まだまだ朝から強い日差しがする9月。
少し寝坊した私は、まぶたの上から感じる強い日差しで目を覚ましました。
う~ん、とベッドの中で伸びをします。
そして、隣の、あの人を見る・・が、あの人はもう居ません。
あの人の、枕の匂いを十二分に堪能した後、もそもそと起き出します。
お腹は、誰が見てもふっくらしています。
既に妊娠6ヶ月になろうとしているんですから、当然なんでしょう。
だんだんと、このお腹が重たく感じます。
「よいしょ」
ベッドから起きて、身支度をします。
寝間着を脱ぎ、下着をつけて、いつもの着物を着ます。
ただ・・ 帯の結び目の位置は、段々とズレてきているのが分かります。
「あ・・ また大きくなってる・・」
日に日にその大きさが、実感できるほどに。
ベッドに腰かけ、両手でお腹を擦ると、ポコっと押し返すかのような反応をしてくるようにりました。 親バカでしょうか。
「あぁ・・ 今日も元気なのね。」
そう声を掛けてから食堂、キッチンへと向かいます。
キッチンに着くと、既にあの人が居ます。
私と同じように、割烹着を着ています。
「あ、起きたのかい。 おはよう。」
と声を掛けてきます。
「おはようございます。 今日も早いですね、あなた。」
と私も返します。
すると、手を止めて私の傍までやってきてくれます。
「今日の体調はどうだい? 気分は?」
最近は、必ずこれを聞いてきます。
「ええ。 問題ないです。 調子は良いですよ。」
「そう。 良かった。」
彼はそう言うと、私を抱きしめてくれます。
ぎゅって。
彼の胸に顔を埋めるだけでも、幸せを感じる事が出来るのに、次は・・
彼の唇が、私の唇を塞ぎます。
やさしく、啄ばむように。
唇が離れると、お互いの視線を合わせて、微笑みあいます。
(あぁ・・ いいですね、この時が。)
そう思います。
「朝ご飯、出来てるよ。」
「はい。 いただきます。」
朝ご飯は、いつの間にか、彼の役目になってしまいました。
元々、料理が好きで、かなりの腕前なので、任せてしまっても彼は文句言いません。
逆に、こっちが恐縮しちゃいます。
朝ご飯を食べ終えると、そろそろこども達が起き出してくる頃です。
五人部屋なので、だいたい同じタイミングでやってきます。
一番は、睦ちゃんです。
私の代わりに、航空母艦・鳳翔を操ってくれています。
栗色のショートヘアの可愛い女の子です。
二番は、皐月ちゃんです。
黄金色の髪をツインテールっていうんでしょうか、髪を2つに括っています。
ちょっと少年ポイ口調の女の子ですね。
三番は、弥生ちゃんです。
銀色の髪の、おっとりとした雰囲気の女の子です。
四番と五番がほぼ同時で、卯月ちゃんと朝霜ちゃんです。
元気印の朝霜ちゃんと、フリフリが大好きな卯月ちゃんです。
この二人は、いつも最後です。
あの人が起こさなかったら、いつまでも寝ているんですよね、まったく。
でも・・ 五人が揃って食べている光景は、嬉しくなってしまいます。
今日も、元気に食べてるって。
そうそう。
今日は病院へ定期健診に行く日です。
妊娠が分かってから、1か月おきに病院へ行くことになっています。
あ、それから、市役所で母子手帳、貰ってきました。
母体と赤ちゃん、胎児って言うんですね、の状態を書き込んでいく手帳になっています。
そこには、私の、た、体重も記載する欄があります。
既に、通常より1キロも重くなっています。
産まれるときは3キロを超える大きさだとか。
そうすると、最終的に私の体重は、いったいいくらになるんでしょう。
そう思うと、凹んでしまいます。
◇
今月から鎮守府内に、学校が開設されることになりました。
小中高が。
先日、あの人と大石大佐が市長さんに、嘆願しに行きました。
最初は驚かれたようでしたけども、この戦争が終われば、艦娘が学校に通う事になります。
その時になって慌てても仕方がないので、今のうちから、やりましょう、という事になったようです。
一教室に教師が一人で、四人の教師が付くそうです。
児童・生徒は、鎮守府所属の艦娘です。
年少者組には、択捉ちゃん、松輪ちゃん、佐渡ちゃん、隠岐ちゃんたちが。
小学校組には、第六駆逐隊の暁ちゃん、雷ちゃん、響ちゃん、電ちゃんたちが。
中学校には、ウチの五人が通います。
他に駆逐艦の艦娘が数名。
高等学校には、軽巡組たち他が入ります。
まあ、訓練の一貫として、勉強をすることにしたのですが、どうなりますか。
そうそう。
学校気分を味わうんだとか言って、お昼を跨ぐときは、昼食はお弁当にするそうです。
食堂部のおばさま方にお願いをすると、大層、喜んだそうです。
なんでも、”この年で、キャラ弁作れるなんて!”とか”ウチの子には出来なかった事をしてあげようかしら。”なんていってらしたとか。
私も時々、お手伝いしますね、とはあの人に言ってはいるんですが、やらせてくれるんでしょうか。
ちょっと心配です。
◇
0820になって、こども達が”登校”します。
「父さん、お母さん、いってきまぁす!」
元気ですね。
「頑張って勉強しておいで。」
「はい、行ってらっしゃい。」
と私達も返事をします。
こども達は、相生の時に来ていた、セーラー服を着ています。
各自の戦闘服?があるんですが、”学校へ行くんだから、制服でしょ? でも制服の指定が無いんだったら、こっちの方がいいよ。”と言って着ています。
半袖の、白セーラー。
デザイン的には、吹雪姉妹のセーラー服に似ているでしょうか。
でも、衿は紺地に白三本ラインですから。
ちょっと困ったことがありましたね。
フレアスカートの丈を、もっと短くして!っと言われた事です。
あの子たちはどう思ってるのでしょうか。
あまりに短くすると、歩くだけでも、スカートが翻ってパンツが見えてしまいます。
もう、こっちが恥ずかしくなります。
今の子たちは、何とも思わないのでしょうか。
私の学生のころは、今とは違って、もっと長かったんですもの。
こども達から遅れる事30分。
あの人が出勤します。
以前は、もう少し早かったのですが、五十鈴ちゃんから苦情が来たそうです。
「提督が早いと、あたし達も早く出てこないといけなくなるから、もっと遅くしてくれない?」って言われたそうです。
いま、玄関先で見送ります。
白の第2種軍装、格好いいですね。
いつみても惚れ惚れしちゃいます。
あ、その前に、あの人が私をギュッと抱きしめます。
私もあの人の胸に顔を埋めます。
そして、口づけをしてから行きます。
口づけは・・ どちらが、と言うわけでは無く、互いが求めます。
暫く口づけのまま動きません。
このまま時間が止まればいいのに、って思ってしまいます。
唇が離れると、ようやくお見送りです。
「行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
何気ないこの一言でも十分、幸せを感じます。
あの人が言った後は、掃除と洗濯です。
お腹がつかえてやり難くなってきました。
しゃがむ動作がつらいですね。
なので、あの人が、私の為に、お手伝いさんを雇ってくださいました。
長期ではなく、短期間で継続更新をする約束で、アルバイトの学生さんを雇いました。
お腹を気にしつつ、家事を進めます。
1000になってアルバイトさんがやってきます。
そして二人して掃除と洗濯をします。
官舎の1階、2階と全部で10部屋ほどでしょうか。
こども達の寝室のベッドメイクもお願いしています。
私たちの主寝室は、私が担当します。
やっぱり、他人さまにしていただくのは、は、恥ずかしいですしね。
だいたい3時間で掃除と洗濯が終わります。
バイトさんお昼も食べずに働き続け、終わってからお昼をするそうです。
お昼は、本館の食堂を使う事が許されています。
まぁ、その方が空いていていいとは思いますが。
◇
お昼を済ませたあと、居間で一休みします。
あの人と共に病院に行くために、待っています。
「ただいま。 鳳翔、居る?」
あ、あの人が帰ってきました。
「はぁーい、居ますよー。」
と返事をして、玄関へと向かいます。
玄関で落ち合い、抱き合います。
うふっ。 朝抱き合ったばかりですが、もう一度です。
そして、一緒に病院へと向かいます。
病院では、艦娘担当の婦人科です。
艦娘用は、ほとんど待ち時間はありません。 すぐに診察です。
今日は、初めてのエコー検査をします。
実は、今までの検診でエコー検査はしてこなかったのです。
診察台の上で、お腹を出します。
あの人が傍にいるので、ちょっと恥ずかしいです。
女医さんがエコーをあてて、エコー画像を見せてくれます。
「あら! 赤ちゃんは双子ねぇ。」
「「え?」」
二人の裏返った声がしましたね。
「あのー、双子って言いました?」
確認のためにあの人が聞きます。
「ええ。 ほら。 胎児が二つあるでしょう。」
見ると、頭が二つ、手が四本、足が四本、胴体が二つ見えます。
間違いありません。
二つです。
私とあの人が目をあわせて、お目めパチクリ!状態です。
「性別は・・ ちょっと、見えないかしら。」
性別はまだ判明しないようです。
でも、分からなくてもいいです。
その他の検査もしておきます。
体重は1キロ弱の増加でした。
女医さんからは、まあまあかな、って言われました。
あまり太らないように、ですって。
ただ、「鳳翔さんは小柄で華奢だから、増加量は多いかも、ですよ。」と注意を受けちゃいました。
最近、食べちゃうんですよねぇ。
自分で料理して、自分で食べちゃうんです。
我ながらにして、ご飯が美味しいんですもの。
お箸が止まりません。
昨日も、あの人に「食べ過ぎじゃない?」って言われちゃいました。
気をつけましょうね。
それと、おっぱいが、張る様になってきましたので、そのことも女医さんに伝えました。
「良い事ですね。」と言われました。
一通りの検診が終わると、次は一か月後ね、ですって。
診察の予約を入れて帰途につきます。
帰りの車の中で、
「双子かぁ。」
「予想外でしたね。」
「予想外でも、いい方向に考えよう。」
「はい。 じゃぁ、喜び2倍、という事で。」
「ははは。 そうだね。」
と言いあいます。
にこやかに笑って帰ります。
官舎に帰ったら、それぞれの実家に連絡です。
私の母とお義母さんとに連絡です。
両家にとって、初孫になりますね。
あ、睦ちゃん達がいましたね。
でも、生まれるのは初めてですね。
どんな反応をするでしょうか。
ふふふ。 楽しみです。