エピソードオブヒット 伝説の殺し屋   作:サラザール

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 どうも、サラザールです。活動報告のコメントがありませんでしたので、こちらで勝手にストーリーと設定を決めました。案などがあれば遠慮なくコメントしてください。

 それではどうぞ!


百発百中の殺し屋

 偉大なる航路(グランドライン)前半の海、その丁度真ん中に位置する夏島、「ボス・トニア島」。

 

 この時期、ボス・トニア島はカーニバルの真っ最中であり、町は騒がしく、昼間だというのに酒を飲んでいるだらしない男たちまでいる。

 

 今日でこの町が創立して百周年を記念するため、老若男女問わず町は賑やかになっていた。

 

 港には他の島から来た旅行者たち、世界政府直属の軍隊である海兵たち、世界各国の貴族までもこの島に来ていた。

 

 この島に住むケチな大富豪が世界各国の貴族を招待して、屋敷でパーティーを開くためである。

 

 しかし大富豪は世界の法に触れる行為を行っており、表ではケチではあるが心優しい金持ちとして知られているが、裏では海賊を雇ってこの町の近くに現れる船を襲わせて金銀財宝を奪っていた。

 

 もちろんその大富豪はケチであるため、海軍に金を払い、海賊から金銀財宝を全部受け取った後は海軍に海賊たちを売っている。

 

 金に取り憑いた海兵たちは大富豪の犯罪行為を隠蔽し、世界中では海賊討伐に最も協力的な金持ちと知られている。

 

 しかし一部の市民たちは大富豪の犯罪行為を知っており、海軍や世界政府にも抗議しているが、信じてもらえなかった。

 

 今回のパーティーでは来客した貴族たちの飲み物に覚醒剤を混入し、金に溺れた海兵たちに逮捕させるのが目的。

 

 彼らから金品を全て奪い、その一部を海兵に払う。そうして記事には覚醒剤を使用した貴族たちを捕まえる英雄になろうとしていた。

 

 海賊を捕まえるだけでなく、貴族の裏の顔を暴いたと知れれば、政府からも謝礼が貰えると思っていた。

 

 さらに自らの手で島を一つの国にして、悪政の限りを尽くそうと企てており、町中の人々はそのことをまだ知らない。

 

 大富豪の悪事を知らない市民たちはカーニバルを楽しんでいた。

 

 しかし、この島の市民や貴族、海兵たちは知らなかった。

 

 人気のない港に一隻のガレオン船が停泊していたこと。それが海賊船であること。

 

 そしてその海賊団の船長が今世間を騒がしている海賊であることを……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「船長はどうした?」

 

「仕事でもう向かってるぞ」

 

 人気のない港に停泊している海賊船 「ドラゴン・アッシュ・ポルンガ号」。船首には角が生えたワニのような(あご)と人間的な上半身、かつ筋肉質で厳つい体系の奇妙な生物。まるでランプの魔人のようなシルエット。

 

 帆や旗にはドクロマークの横に二つの砂時計が並び、二本の骨が交差しているデザインが描かれている。

 

 船員たちは船内の掃除や剣や銃などの武器を磨いており、仲間たちとふざけながら和気藹々と作業する者や、与えられた仕事を静かに(まっと)うする者、仕事をしながら体を鍛える者までいる。

 

 この海賊団の船員たちは、偉大なる航路(グランドライン)で名を(とどろ)かす海賊たちよりも自由を愛しており、海賊として生きていくことにやり甲斐を持っていた。

 

「しかし船長も変わってるよな。この町の住民から依頼がきたって聞いた途端、キャプテン・ジョンの財宝探しを途中でやめるなんて……」

 

 船員の一人が雑巾(ぞうきん)で甲板を掃除しながら呟く。

 

「今に始まったことじゃないだろ? 船長はどんな依頼でも必ず成し遂げるからな。それがたとえ最弱の海"東の海(イーストブルー)"でもな」

 

 マップを手にした大男が肩を竦める。

 

 この船の船長は少し変わっており、殺しの依頼(・・・・・)が舞い降りるとどんな仕事でも遂行(すいこう)し、受け取った報酬を船員たちに全て(・・)譲る。

 

 さらに夏でもコートを羽織っており、人目の付く場所でも堂々と歩く。

 

 無口かつストイックなところがあり、暇さえあれば一人で瞑想(めいそう)したり、常にコートを羽織ることに執着を持つなど、船員たちの間ではかなりの変人と認識されている。

 

「でも仕事で貰った報酬は全部俺たちにくれるよな?」

 

「ああ、仲間思いで自分のことは後回しにするからな。人望はある」

 

 仕事では一人で行動するが、海賊や海軍との戦闘では先陣を切り、仲間が怪我をしたと分かればすぐに助け、必ず敵を完膚なきまで叩き潰すほどの仲間思いである。

 

 そのため船員たちからは慕われており、この人と共に歩めば海賊として名を轟かせると誰しもそう思っている。

 

「今回の仕事はこの町の大富豪の暗殺だったな?」

 

「そうだったな。なんでも海賊を雇ってこの辺りの船を襲わせているみたいで、依頼してきた人はその被害者の一人だそうだ」

 

「大富豪が哀れに思うよ。船長に目を付けられたんだからな」

 

「ああ、これはきっと一撃(・・)で仕留められるな」

 

「馬鹿、船長は仕事をするときは必ず一撃で殺すだろ」

 

 二人の船員の表情が青くなる。

 

 船長は仕事や戦闘の場合は必ず最初は一撃で仕留めようとする。

 

 そして船長の攻撃を食らった相手は必ず死に至る。敵に回せば最も恐ろしい男である。

 

 そのため偉大なる航路(グランドライン)後半の海、"新世界"で名を轟かす海賊たち、主にビッグ・マム海賊団、白ひげ海賊団、金獅子海賊団は彼を仲間にしようと情報を集めている。

 

 船長自身は誰の仲間になっても構わないと考えている。彼から依頼される仕事が暗殺の内容であるのなら、海賊として傘下に加わることも(いと)わない。

 

 もちろん自分より弱い人の下に入るつもりはなく、自分を負かした相手にしか仲間になるつもりはない。

 

 "新世界"の海賊たちはもちろん知っており、彼を倒そうと勢力を増やすために大事件を起こしている。

 

 決して仲間を見捨てることのない船長、その素性は船員たちや海軍、世界政府でさえも知らない。

 

 海賊業界一の情報力を持つビッグ・マム海賊団でさえも突き止めることができない。

 

 その船長の正体、それは本人しか知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カーニバルの真っ最中、その男は堂々と道の真ん中を歩いていた。

 

 紫の髪を(なび)かせ、中性的な容姿をしており、黒いロングコートを羽織っている男。

 

 彼こそ"新世界"の大物たちが仲間にしようとしているある海賊団の船長。

 

 彼は目を瞑りながら堂々と歩く。彼には殺気が無く、どんな場所でも溶け込める。

 

 しかしここは夏島。この季節にコートを羽織る人はいない。誰しもが物珍しそうに見るだろう。

 

 しかし町の人たちは誰も彼を見ていない。いや、それどころか誰も(・・)動いて(・・・)いなかった(・・・・・)

 

 まるで時が止まったかの様に動いていなかった。しかしそれはある意味その通りである。

 

 偉大なる航路(グランドライン)で名を轟かす海賊や海軍たちは"悪魔の実"の能力者であることが多い。

 

 海賊、海軍、世界政府は当然彼も能力者だと思っている。しかしそれは大きな間違い。

 

 彼の能力は"悪魔の実"の能力者ではない。彼しか持ち合わせていない特殊能力。時間を自在に操る能力。

 

 この町でコートを羽織って行動すれば、誰もが注目すると考えた彼は、能力を発動して歩いていた。

 

 彼が着いた場所はこの島の大富豪が住む屋敷。そこには警備兵が何人もいる。

 

 当然彼は能力で時間止め、屋敷に入る。警備兵たちは彼の存在に気付きもしない。

 

 屋敷の中にも警備兵がいるが、その中には海軍の姿もいた。

 

 しかし彼にかかれば何者であろうと時間に抗える人間はいない。それができるのは発動させる本人のみ。

 

 彼は堂々とエレベーターに乗り込み、最上階へと向かう。

 

 最上階には大富豪もいるが、その他に海兵二十人が警備している。

 

 恐らく警戒されているだろうと思った彼は"見聞色の覇気"を使って最上階にいる人の気配を探る。

 

 その予想は的中しており、エレベーター前には海兵全員が銃を構えていた。

 

 大富豪は警戒心が強いようだ。彼のポケットには銃を三丁も所持しており、何が起きてもいいように(ふところ)にはナイフまで持っていた。

 

 エレベーターに乗った彼は天井までジャンプし、見つからないように両手両足で落ちないように壁に付けて支えていた。

 

 最上階に着き、扉が開く。海兵たちはエレベーターの中に誰もいないことに気付く。

 

 その瞬間、彼は能力を発動して時間を止める。

 

 彼は優雅に着地し、動かなくなった海兵たちをすり抜けて(・・・・・)奥へと進む。

 

 当然、大富豪も動かない。時間を止めているため、大富豪自身の時間も止まっている。

 

 彼は更に能力を発動し、大富豪が動くように二人の時間……いや、異次元世界を作る。

 

 そして彼は大富豪に話かける。

 

「お前を殺しに来た」

 

 彼の放った言葉を聞き、窓の外を向いていた大富豪は彼の方へと向く。

 

「お前は誰だ?」

 

 大富豪は(ふところ)にあるナイフに手を付けながら彼に聞く。すると彼は表情を変えずに質問に答える。

 

「俺の名はヒット……」

 

「っ!? ヒ、ヒットだと!?」

 

 彼、ヒットは名乗ると大富豪は恐怖の色を浮かべて驚く。

 

「今話題の殺し屋にしてヒット海賊団の船長か!?」

 

 大富豪もヒットのことを知っていた。

 

 素性、年齢、全て不明であり、殺しの依頼が来ればどんな仕事でもやり遂げる殺し屋。決して仕事以外では民間人に危害を加えず、どんなことがあってもターゲットを地の果てでも追いかける殺し屋兼海賊。

 

 世界政府は彼を敵視し、政府公認の海賊"王下七武海"へと勧誘しようと考える者もいる。

 

 また"新世界"の海賊たちは自分たちの仲間にしようと、彼の情報を集めている海賊団もいる。

 

 彼はある事件(・・・・)により、自分を負かした相手にしか配下に付かない。仲間にしたいなら自分を負かすこと。誰の挑戦でも受けて立つと新聞を通じて知らせた。

 

 そのため"四皇"の海賊たちは彼を仲間にしようと嗅ぎ回っている。

 

 世界中に名を轟かした彼を知らぬ者は誰もいない。

 

「何をしている! こいつを殺せ!」

 

 大富豪は海兵たちに指示を出す。しかしヒットが作りだした異次元世界によって姿はあれど、決して動かない。

 

「お前たち聞こえないのか!」

 

「無駄だ、俺とお前以外の時間は止まっている」

 

「く、くそ」

 

 大富豪はナイフと取り出しヒットの左胸に刺そうとするが、ヒットは大富豪の腕を掴み、ナイフを取り上げる。さらに時間を止めて銃三丁を引き抜く。

 

 再び二人だけの時間に戻るとヒットは引き抜いた銃を見せびらかす。

 

 そのことによって大富豪はヒットには敵わないと気付く。

 

「無意味な足掻きだ」

 

 ヒットは大富豪に哀れみの表情で息を吐き、大富豪はヒットに命乞(いのちご)いをする。

 

「金ならある! いくら欲しい……いや全財産をやろう! この屋敷もくれてやる!」

 

「いらん」

 

 ヒットの一言で交渉は無駄だと理解し、彼の隙を突いて逃げようと考える。

 

 大富豪が焦る中、ヒットは右手で拳を作り、大富豪に向けて殴るように小さいモーションで前に出す。

 

 すると大富豪の左胸が凹み、目を白目にして前へ倒れる。

 

 ヒットの能力の一つ、人体にだけ影響を与える透明の衝撃波を放ったのだ。

 

 これにより心臓を強制的に停止させ、死に至らせる。彼が仕事でつかう一撃必殺の技。

 

 ヒットはその場を後にしようとせず、金庫へと向かい金品を全て奪う。

 

 報酬以上の金があれば依頼者に全て譲るのも彼の信念である。

 

 ヒットは屋敷を後にし、依頼者に盗んだ金品を全て渡す。そして依頼料を受け取りその場を後にしようとする。

 

 依頼者は盗んだ金品から持てる限り持っていけばいいと言うが、ヒットは振り返らずにこう答える。

 

「苦労して稼いだ金で俺を呼んだのだろう。大富豪の財産より何十倍もの価値がある」

 

 これこそ彼が一部の民間人から、そして仲間から慕われる要因の一つである。

 

 根は優しく、金や地位には興味を持たない。なにより殺し、それ以上に仲間たちと海賊として旅をすることが生き甲斐であり、死ぬまで続けたい夢である。

 

 彼に(まつ)わることがあるとすれば、ある二つの漫画が大好きな十六歳の少年であり、不慮の事故により神から能力を授かった転生者であること。

 

 自由を愛し、己を鍛え、仲間とともに冒険することに憧れる少年。

 

 彼の本名は星宮拓哉。そして二度目の人生ではこう名乗っている。

 

 "百発百中"のヒットと……。

 




 如何でしたか? 宜しければ「ファフニール VS 神」の方もご覧下さい。

 「大富豪の財産より何十倍もの価値がある」は史上最強の弟子ケンイチにある台詞です。拓哉本人は知りません。
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