきりと答えた。

 

「言えません」

 

「……それはなぜだ?」

 

「言ったはずです。『貴方の為になることであれば』と」

 

「それは俺の為にならない事なのか?」

 

「はい」

 

青葉の真っすぐな目が、俺を見つめていた。

 

「青葉、司令官に嫌われてもいいです」

 

それは、決意を意味していた。

俺の為になるのなら、嫌われてでも、その事を秘密のままにしておきましょう。

そう言いたかったのだろう。

そう言いたかったのだろうが……。

 

「うぅぅ……」

 

精一杯だったのだろう。

青葉はまた泣き出してしまった。

本当、俺はよく艦娘を泣かせてしまうな。

 

「分かった分かった。悪かったよ。意地悪したな」

 

「本当は嫌われたくないけど……貴方の事を……青葉は……青葉わぁ……うぅぅ……」

 

どんな秘密なのかは分からないが、今は青葉の優しさに守られておこう。

そう思った。

 

「ごめんな」

 

「ぐすっ……撫でてくれたら元気出ます……」

 

「本当かよ……」

 

試しに撫でてやると、まるで嘘のようにけろっとして、青葉はいつもの調子に戻った。

……嘘泣きだったんじゃあ、ねぇだろうな。

 

 

 

飯を食った後、いち早く情報を掴むのだと、青葉は店を出るなり飛び出して行ってしまった。

 

「フッ……忙しない奴だな」

 

しかし、思わぬ収穫を得たな。

まさか、佐伯が関わっている可能性があるとは……。

 

「『収穫』……か」

 

あきつ丸が愛美であることは分かってはいるのだが、やはりより確かなものにしたいと、心の奥底では思っているのだろうな。

まあ、分かったところで、どうするわけでも無いのだが……。

愛美は会ってくれないし……。

結局のところ、俺はそれを知って、どうしたいのだろうな……。

 

 

 

帰ると、割烹着姿の鳳翔が出迎えてくれた。

 

「鳳翔?」

 

「あら先生、お邪魔しております。あ、お帰りなさいませ、と言ったほうがよろしかったでしょうか?」

 

「どちらでも構わない。しかし、どうした? 今日来るなんてのは、一言も聞いていないが」

 

「はい、実は先生の為に来たのです」

 

「俺の為?」

 

「いえ、最上先生ですよ」

 

「最上先生だぁ!?」

 

 

 

居間に向かうと、そこには鈴谷がルポライターみたいな恰好をして座っていた。

 

「あ、先生。おかえりー」

 

「おう。なんだその恰好は……」

 

「あ、これ? これね、鈴谷、原稿を取りに来た担当者なんだー」

 

「はぁ?」

 

「私が、最上先生の奥様役なのです」

 

何を言っているのか分からないでいると、台所の方から霞が出て来た。

 

「霞、こりゃなんだ?」

 

「なんか、最上が……」

 

そこまで言うと、霞は大きくため息をついた。

 

「最上が……締め切りに追われる先生ごっこをしたいって言って……」

 

「なんだそりゃ……」

 

「私に聞かないでよ……」

 

そういう霞は、昭和の子供のような格好であった。

 

「私は鳳翔さんと最上の子供なんだって……」

 

何もかも諦めた顔で、霞は言った。

抵抗はしたのだろうが、無駄だったのだろうなと推測できる。

 

「で、この有様か……。鈴谷はともかく、鳳翔、どうしてお前までノリノリなんだ……」

 

「鈴谷はともかくってどういう事!?」

 

「奥様役が欲しいと言われたので……」

 

「だからと言って付き合うことなかったんだぜ」

 

「そうかもしれませんが、私自身、先生のお宅にお邪魔してみたかったのもありまして……。割烹着姿で殿方のお家にいるって……なんだか……」

 

そう言うと、鳳翔は恥ずかしそうに、頬に手をあてた。

 

「そ、そうか……」

 

「あ、そろそろ!」

 

鈴谷は立ち上がると、俺の部屋へと向かった。

扉には『入室禁止』の張り紙。

 

「先生ー! まーだーでーすーかー?」

 

鈴谷の問いかけに、中から最上が叫ぶ。

 

「もうちょっと待ってくださーい! あと少ーしなんです!」

 

「あと少しあと少しって、何分待たせる気ですかー!?」

 

「あと数行!」

 

わちゃわちゃやっていると、鳳翔と霞がやって来た。

 

「まあまあ、もうちょっとだけ待ってあげてくださいな。そうだ、カステラがありますの。是非食べて行ってくださいまし」

 

「奥さん、そうは言いますがね、時間がですねー?」

 

「まあまあ」

 

次は霞の台詞なのか、鳳翔と鈴谷が霞を見た。

 

「ほら、霞ちゃん。台詞台詞」

 

小さなため息の後、霞は棒読みも棒読み、いやいやそうに台詞を口にし出した。

 

「えーん、えーん、おっかちゃんをいじめんでー。えーん、えーん」

 

「べ、別にイジメてるわけじゃねーでやんすよ?」

 

鈴谷のキャラ設定が全く固まってないのが気になる。

 

「うるさいぞ! 集中できないじゃないか!」

 

扉が開き、付け髭の立派な最上が、俺の着物を着て出て来た。

 

「ごめんなさい貴方……」

 

「全く……」

 

「先生、原稿は!?」

 

「えーん、えーん」

 

ここからどう納めようとしたのかは分からないが、とりあえず俺のげんこつが最上の頭にヒットし、クランクアップとなった。

 

 

 

「これも必要な経験だと思ったんだ」

 

氷水の入った袋を頭にあてられながら、最上はそう言い訳した。

 

「そんな経験は必要ない。全く……。弟子だからと言って、家の出入りを自由にしたのが間違いだった……」

 

弟子になったのだから、師匠の世話もするのだと息巻くものだから、合鍵を渡してやったのだった。

 

「悪かったな、鳳翔、霞」

 

「いえ、楽しかったですし」

 

「別にいつもの事だし……」

 

「ねぇ、鈴谷は? 鈴谷には無いの?」

 

「お前だろ。最上を焚きつけたのは」

 

「違うし!」

 

「どうだか。服屋でその服を見つけて、この演劇を思いついたかなんかだろ」

 

「へぇ~、流石鈴谷の恋人。正解! はい、拍手~!」

 

「……お前も殴られたいのか?」

 

そう言った後、俺は思わず笑ってしまった。

緊張ばかりの日々であったからこその笑いであった。

だがな――。

 

「最上、プロットとそれに沿った短編を書いて来いと言っただろう。あれはどうしたんだ?」

 

「プロットは出来たんだ。けど、何だか物語が完成したって感じで、イマイチ筆がのらないんだよね」

 

「書かなきゃ意味ないんだぜ。お前のそれは、どんなによくできていたとしても、ただの妄想に過ぎん。こんな茶番やってる暇があるくらいなら、さっさと書いてこい」

 

真剣な口調でそう言ってやると、最上はしゅんとしてしまった。

そんな空気を悪く思ったのか、鈴谷が茶々を入れた。

 

「やーい、怒られてやんの~」

 

それに最上は、苦笑いで返した。

いつもならそんな返しはしないのをここにいる全員が知っていた。

だからこそ、鈴谷はそれ以上の事を言わなかった。

一気に空気が重くなる。

 

「遊びや妄想をしたいのなら、別に弟子入りなんてしなくていい。小説家なんて目指さない方がいい」

 

「……ごめんなさい」

 

「何故謝る?」

 

最上は閉口してしまった。

意地悪な事を言っていることは百も承知だ。

 

「書く気が無いなら書かなくていい。無理に目指す道でもない」

 

「いえ……書きます……」

 

「いいよ。書かなくて」

 

「書きます……!」

 

言い合いが続く。

鈴谷と霞は、何を言ったらいいのか分からないと言うようにして、俺たちの様子を遠目に見ていた。

 

「真剣にやります……! だから……!」

 

最上が頭を下げたところで、鳳翔がそっと、俺の体に手を添えた。

それくらいに……とでも言いたかったのだろう。

 

「……勝手にしろ」

 

俺はソファーに座り、テレビの電源を入れた。

画面の向こうで、艦娘の吹雪が、美味そうに焼き蛤を頬張っていた。

一方のお茶の間は、重苦しい空気に包まれたままだった。

静寂を切ったのは、最上であった。

 

「……皆、今日はごめんね。ボク……書かなきゃいけないから……戻るよ……」

 

「あ……うん……。鈴谷こそ……ごめんね……」

 

「最上さん……」

 

俺はテレビから視線を外さなかった。

 

「じゃあ……お邪魔しました……」

 

空気に耐えられなかったのか、全員が最上を玄関まで見送った。

小さい声であまりよく聞こえなかったが、鳳翔が励ますような言葉をかけてやったようであった。

戸が開き、そして閉まった。

皆が恐る恐る居間に戻って来てやっと、俺は大きくため息をついた。

 

「クソ……」

 

その様子に、霞と鳳翔は気持ちを察してくれたのか、慰めるように寄り添ってくれた。

 

「先生、お疲れ様です。心中お察しいたします」

 

「あぁ……つらいもんだな……」

 

「……そう言うもんでしょ。師弟関係なんて……」

 

鈴谷だけは状況が呑み込めないのか、オロオロとその様子を遠目に見ていた。

 

「鈴谷、驚かせて悪かったな。別に喧嘩しただとか、俺の機嫌が悪いだとか、そういう訳じゃないんだ」

 

「ど、どういうこと……?」

 

「最上さんに、あえて厳しい言葉をかけたのですよね? 厳しい道だって、教えるために」

 

「え……?」

 

「……あいつだって、厳しい道なのは分かっていると思う。だが、俺と師弟関係になったとはいえ、俺とあいつの仲だ。今日みたいに、真剣ではない瞬間というか、楽観的に物事を考えて、本来やらなきゃいけない事もやらなくなってしまうのではないかと思ってな」

 

「現にやってないし……」

 

「まあ、そうなのだが……。とにかく、厳しい事を言ってやらない事には、あいつの意識も変わらないと言うか、それが本来の師弟関係なのだろうと思ったんだ。小説に関して教えられることも、売れない作家にはないだろうからな……」

 

それに、先ほど最上に言ったことは、本心であった。

小説家なんてものは、目指すべきものではない。

特に、俺を目標になどと――。

 

「うぅぅ……」

 

呻き声。

それは、鈴谷のものであった。

 

「ど、どうした?」

 

「こ、怖かったよぉ……」

 

そう言うと、鈴谷はぽろぽろと涙を零した。

鳳翔が慌てて慰めに行く。

 

「あらあら……。そうですよね……怖かったですよね……」

 

「おいおい……。泣くほどだったか……?」

 

「だってぇ……あんなに怒った先生……見たことなくてぇ……」

 

そうだっただろうか。

いつも鈴谷に振り回されて――いや、無いかもしれないな。

振り回されっぱなしで終わるか。

 

「悪かったよ、鈴谷」

 

「先生~……」

 

抱き着く鈴谷。

よく見ると、涙はすでに出ていなかった。

 

「よしよししてぇ~」

 

「……分かったよ」

 

鈴谷の頭を撫でてやっていると、ふと、霞の視線に気が付いた。

なんとも言えない表情で見つめる霞。

何を考えているのかは、すぐに分かった。

 

「驚かせて悪かったな」

 

空いた片方の手で、霞の頭を撫でてやる。

素直に頭を撫でられるところを見ると、分かってはいたのだろうが、霞も少し怖いと思っていたらしかった。

 

「先生」

 

鳳翔が、頭を突き出す。

 

「なんだ?」

 

「私にはないのですか?」

 

それは、鳳翔なりの場の納め方であった。

 

「フッ……分かったよ。けど、悪かった、というよりも、ありがとう、が正しいかもな。ありがとう、鳳翔」

 

撫でてやると、鳳翔は「思いのほか恥ずかしいですね」と頬を赤く染めた。

その様子に、鈴谷もいつもの調子を取り戻したようであった。

 

 

 

店の準備があるのだと、鳳翔は夕方前に帰っていった。

 

「店、休みじゃなかったのに来たのか……」

 

「どうしても先生の家に来てみたかったんだってー」

 

「そこまでか……?」

 

「そりゃそうでしょ。鳳翔さん、あんたの事好きだったみたいだし」

 

「「え!?」」

 

驚く俺と鈴谷に、逆に霞が驚いたようであった。

 

「な、なによ? 知らなかったの?」

 

「なにそれ!? 聞いたことないし!」

 

「あ、あぁ……。その……好き……ってのは、異性として……なのか……?」

 

「そうだって聞いてるわ。料理を教えてもらった時、実は……って。あんたの胃袋を掴むんだって、息巻いてたわ」

 

そうだったのか……。

あの鳳翔が……。

俺が思い耽ていると、鈴谷がムッとした表情で俺の頬をつねった。

 

「痛っ! なんだよ?」

 

「先生、鳳翔さんがそういう気持ちを持ってくれたことに対して、何か言いたげじゃん……」

 

「何かって?」

 

「……そうだったのなら、鈴谷じゃなくて、鳳翔さんの方がよかった……とか……」

 

「何を馬鹿な……。ただ、そうだったのか……って思ってるだけだ。そう言う節もあったかなって……」

 

「どーだか……」

 

何を怒っているんだ……。

霞に助けを求めると、施しようがないと言うようにして、手をひらひらさせて見せた。

 

「……確かに、鳳翔がそう言う気持ちを持ってくれたことは嬉しい。けど、お前への気持ちは変わらん」

 

「……心の底からそう言える?」

 

「あぁ、言える」

 

「じゃあさ、鳳翔さんが、鈴谷が居ても構わないって言ったら? 裸で迫ってきたら?」

 

「なんだその例え……。そんなことする奴じゃないだろ」

 

「例えばの話! っていうか、やけに鳳翔さんの肩持つじゃん……」

 

「やけにって言うほどでもないだろ……。何をそんなに怒っているんだ……。そんなに俺が信用無いのか?」

 

「……だって先生、鈴谷が押し倒した時も、反応していたし……。どうせ、誰にだって反応するんっしょ……?」

 

そこまで言って、鈴谷はハッとした。

だが、時すでに遅し。

霞はニヤニヤしながら「へぇ、そこまで行ったんだぁ」と言った。

 

「……っ! 鈴谷帰る!」

 

「あ、おい鈴谷! 霞、留守番頼む!」

 

「えぇ、そのまま朝までコースでもいいわよ~」

 

「馬鹿言うな!」

 

鈴谷のバッグを持って、家を飛び出した。

 

 

 

「おい待てよ!」

 

公園に差し掛かり、やっとの事で鈴谷に追いついた。

 

「着いてこないでよ!」

 

「いや、バッグ! バッグ忘れてる!」

 

そう言ってやると、鈴谷は気が付いていなかったようで、顔を真っ赤にしてバッグを奪った。

 

「鈴谷……」

 

力の入った鈴谷の手が、徐々に弱まって行き、だらんと垂れた。

どうやら、少しばかり頭が冷えたようだ。

 

「……ごめん。つい……カッとなっちゃった……」

 

「……俺はお前の恋人だぜ」

 

「分かってる……。分かってるけど……不安になって……」

 

「不安?」

 

「鳳翔さんと先生は……お似合いだって思ってたし……。もし鳳翔さんが先生を好きだったら……勝てないだろうなって……」

 

なるほどな……。

それで当たってしまったという訳か……。

 

「信用無いんだな。俺は」

 

「そんなことない……」

 

「あるだろ。……確かに、お前が言う通り、裸なんかで迫られたら、反応してしまうかもしれん」

 

鈴谷はそれに、複雑そうな表情を見せた。

 

「けど、あの時だって、俺はお前に抵抗しただろ。同じことをするはずだ」

 

「反応はするんだ……」

 

「男だからな」

 

そう言って微笑んで見せると、鈴谷も少しだけ、表情を崩した。

 

「……どうすれば、信用してくれる」

 

「どうすればいいと思う……?」

 

鈴谷の目が、俺を見つめていた。

その表情は赤く、少し汗ばんでいた。

 

「先生……」

 

沈黙に耐えられなかったのか、鈴谷はそっと寄り添い、俺の胸の中で小さく言った。

 

「これから……時間……ある……? 鈴谷の家で……どうすればいいのか……一緒に……考えない……?」

 

その意味を、俺は理解していた。

理解していたからこそ――。

 

「先生……心臓……早くなってる……」

 

「……男だからな」

 

「鈴谷も……同じだよ……。ドキドキし過ぎて……心臓が破裂するんじゃないかって……」

 

「……グロいな。それは」

 

「……比喩! 小説家なんだから……そんくらいわかるっしょ……」

 

そう言うと、鈴谷は顔を上げて、俺を見つめた。

そして、お互い何も言わず、そっと口づけを交わした。

長い長い、口づけであった。

 

「――……はぁ、先生……」

 

汗で乱れた髪をそっと戻してやると、鈴谷は目にうっすらと涙を溜めた。

 

「どうしよう先生……。鈴谷……ドキドキとまらないよ……」

 

鈴谷は胸に手をあて、何かをこらえるようにして、小さくなった。

その瞬間だった。

つまり、鈴谷が小さくなった瞬間であった。

 

「――っ!」

 

俺の心臓は、止まりそうになった。

小さくなった鈴谷の後ろ――公園の入り口に、愛美が――あきつ丸が立っていたのだ。

それも、ただ立っているわけではない。

今まで見たこともないほどに、力強く――憎しみを持った目で、こちらを見つめていたのである。

 

「……っ」

 

思わず息を飲む。

怒り、憎しみ――それら全てを含んだあきつ丸の表情は、今まで見たどんな表情よりも、恐ろしく見えたのだ。

 

「先生……」

 

鈴谷が再び、俺を抱きしめる。

 

「鈴谷……初めてだから……。その……優しく……してください……」

 

「あ、あぁ……」

 

次に俺が顔をあげた時、そこに、あきつ丸の姿はなかった。

 

 

 

結局、霞の言う通り、家に帰ったのは翌朝になってしまった。

 

「ただいま」

 

「ふわぁ……お帰り……」

 

霞は何やら居間の方から、眠たそうに出て来た。

 

「スマン、お前の言う通りになってしまった」

 

「別にいいのよ……。私も楽しんだし……」

 

「え?」

 

ふと、居間を見てみると、そこにはお菓子やらジュースやら俺の小説やらが散乱していた。

 

「お前、まさか徹夜したのか?」

 

「一人だと思ったら、なんだかテンション上がっちゃって……。気が付いたら朝になっちゃった……」

 

そう言うと、霞は大きく欠伸をした。

 

「という訳だから、私は少し寝るわ……。お昼には起きるつもりだから、安心しなさい。じゃあ……ふわぁ……」

 

自室に戻る霞を横目に、俺は居間の片づけを始めた。

なんやかんや言って、あいつもこういうところは子供っぽいよな。

深夜に一人でテンションあがっちゃう……か。

まるで愛美だな。

あいつも前に、一人にしてやった時――。

 

「…………」

 

そういや、鈴谷に夢中になって忘れていたが、昨日のあきつ丸の表情……ありゃ一体……。

そんな事を考えながら掃除をしていると、携帯が鳴った。

青葉からであった。

 

「もしもし?」

 

『あ、司令官! おはようございます!』

 

「おはよう。どうした? こんな朝早くから……」

 

『はい。実は、佐伯ゆうみさんに関して、いくつか分かったことがありまして……。これから会う事ってできますか?』

 

「もう分かったのか。流石だな。会うのは構わない。どこで待ち合わせようか」

 

『――霊園です』

 

「――霊園? ――霊園って……あきつ丸が通っているとか言っていた……」

 

『はい。その――霊園です』

 

何故そんなところを指定したのか。

その理由は、少し考えればわかることであったが、俺の頭が回り切る前に、青葉の口から伝えられることになった。

 

『佐伯ゆうみさんのお墓が、――霊園で見つかりました』

 

――続く

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