殺生丸転生in鬼太郎   作:さくい

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妖怪の怖さ

 ある日の夜。其々が自由に過ごしている中で、まなが殺生丸に話し掛けた。

 

「せーつーにーい!」

「なんだ」

「明日ね、社会科見学で古民家に行くんだぁ」

「……そうか」

「うん! それでねそれでね、古い家って結構曰く付きの物があるイメージでしょ? そこで、気を付けなきゃいけない事って何かあるかなぁ 」

 

 軽い口調でされど目は真剣に、かつ上目遣いで問い掛けてきたまなを見て思う。

 可愛いっ……。

 そう内心で悶えながら、表情には全く出さずに殺生丸は言葉を発した。

 

「古い物や神仏を象った物には触れるな」

「わかった! ありがと、せつ兄」

 

 にぱっと笑うまなに悶絶しながらも、やっぱり表には出さない殺生丸だった。

 

 

 ー

 

 翌日、まな達のクラスは社会科見学の一環で一軒の古民家の清掃をしながらも現代の家にはない古民家ならではの趣きに魅入っていた。

 

 家主のお婆さんから聞かされた色々な話もその要因に入っている。

 

 例えば今の時代では普通にある様なサイズの鏡でも昔は貴重で嫁入り道具にもなる程の代物だった事に驚いたし、その鏡自体も古さとその古さ故の怪しげな魅力を放っている様に感じた。

 

 更に庭の隅にひっそりとある石碑の様な物にはとある言い伝えがあった。

 

 百年単位の昔にこの辺りの地で人・妖怪・獣を問わず襲い、喰らい、この地を怨念渦巻く瘴気の地に変えた妖怪がいた。

 その妖怪には知性も理性もなく、あるのは食欲のみ。

 だが、その妖怪の空腹は満たされる事なく周囲のものを喰らい尽くした。

 ある時、旅の僧侶がこの地を訪れて三日三晩の激闘の末に玉に妖怪を封じ込め、もう二度と地上に出ない様に結界を貼りその結界の起点に石を置いたという。

 そして、その石というのが庭にひっそりとある石碑だとか。

 

「そう、なんですか……じゃあ、もし何かの拍子であの石碑が倒れちゃったら……」

「その妖怪は、現代に蘇るじゃろうのう」

「……」

 

 少し前だったら、そんな訳ないと友人と笑い話にしていただろう。

 だが、今のまなにはお婆さんの話がただの言い伝えだとは思えなかった。

 

 だって、実際に妖怪をこの目で見た。襲われた。助けられた。

 そして、現在自分の家に住んでいる。

 

 それに加えて実際に妖怪と接触してきたからか、何処と無く石碑から嫌な気配を感じなくもない。

 

 

(よし、絶対にあの石碑を倒さないぞっ)

 

 

 

 

 

 

 と決意した数分後。

 

「どうしよう、倒しちゃった……」

 

 清掃中に遊んでいた男子2人を追い掛けて夢中になった折に、逃げていた1人の男子生徒が石碑に激突して転んでしまった。

 もう1人の生徒が元の場所に戻しはしたが、倒したという事実が残る。

 

 殺生丸から助言をもらって、尚且つ倒さない様にしようと決めたのに……。

 

「とりあえず、せつ兄に相談しないと……」

 

 殺生丸なら何とかしてくれる。

 そんな他力本願全開な思いを抱きながら、まなは残りの社会科見学を過ごした。

 

 

 

 そしてその帰り道、友人と別れて1人で歩いていると背後からカラカラカラという何かと何かがぶつかり合っている様な音が聞こえてきた。

 

「っ……」

 

 妖怪を封じている石碑を倒した事で、お婆さんが話していた妖怪が目覚めた? 

 そして、その石碑を倒した要因の自分を狙っている……? 

 

 じゃあ、この音は……その妖怪が発している音……? 

 

「っ……」

 

 その考えに至った瞬間にまなは走り出した。

 

 殺生丸や鬼太郎達という人間に友好的な妖怪に多く関わってきたから忘れていた。

 

 妖怪は本来、人間の理解に及ばなくその多くが残酷な存在だという事を。

 

 後ろを振り返る事なく、息が切れて肺が痛くなっても懸命に走る。

 

 カラカラカラカラと変わらず背後から聴こえる音に恐れながらも、ここで足を止めたら殺されるという確信故に懸命に足を動かす。

 

 そして、家が見えてきたところで背後からの音は唐突に途絶えた。

 

 だが、まなはまだ其処にいるかもしれないという恐怖で、勢いのままに家に駆け込んだ。

 

 

 その日、まなは母親である純子から殺生丸が私用で出掛け、数日間留守になるという事を聞いた。

 

 

 

 ー

 

 翌日、殺生丸がいない事に多大な違和感と不安で心がいっぱいになりながら登校した。

 

 朝の出席確認で自分と共に石碑を倒した関係者の男子生徒2人が、倒れて原因不明のまま入院した事が分かった。

 

 

 放課後、担任の先生に2人の容態を聞いて鳥肌が立った。

 

 肌は青く、目を見開いて、呼吸が浅く、何の反応もしない。ともすれば生気のない、人形の様に見える状態らしい。

 

 ギュッと心臓が縮み、背筋に冷たいものが流れる。

 

 次に狙われるのは自分だ。

 

 殺生丸との連絡が出来ない今、直接連絡出来るのは猫娘のねこ姉さんだけ。

 

 帰り道を早歩きで辿りながら猫姉さんに連絡しようとして携帯を持った直後、直ぐ後ろ、耳元にカラカラカラという音が響いた。

 

「ひっ」

 

 喉が引き攣って変な音が鳴り、同時に駆け出す。

 

 カラカラカラ

 

 カラカラカラ

 

 カラカラカラ

 

 走っても走っても張り付いた様に聞こえてくる音に、恐怖で涙が流れながらも懸命に走る。

 

 昨日は家が見えたところで音が止んだ。

 

 だから今日も家が見えるところまで行けば、音が止むはず。

 

 そして角を曲がり家が見えた。

 

 よかった、これで音が──

 

 カラカラカラカラカラカラカラ

 

「な、なんっでっ……!?」

 

 昨日とは違い止まらない音に混乱しながらも、家に駆け込んで鍵を掛ける。

 

「は、はぁっ、はあ……何が、どうなってっ……!」

 

 家に着いても治らない恐怖心と寒気、少しでもあの音から遠ざかろうと震える身体を無理矢理動かして家の中に入ろうとして、玄関に飾ってあった花瓶が独りでに動いて音を立てて割れた。

 

 思わず靴を履いたまま咄嗟に部屋に逃げ込み、猫姉さんに助けを求める為にレインで文字を打ち込んで送信する。

 

 送信出来た、これで猫姉さん達が助けに来てくれる。

 

「うそ、でしょ……」

 

 安堵したまなが視線を上げた先、そこにいたのは……。

 

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