幸せの後先~ハズされ者の幸せ3~   作:鶉野千歳

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今回は、鳳翔中心のお話です。


鳳翔の一日(1)

まだまだ朝から強い日差しがする9月。

少し寝坊した私は、まぶたの上から感じる強い日差しで目を覚ましました。

う~ん、とベッドの中で伸びをします。

そして、隣の、あの人を見る・・が、あの人はもう居ません。

あの人の、枕の匂いを十二分に堪能した後、もそもそと起き出します。

お腹は、誰が見てもふっくらしています。

既に妊娠6ヶ月になろうとしているんですから、当然なんでしょう。

だんだんと、このお腹が重たく感じます。

 

「よいしょ」

 

ベッドから起きて、身支度をします。

寝間着を脱ぎ、下着をつけて、いつもの着物を着ます。

ただ・・ 帯の結び目の位置は、段々とズレてきているのが分かります。

 

「あ・・ また大きくなってる・・」

 

日に日にその大きさが、実感できるほどに。

ベッドに腰かけ、両手でお腹を擦ると、ポコっと押し返すかのような反応をしてくるようにりました。 親バカでしょうか。

 

「あぁ・・ 今日も元気なのね。」

 

そう声を掛けてから食堂、キッチンへと向かいます。

キッチンに着くと、既にあの人が居ます。

私と同じように、割烹着を着ています。

 

「あ、起きたのかい。 おはよう。」

 

と声を掛けてきます。

 

「おはようございます。 今日も早いですね、あなた。」

 

と私も返します。

すると、手を止めて私の傍までやってきてくれます。

 

「今日の体調はどうだい? 気分は?」

 

最近は、必ずこれを聞いてきます。

 

「ええ。 問題ないです。 調子は良いですよ。」

 

「そう。 良かった。」

 

彼はそう言うと、私を抱きしめてくれます。

ぎゅって。

彼の胸に顔を埋めるだけでも、幸せを感じる事が出来るのに、次は・・

彼の唇が、私の唇を塞ぎます。

やさしく、啄ばむように。

唇が離れると、お互いの視線を合わせて、微笑みあいます。

 

(あぁ・・ いいですね、この時が。)

 

そう思います。

 

「朝ご飯、出来てるよ。」

 

「はい。 いただきます。」

 

朝ご飯は、いつの間にか、彼の役目になってしまいました。

元々、料理が好きで、かなりの腕前なので、任せてしまっても彼は文句言いません。

逆に、こっちが恐縮しちゃいます。

朝ご飯を食べ終えると、そろそろこども達が起き出してくる頃です。

五人部屋なので、だいたい同じタイミングでやってきます。

一番は、睦ちゃんです。

私の代わりに、航空母艦・鳳翔を操ってくれています。

栗色のショートヘアの可愛い女の子です。

二番は、皐月ちゃんです。

黄金色の髪をツインテールっていうんでしょうか、髪を2つに括っています。

ちょっと少年ポイ口調の女の子ですね。

三番は、弥生ちゃんです。

銀色の髪の、おっとりとした雰囲気の女の子です。

四番と五番がほぼ同時で、卯月ちゃんと朝霜ちゃんです。

元気印の朝霜ちゃんと、フリフリが大好きな卯月ちゃんです。

この二人は、いつも最後です。

あの人が起こさなかったら、いつまでも寝ているんですよね、まったく。

でも・・ 五人が揃って食べている光景は、嬉しくなってしまいます。

今日も、元気に食べてるって。

そうそう。

今日は病院へ定期健診に行く日です。

妊娠が分かってから、1か月おきに病院へ行くことになっています。

あ、それから、市役所で母子手帳、貰ってきました。

母体と赤ちゃん、胎児って言うんですね、の状態を書き込んでいく手帳になっています。

そこには、私の、た、体重も記載する欄があります。

既に、通常より1キロも重くなっています。

産まれるときは3キロを超える大きさだとか。

そうすると、最終的に私の体重は、いったいいくらになるんでしょう。

そう思うと、凹んでしまいます。

 

 

今月から鎮守府内に、学校が開設されることになりました。

小中高が。

先日、あの人と大石大佐が市長さんに、嘆願しに行きました。

最初は驚かれたようでしたけども、この戦争が終われば、艦娘が学校に通う事になります。

その時になって慌てても仕方がないので、今のうちから、やりましょう、という事になったようです。

一教室に教師が一人で、四人の教師が付くそうです。

児童・生徒は、鎮守府所属の艦娘です。

年少者組には、択捉ちゃん、松輪ちゃん、佐渡ちゃん、隠岐ちゃんたちが。

小学校組には、第六駆逐隊の暁ちゃん、雷ちゃん、響ちゃん、電ちゃんたちが。

中学校には、ウチの五人が通います。

他に駆逐艦の艦娘が数名。

高等学校には、軽巡組たち他が入ります。

まあ、訓練の一貫として、勉強をすることにしたのですが、どうなりますか。

そうそう。

学校気分を味わうんだとか言って、お昼を跨ぐときは、昼食はお弁当にするそうです。

食堂部のおばさま方にお願いをすると、大層、喜んだそうです。

なんでも、”この年で、キャラ弁作れるなんて!”とか”ウチの子には出来なかった事をしてあげようかしら。”なんていってらしたとか。

私も時々、お手伝いしますね、とはあの人に言ってはいるんですが、やらせてくれるんでしょうか。

ちょっと心配です。

 

 

0820になって、こども達が”登校”します。

 

「父さん、お母さん、いってきまぁす!」

 

元気ですね。

 

「頑張って勉強しておいで。」

 

「はい、行ってらっしゃい。」

 

と私達も返事をします。

こども達は、相生の時に来ていた、セーラー服を着ています。

各自の戦闘服?があるんですが、”学校へ行くんだから、制服でしょ? でも制服の指定が無いんだったら、こっちの方がいいよ。”と言って着ています。

半袖の、白セーラー。

デザイン的には、吹雪姉妹のセーラー服に似ているでしょうか。

でも、衿は紺地に白三本ラインですから。

ちょっと困ったことがありましたね。

フレアスカートの丈を、もっと短くして!っと言われた事です。

あの子たちはどう思ってるのでしょうか。

あまりに短くすると、歩くだけでも、スカートが翻ってパンツが見えてしまいます。

もう、こっちが恥ずかしくなります。

今の子たちは、何とも思わないのでしょうか。

私の学生のころは、今とは違って、もっと長かったんですもの。

こども達から遅れる事30分。

あの人が出勤します。

以前は、もう少し早かったのですが、五十鈴ちゃんから苦情が来たそうです。

 

「提督が早いと、あたし達も早く出てこないといけなくなるから、もっと遅くしてくれない?」って言われたそうです。

 

いま、玄関先で見送ります。

白の第2種軍装、格好いいですね。

いつみても惚れ惚れしちゃいます。

あ、その前に、あの人が私をギュッと抱きしめます。

私もあの人の胸に顔を埋めます。

そして、口づけをしてから行きます。

口づけは・・ どちらが、と言うわけでは無く、互いが求めます。

暫く口づけのまま動きません。

このまま時間が止まればいいのに、って思ってしまいます。

唇が離れると、ようやくお見送りです。

 

「行ってきます。」

 

「行ってらっしゃい。」

 

何気ないこの一言でも十分、幸せを感じます。

あの人が言った後は、掃除と洗濯です。

お腹がつかえてやり難くなってきました。

しゃがむ動作がつらいですね。

なので、あの人が、私の為に、お手伝いさんを雇ってくださいました。

長期ではなく、短期間で継続更新をする約束で、アルバイトの学生さんを雇いました。

お腹を気にしつつ、家事を進めます。

1000になってアルバイトさんがやってきます。

そして二人して掃除と洗濯をします。

官舎の1階、2階と全部で10部屋ほどでしょうか。

こども達の寝室のベッドメイクもお願いしています。

私たちの主寝室は、私が担当します。

やっぱり、他人さまにしていただくのは、は、恥ずかしいですしね。

だいたい3時間で掃除と洗濯が終わります。

バイトさんお昼も食べずに働き続け、終わってからお昼をするそうです。

お昼は、本館の食堂を使う事が許されています。

まぁ、その方が空いていていいとは思いますが。

 

 

お昼を済ませたあと、居間で一休みします。

あの人と共に病院に行くために、待っています。

 

「ただいま。 鳳翔、居る?」

 

あ、あの人が帰ってきました。

 

「はぁーい、居ますよー。」

 

と返事をして、玄関へと向かいます。

玄関で落ち合い、抱き合います。

うふっ。 朝抱き合ったばかりですが、もう一度です。

そして、一緒に病院へと向かいます。

病院では、艦娘担当の婦人科です。

艦娘用は、ほとんど待ち時間はありません。 すぐに診察です。

今日は、初めてのエコー検査をします。

実は、今までの検診でエコー検査はしてこなかったのです。

診察台の上で、お腹を出します。

あの人が傍にいるので、ちょっと恥ずかしいです。

女医さんがエコーをあてて、エコー画像を見せてくれます。

 

「あら! 赤ちゃんは双子ねぇ。」

 

「「え?」」

 

二人の裏返った声がしましたね。

 

「あのー、双子って言いました?」

 

確認のためにあの人が聞きます。

 

「ええ。 ほら。 胎児が二つあるでしょう。」

 

見ると、頭が二つ、手が四本、足が四本、胴体が二つ見えます。

間違いありません。

二つです。

私とあの人が目をあわせて、お目めパチクリ!状態です。

 

「性別は・・ ちょっと、見えないかしら。」

 

性別はまだ判明しないようです。

でも、分からなくてもいいです。

その他の検査もしておきます。

体重は1キロ弱の増加でした。

女医さんからは、まあまあかな、って言われました。

あまり太らないように、ですって。

ただ、「鳳翔さんは小柄で華奢だから、増加量は多いかも、ですよ。」と注意を受けちゃいました。

最近、食べちゃうんですよねぇ。

自分で料理して、自分で食べちゃうんです。

我ながらにして、ご飯が美味しいんですもの。

お箸が止まりません。

昨日も、あの人に「食べ過ぎじゃない?」って言われちゃいました。

気をつけましょうね。

それと、おっぱいが、張る様になってきましたので、そのことも女医さんに伝えました。

「良い事ですね。」と言われました。

一通りの検診が終わると、次は一か月後ね、ですって。

診察の予約を入れて帰途につきます。

帰りの車の中で、

 

「双子かぁ。」

 

「予想外でしたね。」

 

「予想外でも、いい方向に考えよう。」

 

「はい。 じゃぁ、喜び2倍、という事で。」

 

「ははは。 そうだね。」

 

と言いあいます。

にこやかに笑って帰ります。

官舎に帰ったら、それぞれの実家に連絡です。

私の母とお義母さんとに連絡です。

両家にとって、初孫になりますね。

あ、睦ちゃん達がいましたね。

でも、生まれるのは初めてですね。

どんな反応をするでしょうか。

ふふふ。 楽しみです。

 

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