幸せの後先~ハズされ者の幸せ3~   作:鶉野千歳

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荒天によって1日余分に横須賀に滞在した秦たち。
急ぎ、呉に戻ることに。

そこで作戦の概要が話される。



新たな家族

遠州灘上空を西に向かう飛行艇。

その機内では・・

イチャイチャしている2組がいた。

一組は・・ 秦と鳳翔。

隣り合い、肩を抱き、互いの顔を寄せて微笑んでいる。

 

「あ な た  うふふふふ。」

 

「なぁに、ほうしょう」

 

夫婦なのにいつまでも恋人チックな二人である。

もう一組は・・ 大石大佐と五十鈴だった。

大石大佐にもたれ掛かり、身体を預けている五十鈴が、そこにいた。

この二人の顔は、朱に染まっていた。

大石大佐の手と五十鈴の手が、恋人繋ぎで結ばれていた。

どうやら、昨晩のうちに、二人の想いが繋がったようだ。

その二人を、目を細めながら秦が見ていた。

 

(これで、新たなカップルが誕生したな。 人が人を思うことは、良いことだしね。)

 

そう思っていた。

そんな機内の雰囲気とは違って、機体はよく揺れた。

それでも着実に呉へと向かっていた。

 

 

「ただいま!」

 

お昼前、呉鎮守府執務室に秦たち四人が帰ってきた。

 

「あ、お帰りなさい、提督。 ご苦労様でした。」

 

返事をしたのは居残りだった秘書艦の榛名だった。

 

「いやあ、低気圧のお陰で一泊、余分に時間が掛かったけど、こっちはどうだった?」

 

「はい。 こちらは、雨より風でしたね。 強風でかなりの被害が出ています。 停泊していた艦もだいぶ擦ったみたいですし。」

 

「そうか。 それは大変だったな。」

 

「急ぎ、元通りに復旧作業をさせています。 何隻かは修理が必要な状況です。」

 

「おぅ、そんな影響あったのか。 そういえば、あちこちの港に避難していた艦隊は?」

 

「はい。 全艦隊無事で、呉に帰投中です。 損害はありましたが、損失はありませんでした。 損害としては、かなり擦れた傷がありましたので、修理に廻しています。 その関係で遠征や訓練にやや支障が。 一応、こちらに・・報告書にまとめておきましたのでご確認をお願いします。」

 

報告書を受け取り、内容を見て、

 

「ま、仕方がないだろうな。 いや、よくやってくれて助かったよ、榛名。 ありがとう。」

 

「いえ、そんな・・」

 

頬が赤くなった、かと思えば、なぜかクネクネしてる榛名であった。

 

「そ、それはそうと、榛名、これを見てくれ。」

 

そう言って例の計画書を見せた。

 

「作戦計画書、ですか。」

 

「ああ。 今回の出張の目的だったものだ。」

 

一通り読んだ榛名が、溜息をついた。

 

「ハァ。 なんていうか・・ 大規模なんですね、こんどの作戦は・・」

 

「そういうことだ。」

 

部屋の雰囲気が暗くなるような、そんな感じがした。

 

「まぁ、しょげてもいられないからね。 で、悪いんだが、長門と金剛を呼んでくれるかい?」

 

「長門さんと金剛お姉さまですね。 了解です。」

 

可愛く敬礼した後、館内放送で長門と金剛を呼び出した。

 

「秘書艦榛名より達します。 長門さん、金剛お姉さま、至急、執務室まで。 繰り返します・・・・」

 

しばらくして執務室に長門、金剛がやってきた。

 

「失礼する。 提督、何用か?」

 

「ハァーーイ! 呼ばれて来たヨー!」

 

「すまないね。 まずは、座ってくれ。」

 

そう言ってソファーに着座を促した。

 

「長門と金剛に来てもらったのは、新たな作戦計画が発せられたことを伝える為なんだが・・」

 

「新たな作戦?」

 

「ああ。 と言っても半年は先になるんだがね。 だから、作戦計画なんだが、他のモノにはまだ秘密だからね。 いいね?」

 

「OH! そんなに先の話ですカー?」

 

秦が、概要を説明する。

 

「時期が来れば、ここ呉から一斉に全艦出撃、と言うのではなく、いくつかの泊地から分散してから出撃する予定なんだ。 詳しくはまだ話せないんだけど。」

 

「と言うことは・・」

 

「君が察した通り、ここの艦隊のいくつかを予め分散配備することになる。 まだ”どこか”は言えないけどね。」

 

「そうか。 趣旨了解だ。 では、今後は訓練も本格的に、だな?」

 

「ああ。 より実戦的になるな。 長門、金剛。 よろしく頼むよ。」

 

「了解だ。」「任せるネー!」

 

さすが戦艦の艦娘だ。

理解が早いので助かるのだった。

 

「了解だが・・」

 

長門が何か言いたそうだ・・

 

「ん? なにかな?」

 

「訓練は、実戦的なものにするが、弾薬類の補充は、十分なのか? 訓練をすれども弾薬類が無くては意味がないぞ?」

 

長門の意見はもっともだ。

だが・・

 

「心配要らないよ。 ちゃんと考えているよ。 榛名、工廠に弾薬類の大増産の依頼を掛けておいてくれ。 生産ラインいっぱいでね。」

 

「はい、それは構いませんが・・」

 

「なにか?」

 

「いえ、私はそこまでやったことが無いので・・ その・・」

 

モジモジしている榛名。

 

「大丈夫よ。 私がお教えしますから。 分からないことがあったら何でも聞いてね。」

 

横から手助舟を出してきたのは鳳翔だった。

 

「と言う事で、榛名、詳しくは鳳翔に聞いてくれ。」

 

「はい。 分かりました。」

 

パッと顔色が明るくなって、元気に返事をしていた。

 

「それと・・ 大石大佐には分艦隊の指揮をお願いするつもりだから、そのつもりで。」

 

「はい。」

 

緊張した顔つきになる大石大佐。

 

「分艦隊の旗艦は、長門、君にお願いすることになるから、そのつもりでね。」

 

「了解だ。」

 

長門が答えた。

 

「あら、あたしはどうなるのよ? 秘書艦は続けるの?」

 

そう聞くのは秘書艦・五十鈴だった。

 

「五十鈴には秘書艦のままだよ。 五十鈴には分艦隊の総旗艦をやってもらうつもりだよ。」

 

と秦が応えていた。

 

「え? そ、総旗艦?? あ、あたしが?」

 

目を見開いて驚く五十鈴だったが、

 

「そうだよ、五十鈴。 しっかりと頼むよ。」

 

大石大佐が、にっこりと微笑んで答えていた。

五十鈴は、その笑顔に、自身の頬を赤めていた。

 

「それと、もう一方の分艦隊は、私が指揮するが、総旗艦は榛名にやってもらうからね。」

 

「えっ? 榛名が、ですか?」

 

「ああ。 秘書艦でもあるし、代理もこなしてくれたし、ね。 よろしく頼むよ。」

 

「は、はい! この榛名、全力で頑張ります!!」

 

と榛名は握りこぶしに力を込めていた。

 

「以上だ。 退室していいよ。 あ! 金剛は残って。」

 

長門が”失礼する”、と言って執務室を出ていった。

 

「テイトクー、何の用ネ?」

 

残された金剛が先に話してきた。

 

「悪いね。 金剛、第二対潜駆逐艦隊はどうだい?」

 

「そのことでスカ! 訓練も十分ネ。 いつでも出撃OKネ!」

 

「そうか・・ 実はね、本作戦が始まったら、君と榛名は横須賀の秋吉提督の艦隊の配下に入ってもらうからね。」

 

「そ、それはどういう・・」

 

「それはどういう事ネ?」

 

二人が疑問に思うのは無理ないことだ。

榛名は第一対潜駆逐艦隊の、金剛は第二対潜駆逐艦隊の、主力として訓練してきたのに、である。

 

「すまないな。 秋吉提督の艦隊は、君たち姉妹艦の比叡、霧島が居るんだが、対潜駆逐艦隊より、向こうの戦艦隊に欲しいということで、配属替えすることになったんだ。 もちろん、反対はしたんだが、な。」

 

すまなそうな顔をする秦だ。

 

「ハァ。 まぁ、命令とあらば従わざるを得ませんネー。 でも・・」

 

「ん、択捉と松輪のことかい?」

 

「イエス! 何ていえば良いのか・・ 難しいデスネ・・」

 

・・・

 

しばらく沈黙の時間が流れた。

 

「まぁ、今すぐじゃないから、そのうち俺から話すさ。 それで今はいいだろ?」

 

「お願いしマース。 あの子たちと離れるのは、寂しいデスネ・・」

 

少し悲しそうな表情の金剛だ。

 

「もう、母親だな、金剛?」

 

「えぇ、あの子たちは、あれで十分にかわいいですからネ・・」

 

「あ、あの、榛名も、ですか?」

 

「ああ。 榛名も、だ。 すまないね。」

 

こちらも表情が曇る。

 

「ただ、実際の配属替えは、まだまだ先だから、ほかの皆には内密ね。 わかったかい?」

 

それを聞いて・・

 

「了解ネー!」「はい。 分かりました。」

 

二人の返事は、元気なものになっていた。

 

「さ! まだ始まったばかりだから、今から暗い顔をしても何にも始まらない。 しっかり頼むぞ。 みんな?」

 

秦がそう言って、この日の打ち合わせを終えた。

 

 

「そういや、榛名の引っ越しは終わったのかい?」

 

「あ、はい。 もう少しなんですが、今日のうちに済ましてしまおうと思っています。」

 

「部屋は見た?」

 

「はい。 私一人では十分すぎる大きさです。 ホントにいいんでしょうか。 何か、勿体ないような気がしますが・・」

 

榛名が戦艦寮から官舎へと移るのだが、今までは金剛と同室だったのが、今度は一人部屋となるのだった。

部屋自体の大きさは、さほど変わらないのだが、二人から一人になることで、一人当たりの面積は倍!となっていた。

 

「ま、建物の大きさは変えられないから、一人で広いかもしれないけど、我慢してくれるかい。 もっとも、普段は執務室に居るし、休日には、こども達が遊びに行くだろうからね。」

 

「それはいいのですが・・ それはそうと、食事は今まで通り、本館食堂でいいんですね?」

 

「あら、榛名ちゃんも官舎の食堂で摂らないの?」

 

「え? いいんですか?」

 

「榛名もうち等と同じく、官舎の食堂で摂るんだよ。」

 

「ふふふ。 これで一人増えますねぇ。 料理のし甲斐が増えます。」

 

そう言って笑う鳳翔だ。

 

「まぁ、本館食堂で食べてもいいけど、一応、家族なんだし、ここの食堂で食事しよ。」

 

と秦もニコリと笑った。

勤務時間も終わって、榛名の引っ越しだ。

運び込む荷物は、そんなに多くなかったので、こども達も手伝ったおかげで、二往復しただけで終わってしまった。

ベッドも、箪笥も、机も完備だから、ホントに身の回りの品だけだった。

そして時間は1900。

今日の夕食からは、新たに榛名がテーブルにつくのだった。

今までより、賑やかな食事風景となっていた。

用意する食事の量は・・ 今までより多くなっていた。

少し、ではなく、やや多めだ。

 

(やっぱり、戦艦組の榛名の食事量は、それなりに多いんだなぁ。)

 

と感心する秦だった。

 

 

その日の夜。

寝室のベッドに腰かけている二人。

秦と鳳翔だ。

 

「あなた。 榛名ちゃんのことですけど、いいんですか?」

 

「ん、ああ。 横須賀への配属替えのことかい?」

 

「ええ。 かなりショックを受けていたようですけど。」

 

「こればかりは、命令だからな。 下手な小細工は、今はしない方がいい。 もっとも、その時になってみないと、ね。」

 

「やっぱり気にしていたんですね。」

 

「ああ。 せっかくウチに来たんだからね。 家族として、一緒に居たいしね。」

 

「ふふふ。 それでしたら心配しすぎでしたか。」

 

「はは。 そうなるね。 昼間にも言ったけど、配属替えがあるとすれば、作戦開始直前になるだろうからね。 そうなれば、どさくさに紛れることもあるさ。」

 

秦はそう言って笑っていた。

 

「もう。 人が悪いですよ?」

 

そう言って秦にもたれる鳳翔。

肩を抱いて、頬を鳳翔の頭に寄せて、

 

「鳳翔に気付かれるくらいの人の悪さなら、そんなに悪くはないだろ?」

 

と。

それに応えるように、

 

「ええ。 まだ可愛いと思いますよ。」

 

と鳳翔がいう。

そのうちに、互いの顔が向き合い、さらに近づいていく。

そして・・

んっ

ちゅっ

むっ

二人の唇が重なり、漏れる空気の音がしていた。

そして、そのまま抱き合ったまま、眠りに就くのだった。

 

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