細かく書いたら長くなったので駆け足気味になってます。
それでも普段より長くなるという……前編もう少し書きゃ良かった。
学校中の人達によりお昼ご飯を食べそびれ、更には五時間目の授業が体育で空腹がMAXなまな。
かつて無い速さで制服に着替えてダッシュで教室に戻り、お弁当を掻き込もうとした。
そう、掻き込もうとしたのであってまだ掻き込んではいない。
「……え、なんでお弁当箱動いてるの……?」
何故なら弁当箱がガタガタ動いているから。
殺生丸から受け取った時は動いていなかったのは確実、ということは体育をしている時に誰かが何かを入れた……?
恐る恐る弁当箱の蓋に手を掛けて、一呼吸してから一息に開けた。
「いやぁー!! サカナ!? サカナナンデ!?」
蓋を開けるとともに飛び出てきたのは、魚だった。しかも活きが良すぎて弁当箱から飛び出しやがった。
驚きのあまりカタコトになったまなだったが、その後教室に戻ってきた友人の手により魚は学校にある池に放り投げられる事になる。
結局まなはその日、お弁当を食べることが出来なかった。
「っていう事があったんです」
「ふーん、私だったらその魚頂いてるけどね〜。というか、私に言うより一緒に住んでるあの妖怪に言えば良いんじゃないの? 犬の妖怪らしいし、犯人を簡単にみつけてくれそうだけど」
ところ変わって、まなは現在猫姉さんと自身が慕う猫娘という妖怪とファミレスにいた。ガツガツもぐもぐと500gのステーキセットを食べながら、まなは猫娘に相談を持ちかけている。
「そうなんですけど、あまりせつ兄に心配かけたくないっていうか……」
「……そう」
もっきゅもっきゅ食べながらもほっぺたを少し赤くしながら話すまなを見て、猫娘は恋ねぇと思いながら相槌を打つ。
自身も恋する身である猫娘は、恋敵ではない事に安堵しながらまなの恋が成就する事を心の中で願ってみた。
「他にも、授業中に視線を感じたと思ったら教室の天井に人型の黒いシミがあったり、あと午後から教室の中が変な臭いがしたりして、何だか気持ち悪くて……」
「臭い、ねぇ……。 うん、わかったわ。それじゃあこの後学校に行ってみましょうか」
「ありがとうございます! 猫姉さん!」
カフェオレを飲みながら承諾した猫娘に、まなは笑顔を浮かべてお礼を言った。
その後まながステーキセットを食べ終わってから、妖怪の仕業なら逢魔ヶ時以降の方が遭遇する可能性は高いとの猫娘の判断で18時過ぎに学校に到着した。
血を被ったような夕焼けに照らされた学校内の雰囲気に若干気圧されつつまなは、猫娘に自身が所属する教室へ案内する。
教室がもう目の前という段階で、教室内からビチャビチャという水の音がするのに二人は気が付いた。
「まなは後ろに下がってて」
「う、うん」
小声で指示してまなが後ろに下がったのを確認してから、猫娘は教室の扉に手を掛け、一息に扉を開け放った。
「誰も、いないわね」
蟻一匹見逃さなんばかりに教室の至る所に視線を向けながら、猫娘は教室の中に入る。
「まなの机はどこ?」
「えっと、此処で──え、なんで水浸しになってるの……?」
まなの机はバケツの水をひっくり返したかのように水濡れになっていた。
事実バケツの水なのだろう、水からは仄かにカビの臭いがする。
妖怪の仕業か、それとも人の仕業か。
妖怪なら倒せばそれで解決するが、人の仕業だったらまなはそれだけ嫌われている事になる。
自身の性格が万人受けするわけでは無い事を理解しているまなだが、それでもショックが大きい。
猫娘から気遣うような視線を向けられ微笑もうとしたその時に、掃除用具を入れているロッカーから音が鳴った。
「……」
「……」
一度目を合わせる二人。
こくりと頷き合って、猫娘が音を立てずにロッカーに歩み寄り勢いよく開けた。
「……いない、わね」
諦めて閉めた……と見せかけてもう一回開け、更に同じ行程をもう一回、計3回確かめたところで取り敢えず何もいないと猫娘は判断した。
「何かいるような気配はするんだけど、何もいないわねぇ。また今度──誰!!」
振り返ってまた次の機会にと言おうとしたその瞬間に、教室後方の扉が開き何かが飛び出していった。
「やっぱりいたわね! 待ちなさい!!」
「猫姉さんかっこいい……」
猫娘の凛々しく鋭い声と素早くしなやかな動きを見て、改めて猫娘のかっこよさを実感したまなは、若干恍惚とした声音で呟きながら猫娘の後について行った。
ダダダと大きな足音を立てて逃げる輩を見逃すはずがなく、追い詰めていく二人。
輩が廊下の角を曲がったのを視認すると、何故か男の困惑した大きな声が聞こえた。
それに牽制するように猫娘が声を発して華麗なターンを決めると、其処には顔馴染みの砂かけ婆、子泣き爺、ぬりかべの三妖怪がいた。
「三人とも、何してるの?」
「良い漬物が出来たから知り合いに届けにきたんじゃが誰もいなくてな、ちょうど探してたところだったんじゃ」
猫娘の質問に答えた砂かけ婆の言葉にふぅんと相槌を返して、此方の方に不審な輩が来なかったか確認をする。
それに答えたのはぬりかべで、丁度真横にあった男子トイレに逃げたとの事。
やっと追い詰めた事にニヤリとして猫娘が扉を開く。
警戒しながらぞろぞろとトイレの中に入ると、まなが言葉を漏らした。
「あっ、此処ってようすけ君のトイレ……」
「ようすけ君?」
「うん。簡単に言えばトイレの花子さんの男バージョン、かな」
「へぇ、そんなのいるんだ。そういえば花子何してるんだろ……」
トイレの花子さんの名前が出た事で、脳裏に花子さんを思い描いた猫娘がポツリと呟くのと、トイレの中から花子さんじゃないのかよと呟きが聞こえたのはほぼ同時だった。
訝しげに声が聞こえたトイレを警戒しつつ睨みつけていると、襤褸を着たねずみ男が飛び出て来た。
「またあんたなの? ねずみ男!」
「ち、違う! 俺はなにも……!」
「花子と言ったな貴様! 花子とはどんな関係だ!!」
猫娘とねずみ男の会話に割って入った男の子が一人。学ランを着て、友達の少なそうな顔と雰囲気を持つ彼こそがようすけ君である。
異様な雰囲気にそれぞれ戦闘態勢を整える猫娘達だったが、自分を害すればこの学校に住んでいた霊達がどうなってもいいのかという脅しに仕方なく抵抗を止める。
猫娘はもしかしたらその中にトイレの花子さんがいるかもしれないし、砂かけ婆に至ってはほぼ確定でこのようすけ君に知り合いが害されていると判断した為だ。
そしてようすけ君に拘束されて辿り着いたのは体育館、しかも天井に吊るされた。
其処には既に二宮金次郎や人体模型達等、学校に棲まう霊や妖怪達がいた。
取り敢えず身動きできないフリをしつつ、猫娘がようすけ君に何故こんな事をしたのか質問する。
返ってきたのは、呆れ返る答えだった。
曰く、トイレの花子さんは自分の窮地を救ってくれた女神。
曰く、あの可憐な笑顔は自分にだけ向けられたもの。
曰く、彼女は自分の事が好きで自分も彼女のことが好き。
曰く、牛乳や大根を花子さんが棲むトイレに置いて四六時中見守っている。
曰く、彼女をイヤらしい視線で見るこの学校の霊達が気に食わなくて吊し上げた。
曰く、つまりは自分と花子さんは運命の赤い糸で結ばれた魂の伴侶。
曰く、曰く、曰く……etc。
わかるわかると共感するのはねずみ男だけで、そんなねずみ男はまなに恋をしているらしかった。
経緯は分からないがようすけ君の言葉を是とし、更にはようすけ君を擁護する始末。
だが、ようすけ君がまなにねずみ男は恋人なのかを聞いた事でねずみ男の恋は終わった。
「え、いえ……友達、でもないし……そこまで親しくないし……全然普通のただの知り合いです。ていうか私、好きな人いるし」
情け容赦のないまなの一刀がねずみ男を活動不能に陥らせた。
そんなねずみ男はその場にいる誰からも放置され、事態は動いていく。
猫娘が心の底から溜息を吐いて言った。
「ありえなさすぎ、そんなのただの独りよがりじゃない。花子はあんたの事、何とも思ってないんじゃない? 寧ろ迷惑」
「そんな訳がない! 俺と花子は結ばれてるんだ! ……わかっだぞ、お前は俺と花子との間を引き裂こうとしてるんだな! 許さない!」
「……キモッ、っていうか許さないのはこっちの方だっつーの!」
自身を縛っている人を切り裂いて地面に着地した猫娘は、そのまま続けて地面を蹴り上がりようすけ君に肉薄。
伸ばした爪でようすけ君の顔を切り裂き、顔を覆って仰け反って隙を晒した胴体に向けて連続で拳を放つ。
一、十、五十、九十九!
即興で作った必殺技、猫百烈拳の威力は凄まじくようすけ君はされるがままになっている。
「これで、最後!!」
止めの最後の一撃を放ち、ようすけ君が空に打ち上がり魂だけの状態になった。
そして、横から途轍もない妖力を孕んだ衝撃波が魂状態のようすけ君を襲い魂までもがこの世から消えてなくなった。
衝撃波の出所を見ると其処には、何時ぞやの銀髪の偉丈夫。それと何故かその横には花子さんがいた。
「せつ兄!」
「怪我はないか」
「うん、大丈夫!」
声を掛けながら宝物に触れるようにまなを下ろす殺生丸を見ながら、猫娘は花子さんに話し掛けた。
「なんであんたが、あの妖怪といんの?」
「ようすけ君を殺してもらおうと思って頼み込んだの。昼間あの女の子にお弁当を届けてるのを見て、助けてくれるかなって」
「そう……」
そこは鬼太郎じゃないんだ、と思った猫娘だったが賢明にも言葉にする事はなかった。
だって、それで鬼太郎に惚れられたら困るし。
そうこうしている内に縛られていた妖怪達はそれぞれ助け出される。
まなが砂かけ婆達にお礼を言っているのを聞きながら、猫娘は殺生丸に声を掛けて自己紹介した。
まなという共通の知人がいる事も考えて、友好的な関係になろうと考えた結果だ。
更に言えば、いざとなった時に殺生丸の戦闘能力を当てに出来ればという考えもある。
殺生丸は見た目通りにあまり話す性格ではなかったが、それでも穏やかに話す事が出来た。
まなと一緒に帰る後ろ姿を眺めながら、猫娘は思う。
容姿が整っていて力が強く、孤高で気高いながらもそれに驕らない。
考えるまでもなく競争率が高いだろう彼を射止めたまな凄い、と。
どうでもいい事だが、砂かけ婆は殺生丸の姿を見た瞬間に物陰に隠れてこっそりと殺生丸を見ていた。