「あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いて貰うだけで小一時間も費やすとは。学級崩壊とはきっとこのような状態に違いないのデス」
(触り心地は悪くないですね)
「いいからさっさと進めろ」
割と本気の涙を浮かべながらも、黒ウサギは話し始めた。
●○●○●
(なるほど。まとめるとこういうことですか)
この世界は”箱庭”と呼ばれる異世界である。箱庭にはギフトゲームという法が存在する。
あらゆる物事はギフトゲームによって決定する。ギフトゲームは”恩恵”……才能を用いて行うゲームである。
ギフトゲームの勝者は主催者が提示した商品を入手できる。
(…まぁ、私が居なくてもどうにかなるでしょう。長期間私の存在が確認できない場合には”財団”に引き継ぎをしてもらうよう、話も付けてありますし…。まだ、私の”管理下”にいるので大丈夫ですかね…)
「待てよ。まだ俺が質問してないだろ」
「…私もしていないのですが、まぁ聞きたいこともないのでいいでしょう」
「……どういった質問です?ルールですか?ゲームそのものですか?」
「そんなことはどうでもいい。腹の底からどうでもいい。俺が聞きたいことはただ一つだ」
「…何でしょう?」
「この世界は……面白いか?」
「……YES 箱庭の世界は外界より格段に面白いことを保証いたします!」
(面白い…ですか…。そのような感情はここ数十年、感じたこと、無かったですね……)
●○●○●
「ジン坊ちゃーん! 新しい方を連れて来ましたよー!」
「お帰り、黒ウサギ。そちらの御三人様が?」
「はいな、こちらの御四人様が……」
クルリと振り返り、カチンと固まった。
「……あっれー、もう一人いませんでしたっけ?目つきが悪くてかなり口の悪い、俺問題児!って感じの方が…」
「あぁ十六夜君のこと?彼なら「ちょっと世界の果てを見てくるぜ!」と言って駆け出して行ったわよ」
「何で止めてくれなかったんですか!」
「「止めてくれるなよ?」と言われたもの」
「どうして教えてくれなかったんですか!」
「…教えなければいけなかったのでしょうか?」
「教えてください!管理人さんはともかく、お二人はめんどくさかっただけでしょう!?」
「「うん」」
ガクリとうなだれる黒ウサギ。
「ま、まずいよ黒ウサギ。世界の果てには幻獣が」
「幻獣?」
「ギフトを持った獣のことです。出くわせば最後、人間では太刀打ち出来ません!」
「あら残念。それじゃあ彼はゲームオーバー?」
「ゲーム参加前にゲームオーバー?…斬新」
「……」
(そう簡単に死ぬような人間には見えませんでしたが……。まるで
「…ジン坊ちゃん。すみませんが御三人様の案内をお願いします。黒ウサギは問題児様を連れ戻してまいりますので!」
そう告げると、黒ウサギは髪を緋色に染め飛び去って行った。
「紹介が遅れてすみません。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢11になったばかりの若輩者ですがよろしくお願いします」
「久遠飛鳥よ。そこで猫を抱えているのと、白衣を着ているのが」
「春日部耀」
「管理人とお呼びください」
「それじゃあ箱庭に入りましょう。まずは軽い昼食でも取りながらお話を聞かせていただけるかしら?」
「分かりました。近くにおすすめのカフェがありますので、そちらに案内させていただきます」
「いらっしゃいませー。ご注文はどうしますか?」
「えーっと紅茶を三つと緑茶を一つ。あと軽食にコレとコレと…」
「ティーセット四つにネコマンマですね」
「三毛猫の言葉分かるの?」
「そりゃ分かりますよ。私は猫族なんですから」
「……箱庭ってすごいね。私以外にも三毛猫の言葉がわかる人がいたよ」
「ちょ、ちょっと待って。春日部さんも猫と会話できるの?」
「うん。生きているならどんな物とでも会話できる」
「……」
(…あなたのような人材が、我が社にも欲しかったです。……そうすれば、彼らも………生きていられたかもしれませんね)
「あ、あらゆる生物と会話できるとは心強いギフトですね。箱庭においてとても貴重な能力ですよ」
「そうなんだ」
「春日部さんには素敵な力があるのね」
「久島さんは」
「飛鳥でいいわ。管理人さんもね」
「…でしたら私も管理”官”で構いません。私は”普通の人間”ではないですから」
「飛鳥は、どんな力を持っているの?」
「私?……私の力はひどいものよ。だって…」
「おんやぁ?誰かと思えば名無しの権兵衛のリーダー、ジン君じゃないですか。今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないんですか?」
品のない声がジン=ラッセルを呼ぶ。そこには2mを超えるピチピチのタキシードで包む変な男が立って居た。