第二段階へと移ることに。
いよいよ戦闘は苛烈になってきた。
時間は、艦隊突入開始から3時間が経過し、戦略爆撃の第二段が始まるのだった。
”突入部隊から通信! これより退避行動に入る、です。”
「いよいよ第二段だな。」
秦がそう呟いて、艦橋から双眼鏡で島の方角を見ていた。
”こちら電探室。 100キロ先、島の上空15000に大編隊を確認!”
「始まるみたいだよ、父さん?」
「ああ。 そのようだな。」
電探が捉えた大編隊。
戦略爆撃の第二段だった。
米戦略空軍の超大型爆撃機数百機による高高度爆撃。
それも、島全体を対象とする、焦土爆撃だった。
「この爆撃で、島の形が変わってしまうだろうな・・ 人の行いとは罪なことだ・・」
双眼鏡を覗きながら呟く秦。
目的は、敵勢力を駆逐するためとはいえ、島全体に対する爆撃は、秦の本心からすると、やりすぎだろ、と思っていた。
恐らく、爆撃の後は、虫一匹いない土地になってしまうだろう。
果たして、それでいいのか・・ 大いに考えさせられる行為だった。
「ねぇ、しれーかん、あたいらはこれからどうすんの?」
「まだ現状のままだよ?」
「え~~!!」
「なんだよ?」
「ちょっとは休みたいぃ~!!」
「だめ。」
即答だった。
「朝霜ちゃん、まだ駄目だよ。 もう少しだから、頑張ろうよ?」
「う~、睦ちゃんがそう言うなら・・ 頑張る・・」
「皆、頑張ってくれ。 遅くとも今日中には終わらせよう!」
そんなくだらない話をしている間にも報告が届いた。
”絨毯爆撃が開始されました! 物凄い爆弾の雨です!! 大雨です!”
と報告してきたのは、司令艦隊方面へ飛ばした偵察機からだった。
続けて、
”巻き添えを避けるため、これより退避します!”
と報告してきた。
「暫くは様子見だな・・」
と呟く秦の期待を裏切る報告が入った。
”退避中の味方小型艦数隻が、爆撃の巻き添えで沈没の模様。”
「なんだと!」
「え? どういう事??」
秦と睦が同時に声を出した。
沈没艦の艦名は不明とのことだった。
味方の攻撃で、味方にやられるとは、何という不運か。
秦も、巻き添えを喰らう事があるかも・・と心配していたが、現実のものになった。
「大型爆弾を一発でも喰らえば、駆逐艦クラスなんてたまらんだろうな・・」
「どれくらいの番数になるの?」
と聞くのは朝霜だった。
「25番や50番・・ていうもんじゃないよね、きっと・・」
「ああ。 予定では、1トン爆弾を混ぜ込んだ、親子爆弾だね。 あの超大型爆撃機、1トン爆弾を10発以上は積めるはずだけどな。」
ゲッ
顔を顰める朝霜や皐月たち。
「そんな機体が、数百機だしな・・」
ゲゲッ
艦上爆撃機「彗星」ですら50番、500キロ爆弾を1発積むのがやっと。
艦上攻撃機「流星」の航空魚雷1本でほぼ1トンある。
そんな1トン爆弾を数発積んで、高度10000以上を飛ぶなんて、化け物である。
しかも、通常爆薬ではなく、破壊力がより大きい高性能爆薬だ。
大きさ以上の破壊力がある。
そんな絨毯爆撃の爆炎は遠くからでも確認できるほどだった。
30分程経った頃
”爆撃隊が遠ざかります!”
と偵察機から報告が入った。
「どうやら、第一陣が終わったようだな。」
そう思っていたが、
「高高度に別の編隊を視認! 大型爆撃機の様です!」
と報告が来た。
「え? 父さん、どういう事? 別動隊が居たの? てか、味方?」
「偵察機へ。 その編隊は味方だ。 爆撃戦果を継続監視せよ。」
そんな指示を出した。
「味方なんだ。」
「別動隊が居たなんて、聞いてないよ?」
「はは。 悪い。 機密事項なんでな。」
「そう言われるとしょうがないなぁ。」
”爆撃機第二陣、数は100機あまりです! まっすぐ島に向かいます。 推定高度12000!”
この第二陣が放つ爆弾は、落下エネルギーをそのまま利用し、地中深くまでめり込んで、爆発させるのだ。
事前に偵察を行い、地下設備のあるエリアを特定済みだった。
第二陣の爆撃。
1発の重量は数トンあった。
”第二陣爆撃が始まりました。”
爆弾が起こす土煙が、上空からでも分かるほどの爆発力だった。
その爆発の振動は、陸地だけではなく、海上の艦隊にも伝わるほどの強烈な爆発だった。
「う、微妙に海が揺れてるよ・・ これって爆発の振動?」
「そうだな。 これほどまでに振動するとは・・」
「す、すごい振動だね・・」
「な、なんか怖い感じがするよ・・」
みな、島が壊れるんじゃないかと思うくらいだった。
爆撃開始からものの10分で爆撃が終わった。
爆撃機はそのままの高度を保って飛び去って行った。
”爆撃が終わりました・・ 島は・・ 全面が茶色になっています・・”
秦の思った通り、島から緑が無くなり、茶色い地面がむき出しの島になってしまっていた。
「終わったな。 島の形を変えてしまったか・・」
何か納得がいかない感じがするが・・
「全艦に達する。 周囲の警戒を怠るな。 まだ敵を全滅させたわけじゃないぞ! 偵察機隊、周辺偵察を続行せよ!」
「り、了解。 全艦、警戒を怠るな!」
そう。 まだ終わったわけではなかったのだ。
◇
第二陣の爆撃隊が飛び去ってから30分弱。
偵察機から報告が来た。
”偵察機2番機から旗艦へ。 我が艦隊方面に向かう敵艦隊を発見! 敵は、大型艦、小型艦合わせて5隻の模様! 艦隊との距離35キロ! 既に射程内!”
「なに!? 敵艦隊がまだ居ただと?」
「そうみたい。 どうするの?」
「どうもこうもない。 やるだけだ。 偵察機へ、敵艦の詳細を知らせ! 睦、全艦戦闘態勢。 砲雷撃戦用意!」
「了解! 全艦戦闘態勢、砲雷撃戦よーい!!」
「敵艦隊、わが艦隊へまっすぐ向かいます。」
”こちら電探室、右舷1時方向に敵艦隊補足! 距離34キロ!”
「睦、戦闘機隊全機に爆装を指示。 対潜哨戒機に航空魚雷を搭載。 準備できた機から発艦してくれ。」
「り、了解。 戦闘機隊、全機爆装! 対潜哨戒機は装備を航空魚雷に換装! 急いで!! 準備出来次第、順次発艦!!」
睦が艦内放送にて艦内に指示を送った。
「父さん、この指示って、もしかして・・」
「その、”もしかして”の通りだよ。 敵の大型艦を潰さないと。 射程が全く違うからね。」
「でも、それだと、航空隊の被害は・・」
「ああ。 かなり出るだろうな・・」
”偵察機2番機より旗艦へ。 敵の構成は戦艦クラス1、巡洋艦クラス1、駆逐艦クラス3! 陣形は複縦陣!”
その報告を受けた秦は、戦艦クラスが1隻ならば・・と思ったのだった。
主砲は、長門級で41センチ砲が4基8門、米国アイオワ級でも16インチ砲が3基9門だ。
もちろん、当たれば一発で吹き飛ぶが、高速で動く小型艦を主砲で沈めることは、まぁ、出来ない。
それでも十分な脅威には違いないのだが。
そう思っているうちに、発砲された。
”敵艦、発砲を確認!”
”こちら電探室。 敵艦隊上空に直掩機と思しき機影を確認。 機数は4。 こちらに近づく!”
その報告を聞いて、
「よし。 皐月と卯月に下令。 2隻で敵艦隊の右舷より接近、魚雷攻撃に入れ! 続いて、弥生に下令。敵艦隊の左舷より魚雷攻撃だ。 朝霜は空母・鳳翔の護衛に付け!」
「「「了解!」」」
駆逐艦・皐月と卯月が増速していく。
駆逐艦・弥生が右に舵を切って、こちらも増速していった。
空母・鳳翔と駆逐艦・朝霜は左に舵を切って退避行動に入った。
「睦、敵戦艦から離れるんだ。 距離40キロを維持。 この距離なら敵の砲弾は届かない!」
「了解! 敵戦艦との距離を維持!」
舵を切った後に、敵の砲弾が着水した。
”後方に弾ちゃーく! 被害なし!”
空母・鳳翔が作った航跡に数個の水柱が上がった。
退避する空母・鳳翔の甲板上で、各機の発艦準備が整っていった。
「戦闘機隊、準備よろし! 発艦、始め!!」
飛び立っていく烈風の胴体下には25番の爆弾が2発、抱えられていた。
爆装したのは、直掩や護衛を除く、8機のみ。
その後、航空魚雷を装備した対潜哨戒機が甲板上に上がってきた。
「対潜哨戒機、準備よろし! 発艦、始め!!」
全速で退避する空母・鳳翔から対潜哨戒機が飛び立つ。
飛び立つのは、現在哨戒中の機を除く8機のみ。
全16機の攻撃隊だ。
「攻撃の目標は大型艦のみ! 他には目もくれるな!」
と秦に指示されていた。
◇
発艦作業中にも、敵の4機の機体が近づいてきた。
「睦、対空戦闘用意! 朝霜にも対空戦闘を下令!」
見るからに、爆弾を胴体下に抱えているようだった。
まずは直掩機が迎撃に向かった。
直掩機が到達するまでは、朝霜と鳳翔からの対空砲が火を噴いていた。
”左舷後方より敵機接近!”
その情報に、秦よりも睦が叫ぶのが早かった。
「左舷銃座、弾幕張って! 対空噴進砲、撃ち方、始め! 航空管制、発艦作業急いで!」
対空機銃、対空機関砲が火を噴く中、対潜哨戒機が飛び立っていく。
そして、
”全機発艦終了!”
との報告がきた。
「よし、高機動回避! 頼むよ、睦。」
「了解。 任されて!」
空母・鳳翔が右に、左にと大きく舵を切るのだった。
”こちら直掩機、会敵する! 対空砲を止めてくれ!”
飛行隊からの要請で鳳翔と朝霜からの対空砲が止まった。
そして、空中戦が始まった。 ドッグファイトの空中戦。
空中戦が始まると、すぐに分かった。
旋回性能はこちらが優勢だった。
果敢に空母・鳳翔に迫ろうとするが、直掩機の機関砲が敵機を粉砕していく。
”まず、1機撃墜! 残り3!”
”落ちろ落ちろ! お艦に傷一つ付けてたまるか! 落ちろ!”
照準器に敵機影を合わせてトリガーを引く!
20ミリ機関砲弾が光の筋となって敵機に吸い込まれていく。
途端に発火、爆発して四散していく。
”残り2!”
下を見ると敵機を追い落としていく烈風が見えた。
敵機は被弾したのか、そのまま海へ落ち、飛沫が上がっていた。
”よし、残り1!”
最後の1機は海面すれすれを飛んでいた。
艦橋から見ていた秦が、
「突っ込むのか?」
と思った瞬間、追ってきた烈風の射撃でそのまま海へと突っ込んでいった。
海面に衝突してバラバラになる機体。
”全機、撃墜!”
その報告に、安堵する秦だった。
「ふぅ。 危なかったな。 直掩隊、よくやったぞ!」
直掩隊は、翼をに振って、再び上空援護に就くのだった。
◇
空母・鳳翔に襲ってきた敵機を撃墜し終わったころ、皐月、卯月、弥生の3艦は敵戦艦に接近しつつあった。
皐月と卯月は左に舵を切り、敵艦隊の右舷側へ、弥生は右に舵を切って、敵艦隊の左舷側へと向かっていた。
敵艦も接近してくる皐月たちに気付いて攻撃を始めていた。
”敵巡洋艦から砲撃!”
既に20000の距離を割り込んでいたから、戦艦の副砲、巡洋艦の主砲からの砲撃に曝されていた。
徐々に艦の周りに立ち上がる水柱が増えてきた。
「ひゃー、各艦、ジグザグで回避だよ!」
敵が発砲するたびに左右どちらかに舵を切って回避する。
「機関、問題はない? 故障は無しだよ!」
「今のところは!」
とは言うものの、舵やエンジンは、フル稼働状態だった。
舵は右に左に頻繁に切られている。
エンジンは、加減速を繰り返していた。
それだけでも酷い使いようである。
その中でも魚雷の準備が進む。
「第一弾右舷魚雷戦準備! 敵方位右65度、相対速度マイナス30、距離15000、雷速40、調整深度8、雷数2! 卯月ちゃん、合わせて!」
「了解ぴょん! 第一弾右舷魚雷戦、皐月ちゃんに合わせて!」
準備ができたとき、2隻が左に舵を切った。
右舷に敵艦隊を見る位置に。
「よし! 第一弾魚雷戦用意! 撃て!!」
魚雷発射管から2本の魚雷が、敵艦隊の未来予想位置に向かって放たれた。
「うーちゃんも発射する! てーー!」
続けて卯月からも2本の魚雷が放たれた。
”魚雷、航走!!”
魚雷を発射するとすぐに増速して次の魚雷攻撃の準備に入った。
「次、左舷魚雷戦準備。 こっちが本命だから、再計算、よろしく!!」
予備魚雷も装填して、残本数は6本。
これが皐月と卯月の2艦で12本だった。
「第二弾、本命だよ! 魚雷戦準備! 敵方位左45度、相対速度マイナス25、距離12000、雷速40、調整深度8、雷数6! 全弾行くよ!!」
次々と落ちてくる敵砲弾を躱しながら魚雷の準備が進む。
”弾ちゃーく! 至近です!”
至近弾で艦体が左右に大きくうねった。
その中を魚雷の必中射点に向けて、欺瞞航路を進む皐月と卯月。
卯月が遠くを見ると、敵艦の反対側に弥生が一人で進んでいた。
◇
”皐月、卯月が第一弾魚雷戦を開始した模様!”
「こっちも行くよ! 敵艦隊右舷40度、距離15000、雷数4! 急いで!」
”準備よし! いつでもどうぞ!!”
「魚雷、発射!!」
弥生から4本の魚雷が放たれた。
こちらも敵艦隊の未来予想位置に向けて4本の魚雷が走っていく。
◇
魚雷発射とほぼ同時刻に、攻撃隊による攻撃が行われていた。
航空魚雷を抱える対潜哨戒機が4機1組になって、敵戦艦の右舷側からと正面やや右からの2コースから接近していた。
25番を2発抱える戦闘機隊は、高度5000から降下して来ていた。
まずは、敵戦艦に向けて1飛行小隊4機が突入する。
降下爆撃に気付いた敵戦艦から対空砲が撃ちあがってきた。
機体のそばを光る弾が通り過ぎていく。
高度4000、3000、2000・・
「目標、敵戦艦のどてっぱら! ・・・行けぇ!!」
1機あたり2発の25番の爆弾を投下する。
投下し終えた機体を急激に引き上げて回避する戦闘機隊。
回避する戦闘機が1機、敵の対空砲を受けて火を噴いていた。
”被弾した! 脱出する!!”
そう言い残して海へと突っ込んでいった。
同時に、敵戦艦に爆弾が落ちて、爆炎が上がった。
命中は8発の内5発だった。
艦中央部に3発、前部砲塔付近に2発だった。
中央部への3発の内2発が煙突に落ちていた。
煙突も対爆構造ではあったが、落下エネルギーと合わさった爆弾の威力には太刀打ちできなかった。
機関部にまでその爆発がおよび、機関の半分が被弾してしまっていた。
3発は海へと落ちて、水柱が上がっていた。
さらに残り4機の戦闘機隊も降下してきた。
2機は敵巡洋艦に。
残り2機は駆逐艦に。
巡洋艦には2発が命中し、2発が外れた。
前部甲板の砲塔付近と左舷の中央部付近に命中だった。
中央部の爆弾は、搭載していた魚雷にうまくあたったらしく、大爆発を起こしていた。
その爆発力により、船体が二つに折れ、中央部から沈んでいった。
駆逐艦への爆撃は艦首付近に落ちていた。
あたった直後にその爆発力で艦首が一瞬、沈みこみ、次に爆炎が起こった。
艦首がもぎ取られてしまっていた。
浸水により艦が前屈みになっていたが、完全に沈みはしなかった。
◇
戦闘機隊の爆撃の後は、対潜哨戒機の航空魚雷攻撃がやってきた。
”無事な艦にむけて、2機ずつ攻撃する! 魚雷、投下ぁ!!”
敵艦まで距離2000で、対潜哨戒機から航空魚雷が投下されていく。
まだ生きていた対空砲によって2,3機が被弾した。
だが、何とか全機魚雷を投下し終えた後だった。
投下された航空魚雷は、沈みかけた巡洋艦に2本が、同じく艦首がもぎ取られた駆逐艦にも2本が向かった。
残りの航空魚雷は無事な駆逐艦に向かうが、艦上から銃撃がなされ、必死で舵を切って回避しようとしていた。
もう、艦隊運動どころではなかった。
動きが取れない巡洋艦と駆逐艦に2本ずつが命中して、大きな水柱が上がった。
巡洋艦は前後1本ずつが命中し、水柱が収まるとほぼ同時に沈没した。
駆逐艦1隻に2本の航空魚雷は致命的だった。
爆発の瞬間、船体が持ち上がったかと思うと、水柱が立ち上がり、船体が裂けていくのが見えた。
魚雷があたった舷を下にしつつ、転覆してしまった。
ずぶずぶと沈んでいくのが上空から見て取れた。
”敵巡洋艦、撃沈セリ!”
続けて、
”敵駆逐艦1隻、転覆! 撃沈と認む!”
と報告されたのだった。
◇
敵艦隊の悲劇は続いた。
敵戦艦右舷に1本の水柱が上がったのだ。
15000の距離を走ってきた駆逐艦・皐月と卯月の魚雷がようやく到達したのだった。
だが、当たったのは1本のみで、3本が外れた。
”駆逐艦・皐月の魚雷1本、命中! 残りは外れた!”
戦艦に魚雷1本は、そんなに被害は出なかった。
浸水があったようだが、まだまだ動いていた。
砲塔が旋回し、火を噴いていた。
しかし、今度は左舷から水柱が上がった。
駆逐艦・弥生からの雷撃4本の内1本だった。
こちらも15000の距離をやってきたのだった。
2本は外れたが、残り1本が最後尾を行く駆逐艦にあたって水柱が上がっていた。
あたった瞬間、駆逐艦は中央部が持ち上がったが、今度は崩れるように沈んでいく。
”駆逐艦・弥生の魚雷、2本命中!”