敗れ去った夢の先で   作:一辻梨

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お待たせいたしました。
誰も待っていないかもしれませんが、更新再開です。
平成最後の更新です。亀ですが書いていきます


木ノ葉の根本

 

 

 

 

 

 秋めいて所々に枯葉のついた木もあるが照葉樹が多い木ノ葉の近隣。

 

その合間を縫うように走り抜ける影があった。

 

森の中で木の枝を足場にしながら疾駆するのは黒髪の年若い少年と青年だった。

 

その内の一人、肩に短刀を差し、木の葉マークが刻まれた額当てを巻いたその青年は汗一つ掻くことなく森を疾駆していた。その隣の少年も額当てこそしていないが着ている黒の服は同じデザインで顔のパーツこそ違うがどちらも涼やかな顔立ちをしていた。

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

二人は目を変え、光が差し混むとはいえ森の中でその眼光は赤く紅く瞬き、視界は緩やかに捉えだす。

 

写輪眼、うちは一族のみ十全に扱える血継限界。

その能力を使い、動き回る敵を見切った。

 

 

雲隠れの忍が部隊が20人以上。

 

シスイとサスケが里を出て3時間ほどした場所にこれ程の数がいることから、待ち伏せされていたと考えるのが妥当だ。隠れ里において、仕事以外での里からの外出は申請が必要だ。抜忍と処され無いためには必要な手続きで事務方と火影のみに目を通されるものだ。

それが漏れたかと自ずと行き当たる。

 

諸国に“瞬身のシスイ”と轟かせる上忍が相手とあってか精鋭として抜擢された者たちなのだろう。

彼らの実力は並の忍の者たちよりもレベルは高いと二人は分かっていた。

それがざっと見渡しても20人以上だ。

 

 

彼らがこんな人数を率いて2人を追っているのか。

思い当たるとすれば、恨みか血継限界目当てか。

 

 

もしくは、里の誰かに売られたか。

 

 

サスケはシスイと共謀して里内部の派閥などを調べた。うちはを良く思っていないのは主に相談役でしかも今や反発が多いため、里の忍だとしてもその数を減らそうと言わんばかりに捨て駒扱いの任務を回される確率が高いのだ。ある程度の犠牲は里とて視野に入れなければいけないがそれをうちはに擦りつけるとは。

 

 

生還するものも少なからずいるからこそ、まだマシだろう。

 

 

まだ子供で下忍未満のアカデミー生とされているため、里外に出るのには中忍以上か親が必要な立場でいくら優秀なアカデミー生だとはいえ、戦力というよりもお荷物として考えられたのだろうか。

 

 

 

 

里内部の裏切りは一考するにしてもまずは目の前の敵を倒さなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人は、餌だった。

 

 

 

ある雲隠れの密偵がいた。

他里よりも実力主義である雲隠れの里は多くの血継限界や秘伝忍術を持つ木ノ葉から一つでも多く盗み出して里の強化に当てたかった。自らの犠牲をしてでも里のためにも、弱くて死んだ仲間のためにも、力が必要だった。

 

数年前に日向宗家の娘を攫うのに失敗して忍頭は死に、代わりに族長の遺体を狙ったがあえなく代わりにその双子を影武者とされ、白眼の秘密は手に入らなかった。

 

木ノ葉の名家の出など滅多に顔など出さず秘伝忍術や血継限界については中々手に入らない情報で痺れが切らしそうだったが、思いがけず得たうちは族長の次男坊と上忍とはいえ歳若い幻術の使い手としても有名な男と二人で里の外へ出かけるという情報。しかもアカデミー生という甘ちゃんな下忍にも劣るガキとうちは一族とはいえ、速さがウリな幻術タイプ。子供づれでは護衛対象アリという狩りやすい条件が揃う。 しかもうまくいけばあのうちはの写輪眼が手に入る。

 

 

年若い青少年と幼子。うちはといえどほぼ一対多という後ろから狙える好条件。

 

 

こんな機会など黙って見過ごすわけにもいかない。

里から少し離れ、結界などない増援が望めない程遠くまで来た。

 

 

 

 

 

「追いついたぞ!」

 

「あそこだ!」

 

 

 

まだ幼い面影の少年と細身ながら高身長の青年が黒基調の服をまといながら木々の枝を駆け抜ける姿が見えた。

周辺諸国にも名の知れた一族として持てはやされ、里からもその実力を認めてもらっていたにも関わらず、今ではその実力者揃いで優秀さ故に孤高となり、里に反感を持つ邪魔な一族として蔑まされている。

 

 

 

 

里にとって不穏分子になるくらいなら、情報を売って敵と共倒れするか敵を知るための囮という餌になってしまえ。

悪く言えばそういう考えだ。

 

 

 

そのようなことを時の火影が知れば里想い故に反対してくれたが、あずかり知らぬこの場では意味をなさない。

少年と青年がその不穏因子である人物であったのであれば、ともあれ正しい判断であった。

本来、囮というものは戦力として使えない弱者からいかせるのが定石。

気配を消すのが上手い実力者と組ませて、囮となった者も含めて生還するという選択肢もあるが、今回のような多数対二の状況であるとそれはとてつもないリスクが伴う。囮になどできる状況ではない。

 

 

 

少年らは幼くも、年若くも実力もあるあの一対一では負け無しの戦闘などに長けた写輪眼使いだ。

 

 

シスイが囮となり、サスケを逃すか。

サスケを置いてシスイが逃げるか。

 

 

もしくはシスイが守りながら戦うのか。その実力差がある状況だとその3通りの読みをしていた。緊迫した状況では特に経験のないサスケでは単調に動くだろうと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――まあ、それは誤っていることなのではあるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「死ね」

 

 

 

正面と死角から二人の刀が襲い掛かってくる。

写輪眼と出くわしたら二人ならば背中を取ることがセオリーだ。

 

いくら年若いとしても舐めてはいけないのが忍の世。

本来ならばこの時点で勝負は決まっている。

 

 

 

大人になりきれていない成長期の終わりに差し掛かる男とまだ年端のいかない子供では力も力量も、そして腕や足のリーチの長さも違う。

状況は明らかに遥かに理不尽というべきだ。

 

 

 

だが、その2人は違った。サスケはギョロギョロと言わんばかりに首を動かさずに眼を動かして狙ってきた正面の敵にへと潜り込み、突いてきた刀をスレスレで躱してその腕を掴み、チャクラで強化したまま首に回し蹴りを食らわせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴキリ、という子気味悪い骨の折れる音が響く。

 

 

 

 

 

 

そしてその突っ込んできた勢いを利用して正面から背後に引っ張り回して自分も半回転回って背後を向くと背後から狙ってきていた敵に目掛けて両足で蹴り飛ばす。

 

 

 

「……っ!?」

 

 

 

まさかの吹っ飛んでくるとは思っていなかったが何とか受け止めた忍は勢いによって後ろへ下がりながら地面にへと着地するはずだった。

蹴り飛ばしてすぐさま枝という足場に着地すると敵を目掛けて飛び跳ね、寸前にへと迫る。

 

 

 

まだ実践をまともに経験していない筈の下忍未満の子供がそのような一流地味た動きをする事に動揺してしまう男。

その隙を、サスケは決して見逃さない。

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

迷わず首を一閃。

 

 

 

先ほど首を折った男の刀を奪い取り、はねたのだ。

血飛沫が上がり、身体から力が抜けて倒れ込む前に敵を足がかりとして木の枝へと跳び移る。

 

 

シスイはというとサスケの実力を計り知れていなかったがために正面の敵がサスケを狙ってきたのに対応できるようにしていたが、サスケが倒して自分を狙ってきた敵を倒すや否や自分要らずで敵に対応できると判断して反応しきれていない手短な敵の懐に入り込むや忍者刀で喉を引き裂き、火遁を浴びせた。

 

 

 

 

悲鳴など上がる前に絶命し、首から血を撒き散らしながら身体は焼け焦げ木の下へ落下してゆく。

 

それを視界の端に捉えながらサスケはその瞳力で敵を見渡し、冷酷に目の中に斬るべき敵を映した。

 

 

 

 

「(この身体においての初の実戦だが、誤差はないな。ナルトと日頃から手合わせしておいて正解だったか。リーチや攻撃の軽さはあるが問題にはならんな)

さあ、次は誰だ?この程度で挑むとは、戦い方というのを知らんのか…」

 

 

緩いと言わんばかりに吐き捨てるのだが、それも当然だろう。まず経験が違う。幼少の頃から戦場に身を置き、命を奪いあってきたマダラ。

忍術も、体術も、あの時代では強いものしか生き残れなかった。そんな人外魔境の戦国時代に生きた伝説、数ある一族でも名高いうちはの長。

そんな人外中の人外、山を崩し谷を作る忍んでるのか忍んでいないとしかいいようのない忍。

つまらなさそうにため息をつくと仕方がないと呟き、不敵に笑った。

 

 

 

 

「手加減してやろうか?本当の闘いを知らん砂利ども」

 

 

 

「…!?

 

サスケ、何を言ってるんだ。本当のことでも言っていいことと悪いことがあるだろう?」

 

 

 

まだ本気ですらないが、それは煽ってるようにしか聞こえない言葉を吐いた。

敵を斬り結びながらシスイも更に無自覚に煽る。一応だがシスイはイタチの兄貴分であり、サスケの兄貴分でいるつもりなのだ。弟に言い聞かせるような言葉をかけただけだった。

一方サスケは、ん?とばかりに首を傾げて見せ、分かっていなかった。

 

 

 

「「「「(((なぜ通常運転してるんだコイツら!?))))」」」」

 

 

 

 

雲隠れの忍達は内心で同じツッコミしてみせたが、それも束の間。油断していると思ったのか襲いかかった忍がいたが一息に撫で殺し、殺気を前にして怯え一つなく軽々と往なすのだ。

 

 

 

「な、なんなんだこれは…!」

 

 

たった二人。

多数でかかっているというのにいとも容易く一人一人と減っていく。

 

 

 

 

 

 まさに、一騎当千の怪物。

 

 

 

 

天才という天才と渡り合える男に、かつては忍の神と渡り合った少年に敵うはずもなかった。

 

 

 

 

ただ相手が悪かった。その一言に尽きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迫り来る死神がごとき二人に、死角から手裏剣を飛ばすが、それは瞳力を持たない者からであって、動くそれらを見ればどう動くのかすら容易く捉えれる。

 

彼らにとっての死角であって、写輪眼の使い手にとっては死角はもはやないようなもの。術の痕跡さえ見抜けるのだ。

 

誰かが投げた苦無を取り、投げ返す。が、敵もまたそれを刀で防いだ。

 

防いだ瞬間のその隙を逃さず、すかさず刀で切り掛かる。

チャクラを纏った刀とぶつかり合うと

パキン、と音を立てて奪った刀が折れ砕けた。

 

 

 

「ぐあっ…!」

 

 

 

半分の辺りで折れた刀を相対するチャクラ刀の男の胸に投擲し、絶命させて砕けた破片の一つを掴みチャクラを纏わせて他の敵の額へと狙う。

 

 

寸前のところで気付いたのか、避けようと顔をズラし、敵の左目にへと吸い込むように突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなはずではなかった、もっと楽にこなせる任務であると思っていた。

雷影の側近である、今し方目に傷を負った男は思っていた。ただ一人の上忍を殺して少年の方を連れ去る、そんな任務だったはずだ。

 

 

 

多くの仲間が血を舞わせ、焼けついて地に伏す。

捕らえるだけだと思っていた少年は次々と仲間を尽殺していく。

 

味方が次々と一人の下忍の少年に次々とやられていく光景を見て、戦慄と焦燥を覚えた。

 

「(何なんだ、こいつは?)

 

到底信じられぬ光景だった。

おそらく身内に甘い木ノ葉で、嫌われ者の一族であろう事くらいは彼も承知である。それ故に男の方は売られた。少年も道連れにして、死ねば徳だと思われていたのだろう。

 

だが……まだ、子供だ。

先の戦争ではこのような子供までもが戦場に駆り出されてしまうのはよくあった。

 

故に、使えると踏んだ。

 

甘い木ノ葉の忍の子供。精神、覚悟共に幼い子供ならば、自分の命惜しさ故に教育すれば楽々里の忍となるだろうと。

 

 

子供が相手ならば殺さずとも血継限界の生きたまま眼を頂く事もできるかもしれないと。木ノ葉には、うちはではないのにも関わらず写輪眼の片目を持った男が使いこなしている。ならば我々でも、と。

 

 

 

 

だが、現実はこれだ。

 

 

前回では遣わした者が弱かったからこそ日向の姫君を連れてこれなかった。ならばもっと強い雲隠れの精鋭ならばイケると考えた。

 

 

だが、たった二人の小童に手も足もでない始末。

 

 

 

一体誰だというのだ、こんな化け物を宗家でも甘やかされていると言ったのは。

 

瞬身の術と幻術の使い手だから、体術はそこまで優れていないと言ったのは。

 

こんな者達を簡単に消してしまえると考えた大馬鹿者は。

特にこの少年の力を見計らう事もできず、売り払ったのならこれ以上に笑えるものはない。

最も、自分たちからしてみれば笑える物ではなかった。

既に幾人もの仲間が葬られている。たった二人に、だ。

雷遁で身体を活性化させて敵を速さで翻弄し、有利に持っていこうにも、“あの眼”の前ではそんな物は何の役にも立たない。むしろ自分たちが不利だ。こうしている間にも、

自分たちは次々と倒れていく。

仲間の命が惜しい訳ではなかった。

何故ならどんな手を使っても里を強くするために忍術の入手が自分たちの本分であり、使命であるのだから。

このままでは、無駄死にするだけだ。

 

このまま写輪眼狙いで襲い掛かっても、こちらが消耗するだけ。

 

 

 

 

 

 

 

「熔遁・護謨壁!て、撤退だ!このままでは全滅する!」

 

 

 

 

 

ゴムによる弾力のある壁を作り出し、一時的になら攻撃を通さない。攻撃の威力を吸収する今となっては命綱の壁だ。

 

 

 

隊長であった男は早急に指示を出し離脱し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—————————————

 

 

—————————

 

 

————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、一体、何…が……?」

 

 

 

 

 

撤退と指示があり、男は共に去るはずだった。

 

 

 

 

後頭部に衝撃が走り、意識を失った。自分はどうやら気絶されたらしいが、運良く生き残ったようだ。

 

 

 

 

辺りを見渡しその有様に、男は驚愕する。

 

刀で斬り裂かれ、腹や首がそこら一帯が血みどろで時に焼き焦げ、人が焼けるタンパク質の焼ける生々しい匂いが染みついている。

 

…この惨状を見るに、任務の失敗も明白。

 

 

 

特に仲間は率先して消そうとシスイを狙っていたが意味などなく消された。

 

 

このままいても立ってもいられず、せめて自らの“主人”に報告だけでもしようと思い、立ち上がろうとするも、

 

突如、頭を掴まれ睨まれてしまった。

 

 

 

「ぐっ……!?」

 

 

 

続いて襲い掛かるのは、血の色ごとき赤。

 

 

 

三つ巴の瞳に、慌てて解の印を組もうとしたがそれよりも早く身体が動かない。

 

 

急いでチャクラを流してしまおうにも乱れすぎて練れそうにもない。

 

 

 

幻術にかかったと分かっても身動きは取れず、息すらまともにできなくなる。

 

 

 

「……!」

 

 

 

目の前が、よくわからない。

 

 

ただ見られていることしか分からない。

 

 

 

目をあけているのか、閉じているのか分からなくなった。

 

 

 

そして、それでも体を必死に動かそうとする。

 

 

 

 

「(なんと、しても、……ダンゾウ、様、に……!)」

 

 

 

 

この男は雲隠れの忍などではなかった。

 

 

木の葉の暗部の養成部門に所属している、「根」の男だった。

 

予め受付を根の者とすり替え、木ノ葉に紛れ込んでいた雲隠れの密偵に情報を流し、雲隠れの部隊に根の者たちは紛れて、シスイを殺してサスケを捕らえて子飼いにするという手筈だった。

アカデミーで誰よりも、イタチに並んで優秀な成績を叩き出したその弟のうちはサスケ。

それに目をつけ、あわよくば自分の駒に。シスイには目を奪い、活用させてもらうという心算だったのだ。

 

その手筈が、どうしてこのような惨状になったのだ。

根の仲間は率先してシスイを狙い、事切れている。かろうじて今生きている自分ですら、身動きが取れず自死ができない。

 

 

 

 男はふと、紅い瞳が二対あったことに思い出した。

 

 

 

馬鹿な、あり得る筈がない、と男は頭の中でそう繰り返す。

 

 

写輪眼の開眼は凡そ下忍以降と言われているのだ。その他の例外なく開眼は白眼と比べ幾度となく戦闘をこなしていくうち開眼すると言われ、開眼したてであれば巴は1つから2つで使い慣れていれば3つになると言われる。

 

 

 

 

実際に開眼しているのだから、戦闘経験が少ないはずで、1つや2つならまだ分かった。

だが、以前から開眼して使い慣らしていたとしか説明がつかないほど、忍を殺めたのだ。

 

 

いくら修練を積もうとも幼子で、根とは違い殺し合いなど表ではできる訳がない。

 

 

忍のことはいえ、人殺しに忌避感を持たず何の感慨も持たないなど倫理観が破綻しているのだ。むしろどことなく嬉々として戦い始め、弱いと断じてつまらなさそうに殺すなど……

 

……そんなのは、真っ当な人間であってたまるか。自分は闇で育ったとはいえ、それでも最初はやはり恐怖はあったのだ。

 

 

(だが、それより……も……)

 

 

 

冷酷な死神が如く、紅い写輪眼が離れない。

 

早く、これから逃れて報告しなければ。

 

 

作戦は失敗。拐かした雲隠れは撤退した。漁夫の利として手に入れようとした少年は忍の雛ではなく、それよりも恐ろしい龍のように猛々しい強者で根の一人としての教育など、呪印など跳ね除けるような怪物だった。

 

「(申し訳、ありません……、ダンゾウさま…)」

 

 

頭の中でグルグルと回っていた思考が、ここで止まった。

 

 

写輪眼がニヤリと笑ったような気がしたがもう、それ以上考えることができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

—————————————

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、壊れたか」

 

 

逃げようとした中で何処と無く違和感があった男を捉え、情報を粗方吐かせた。

 

幻術眼は一族内ではそこそこ(九尾や尾獣程度ならできる)なのだが、催眠眼も他族なら問題ないぐらいにはできる。

 

雲隠れの忍は少数ながら逃してしまった。

熔遁の使い手で、防御系の血継限界では分が悪く弾力のある壁の破壊に些か時間がかかり、数人ながら逃してしまった。

 

遊び過ぎたかと若干の反省はあったが現状の力量把握には持ってこいだった。

 

むしろ、形振り構わず戦っていれば塵殺も容易くできたがシスイを巻き込み兼ねず火遁を使えば一帯が塵に、消し炭になっていただろう。

 

情報を吐かせた忍の後始末をするべく苦無で首を裂き、その男を含めてこの場で殺した忍を一箇所にまとめて火遁を使い、証拠隠滅を図る。

死体からでもどこの相手が殺したかなどある程度の情報が入ることがある。所謂、検死なども行うときがあるそうだ。

こんなところで死体があれば余計に調査が行われる可能性がある。

 

 

ダンゾウという男はうちはの隔絶の道へ誘っているようで、特に今回のことを里に報告すればまたしてもうちはのクーデターがより煽動されるだろう。

 

特殊な力を持つものは良くも悪くも特別視される。うちは一族は独走癖があり、それ故に悪い方向に捉えられてしまう要因になる。

 

一族内ですらその独走でその思想に追いつけなくなることすらあるのだ、他族同士など余計に追いつけなくなる。

 

里と一族の瓦解を避けるべくうちはフガクは隔離されるのを受け入れた。

 

その結果、反抗にひた走るという革命を起こそうという馬鹿げたことになった…

 

 

特にこんな木ノ葉上層部とうちはで蟠りがあるのに、ダンゾウが情報を売っていたということを一族の者に知られてしまえばより激化するのは目に見えている。そのことが分かっていたシスイも痕跡を消すことの重要性が分かっていたため、黙って火遁を見つめていた。

 

 

 

「…何故、木ノ葉の仲間同士で争うんだ。オレは、誰も仲間も失いたくなんてない…戦争が終わって、ようやく得た平和を壊したく無いだけなのにな…」

 

 

 

シスイにとっては木ノ葉の者を、里という身内の者を殺すのはやはり忌避感があった。

というよりも殺し合いなど、人の命を奪い合うことを嫌っていた。戦争とは、命を削り互いに奪い合い、最後に残るのは悲しみと憎しみ。

 

大切なものを失った、その証である万華鏡写輪眼。

 

 

だからこそ、次こそは何も取り零さないように…

 

 

「一族を、子を、死なせないよう守るために最初は考えたものが今では里を守るために切り棄てるのでは本末転倒だ。

 

 

全く、オレもアイツも儘ならん」

 

 

 

 

肩を竦めて溜め息をつくのはこの遣る瀬無いからだ。何事も思うようになど夢や幻想にしかない。思うがままに幻術をかける術があろうとも、それは行き止まりの偽りの平和だけ。繋がりなど全て無くした断ち切られたモノ。

 

 

 

今度こそは繋がりは捨てない、

 

 

 

手と手を真なる意味で繋ぐために、

 

 

 

この先へ__________

 

 

 

 

 

 

「さあ、俺も休んでばかりではいられん。

 

 

今しばらく移動するしかない」

 

 

 

「……ああ、行こう。

 

 

 

 

 

 

案内は頼んだぞ」

 

 

 

 

 

薄暗い森を二人は木々を掻き分け行く。

 

 

 

 

 

先が見えずとも、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

止まることは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

できないのだから。

 




長さが毎回安定しませんが、暇潰しにでもなれば幸いです。
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