幸せの後先~ハズされ者の幸せ3~   作:鶉野千歳

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まずは休息して落ち着く皆。
しかし、いつまでもまったり出来ない状況には変わりはない・・
まだ、そう。 まだ終わっていないのだ・・



今後の話

翌日0830の執務室に全員が揃っていた。

 

「おはよう。 朝から全員に揃ってもらったが、今後の話をしたいと思ってね。」

 

「どういう事だ、提督。」

 

まず応えたのは長門だった。

 

「うん。 まずは、帰ってきた各艦の修理を行う。 使えるドックは全部使う。」

 

「全部使っても、全艦の修理が終わるのはかなり先になるのでは?」

 

そう聞いてきたのは五十鈴だった。

 

「そうだな。 だから、軽微と思しき艦は、民間の工場のドックも使って修理を行うつもりだ。」

 

「「え? 民間のも??」」

 

「ああ。 現状において無傷なのは居留守部隊だった艦だけだから、何とか早急に修理をする必要があるからね。」

 

そう言って皆の顔を見渡す秦だった。

 

「それで、全体としての今後の話は・・ 今日から軍令部や国防省で話し合われるだろう。 その結果次第、と言うことになるだろう。」

 

「まぁ、そうでしょうね。 それによって・・ ですか。」

 

そう言ってきたのは大石大佐だった。

 

「ああ。 ま、民間のドックはこれから話をつけるから、早ければ昼前にはドックに入れると思う。 皆、各艦の状況確認をしておいてくれ。」

 

【了解!】

 

そう言って、執務室を出ていった。

 

 

昼前になって、民間のドックを使えることになった。

大型のドックには、戦艦・長門、同・榛名、そして空母・鳳翔が入る事になった。

そして、中規模のドックには駆逐艦クラスが数隻まとめて入るのだった。

空母・鳳翔がドックに固定される作業を見ていた秦と大石大佐、榛名の三人。

 

「おぉぉ。 パラオで損傷個所を調べた以上にやられてるなぁ。」

 

空母・鳳翔は、被雷1本と聞いていたが、それ以外に艦尾艦底にへこみや歪みが認められた。

 

「うわ・・ 直接当たったわけじゃないのに、かなり影響を受けているな・・」

 

舵が歪んでいた。

魚雷を回避した、はずだった。

それでも良く動いてくれたものだ、と思う秦だった。

その空母・鳳翔以上なのが戦艦・長門だった。

上部構造物は破孔で穴だらけ、火災の跡だらけだったが、水線下も酷いものだった。

魚雷を少なくとも3本が直撃した後があった。

更にへこみが数か所。

亀裂や破孔が明らかに分かるほどだった。

戦艦・榛名も、四番砲塔が大破しているのは確認していたが、その影響は艦底にまで及んでいた。

明らかに艦内から外に向かって船体が膨れていた。

水線ギリギリに砲弾があたった後もいくつかあった。

 

「うわ・・ ここまで酷かったんですね・・ 良く浸水しなかったわ・・」

 

自身が操ってきたとはいえ、ここまでとは思わなかったのだろう。

榛名が被害をみて驚いていた。

他にも巡洋艦、駆逐艦のドックも見て回った秦たちだった。

 

「被害状況の報告は・・ 明日までに纏められるでしょう。」

 

大石大佐の言葉に秦が応える。

 

「そうだなぁ。 それでお願いするよ。」

 

一通り見て回った秦たち。

 

「提督、みんな被害は大、ですが・・」

 

「なるべく早く修理をしてもらおう。 作業員たちには無理をさせることになるけど、ね。」

 

「分かりました。 ドック作業員に伝えます。」

 

 

結局、夕方になって執務室に帰ってきた秦たちに、

 

「父さん、お帰り。」

 

と言ってくれたのは皐月だったのだが・・

 

「ねぇ、ボクたちはどうすればいいの?」

 

と聞いてきた。

艦が沈んでしまっている皐月、弥生、卯月の三人は、手持無沙汰のようだった。

そんな三人を、鳳翔が子育ての手伝いをさせてはいたのだが・・

 

「おかえりなさい、あなた。 榛名ちゃんも。」

 

「ああ。 ただいま。」

 

「それで、どうでした?」

 

「ん、思った以上にひどい状況だよ。 特に榛名は・・ 数カ月かかるかも、だね。 ま、ドックからの見積次第なんだけど。」

 

「そんなに? 見た感じは問題ないのかな、と思ってたんですけど。」

 

驚く鳳翔だった。

 

「俺もそうは思ってたんだけどね。 特に四番砲塔の周りの装甲が内部から外へと膨れてて、最悪、艦尾を切り落とすかも・・・」

 

「そ、それは酷いですね・・」

 

「とにかく、明日以降に見積が出るだろうから。」

 

「はい、そうですね。」

 

そんな会話が交わされていた時だった。

一本の通信が入ってきた。

横須賀の秋吉からだった。

 

「よう。 こっちはようやく横須賀に着いたぞ。 そっちはどうだ?」

 

「これは秋吉中将。 お疲れ様です。 こちらはついさっき各艦をドックに入れた状態です。」

 

「そうか。 こっちはこれからだ。」

 

「そうなんですね。 で、御用の向きは、なんでしょう?」

 

「帰り着いて早々なんだが、上層部や役人たちと今後の話をすることになった。 その内容次第では、かなりの体制変更を伴う可能性がある。 当然、お前さんにも影響があるから、そのつもりでな。」

 

「また、ですか・・」

 

「なんじゃ、つまらなそうな声を出すな。 前にも言ったじゃろう。 お前にふさわしい地位だと。」

 

「今でも十分すぎますよ。 私は・・」

 

「おっと、そこまでじゃ。 退役はさせんからな。」

 

先手を取られた、と思った秦だったが・・

 

「お前さんは、いったい何人家族がいると思っておる? しかも増えたんじゃろうが。 将官クラスの給料でないと苦しいぞ?」

 

そう言って、脅される秦。

 

「そこで脅しますか?」

 

「ガハハハ。 そう言うつもりは無いわけではないが・・ 貴様、家族が増えたんじゃったな。」

 

「はい。 赤ん坊が二人、増えましたので・・」

 

「お前さんと鳳翔の子か。 可愛いじゃろうな。 ワシからすると孫のような感じがするのう。」

 

はぁ・・ と言うしかない秦。

 

「とにかく、近日中に連絡が来るはずじゃ。 それまでは現状維持でな。」

 

「はい。 分かりました。」

 

「それではな。」

 

と通信が切れた。

ふぅ、とため息をついて椅子にもたれる。

 

「廻りからどんどん埋められていく・・」

 

天井を見つめながら呟くのだった。

 

「ふふふ。 仕方ありませんね。 あなたは出来る人ですから。」

 

そう鳳翔が言うと、

 

「鳳翔・・ お前さんまでそう言うか・・」

 

と更に椅子に沈み込む秦だった。

 

「一度、聞いてみたかったんですが・・」

 

そう言ったのは榛名だった。

 

「なんでそんなに退役したいんですか? 昇進はいいことだと榛名は思いますけど・・」

 

「まぁね、昇進するだけなら、ね。 役が上がる、当然、責任も重くなるわけだ。」

 

「それはそうですけど・・」

 

「俺としては・ 人の悪意を、散々見てきたから、そこに関わり合いたいとは思わないだけなんだけど・・」

 

「それはそれは酷かったもんねぇ。」

 

横から話すのは、秦の事を知る睦だった。

 

「ああ。 まぁ、家族が増えたけど、俺個人としては、睦やこども達とじっくりゆっくりと触れ合いたい、鳳翔のそばにずっといたい、と思っているだけなんだよ。」

 

そう秦が言い、その目は鳳翔を見つめていた。

 

「出来れば・・ 朝から晩まで、ずっと鳳翔を抱きしめていたい・・ その気持ちなんだけどな・・」

 

「もう・・ 恥ずかしい・・」

 

頬を赤める秦と鳳翔だった。

その場にいたこども達は・・ 

 

”はいはい。 ご馳走様。”

 

と口にはしないが、態度はそう言いたげだった。

 

「私は、ずっとあなたの傍にいますから。 ふふふ。 そうですね、もしあなたが軍を辞めたら・・ 私は小料理屋でも始めようかしら。 もちろん、あなたにも手伝ってもらいますけど。」

 

「ああ。 その時は手伝うさ。 一緒に居れるなら、喜んで。」

 

互いを見つめ合う秦と鳳翔。

 

「あーあ、暑い暑い。」

 

「そういう事は、二人の時にしてください。 もう。 義兄さんも鳳翔姉さんも。」

 

呆れているのは榛名もだった。

 

「あー、その時は榛名も一緒ですよ。 いいですね! ふふ。 看板娘をやってあげます。」

 

だと。

 

「あら。 それだといいわね。」

 

「それじゃ、お母さんの美味しい料理と、美人の看板娘で大入り間違いなしだね!」

 

「あたいたちはどうすんだよ? 看板娘がいるんじゃ・・」

 

「おいおい、今から話を進めないでくれ。 まだ辞めるって決めてないんだぞ?」

 

呆れる秦だった。

 

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