おっさんが異世界で無双したりしなかったり   作:一条 治

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20. おっさん、暗躍する③

 

 男Bに案内された先にいたのは、背が低く小太りで眼鏡をかけた陰気そうな30歳前後の男だった。

 

(頬に傷があるって事は、こいつが領主か・・。ていうかこの世界にも眼鏡があるんだな)

 

「領主様、例の男を連れて参りました」

 

「おまえかお?ベヒモスの素材を持っているというのは。」

 

「領主様には大変失礼を致しました。直接謝罪を申し上げるべく罷り越しました」

 

「そんな事はどうでもいいお。それよりベヒモスの素材はボクちんが買い取ってやるお。ベヒモスのような希少な魔物素材、おまえが持っていてもしょうがないお。大金貨5枚でどうかお?田舎者には一生かかってもお目にかかれない大金だお!」

 

(・・つっこみ所が多すぎてなんとも言えんな。大金貨5枚って500万位だろ・・魔石だけで1億円の価値があったんだが)

 

「・・もうしわけありません、領主様。ベヒモスの素材はすでに売却してしまって持っておりません」

 

「な!なんてことをしてくれたんだお!?あれがあればまわりに自慢できると思ったのにお!!」

 

 ・・小っさ!

 クズ領主、顔を真っ赤にして喚き散らしている。

 

「お詫びといってはなんですが、領主様に儲け話がございます」

 

 儲け話と聞いて目の色を変える領主。

 

「・・言ってみるお。たいしたことなかったら承知しないお!」

 

「ベヒモスの素材と引き換えに大量の胡椒を仕入れました。お詫びの意味も込めまして領主様には特別に格安でお譲りしたいと思っております」

 

「・・いくらだお?」

 

「200kgで白金貨20枚」

 

「な・・!?白金貨20枚は大金だお!」

 

「本来は他の街で売却する予定があったのですが、領主様にならお譲りしても構いません。

 もちろん無理にとは申しませんが・・」

 

 領主は足りない脳みそをフル回転させて考えている。かりにも領主なのだ、胡椒の適正価格ぐらい知っているはずだ。ただ、白金貨20枚という大金に踏ん切りがつかないのだろう。

 もう一押しか・・。

 

「・・実は冒険者ギルドで、200g程ですが金貨3枚で売却させて頂きました。領主様がいらないようでしたらそちらで売却しようかと・・」

 

「待つお!・・買うお!!胡椒200kg、白金貨20枚で買ってやるお!!」

 

 フィーーーーーーッシュ!かかった!!

 

「よろしいのですか?」

 

「領主であるボクちんに二言は無いお!金は明日までに用意しておくお!とりあえず契約書をかわすお!!」

 

 他人に儲けを横取りされてはたまらないと思ったのだろう。いそいで契約書を用意するバカ領主。お互いにサインする。

 

「これで契約成立だお!後で文句を言っても受け付けないお!」

 

 得られるであろう利益を皮算用しているのか、にやけたブサイク面で宣言する領主。

 

「・・もちろんでございます」

 

 俺は微笑みながらそう答えた。

 

 

 明日再び訪ねる事を約束し、領主の館を後にした。

 日暮れまでにはまだ時間がある。急いで仕込みを終わらせよう。

 

 街が夕日に包まれる頃、ようやく仕込みを終わらせた俺は宿への帰り道を歩いていた。

 

「てめえは昨日の!」

 

 怒鳴り声に振り向くと、そこには昨日獣人に対する差別発言を吐いたクソ野郎がいた。

 

(ちょうどいい、こいつにも協力してもらおう)

 

「どうかしましたか?」

 

「よくもぬけぬけと・・てめえの所為で商売あがったりだ!どうしてくれる!!」

 

 クソ野郎めちゃめちゃ怒ってる。激おこぷんぷん丸。

 

「それは失礼しました。では、お詫びにこれを格安でお譲りしましょう」

 

 そう言って、男に麻袋を手渡した。

 中を覗いた男は驚いている。

 

「こ、これ胡椒じゃねーか・・」

 

「はい、胡椒が2kg入っています。特別にこれを大金貨2枚でお譲りします」

 

「い、いやそんな大金持ってるわけ・・」

 

「屋台を担保にすれば、貸してくれる相手ぐらいいるでしょう?ちなみに昨日、冒険者ギルドで200g金貨3枚で売却させて頂きました」

 

 息をのむ男。計算くらい出来るのだろう。

 

「し、しかし・・」

 

「普通串焼き屋で、高級な胡椒なんか使わないでしょう。ですが胡椒を使えば今よりもっと美味しくなること間違いなし!しかもそれを謳い文句にすれば、街で評判の屋台となるでしょう!!」

 

「・・わ、わかった。買おう」

 

「ありがとうございます」

 

 胡椒を返してもらい、明日受け渡す約束をしてその場を後にした。

 俺は宿に着くまでニヤニヤが止まらなかった。

 

 

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