幸せの後先~ハズされ者の幸せ3~   作:鶉野千歳

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艦娘に戻った睦の、復帰後初の起動試験を行うことに。



艦娘・睦
睦の試験!


秦には気がかりなことがあった。

それは・・

 

「朝霜、皐月、卯月、弥生。 お前たちは、今、俺を父親、鳳翔を母親としているが、今のままでいいか、それとも、睦みたいに養女になるか、と言う問題があるんだが?」

 

「「養女?」」

 

「うん、相生の時は、楠木姓を名乗ってもらったけど、ホントのところはどうしようかって思って。」

 

「養女ってことは、ボク等が司令官の戸籍上も娘ってことだよね?」

 

「そういうことだな。」

 

「・・私は、良い。 養女に、なる。」

 

そう言ったのは弥生だった。

 

「や、弥生ちゃん。 決めちゃっていいの?」

 

そう聞くのは睦だ。

 

「うん。 お父さんとお母さん、良いもん。」

 

「そうか。 弥生。」

 

と言って秦が弥生の頭をくしゃくしゃに撫でた。

 

「うーん・・ やっぱり、ボクも!」

 

「えー! うーちゃんも!」

 

「はいはい。」

 

と鳳翔が言いつつ、微笑みながら皐月と卯月の頭を優しく撫でた。

 

「朝霜はどうする?」

 

「あ、あたいは・・」

 

ちょっと考えていたようだが・・

はぁーっと溜息をついて、

 

「あたいも、なるよ。 養女に。」

 

「そうか。」

 

秦が朝霜の頭を撫でたのだった。

撫でられた四人はそれぞれに、へへへっと言って笑っていた。

だが、秦は笑っていなかった。

 

「養女になってくれるのは有り難いが、一つ言っておきたいことがあるんだ。」

 

「なんだい?」

 

「今後、将来の話なんだけどね。」

 

「提督を辞める話かい?」

 

そう言ったのは朝霜だった。

 

「え、なんで知ってる?」

 

思わず、驚いて声を上げた秦だった。

 

「そりゃ、娘になるんだもん。 それくらいは分かるさ。 へへへ。 実は横須賀で秋吉提督から聞いたんさ。 ”奴はいずれ辞めるぞ”ってね。」

 

「そ、そうなんだ。」

 

「だから、分かった上で、娘になるんじゃん。 気にしなくても良いよ。 ね、みんな。」

 

うんうんと首を縦に振る、卯月と皐月だった。

 

 

次の日の午後、秦は、大石、五十鈴、榛名、鳳翔と共に、対潜用に向けた改造を行っている高速戦艦・金剛と同・榛名を視察にやってきた。

35.6cmの主砲はそのままに、両舷側の副砲を換装し、追加で対潜兵器を搭載する予定だ。

対魚雷用爆雷投射機を片舷四基で計八基。

更に、両舷で八基の対空噴進砲を新設する。

その際、両舷の魚雷発射管は撤去する事となった。

 

「兵装の交換や増設だけだから、工事期間は短くて済むよね。」

 

「はい。 既に撤去する分は完了しています。 今は新たに増設する分も含めて、自動給弾装置を設置中です!」

 

と榛名が説明してくれる。

 

「「自動給弾装置?」」

 

そう聞くのは皐月、朝霜だった。

 

「うん、特に機銃のね。 25mm機銃だと、今までのは弾倉交換式で、1個の弾倉に15発しか装填出来なかったから、大型弾倉を備える方式に変更しようと思って、榛名と金剛で試行中なのさ。」

 

へぇーって言う声が聞こえたような気がした秦だった。

 

「これが上手くいけば、各艦も改造しようと思ってるんだ。」

 

各機銃や高角砲での給弾方法は、箱型の弾倉を交換する方式が主だった。

対空機銃の様に弾幕を形成する場合は、相当の弾数が必要となるが、15発ではあっという間に無くなってしまう。

なんとか、チェーンのようなベルト給弾式にしたいのだ。

そうなれば、1ベルトの長さだけが問題となる。

極端に言えば、無限に長いベルト給弾式にすれば、無限に撃ち続けることができる。

実際は、銃身の過熱やらを避けるために、連続射撃数が限られることになるのだが。

金剛と榛名は、同型艦ではあるが、微妙に違いがある。

大きな違いが無い二隻だが、改造するための入渠のタイミングによって改修が行われたり、行われなかったり、と差が出るのだった。

 

 

金剛と榛名の視察を終えた秦たちは、小用沖へとやってきた。

各自の艦にて保守作業を指示し停泊中の空母・鳳翔へとやってきた。

艦娘・睦の、空母・鳳翔での起動試験のためだ。

艦橋にまでやってきた、秦、鳳翔と睦の三人。

 

「それじゃぁ、始めようか。」

 

との秦の合図で、睦が艦娘席に座る。

傍に鳳翔が立ち、

 

「睦ちゃん、最初だから、焦らずにね。」

 

という。

 

「うん。 やってみるね。」

 

「では、睦、始めてくれ。」

 

睦は目を瞑って精神同調を始めた。

しばらくすると、睦の唸り声がしてきた。

うぅぅぅぅーーっと。

しかし、機関の始動音はしてこない。

睦が目を開いて、ぷはぁーーっと息を吐いた。

どうやら1回目は失敗の様だ。

 

「はぁはぁ、結構、キツイ。」

 

そう言いながら、息を整え、再び目を閉じた。

またも、うぅぅぅぅぅーーっと唸り声がする。

しばらくして、睦が、ぶはぁーーっとさっきよりも大きめの息を吐いた。

またもや失敗したようだった。

見ると、睦の額には玉のような汗があり、汗が流れ落ちるほどだった。

はぁ、はぁ、と肩で息をしていた。

 

「いきなりは、難しいか・・」

 

と秦が言うと、

 

「どうでしょう。 まったく動かない事はないと思いますが・・」

 

と鳳翔が応えた。

やはり、初回からの起動は無理で、しばらくやってみるしかないのか、それとも、睦は、この艦との相性が悪いのか、と、考える事はいっぱいあった。

その後、何度か繰り返してみたものの、艦はまったく起動しなかった。

何度か繰り返したため、睦が疲れてへたり込んでしまった。

 

「つ、疲れた・・・」

 

と。

そこで、休憩をとることにした。

鳳翔が紅茶を淹れて、三人で飲んでいた。

今日はジャムを入れたロシアンティーだった。

 

「はぁー、甘くておいしー。」

 

「良かったわ。 疲れたでしょ。 ゆっくり休んでちょうだい。」

 

「艦種が変わると、こうも難しいもんなんだなぁ。」

 

「艦種というより、久しぶりの方が、影響が大きいんじゃないですか?」

 

「やっぱりそうかな。 どうだ、睦?」

 

「うぅーん、かなりキツイ、かな。 今のところ、ウンともスンとも言わないからね。」

 

「駆逐艦と空母とでは、コツが違うんだろうか。」

 

「さあ、どうでしょう。 私も複数の種類を持った事が無いので、分からないですね。 ごめんね、睦ちゃん。 お役にたてなくて。」

 

「ううん、大丈夫だから。」

 

既に陽が傾き、夕暮れ時になっていた。

 

「もうこんな時間か。 それじゃ、あと一回やって、今日のところは終わろうか。」

 

「「はい。」」

 

休憩後に、今日最後の精神同調を行った。

が、また上手くいかなかった。

肩を落とす睦。

 

「どうして上手くいかないんだろう・・」

 

と嘆いていた。

 

「また、明日があるわ。 明日はきっとうまく行くわよ。」

 

と宥める鳳翔だが、確実に動くとは言い切れなかった。

秦も、

 

(こりゃぁ、時間が掛かるかな・・)

 

と考えていた。

夕食後、お風呂から上がった睦は、疲れからか、速攻でベッドに入って眠ってしまった。

 

「ありゃあ。 睦ちゃん、お疲れだね。」

 

「ボクでもやったことない事をやろうとしてるんだもん。 そりゃぁ、疲れるよねぇ。」

 

「なんか、かわいそうぴょん。」

 

「でも・・ 睦ちゃんしか居ないから・・ 頑張ってもらうしか、ない・・」

 

そこへ秦がこども達の部屋にやってきた。

 

「入るぞ。 睦はいるか?」

 

「あ、しれーかん。 睦ちゃんかい?」

 

秦に返事を返したのは朝霜だった。

 

「睦ちゃんなら、もう寝ちゃったよ。」

 

次に答えてくれたのは皐月だ。

 

「え、そうなのか。 かなり疲れてたからなあ。 無理もないか。」

 

秦は、ベッドのそばまでやってきて、眠る睦の頭をそーっと撫でてやった。

 

「お疲れさん、睦。 お休み。」

 

と。

そして、四人に向かって、

 

「すまないな。 睦から相談があったら、乗ってやってくれるかな。」

 

と。

 

「あたいらでいいなら、どんと来い!だよ。」

 

皐月、弥生が、そうそう、と言っていた。

 

「とは、言うものの、かなり難しい事をやっているからねぇ。」

 

「すまない。 迷惑を掛けるね。」

 

と言って秦は部屋を後にしたのだった。

部屋の外では鳳翔が心配そうな顔をして立っていた。

 

「あぁ、居たのか。」

 

「睦ちゃんは、どうですか?」

 

「もう、ぐっすりと寝てたよ。 だいぶ疲れているようだ。」

 

「そうですか。」

 

と溜息をつく鳳翔だった。

 

「今回ばかりは、睦に頑張ってもらうしかないよ。 鳳翔・・ 何かサポート出来る事があったら、してやってくれるかい。」

 

「はい。 それはもちろんです。」

 

秦はその言葉に、ありがとう、と返事をして、

 

「それじゃ・・ よっと。」

 

「きゃあ!」

 

秦は鳳翔を抱き上げた。

お姫様抱っこだ。

 

「あ、あなた、何を。」

 

顔が赤くなる鳳翔だ。

 

「何をって、これからベッドに行くんだけど?」

 

「もう!」

 

頬を膨らませてはいたが、その顔は微笑んでいた。

抱き上げられ、腕を秦の首に廻して。

秦は、抱き上げたまま、寝室へと入って行った。

 

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