【管理官】も異世界から来るそうですよ?   作:ネェリ

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今まではアブノーマリティの名前を英語、EGOの名前を日本語にしてましたが、どうしたらいいのでしょうか?


第10話 ペルセウス

「ゴーゴンの首を掲げた旗印……!?だ、駄目です!避けてくださいレティシア様!」

 

黒ウサギの声も虚しく、レティシアは褐色の光を全身に受けた……と思われた。

 

「…レティシアさん、避けますよ」

 

が、それよりも速く移動した管理官がレティシアごと光を躱していた。

 

「ばかな!?ゴーゴンの威光を躱しただと!?」

 

「…相手に攻撃を当てるなら、これぐらい速くしなさい」

 

レティシアを連れて、ゴーゴンの威光を躱した管理官はすぐさま”狙撃銃”に次弾を装填し、空に浮かんでいる軍団に撃ち込んだ。

 

「なっ…!?な、名無し風情が我らペルセウスに歯向かうだと!」

 

「…歯向かうだと!とか言われても……。あの程度で撃ち落とされる方が問題だと思うのですが…」

 

「…あれ、さすがに俺でも避けるのきついと思うぞ」

 

「…そうですか?…まぁいいです。さて、今の一射で半分撃ち落としたみたいですが、どうしますか?引き返すというなら追撃はしませんが」

 

……管理官はたった一射。たった一射で空の軍団の半数を撃ち抜いていた。

 

「……ッ、て、撤退だ!撤退するぞ!」

 

「おいおい、俺も混ぜてくれよ。こんな風におまけに扱われたのは生まれて初めてだぞ?」

 

「…でしたら残りはあげますよ?」

 

「いや、お前さっき追撃しないって言ったじゃねーか」

 

「…あくまで私はです。他人が追撃しないとは一言も言ってませんし、そもそも普通相手の言葉を信じますか?……私だったら喜んで追撃しますが」

 

「鬼だなお前。まぁ、もう追撃のしようがないがな」

 

「…うん?……おや、私の認識よりも速く移動で来たんですか」

 

「いえ、……あれはまさか、不可視のギフト!?」

 

「”ペルセウス”って名前がコミュニティの名前なら、間違いなくそうだろうよ。そもそもそんなに早く移動できたなら、お前の狙撃も避けれただろうしな」

 

「…それもそうですね」

 

「とりあえずペルセウスってのがどういうコミュニティか、白夜叉にでも聞きに行くか。それに、レティシアを狙ってたってことは、サウザンドアイズも無関係ではないだろうしな」

 

「…飛鳥さん達も呼びますか?」

 

「頼む。あと御チビも連れてきてくれ。どうもキナ臭い。最悪その場でゲームになることだってあり得る。なら頭数は居た方がいいだろ」

 

「…わかりました」

 

―————ま、そうなっても俺と管理官が居るなら十分だけど。

 

とは思っても口にしない。十六夜は空気が読める男だった。…空気が読める男十六夜は、さっきから話についてきていないレティシアと黒ウサギを眺めながら、管理官を待ち続けるのであった。

 

 

 

 

●〇●〇●

 

 

 

「…おい、俺は頭数を揃えるよう言ったはずだが、御チビと春日部はどうした」

 

「さすがに本拠を空にするわけにはいかないでしょ」

 

「…それもそうか」

 

「…はい。それと、撃ち落とした人たちの見張りもお願いしてきました」

 

あの後、管理官は飛鳥と耀とジンに声をかけたが、ペルセウスに奇襲されたばかりという事もあって、耀とジンは本拠に残ることにした。ついでに撃ち落としたペルセウスのメンバーの監視もするよう頼んできたのだった。

 

「それにしてもこんなにいい星空なのに、出歩いてる奴はほとんどいないな。俺の地元なら金取れるぜ」

 

「…私も、久しぶりに星空を見た気がします」

 

「これだけハッキリ満月が出ているのに、星の光が霞まないなんておかしくないかしら?」

 

「箱庭の天幕は星の光を目視しやすいように作られてますから!」

 

「そうなの?……でもそれって意味はあるのかしら?」

 

「ああ、それはですね」

 

「おいおい、お嬢様。その質問は無粋だぜ。”夜に綺麗な星が見れますように”っていう職人の心意気がわからねえのか?」

 

「あら、それは素敵な心遣いね。とてもロマンがあるわ」

 

「…絶対違うと思うのですが」

 

「……あー」

 

黒ウサギはあえて否定しなかった。納得したのならそういう事にしておこう。話せば長くなるし、店先までほんの僅かだ。

 

「…みんな、すまない。私のせいで迷惑をかける事になって…」

 

「気にするなよ。ゴーゴンの威光っていうぐらいだし、触れてたら石になってたんだろ?」

 

「…その通りだ。……あの光に触れたものは石にされる」

 

「いいじゃない、助かったんだから」

 

「…それを言うなら、勝手に助けた私が悪いみたいになってしまうのですが」

 

「ち、ちが……。そういうつもりは…」

 

「…わかってます。もうすぐお店に着きます。詳しい話はそちらで話しましょう」

 

「……そう…だな」

 

「それよりも、黒ウサギは十六夜さんが意外と博識なことに驚きなのです!」

 

「おいおい、俺は生粋の知能派だぞ。それよりも……ついたぜ」

 

サウザンドアイズの門前に着いた”五人”を迎えたのは、例の不愛想な女性店員だった。

 

「お待ちしておりました。中でオーナーとルイオス様がお待ちです」

 

「黒ウサギたちが来ることは承知の上、ということですか?あれだけの無礼を働いておきながらよくも『お待ちしておりました』なんて言えたものデス」

 

「……事の詳細は聞き及んでおりません。中でルイオス様からお聞きください」

 

定例文にも似た言葉にまた憤慨しそうになる黒ウサギだが、店員の彼女に文句を言っても仕方がない。店内に入り、中庭を抜けて離れの家屋に黒ウサギたちが向かう。

 

「うわぉ、ウサギじゃん!うわー実物初めて見た!噂には聞いてたけど、本当に東側にウサギが居るなんて思わなかった!つーかミニスカにガーターソックスって随分エロイな!ねー君、うちのコミュニティに来いよ」

 

ルイオスは地の性格を隠す素振りもなく、黒ウサギの全身を舐めまわすように視姦してはしゃぐ。

 

「これはまた……わかりやすい外道ね。この美脚は私たちの物よ!」

 

「そうですそうです!黒ウサギの脚は、って違いますよ飛鳥さん!」

 

「そうだぜお嬢様。この美脚は既に俺のものだ」

 

「そうですそうですこの脚はもう黙らっしゃいッ!!」

 

「よかろう、ならば言い値で買おう!」

 

「売・り・ま・せ・ん!!!あーもう、まじめな話をしに来たのですからいい加減にしてください!それと!管理官さんも黙ってないで止めてください!」

 

「…納得いきません。なぜ私まで怒られたのでしょうか」

 

納得いかない管理官を置いておいて、全員一度仕切りなおすことにした。

 

 

 

 

 

座敷に招かれた”四人”はサウザンドアイズの幹部二人と向かい合う形で座る。長机の対岸に座るルイオスは舐めまわすような視線で黒ウサギを見続けていた。

 

「—————以上がペルセウスが私たち対して行った無礼の数々です。ご理解いただけたでしょうか?」

 

「う、うむ。ペルセウスの所有物 ヴァンパイアが身勝手にノーネームの敷地に踏み込んで荒らした事。それを捕獲する際に置ける数々の暴挙と暴言、確かに受け取った」

 

(…実際には暴挙を振るった上、所有物を奪い取ったのも私たちなのですけどね)

 

「それでですね。ペルセウスに受けた屈辱は両コミュニティの決闘をもって決着をつけるべきかと。サウザンドアイズにはその仲介をお願いしたくて参りました。もしペルセウスが拒むようであれば、”主催者権限”の名の下に」

 

「いやだ」

 

黒ウサギが言い終わる前に、ルイオスが突然断った。

 

「……はい?」

 

「いやだ。決闘なんて冗談じゃない。それにあの吸血鬼が暴れまわったって証拠があるの?」

 

「それは……」

 

「そもそも、あの吸血鬼が逃げ出した原因はお前たちだろ?実は盗んだんじゃないの?」

 

(…その通りです。見かけによらず意外と賢いですね)

 

「な、何を言い出すんですかッ!そんな証拠が一体何処に」

 

(…襖を開ければすぐそこに)

 

「事実、あの吸血鬼はあんたの所に居たじゃないか」

 

ぐっと黙り込む。それを突かれては言い返せない。黒ウサギの主張も、ルイオスの主張も、第三者が居ないという点では同じなのだ。

 

「まぁ、どうしても決闘に持ち込みたいというならちゃんと調査しないとね。……もっとも、ちゃんと調査されて一番困るのは全く別の人だろうけど」

 

「そ、それは……!」

 

視線を白夜叉に移す。彼女の名前を出されては黒ウサギとしては手が出せない。この三年間、ノーネームを存続できたのは彼女の支援があったからだ。

……それとは別に”もう一人”、視線を逸らす人が居た。

 

(…まずいです。調査されたら非常に困ります。傷害罪に窃盗罪……。いやですよ?こんなことで捕まるのは)

 

「じゃ、さっさと帰ってあの吸血鬼を外に売り払うか。愛想のない女って嫌いなんだよね、僕。だけどほら、アレも見た目は可愛いから。その手の愛好家にはたまらないだろ?」

 

「あ、貴方という人は…!」

 

「しかし可哀そうな奴だよねアイツも。自分のギフトを魔王に売り払ってまで仲間の下に訪れたのにさ」

 

「……え、な」

 

黒ウサギは絶句する、そして見る見るうちに蒼白に変わっていった。そんな様子をみたルイオスはにこやかに笑うと、蒼白な黒ウサギにスッと右手を差し出した。

 

「ねぇ、黒ウサギさん。このまま彼女を見捨てて帰ったら、コミュニティの同志として義が立たないんじゃないか?」

 

「……?どういうことです?」

 

「取引をしよう。吸血鬼をノーネームに戻してやる。代わりに、僕は君が欲しい。君は生涯、僕に隷属するんだ」

 

「なっ…」

 

(…もうすでに戻っているのですが。…ただ、黒ウサギも話し合いに夢中になってるのか忘れてますね……)

 

「一種の一目惚れって奴?それに”箱庭の貴族”という箔も惜しいし」

 

再度絶句する黒ウサギ。飛鳥もこれには堪らず長机を叩いて怒鳴り声をあげた。

 

「外道とは思っていたけど、此処までとは思わなかったわ!もう行きましょう黒ウサギ!こんな奴の話を聞く義理はないわ!」

 

「ま、待ってください飛鳥さん!」

 

黒ウサギの手を握って出ようとする飛鳥。だが黒ウサギは座敷を出ない。

 

(……え、…あの、今出られるとすごい困るのですが。…レティシアさんも襖の隙間から覗いてますが、困惑してるじゃないですか。……もしかして、飛鳥さんもレティシアさんのこと忘れてます?…十六夜なんて、口を押えて笑いそうになってるじゃないですか!)

 

管理官がこの場にいる誰よりも焦っていた。そして、人というものは、焦っている時こそまともな思考をできない生き物なのだ。

 

(……も、もしバレたら殺しましょう。目撃者が消えれば問題ないですから。【鮮血】…これなら装備していてもバレないでしょう)

 

管理官は周りに聞こえないぐらいの小声で呟き、背中に”真っ赤な小斧”を背負った。幸いにもルイオスには気づかれていなかった。…十六夜には気づかれていたが。

 

「ほらほら、君は”月の兎”だろ?仲間の為、煉獄の炎に焼かれるのが本望だろ?君たちにとって自己犠牲って奴は本能だもんなぁ?」

 

「……っ」

 

(…いや、あの、気づいて?レティシアさん困ってるから。襖の奥で困ってるから)

 

「ほらほら、どうなんだよ!黒ウサ」

 

黙りなさい!

 

ガチン!とルイオスの下顎が閉じ、困惑する。

 

「っ……!?………!!?」

 

「あなたは不快だわ。そのまま地に頭を伏せてなさい!

 

混乱するように口を押えたルイオスは体を前のめりに歪める。だがしかし、命令に逆らって強引に体を起こす。何が起こったのか理解したルイオスは強引に言葉を紡いだ。

 

「おい、おんな。そんなのが、つうじるのは、—————格下だけだ、馬鹿が!!」

 

激怒したルイオスが取り出したギフトカードから、光とともに現れる鎌。

 

……その瞬間を待っている人が居た。

 

「…これで、正当防衛成立です」

 

管理官は背中に隠していた【鮮血】を取り出すと、ルイオスの鎌を”粉々に”斬り伏せた。

 

「なにっ…!?」

 

「…おや、意外と脆いですね。もう少し頑丈だと思っていたのですが」

 

「ええい、やめんか戯け共!話し合いで解決できぬなら門前に放り出すぞ!」

 

「……、ちっ。最初に攻撃してきたのはその女ですけどね!それに、こっちは武具まで壊されてるんですけど!」

 

「えぇ、分かってます。これで今日の一件は互いに不問という事にしましょう。……あと、先ほどの話ですが……少しだけお時間をください」

 

「待ちなさい黒ウサギ!この男の物になってもいいというの!?」

 

「…そうです。ちゃんと頭を使って考えてください。…十六夜も気づいているんだからいい加減手伝ってください」

 

「いや、教えない方が面白いだろ?」

 

「…私が困るのですが」

 

「……仲間に相談するためにも、どうかお時間を」

 

「オッケーオッケー。こっちの取引ギリギリ日程……一週間だけ待ってあげる」

 

ルイオスはにこやかに笑うと、中庭から飛んで出て行った。…出て行ったのをきっかけに、とうとう我慢の限界なのか、管理官は飛鳥と黒ウサギに【鮮血】を向けた。

 

「…いい加減にしてください。お二人ともそろそろ殺しますよ!?

 

「なんでですか!?」

 

「急にどうしたのじゃ!?」

 

「いや、そこは怒りますよだろ」

 

「お、落ち着いて管理官さん!何をそんなに怒っているの!?」

 

「…二人とも馬鹿なんですか!?…レティシアさんのこと忘れてますよね? あ、もう入ってきていいですよ」

 

襖を開けて困惑したレティシアが入ってくる。それを見て二人も気づいたのだろう。

 

「「……あっ」」

 

呆然とするのであった。

 

 

「…一回殺していいですかね」

 

「「すみませんでした……」」

 

 

 

 

 

 

…反省する二人を見て、小斧を振り下ろすか考える管理官であった。

 

 

 

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