転生者の少年は世界を旅し、その瞳は何を見る   作:哺乳鳥魚類

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 どうも、ハーメルン様では初投稿となる哺乳鳥魚類(ほにゅうちょうぎょるい)です!
 仮面ライダーとエロゲがクロスオーバーしたらどうなるかなぁという個人の妄想がっきけで執筆に至りました。
 キャラ崩壊が苦手な方はブラウザバック推奨です。
 まだまだ文章やキャラ設定など、つたない部分もあると思いますが、某猫型ロボットのような生暖かい目で見てくださると幸いです。



アストラルとアンノウン

橘花学院。日本国鷲須研究都市に建設された、様々な理由で入学、転校してきたアストラル使いはもちろん、この研究都市でアストラル能力を研究しているものを親に持つアストラル使いでない普通の学生も通う、アストラルの研究が進められている高等学校だ。

 

 その第三寮、317号室で、橘花学院二年、真道司は学校の支度をしていた。

 

 壁にかかっていた白いカッターシャツと橘花学院の制服を手に取り、姿見の前へと立つ。

 

 寝間着を上下ともにベッドの上に脱ぎ捨て、カッターシャツに腕を通し、ボタンを止め、制服を着こんだ。

 

 「教科書よしノートよし筆記用具よし、暇つぶしの本もよし。課題も全部終わった。弁当は……食堂で食べればいっか」

 

 昼食の軍資金の入った財布もいれる。必要分の金額だけを入れ、残りは机上の貯金箱に入れた。

 

 机の上に置かれていたスマートフォンを手に取り、時刻を確認する。

 

 まだ時間は余っていたが、早く行くに越したことはないだろう。

 

 ドアノブを捻り扉を開ける。

 

 案の定、この時間帯に廊下に出ている者は少なかった。

 

 一回のエントランスに行くも、早めに起きた寮生たちが雑談をしたり朝食を取っていたりしていた。

 

 二人の女の子が談笑していた。もうすでに橘花学院の制服を着ているようだ。司は無遠慮に赤紙の女の子の隣に腰かける。

 

 「よう!壬生、在原」

 「真道先輩じゃないですか!おはようございます」

 「お、おはようございます」

 

 司の後輩―――金髪に紅眼の女の子が在原七海、隣に座っている赤髪の子が壬生千咲だ。

 

 七海は司に対し若干苦手意識があるのか、その小柄な体躯を千咲の後ろへと引っ込めてしまう。

 

 「なあ、壬生。なんで在原は俺のことが苦手なんだ?」

 「ベ、別に苦手というのでは……」

 「そういって私の後ろに隠れないの」

 「まあ、無理して接しようとしなくてもいいけど」

 

 そういいながら一冊の本を取り出し、しおりを挟んだ頁から読み始める。

 

 「あの、なに読んでるんですか?」

 

 千咲の肩から顔をのぞかせ、七海が問うてくる。

 

 「『精霊使いの剣舞』ってラノベ……ありていに言えばイラスト付き小説だ」

 「先輩小説なんて読むんですね!おっとな~」

 「娯楽系は読むけど、純文学はだめだな。眠くなる」

 「娯楽と純文学ってどう違うんですか?」

 「純文学っていうのは、ミステリーとか時代小説とかの大人向けのジャンルで―――」

 「娯楽系ってのはこういうイラストの付いた若者でも親しみやすい小説のことだ」

 「わぁ、かわいいイラストですね!」

 

 千咲が目をキラキラさせながら言う。興味津々といった様子で身を乗り出してきた。女の子特有の甘酸っぱい香りがふわりと鼻孔をくすぐり、顔が熱くなる。

 

 ―――どうも無防備なんだよなぁ、この子は。

 

 「読んでもいいですか?」

 「ああ……」

 

 頬を指先で掻き、何回か言い淀んだ末に、渋々ながら本を渡した。基本的にはいい内容なのだが、このシリーズのイラストには決まって―――

 

 やったぁ!、と大げさにはしゃぎ、頁をめくり、読み進める。ちゃんとイラストだけでなく、一頁ずつ文を読んでいるようだ。

 

 「読んでるとこ水差して悪いが、壬生」

 「なんです?」

 「一巻もあるけど、そっちから読み始めるか?」

 

 顎に指を添えて数秒うなり、

 

 「一巻から呼んだほうが内容も入りやすいと思うので、貸していただけますか?」

 「わかった」

 

 カバンからもう一冊の本を取り出し、渡す。

 

 寮の入り口の自動ドアの開閉音が鳴り、二人の男女が現れた。

 

 一人は、ワイシャツを着た、前髪で片目を隠した男。もう一人は、授業で使用する体操服を着た長い黒髪の、いかにも大和撫子という言葉が似合う第三寮の寮長。

 

 在原暁と二条院羽月だ。見ると、二人とも少し汗ばんでいる。

 

 「おはよう、真藤君」

 「司、おはよう」

 「おはよう暁、二条院。二人とも、今日も朝から二人きりでランニングか?」

 

 からかうように言う。もっとも、それは羽月に向けてだが。

 

 「なっ……!別にそういうのじゃない!」

 「そういうのってどういうのだ?」

 「そ、それは……」

 「俺はただ、今日も朝から二人で走ってるなって言っただけだぜ。いったい、寮長さんはどんなことを想像したんだろうなぁ?」

 「――――――!」

 

 羽月の顔が見る見るうちに真っ赤に染まっていく。まんまと司のペースに呑まれてしまった。

 

 それに追い打ちをかけるように―――

 

 「二条院先輩と在原先輩、私たちのクラスでも噂になってるんですよ?付き合っているんじゃないかって」

 「わ、わわわ私と在原君が!?」

 「待て、それは何かの誤解だ。俺たちは付き合ってない。日課のランニングに一緒に走ってるだけだ」

 「そ、そうだぞ!私と在原君が、その……なわけないじゃないか!」

 「ま、からかうのはこれくらいにしとくか」

 「うぅ……まったく、君といるとなぜか調子が狂う」

 

 額の汗を拭いながら、そそくさと逃げるように自室へと戻ってしまった。

 

 「はぁ……司。二条院さんをあんま困らせるなよ?」

 「いやー、反応が面白いからつい」

 

 言いながら時計に視線を上げると、ちょうどいい時間になっていた。

 

 千咲たちが暁と話している隙に、司は誰にも気づかれないようエントランスを後にした。

 

 

 

 学院の敷地内の、学生や職員があまり立ち寄らない空間へと入り―――

 

 「おい、隠れてないでさっさと出てこい」

 「ほお、我らの存在に気付くとは」

 

 暗闇に光の輪が出現し、その中から黒い光沢感のある昆虫特有の外骨格とおぞましい両顎、人型のシルエットを備えた怪人―――アンノウン、アントロードが複数体現れた。その中で一際体躯の大きいアントロードが歩み出る。

 

 「わざわざしゃべるとは珍しいなぁ……それで、早速だが質問だ。なぜおまえらが()()()()に居座ってる?」

 「貴様なら我らの目的くらいわかるだろ?()()()

 「悪いが、この世界にライダーは存在しない。つまりお前らの粛清対象であるアギトの資格者もいないということだ」

 「何を馬鹿な。いるではないか。お前のすぐ近くに」

 「確かにアストラル使いは超能力を扱うが、アギトとは関係ないはずだ!」

 「まさか本当に気づいていないのか?まあ、いい。どのみち貴様は()()()()()()()()()()邪魔な存在だ。ここで消えてもらう」

 

 後ろにい変えていたアントロードたちが襲い掛かってきた。アントロードは個々の力は弱いとはいえ、その圧倒的物量と、指揮者の技量によってその戦力は強大になり得る。

 

 司はそれらを紙一重で躱しながら、懐から一つのバックルを取り出した。白いカメラ型のバックル。中央のフレームの周囲には九つのライダーズクレストの刻印が記されている―――変身ベルト・ディケイドライバーだ。

 

 腰に当てると、バックルの左右からベルトが伸びていき、ぴったりと腰に巻き付いた。

 

 それを視線だけで確認し、サイドハンドルを両手で引く。

 

 左腰に備え付けられた黒と白のカードデッキ―――ライドブッカーから一枚のカードを取り出した。

 

 「変身!」

 

 バックルの挿入口にカードを装填し、サイドハンドルを戻す。

 

 ―カメンライド―

 

 ―ディケイド!―

 

 三つの灰色のシルエットが一つに重なり、七枚の四角形のプレートが顔面へと差し込まれ、体色がマゼンタカラー(ピンクじゃないよ)へと変色する。

 

 バーコードウォーリアー―――もとい、仮面ライダーディケイドへと変身を遂げた。

 

 襲い掛かってきた一体のアントロードを、すかさずライドブッカー・ソードモードで切り付ける。

 

 もう一体のアントロードが飛び込んできたが、切りつけた勢いをそのままに、巻き添えにした。

 

 しかし、アントロードはまだ大勢いる。被害を最小限に抑えるためにも、素早く撃破しなければ。

 

 「ちっ、数には数だ!」

 

 苛立たしげに舌打ちをし、ライドブッカーから一枚のカードを取り出し、バックルに装填。

 

 ―アタックライド―

 

 ―イリュージョン―

 

 ディケイドから二つのモザイクの塊が放出され、やがて二体のディケイドへと形成された。

 

 一人はライドブッカー・ソードモードで武器持ちと戦い、一人はラードブッカー・ガンモードで遠距離攻撃を行った。

 

 素手のディケイド―――本体は指揮者と思しきアントロードへと向かう。

 

 ―アタックライド―

 

 ―スラッシュ―

 

 

 ―アタックライド―

 

 ―ブラスト―

 

 

 ―ファイナルアタックライド―

 

 ―ディ、ディ、ディ、ディケイド!―

 

 「「「はぁ!」」」 

 

 ライドブッカー・ソードモードの刃にマゼンタ色の燐光が宿り、四体まとめて切り伏せる。

 

 ライドブッカー・ガンモードにはライドブッカーの残像がそれぞれ光弾を連射し、アントロードの大軍を一掃していく。

 

 「おりゃぁぁぁぁぁ!」  

 

 高く飛び上がり、巨大な十枚の黄色いライドカードのプレートを突き破り、ディケイドの必殺技、『ディメンションキック』が指揮者に直撃した。

 

 「ぐわあああああ!?」

 

 アントロードは各々頭頂に光の輪を出現させ、例外なく全員爆発四散。

 

 「ひとまずこれで大丈夫か……」

 

 分身体が消滅し、サイドハンドルを引き変身解除を使用とした時だった。

 

 「―――!誰だ」

 

 がさごそと足音がした。すかさずライドブッカーを引き抜き、ガンモードに変形させる。

 

 ―アタックライド―

 

 ―インビンジブル!―

 

 姿を背景と同化させ、足音の主に忍び足。

 

 見つけた。ちょうどインビンジブルの効果が切れた。

 

 銃口を突き付け、問う。

 

 「お前、見たのか?」

 

 正体を見て、思わず叫びそうになった。

 

 制服の上からは負った淡い水色のジャージ。二つに括った赤い髪。小さい体躯は高校生のものとは思えないほど幼い。

 

 「壬生……」

 

 橘花学院一年生、壬生千咲その人だった。

 

 銃口を突き付けられている状況なのに、落ち着いた様子だ。

 

 「こんな状況なのに、よく冷静でいられるな」

 「だって、さっきあの怪物たちを倒したじゃないですか」

 「……敵の敵は味方とは限らないぞ」

 「でも、先輩はそんなひどいことをしないって信じてますから」

 

 いたずらっぽくウィンクをする。

 

 「―――ん?今なんて言った」

 「そんなひどいことをしないって」

 「その前からだ」

 「先輩はそんなひどいことをしないって」

 

 背筋に悪寒が走る。おかしいな?アントロードと対峙した時よりも心臓がどきどきするのはなぜだろう。

 

 「……ちなみに、どこから見ていた?」

 「先輩があんな怖い怪人相手に威勢よく『変身!』って言ったあたりですかね」

 「うわあああああ!」

 

 恥ずかしい!めっちゃ恥ずかしい!あれを誰かに見られたということが、こんなにも精神的に堪えるとは!

 

 「ど、どうしたんですか先輩?突然叫び声をあげたと思ったら、地面を転がったりして」

 「……人間って、頭に強い衝撃を加えると記憶を一部失うって本当なのかな?」

 「私の体で物騒な実験をしようとしないでください!?」

 「大丈夫、痛みは一瞬だ」

 「それもう一人の人のセリフですよね!?」

 「―――もう一人って、誰だ?」

 「―――誰でしょう?」

 

 お互いに首をかしげる。

 

 「……はぁ、わかった。誰にも言うなよ?」

 

 ディケイドライバーのサイドハンドルを引き、今度こそ変身を解除した。

 

 右腕にズキッと痛みが走り、顔をしかめる。袖をまくるとかすり傷ができていた。先の戦いで負傷してしまったようだ。

 

 気にするほど深刻でもないので、バッグを手に取り、学院までの道のりを歩こうとする。

 

 「って、怪我してるじゃないですか!?」

 「これぐらい大したことないって」

 「だめです。気休め程度だと思いますけど……」

 

 千咲は自身のバッグを中身をあさると、消毒液と絆創膏を取り出した。

 

 「……なんで消毒液なんかあるんだ?」

 「絆創膏を貼っても、そこにばい菌が残っていたら意味ないじゃないですか」

 

 ハンカチに消毒液をしみこませ、腕の傷口に軽くポンポンと叩く。消毒液が沁みる。

 

 絆創膏を張る際、千咲の華奢な指先が触れ、なんだかむずがゆくなってしまった。

 

 その司の反応を見て、にやりと小悪魔のように微笑む。

 

「先輩顔真っ赤にしちゃって。かわいいですね♪」

 「う、うるせっ」

 

 ぶっきらぼうにそう返すも、千咲の手は拒まない。

 

 「もう、素直じゃないんですから」

 「俺のことを気遣ってくれてるのに、それを無碍にする必要もないからな……それと、その、ありがとな」

 「もう、先輩を心配するのは当然のことです」

 「いや、そうじゃない。俺のことをあいつらと同じ怪人扱いしなかったことだ」

 

 それは、司が正体がばれた時に、最も危惧し、恐れていた事態。

 

 「私はアストラル使いの人たちと仲良くなりたくて、この学院に入学したんですよ?さっきみたいに先輩が変身したところで、私にとってはアストラル使いのようなものです」

 「そういうものか?」

 「そういうものです」

 

 ニコッと満面の笑みを浮かべる千咲。その表情からは悪意や嘘の類は感じ取られなくて―――

 

 「あ、あと、できればなんだが……俺の正体はばらさないでくれると助かる」

 「んー、先輩なら大丈夫だと思いますけど……先輩が言うなら。わかりました」

 「助かる」

 

 「でも」、と付け加え、

 

 「条件があります」

 「なんだ?」

 「先輩は、いったい何者なんですか?いつから怪人退治なんてしてるんですか?」

 「俺は……そうだな。通りすがりの仮面ライダー、とでも言っておこうか」

 「仮面、ライダー?」

 

 そう言って司は千咲の肩にポンと手を置き、「絆創膏、ありがとなー」と言いながら、手をひらひらと振って立ち去った。

 

 

 

 彼は普通の高校生だった。一部記憶が曖昧だが自分がアニメやゲーム、漫画ライトノベルの類が好きだったことは覚えている。

 

 ある日彼は命を落とした。しかし、なぜ死んだのかはわからない。死んだ日のことを思い出そうとすると、すさまじい激痛が走り気を失いそうになるのだ。

 

 次に目覚めたら橘花学院第三寮207号室のベッドの上に横になっていた。

 

 普通は混乱すると思うが、驚くほど冷静に状況を飲み込むことができた。いや、できて当然だった、といったほうが正しいのだろうか。

 

 まず、ここがPCゲームブランド『ゆずソフト』十作目、『RIDDLE JOKER』の世界に酷似していること。

 

 次に、皆が彼のことを知っていること。しかし仮面ライダーのことは知らないこと。

 

 そして自分は平成十人目のライダー・仮面ライダーディケイドとしてこの世界で()()をしなければならないということは大体わかった。

 

 まあ、その何かまではわからなかったが。

 

 そして自身で調査したことでわかったことは、在原暁とその妹七海は秘匿組織に所属していない―――というか、そもそも秘匿組織自体が存在しないこと。つまり、似ているからといって必ずしもすべてが一致してるわけではないのだ。

 

 そして一番の違いは、この世界にはなぜかアンノウンが存在する。『ロード怪人』『マラーク』と呼ばれている天使だ。

 

 今までの行動からして、アストラル使いを粛正対象であるアギトの資格者と誤解しているのだろうか。

 

 

 

 第三寮で大盛りのソースカツ定食を周防恭平と共に間食(恭平はその後購買でカレーパンを買った)し、午後の授業、屋内プールでのアストラル能力の授業を受けていた。

 

 アストラル使いは陸上と水中でのアストラルの測定をした後、問題にならない程度にアストラル能力を使って遊び、アストラル使いでない生徒も、授業に参加することができる。

 

 士はアストラル使いではないが、プールサイドに座り、思い思いに能力を使う生徒たちを眺めていた。その傍らには防水素材でできたバッグ―――ディケイドライバーが入っている。

 

 万が一、アンノウンが出現した際、素早く迎撃するためだ。

 

 問題は自分の正体が露呈することだが……自分の正体と人の命を天秤にかけるつもりはさらさらない。

 

 皆、男子はハーフパンツタイプやら、女子はビキニタイプの水着を着ていたが、アストラルの計測を行っている女性、式部茉優はなぜか水着の上から白衣を羽織っていた。

 

 外気にさらされる肌の面積は少ないのだが……普通に水着を着ているより色っぽく思えてしまうのはなぜだろう。

 

 もちろん、本人にはそういった意図はなく、むしろ若者に肌を見せたくないだけだろうが。

 

 水面から千咲の顔がひょっこりと現れた。オレンジ色の、フリルのついた水着を着ている。

 

 「先輩は遊ばないんですか?」

 「俺は泳ぐのは得意じゃないからな」

 「もしかして……水着を見に来ただけですか?」

 「アストラル能力について関心を深めようってのもあるが、本音はそうだ」

 

 プールで戯れる女子たちを見ながら言う。その近くでは水を操る能力を使い、チャンバラやら水鉄砲をしながら遊んでた。

 

 「ちなみに、誰の水着姿が一番ですか?やっぱり三司先輩ですか?かわいいですもんね」

 

 三司先輩というのは、司のクラスメイトにして橘花学院学生会長、三司あやせのことだ。世間にアストラル能力に対して好印象を持たせた人物だ。

 

 ときどき、学院外からテレビや雑誌の取材を受けたりと大忙し。今もアストラル能力の授業について取材を受けている最中だった。

 

 「違うな。それにあいつ胸―――いや、なんでもない」

 

 口をつぐんだ直前、背筋に悪寒が走ったのは気のせいだと信じたい。あと全身にぐさぐさと見えない何かで刺された気がしたのも。

 

 「?じゃあいったい誰なんですか?」

 「どれも非常に魅力的ではあるが……強いて言うなら壬生、お前だ」

 「え、わ、わたしですか?」

 

 想定外だったのか、それとも褒められること自体に慣れてないのか、動揺を見せる。

 

 「やだなぁ、冗談はよしてくださいよ」

 「冗談じゃない。お前には十分魅力がある」

 

 千咲の顔が、見る見るうちに耳まで真っ赤になる。

 

 「そ、そこまで言われると、悪い気はしませんねぇ」

 「じゃあ、まずお前の魅力を一つずつ―――!壬生、今すぐプールから出ろ!」

 「いったいどうし―――わかりました!」

 

 直感的にアンノウンの気配を感じた。司の切羽詰まった表情を見て察したのだろう。この子のコミュニケーション能力の高さには助かる。

 

 地先に手を伸ばし、彼女もまたその手をつかみ、その小柄な体躯をプールサイドまで引き上げた。

 

 「皆も!早く出ろ!」

 「うっせーな真道」

 「まだ授業は終わってないでしょ?」

 

 だがほかのものも同じというわけにはいかないらしい。

 

 内心焦っていると、屋内プールの空間に変化が訪れた。

 

 プールの水が中空へと終息し、巨大な水の球体が形成される。これだけならまだアストラル能力だと認識できただろう。

 

 しかし司にはわかった。これはアストラル能力ではない。

 

 そして水球から感じ取れる気配はアンノウンのものだが、今まで戦ってきたのとは比べ物にならないほどの禍々しい気配だ。

 

 「しょうがねぇ」

 

 咄嗟にディケイドライバーをセットし、ライドブッカーから一枚のカード―――クウガのカードを取り出した。自分の正体がばれるが、気にしている場合ではない。

 

 「変身!」

 

 ―カメンライド―

 

 ―クウガ!―

 

 赤き古代の超戦士、仮面ライダークウガへと変身した。ちなみに千咲に見られたからなのか、「変身!」の掛け声に対し、司自身はこのセリフを言うことに対しての羞恥心は、跡形もなく消え去っていた。

 

 生徒たちがどよめきだす。彼らにとって、仮面ライダーは未知の存在であるのだから、無理もない。

 

 ―フォームライド―

 

 ―クウガ・ドラゴン―

 

 続けてカードを再度バックルに装填。クウガの外骨格、複眼、モーフィングクリスタルが青色へと変化する。青のクウガ、クウガ・ドラゴンフォームへ形態変化(フォームチェンジ)完了。

 

 近場にあったモップの持ち手を踏みつけてもとに手繰り寄せ、モーフィングパワーでドラゴンロッドに変形。水場なら身体能力の高いこのフォームが有利と判断しての形態変化(フォームチェンジ)だ。

 

 水の球体に対してなのか、変身した司に対してなのかはわからないが、生徒たちはプールからすでにプールサイドへと移動していた。

 

 水の球体が破裂し室内にしぶきが飛び散る。淡い光を放つまがまがしい気配の権化がゆっくりと降り立ち、その姿をさらけ出した。

 

 クジラをかたどったような頭部。一見女性的な外見だが体格は男性のそれであり、右手には銀のトライデント―――『怨念のドゥ・サンガ』。

 

 イコン画に描かれた七体のエルロードの一角にして、仮面ライダーアギト・津上翔一の宿敵。

 

 

 水のエルだった。 




 次回『第二のエルロードと目覚める魂』
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