幸せの後先~ハズされ者の幸せ3~   作:鶉野千歳

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戦いが進む中で、ついに被害が!



戦闘(4)-無傷ではいられない-

敵艦からの砲撃は、続いていた。

敵艦隊まで12000の距離に着こうとしたときだった。

駆逐艦・皐月に強烈な衝撃が走った。

艦橋にいた皐月が下から突き上げられたような感じだった。

 

「な、なに??」

 

船体が後ろに引っ張られ、艦首が水面の上に出ていた。

すぐに、爆発の衝撃が艦全体を襲った。

同時に艦首が水面を叩くように着水した。

 

「わああぁぁぁぁぁ!!」

 

衝撃で艦橋の窓が割れて飛び散った。

 

”艦尾被弾!!”

 

その報告を理解する間もなく、駆逐艦・皐月の艦尾から大量の爆炎が上がっていた。

 

「皐月ちゃーーーん!!」

 

叫んだのは卯月だった。

 

「皐月ちゃん、大丈夫?」

 

駆逐艦・皐月の後ろを航行していた卯月からは、皐月が被弾したのが良く見えていた。

 

”皐月、艦尾に被弾!!”

 

”皐月、速度低下! このままだと衝突します!”

 

「もう! 取り舵20度! 駆逐艦・皐月を避けて!!」

 

駆逐艦・卯月が取り舵を切って衝突を避けようとした。

 

”こちら機関室! 艦尾を撃ち抜かれました! 舵が効きません! 推進力、0!! 浸水発生!!”

 

「ダメージコントロール、急いで!」

 

艦首が起こす波が無くなっていた。

 

”緊急排水するも・・ダメです! 浸水止まりません!”

 

「クッ、機関室より後ろを閉鎖!」

 

皐月は、機関室から後尾の閉鎖を指示した。

だが、浸水は止まらなかった。

そして、二発目が艦の後部に当たった。

二度目の衝撃が艦全体を襲った。

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

 

”浸水、さらに拡大! このままでは・・”

 

皐月は悩んだ。

大いに悩んだ。

悩んでいる間にも被害が増えていった。

新たな衝撃が艦全体を襲った。

艦中央部から後方で爆発を起こしていた。

 

”後部弾薬庫、誘爆しました!! ダメです、手がつけられません!! 艦内にガスが充満しつつあり!!”

 

急激に艦尾が沈み込む状況を把握した。

こうしなければ、ヤバい、と決断した。

 

「総員、退艦!! 急いで!! 繰り返す! 総員退艦!! 旗艦へ打電! ”総員退艦ス!”と・・」

 

言い終わるまでに、大爆発した。

 

 

艦尾から沈む駆逐艦・皐月を見て、卯月が叫ぶ。

 

「皐月ちゃんたちの救助を!! 艦を横付けして!」

 

だが、ここはまだまだ敵の射程内で、敵艦も健在だった。

皐月に向けて舵を切ったのだが・・

次の瞬間、今度は駆逐艦・卯月に強烈な衝撃が襲った。

艦首付近に敵戦艦からの砲弾が命中したのだった。

 

「ぎゃあああああ!」

 

駆逐艦・卯月の艦首が海中に沈み、艦尾が水面上にあらわになった。

回転するスクリューが水の上で、カラカラと虚しく回転しているのが見えた。

爆音とともに爆炎が空へと立ち上った。

艦首が海面上に浮き上がり、艦尾が海面を叩いていた。

艦橋から艦首を見ると、命中した破孔が煙を吐きながら見えていた。

艦首から数メートル分が無くなっているようだった。

 

”艦首、断裂しています! 浸水発生!!”

 

「とにかく、浸水を止めて!! 急いでぇ!!」

 

艦首がもぎ取られた状態では、水の抵抗が大きすぎて速度が出ない。

急激に減速する卯月。

そこへ、ここぞとばかりに敵艦からの砲撃が続いた。

皐月や卯月の至近距離に着弾すること、多数。

水柱が崩れて卯月の上に降ってくる。

 

「きゃあああああ。」

 

小雨と言うレベルじゃない。

滝のような水量だった。

 

”浸水、止まりません!”

 

”機関は動いていますが、進みません!”

 

”機関室に浸水! 排水急げ!”

 

艦が進まない上に、浸水して徐々に沈み始めてしまった。

ここにきて、卯月も決断した。

 

「うー、総員退艦だぴょん! 逃げるぴょん!! 急ぐぴょん!!」

 

卯月が指示を出した時点で、前部魚雷発射管が水没する直前だった。

 

「全員、飛び込むぴょん!!」

 

そう叫んで海へと飛び込んでいった。

 

 

遠くに皐月と卯月の爆炎を見た弥生は、残る魚雷を発射すべく、発射点に向かっていた。

浮いている敵艦は、戦艦1と駆逐艦2の三隻のみだった。

 

「魚雷準備、急いで!」

 

敵艦隊迄12500。

まだまだ距離があったため、全速で近づく弥生。

 

「機関、全速よ! 10000を切ったら同航戦に!」

 

窯が破裂する寸前まで出力を上げ続ける弥生だった。

その間も主砲による砲撃を行いつつ接近する。

 

「右舷魚雷戦用意、右90度、開度0.5、距離10000、深度調整8、全弾行くよ!」

 

何とか9800まで接近した。

 

「よし! 取り舵いっぱい! 同航戦に! 全主砲、右舷より砲撃続行!」

 

皐月、卯月を狙っていた敵砲弾が弥生に向かい始めた。

弥生の周囲に着弾する敵弾が増えてきた。

 

”左舷弾着、至近!”

 

同航戦になった時、

 

「全魚雷、発射! 撃て!!」

 

駆逐艦・弥生に残されていた4本の魚雷が放たれた。

敵艦隊に向けて。

 

”魚雷航走、確認! 到着まで5分!”

 

魚雷を撃った弥生は、

 

「皐月ちゃん、卯月ちゃんの救援に向かうよ! 前進全速ヨーソロー!」

 

と指示を出していた。

しかし、敵艦まで距離9500を切った途端、生き残っていた敵艦の砲から多数の砲撃を受けるのだった。

右舷に敵艦を見ている弥生に、敵砲弾が次々と襲い掛かってきた。

一発は1番砲に命中し、1番砲が大破、砲撃不能になってしまった。

次の一発は艦尾だった。

艦尾の爆雷投射機付近に命中した。

そのはずみで爆雷投射機が破壊されてしまった。

更に二発が艦橋とマストの中央部に命中し、艦橋の右半分が吹き飛んでしまった。

爆風で反対舷の壁まで飛ばされた弥生だった。

命に別状なかったが、意識が一時失うほどであった。

最後は、右舷の喫水線付近に数発を喰らってしまった。

装甲版を破って艦内に飛び込んだ砲弾が、一瞬の間をおいて爆発する。

それが数発だった。

再びの爆発の衝撃で意識を取り戻した弥生だったが、あまりの衝撃に、艦の傾斜に、そして、被害の大きさも考え、最後の指示を出した。

 

「うぅっ、うぅ・・ ここまでかしら・・  総、員、退艦・・」

 

その言葉の後、右舷を下にしながら、駆逐艦・弥生は転覆してしまった。

 

 

駆逐艦・弥生に命中し爆炎が上がるのをみて喜んだであろう、敵艦隊だが、その喜びは一瞬だった。

左舷の水線下から強烈な振動がやってきたのだった。

数分前に弥生が放った魚雷が命中したのだった。

戦艦に2発。

駆逐艦2隻に1発ずつ。

高い水柱が4つ上がった。

弥生の放った魚雷は全弾命中だった。

被害は・・ 大きかった。

駆逐艦2隻とも左舷に直撃で、舷側を破って浸水。 転覆寸前の状態になってしまっていた。

戦艦も、同じく左舷に2発、しかも1発はスクリューシャフトにあたったらしく、推進力はゼロになっていた。

もう1発は艦首付近に命中し、艦首を失い、艦首左舷に大きな破孔が出来ていた。

これらの浸水のため、左へ傾斜し、各砲塔の旋回が出来なくなってしまっていた。

つまり、攻撃不能だった。

敵艦からの砲撃が止んだことを確認した秦は、朝霜と睦に止めを刺すよう指示を出した。

 

「睦、朝霜。 砲撃のやんだ敵艦に対し、止めを刺すんだ。 主砲、砲撃用意!」

 

「「了解!」」

 

駆逐艦・朝霜と空母・鳳翔が舵を切って攻撃力を失った敵艦隊へと向かった。

 

”敵艦隊、有効射程に入りました!”

 

「主砲、撃て!」

 

”1番砲、方位よし、距離15000! 電探照準よし! 交互射撃で砲撃する!”

 

まず、空母・鳳翔から艦橋前部に据え付けられた15.2センチ連装砲が火を噴いた。

空母・鳳翔には、駆逐艦にはない大型の射撃用電探が搭載されていた。

これの精度が良かったらしく、初段から命中した。

当然ながら、既に動かなくなった船に対しては、外すことは無かった。

また、駆逐艦・朝霜の主砲も火を噴き、敵艦に命中していた。

火を噴く敵艦において、わずかながら砲塔が生きていたらしく、時々砲撃してくるのだった。

砲塔の旋回が出来なかったため、方位を定められなかったが、一基だけがたまたまこちらに向いていた。

その砲からの砲撃が、これまた、たまたま距離があい、砲弾が命中した。

あたったのは空母・鳳翔の舷側だった。

艦首付近の飛行甲板すぐ下に、一発の砲弾があたったのだった。

小口径砲だった為に、衝撃は軽かったが、当たった瞬間、飛行甲板が爆圧で持ち上がり、破孔を作った。

炎と煙が上がった。

 

”飛行甲板付近、被弾!”

 

「被害は? 誘爆を防げ!」

 

被害状況を確認するよう、指示を出す秦。

 

”左舷カタパルト故障! 使用不能! ただし、右カタパルトは支障なし!!”

 

”損害軽微! 艦載機の発艦には支障なし!!”

 

とのことだった。

艦橋から甲板を見下ろす秦が、

 

「軽微だったか。」

 

と胸をなでおろすのだった。

鳳翔と朝霜の二艦は一方的に砲撃を繰り返し、十数発を撃ち込んだところで、敵戦艦が大爆発を起こした。

巨大な煙を吐きながら、左舷後方から海へとゆっくりと沈んでいくのが見て取れた。

駆逐艦は元々魚雷が当たっていたために数発の砲撃が命中しただけで、転覆、沈没していった。

 

 

戦闘開始から1時間あまりが経過した。

水上、対空の各電探に敵の反応は無かった。

また水中聴音も反応は感じられなかった。

 

”水上電探に、敵艦の反応なし。”

 

”対空電探に、味方機以外の反応なし。”

 

”水中聴音も同じく、敵の音源を感知せず。”

 

残るは、3度目の爆撃による焦土爆撃だけだったが、もうほとんど島には建物らしいものは無くなっていた。

それでも大型爆撃機による高高度爆撃が行われたのだった。

 

「父さん、高高度12000に大編隊を確認したよ・・ これで最後だね・・」

 

「ああ。 恐らく最後になるだろう。」

 

大編隊は島の上空で爆弾を投下して飛び去ってしまった。

投下された爆弾は数百個にもおよび、既に緑が無くなった島の大地をさらに”耕して”行った。

双眼鏡で島の方を見ていた秦は、

 

「これで、終わったのか・・・  睦、艦隊の被害状況を確認してくれるかい?」

 

と言い、睦が応えるのだった。

 

「了解、分かったよ。」

 

と。

 

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