脳内選択肢のせいで何回も死にかけるんですけど   作:七不思議

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黒歌遭遇編

突然だが俺と黒と黒歌さんの出逢いを話そう。

 

◇◇◇

 

あれは俺が物心着いた頃だ。俺の両親は幼い俺を置いてどこかに行ったらしい。らしいというのは俺のただの推測だ。両親の記憶はなく、ただ一人で生きてきた。寂しくなかったと言えば嘘になる。本当は寂しかった。

ある日突然頭の中に声が響いた。これが初めての絶対選択肢だ。

 

『選べ

─1「家を荒らし、強盗が入ったと警察に嘘をつく」

─2「何もしない」』

 

突然の出来事で思考が追いつかなかった。正気を戻すのに少し時間が掛かった。1番を選べば、もしかしたら両親と会えるかもしれない。しかし、俺は2番を選んだ。怖かったんだ。もし、1番を選んで両親が来なかったときのことを考えるのが。だから2番を選んだ。

 

絶対選択肢が現れてからはなるべく人に関わらないようにした。いや、違う。更に関わらないようにしたが正しい。

 

そんな日々をずっと過ごした。小学校では常に一人。集団行動というものが出来ないのかと先生に注意される程だ。

 

しかし、起点が現れたのだ。一匹の黒猫との出会いによって。下校中に、俺の前に一匹の黒猫が通り過ぎた。些細な事だったので気にならなかったが次の日も会った。俺はその黒猫をちゃんと見た。そして、見惚れた。毛並みの良さ。美しい体型と言えばいいのだろうか。猫に詳しくない俺ですら綺麗と思えるのだから。

俺は無意識のうちに黒猫に近付いていた。そして、撫でようとすると

 

「フシャーー!!」

 

「痛っ!?」

 

伸ばした手を引っかかれた。そして、黒猫は何処かへ行ってしまった。その際、黒猫はどことなく申し訳無さそうな顔をしていたのは気のせいだろうか。

 

次の日また見つけた。今度こそ。と思い近付く。しかし、俺は昨日のことで警戒されているんじゃないかと思い、黒猫を眺めるだけにした。眺めているうちに黒猫が誰かと似ている気がした。

 

また次の日、黒猫を見つける。心なしか昨日より近いところで眺められた。もっと近付けるように食べ物を持ってこようと思う。やっぱり誰かに似ている。

 

またまた次の日、俺は魚の缶詰めを持っていった。黒猫を見つけるなり、缶詰めを開け、その場に置く。黒猫はそれを見て警戒しながらも寄ってきた。触れようとすると直ぐに離れてしまう。しょうがないかと思い、黒猫が缶詰めを食べ終えるのを待った。

 

缶詰めをあげた次の日、また黒猫を見つける。そして、昨日と同様に缶詰めをあげる。黒猫は食べ終えるとお礼でも言うかのように鳴いた。綺麗な鳴き声だった。

 

その次の日は、缶詰めを忘れてしまった。しまったと思っていると黒猫の方が寄ってきてくれた。しかし、缶詰めは手持ちにない。

 

「ごめんな。今日忘れちゃったんだ」

 

そう言うと黒猫は缶詰めなんてどうでも言いかのように俺の足にすり寄ってきた。

俺はもしかしたらと思い恐る恐る黒猫に触れようとする。黒猫は嫌がる素振りを見せなかった。そして、黒猫の頭を撫でた。黒猫も気持ちよさそうに目を瞑っていた。

 

次の日、俺は公園のベンチでボーッとしていた。そろそろ、黒猫が来る時間かな。と思い腰を上げようとしたとき、俺の膝に黒猫が飛び乗ってきた。あの黒猫だ。今回も黒猫の方から寄ってきてくれた。缶詰めもある。缶詰めを与えるとお腹が一杯になったのか俺の膝の上で寝てしまった。寝ている間は少しだけ頭を撫でることが出来た。

 

それからは毎日黒猫と戯れた。休日だって会いに行った。まるで、友達の様に。しかし、やっぱり誰かに似ている。

 

 

 

◇◇◇

 

その日は朝から雨が降っていた。俺はあの黒猫が心配になりながらも学校に行く。授業では黒猫の事ばかり心配で集中出来なかった。

 

学校が終わった。しかし、まだ雨は降り続けている。俺は傘をさして急いで黒猫を探した。

 

「……はぁ……はぁ…」

 

息を切らしながらも探す。何時もの場所に居ない。真っ直ぐ進む。何故かコッチに居るんじゃないかそんな感じがした。そして、見つけた。ボロボロになって今にも死んでしまいそうな状態で倒れていたのだ。遠目から見てもわかる。刀傷、銃弾を打たれた痕、何かに焼かれた痕。俺は急いで傍に駆け寄った。酷い傷だ。それに、雨のせいか黒猫の体温が冷たくなってる。拙い、早く動物病院に行かないと。

 

「……にゃ……ぁ…ん」

 

黒猫は俺に気付いたのか弱々しい声で鳴いた。まるで、俺が動物病院に連れて行くのを止めろと言うかのように弱々しく俺が触れている手を引っかいたのだ。その通りだ。例え黒猫の意志を無視して動物病院に行ったとしても此処から何キロ先だ。着くまでに時間が掛かりすぎる。

 

嫌だ。嫌だ。嫌だ。死んで欲しくない。もっと一緒にいたい。

 

『選べ

─1「黒猫の意志を無視し、動物病院に連れて行く」

─2「黒猫の意志を尊重し、その場で亡くなるのを見ている」』

 

ふざけるんじゃない。

 

『選べ』

 

そんな選択肢いらない。

 

『選べ選べ選べ選べ選べ選べ』

 

そんな選択肢では助けられない。

 

『選べ選べ選べ選べ選べ選べ選べ選べ選べ』

 

時間が無い。

 

『選べ選べ選べ選べ選べ選べ選べ選べ選べ選べ選べ選べ選べ選べ選べ選べ選べ選べ選べ』

うるさいんだよ!!今此処で直ぐに助ける選択肢を

 

「……俺に寄越せぇぇ!!!」

 

俺の思いを聞き届けたのかもう一つの選択肢が現れる。

 

『─3「今すぐ助けれる知識、能力を手に入れる。しかし、死ぬほどの頭痛を伴う。可能性としては死ぬことも有り得る。死ななかった際にオマケがついてくる」』

 

「……3番だ。死ぬ可能性があったとしても助けたい」

 

俺の呟きの意味を黒猫は理解できなかった。しかし、黒猫は『死ぬ可能性』と言う言葉を聞くと必死で俺の手を引っかく。止めろと言わんばかりに。

 

「お前を助けられるならそっちの方に賭けたいんだ。どんな痛みでも耐えてみせる。それにお前が死んだら俺が寂しいだろ?お前だって死にたくないし、寂しいんだろ。お前を見たとき誰かに似ているって思ったんだ。それがやっとわかった。俺と似てるんだ。本当は寂しい癖に我慢して周りに壁作ってもっと寂しい思いして」

 

頭に痛みが走る。そして頭の中に知識が入ってくる。生物を治療する知識、黒猫に入っている異物を取り除く知識が。俺は時間がない故に知識が入ってくる中で治療する。道具は空から落ちてきた。

 

「けど、お前にあったときに初めて惹かれたんだぜ?」

 

痛みに耐えきれず段々と意識が危なくなる

 

「……お…まえ……がき……れいで……って……何……語ってん…だろ……うな」

 

先程よりも頭痛が酷くなる。いや、酷くなるではすまない痛みだ。頭を鈍器で何回も何回も殴られている痛み。頭の中を直接刃物で切りつけられているんではないかという痛み。意識が何回も飛びそうになる。しかし、まだ治療は終えていない。全身から尋常じゃない量の汗が吹き出る。おそらく、顔色も悪くなっているだろう。それを見ている黒猫は本気で心配している。

 

「も…う…すこ……し…も……って…くれ」

 

黒猫を助ける為の全ての知識が手に入った。そして、最後に能力を手に入れる。全身が焼ける感覚。神経が断ち切られる感覚。骨が折れる感覚。様々な痛みが伴う。まるで、俺の体が何かに書き換えられるかの様に。

そして、能力を手に入れた。能力名は『贈り物《ギフト》』だ。俺の中にある何かを指定して対象に贈る能力だ。勿論、絶対選択肢は贈れないルールになっている。

 

「……贈り物《ギフト》……し……よう」

 

俺が贈るモノは体力だ。残り少ない体力を贈り俺はその場で意識を失った。意識を失う際に綺麗な声が聞こえたが何を言っているのかはわからなかった。

 

「…君が言ったことは私も同じだよ」

 

 

◇◇◇

 

俺が目を覚ますと自分のベッドにいた。あの出来事は夢だったのだろうか?だとしたら、また俺は独りぼっちだ。ベッドの上でうずくまる。すると、階段を上ってくる足音が聞こえた。おかしい、この家には俺一人しか居ないはず。だんだん、足音が近くなり部屋の前で止まった。警戒を強める。しかし、強めた所で何をできるだろうか?もし、強盗とかなら確実と言っていいほどどうにもならない。そんな事を考えていると扉が開けられる。そして、そこにいたのは───

 

「おっ、目を覚ましたかにゃ」

 

和服の黒髪美人がお粥を手に持っていたのだ。

 

「……誰?」

 

「私?私は黒歌。道で倒れている君を見つけて此処まで運んだんだにゃん」

 

「道で倒れていた……あっ!?あの!!俺が倒れていた所の近くに黒猫が倒れていませんでしたか!!──っと、やばっ」

 

勢いよく起き上がったが体に力が入らなくなりベッドから落ちそうになる。所が黒歌さんが抱き付いて支えてくれた。

 

「全く、病人?何だから大人しくしていなさい」

 

「…す、すみません」

 

黒歌さんは俺を元の位置に戻す。俺は抱きついて支えられたせいか顔が赤くなっていると思う。

 

「教える前に、君の名前は?」

 

「……天野エルシャです。それよりも──」

 

「分かった。分かった。あの黒猫は大丈夫だにゃん。今は私の家で寝ているにゃん」

 

「……良かった。本当に良かった」

 

心の底から安心した。すると、目から涙が流れてくる。

 

「にゃ!?どうしたの!?何処か痛いの!?」

 

黒歌さんは突然俺が涙を流したせいか心配してきてくれた。

 

「いえ、嬉しいんです。黒猫が助かって本当に…」

 

「…エル君。(本当のことを言えない。実は私が黒猫でした何て言えないよぉ~。それにエル君が倒れた後に突然この家に転移させられたことだって疑問だし。)」

 

「あの黒歌さん?」

 

「にゃ!?な、何かな?エル君」

 

「い、いえ大したことないんですけど。……そのエル君って」

 

「ん?天野エルシャだからエル君。もしかして嫌だったかにゃん?」

 

「……嫌ってわけじゃなく。その……初めてそんな風に呼ばれて嬉しいというか何というか…」

 

俺がもじもじしていると黒歌さんは目を潤ませた。

 

「エル君は私を誘っているのかにゃん?襲っていいのかにゃん?………まあ、自重は大切。それよりエル君は此処で一人で住んでいるの?」

 

黒歌さんは潤んだ目を閉じ、真剣な眼差しで質問してきた。此処に一人で住んでいるのかと。別の捉え方では両親はいないのか。そうとも聞こえた。俺は俯き答える。

 

「…はい。一人で住んでいます」

 

「そう……」

 

黒歌さんは考える。そして

 

「よし、なら私も一緒に此処に住もうかにゃん。勿論、黒猫も連れてくるからね」

 

「えっ!?でも見ず知らずの子供の家に住むなんて大丈夫なんですか?それに黒歌さんの家族だって」

 

「あはは、そう言えば言ってないね。私も……家族は一人居るんだけどね。今は遠いところで離ればなれなんだ。それに、私が寧ろ迷惑をかけるかもしれないにゃん。それに住むと言っても居ないときの方が多いかもしれないし(その間は猫になってるんだけどね)それにね」

 

そう言って黒歌さんはベッドに腰をかけ俺を抱き締める。

 

「黒歌お姉さんはエル君の事が気に入っちゃったにゃん」

 

「ちょっ、黒歌さん恥ずかしいです。そんなに抱きつかないで下さい!?」

 

「それはエル君が可愛いのがいけないんだよ」

 

『選べ

─1「ずっと傍にいてください。と言う」

─2「そのまま黒歌を押し倒しキスをする」』

 

2番無理。2番無理。2番無理。

今になって1番の意味が分かる。その時俺は子供で無知だったんだと思う。

 

「黒歌さんずっと傍にいてください」

 

「……ふぇ?……」

 

俺がそう言うと黒歌さんは俺から離れ、顔を真っ赤にしていた。そして、何かを呟いている。

 

「だ、駄目だよエル君。そんなに私を本気にさせて。で、でもまだエル君は子供だからそんな事を判らないで言ってるのかな?でもでも、エル君って何か大人っぽいところあるし知っていて言ったのかな?でも、そうだとしたら……ふにゃ~ん。わ、私ってば子供相手に……けど救われたし、私も独りは寂しいし……」

『選べ

─1「ここぞとばかりに、黒歌さんは俺の事嫌いなの?と追加攻撃する」

─2「黒歌さんのおっぱい吸っていい?と聞く」』

 

迷うことはない。

 

「黒猫さんは俺の事嫌いなの?」

 

「エル君それは反則だにゃん。嫌いなわけ無いよ。こんなに可愛いんだからね。うん、決めたよ。傍にいてあげる。だからね、もうエル君は寂しい思いはしなくてすむよ」

 

黒歌さんは優しく微笑んだ。この時黒歌さんの笑顔に見惚れてしまったのは内緒だ。

 

それからの毎日は楽しくて暖かくて嬉しかった。家族ができて俺は変わっていけた。黒猫には黒って言う名前を付けた。学校だって、人を避けていたけど少しずつ、少しずつだけど友達を作っていけた。

 

黒歌さんに、黒に出会えて変わっていけた。黒歌と黒のお陰で俺は家族の温もりを知ることが出来た。俺は一人と一匹に感謝してもしきれない。

 

 

 

これが俺と黒と黒歌さんの出会いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっ!?そういえば黒の怪我を治してるときのチェスの駒みたいの出てきて壊れたんだけど何だったのかな?

 

 

 




此処で主人公設定

名前 天野エルシャ
性別 男
身長 170㎝くらい
容姿 髪の長さはショート。容姿は中性的だがどちらかというとカッコいい方。人の見方によってカッコいいか可愛いに別れる。本人はカッコいいとは思っていない。

能力 
神の知恵の爪楊枝(笑)
爪楊枝を使用することにより廃スペックな性能の恩恵を与える。

絶対選択肢
突然頭の中に声が響き、選択肢を出してくる傍迷惑な選択肢。選択肢しない限り頭痛が来る。

贈り物《ギフト》
自分の中にある体力、魔力、気等を指定した相手に渡すことが出来る。正し、自分の能力は与えられない。

その他
『神は言っている、ここで死ぬ運命(さだめ)ではないと』
主に戦闘中に起こった選択肢の死に対して発動する。というか聞こえてくる。選択肢の前まで戻る。死んだ際のダメージを戻る際に再び受ける。つまり、二回死んだ痛みを味わう。

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