「管理官 あなたへのお手紙です」
「…手紙?それは”何処”からの物ですか?」
「不明です。中央本部のエージェントからあなたに渡すように頼まれたものでして」
「…質問を変えます。それがSCiPでないかどうか検査しましたか?」
「検査したと思われます。特に危険性は見当たらないから安心しろ、と付け加えて渡されましたので」
「…そうですか。ありがとうございます、エージェント レイチェル。あなたはご自分のチームへとお戻りください」
「わかりました」
●○●○●
「本日の業務も問題なく終了ですか。……そういえば、私宛の手紙がありましたね」
「…ふむ。一見するとただの手紙ですが見たことない紋章ですね。GOIでは無さそうなので構いませんが」
「…【悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能 ギフトを試すことを望むのならば、己の家族を、友人を、財産を世界の全てを捨て、我らが箱庭に来られたし】」
「…どうやら送り主の名前は書かれていないみたいですね。一体誰が……」
手紙を読み終えた瞬間。企業から管理官の存在が消失した。
●○●○●
「…ここは一体。……どうして私は空中にいるのでしょうか?」
管理官が目を開けると、そこには広大な土地と湖が映し出されていた。
「…周りに人は、3人ですか。このままでは死にますね。…【Fairy Festival】私と彼らを陸地まで運んでください」
彼女がそう呟いた瞬間。辺り一面に人型の小さな妖精が多数出現し、管理人たちを陸地へと運んで行った。
【Fairy Festival】妖精の祭典
一体の大きな妖精と複数の小さな妖精によって構成された、光り輝く人型の妖精たち。
アクアマリンのような肌に、尖った耳、腕に似た形状をした長い髪の毛、2組の腕、一対の脚、昆虫のような大きな翅、そして長い尾を持っている。
●○●○●
「…ありがとうございます」
『あなた様のお望みでしたら、我々は喜んで駆け付けますよ』
「…そうですか。必要な時はまたお呼びします」
「本当信じられないわ!まさか問答無用で引き摺りこんだ挙句、空に放り出すなんて!」
「となりに同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ。
まぁ、結果的に助かったから問題はないが。あんたが呼んだんだろ?さっきの虫みたいなの。
一応礼を言っておくぜ、ありがとな」
「…お気になさらず。それと、あれは虫ではなく妖精です。お間違いないように」
「ここ……どこだろ」
「さあな。まぁ、世界の果てっぽいものが見たし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」
「…ふむ」
(世界の果てですか。もしやあの手紙は転移型のSCiPだったのでは?)
「間違いないだろうが、確認するぜ。もしかしてお前たちにも変な手紙が?」
(なるほど。他の3人にも同じような手紙が来ていたのですか。…エージェント レイチェル。確かに危険性はなさそうですが、何処かもわからないところに転移させられるとは思いませんでしたよ)
「まずそのお前という呼び方をどうにかしてくれないかしら。私の名前は久遠飛鳥よ。これからは気を付けて。そこの猫を抱き抱えている貴女は?」
「春日部耀。以下同文」
「そう、よろしくね春日部さん。それで、見るからに野蛮で凶暴そうなあなたは?」
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」
「……説明書を用意してくれたら考えるわ」
「マジかよ、なら今度作っとくから覚悟しとけ」
「それで、先ほど私たちを助けてくれたあなたは?」
「…助けたのは私ではなくFairy Festivalなのですが。まぁいいでしょう。私の名前は……。すみません、永いこと管理人か管理官としか呼ばれていなかったため忘れてしまいました。ですので、気軽に管理”人”。または管理”官”とでもお呼びください」
「そう、よろしくね管理人さん」
「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ」
「…いえ、そこに何か居るみたいですよ?」
「…なんだ、あんたも気付いてたのか?」
「あれだけわかりやすければ、誰でもわかるわよ…」
「風上に立たれたら嫌でも気付く」
「や、やだなぁ皆々様。そんな狼みたいな顔で睨まれると黒ウサギは死んでしまいますよ? ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵にございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」
(…Rabbit…Team? …いえ、ウサギ人間? 珍しい生き物が居るようですね)
「断る」
「却下」
「お断りします」
「…ウサギ人間は初めて見ましたね」
「あっは、取りつくシマもないですね。あと、私はウサギ人間ではなく黒ウサギですよ!」
バンザーイ、と降参のポーズをとる黒ウサギ。しかし、その眼は4人を値踏みしていた。
(…これまた懐かしい眼を向けてきますね。こういう眼を向けられるのは数年前に財団に行ったとき以来ですかね)
すると、耀が不思議そうに黒ウサギの傍により、
「えい」
「フギャ!」
黒いうさ耳を根っこから掴んだ。
「ちょ、ちょっとお待ちを!? 初対面でいきなり黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですかぁっ!? 」
「好奇心の為せる業」
「自由にも程があります!」
「へぇ?このうさ耳って本物なのか?」
十六夜が耀とは反対の耳を掴みあげた。
「ちょ、ちょっと待っ――」
黒ウサギは言葉にならない悲鳴を上げ、その絶叫は近隣に木霊した。
如何でしたでしょうか?
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