「ところで君、マフラーが欲しいんじゃなかったっけ?」
「え!?何で知ってるの!?」
「あ~、ごめん!!言い忘れたけど、俺、たくさんの子に
プレゼントを渡すために、どこのどの子が何を欲しがってるのか、
盗み聞きしてるんだよ。ごめんな」
「そうなんだ~!!」
霧河は、
(この子、怒らないんだな)と思った。
「君は、マフラーを持ってないんだね」
「前まで使ってたのは、もうボロボロになっちゃったの」
「そっか。じゃあ、もう、捨てちゃったんだね」
「いや。まだあるよ」
「え?何で?もう使えないのに」
「だって可愛いし、おばあちゃんがくれた大切なモノだから」
「なるほどな・・・」
「いつまでだって手離さないよ」
そこに、そのボロボロのマフラーはないが、女の子の話から、
どれだけ大切なモノかが良く伝わってきた。
(良い話じゃないか)と霧河は思った。
(く~っ!泣けるぜ~!!良い話だな~!!)と。
「ところでお兄ちゃん、カギはどうやって開けたの?」
霧河は、持っていた金属の棒を取り出し、
「コイツを使って開けたんだよ」と言った。
「そうなんだ~」
「うん。でも、絶対真似しちゃいけないよ。俺の事も、お父さん
お母さん含めて、他の人達には一切秘密だからね!!」
「分かった!!」
「ありがとう!!じゃあ、また君の家に来るから、楽しみに
しててね!!!」
「うん!!!」
「君の名前は何?」
「私は、〝河合愛かわいあい〟」
(まるで可愛いモノを愛しているかのような名前だな)
「良い名前だね!!」
「ありがとう!!お兄ちゃんの名前は?」
「俺は〝網田謎留あみだなぞる〟」
「へ~!カッコ良い名前!!ミステリアス!!!」
「え?君は〝ミステリアス〟の言葉の意味を知ってるの?」
「うん!私が読んだ小説に書いてあったよ!!
私、小説、大好きなんだ!!」
「へ~!その年で小説をいっぱい読むなんて偉いね!!
俺、小説なんて、昔から全然読まったから」
「そうなんだ!でも、お兄ちゃん、私が一番好きな小説の主人公に良く似てる!!」
「そうなの?」
「うん!!ファンタジーが大好き!!!でも、その小説は、
今言ったのじゃないんだけどね」
「そうなのか」
「今言った〝ミステリアス〟って言葉が書いてたのは、タイトル忘れちゃったんだけど、
お兄ちゃんに似てる人が出てくるのは、
〝私の幻想はホントにあった〟だよ!!どう、
お兄ちゃん、普段小説を読まないみたいだけど、読んでみる?
私はもう、何回も読んじゃったし!!」
愛は、その小説を本棚から取り出し、霧河に渡そうとする。
だが、霧河は・・・
「良いよ。君の大切な本なんだろ?それに、
俺はサンタクロースだから、他人からモノをもらわない事にしてるんだ。そうじゃないと、サンタクロースって言えないだろ?」
「そっか~・・・うん・・・」
「でも、気持ちはありがとうね!!だから、
その小説は、今度、本屋で探して、自分で買うよ!!」
「うん!!ぜひ、読んでみてね!!」
「読むよ絶対!!じゃあ、愛ちゃん、これからも頑張ってね!!!」
「うん!!謎留お兄ちゃんも頑張って!!!」
「おう!!!」
そう言って、霧河は去っていった。
愛は、再び寝て、朝起きて、ラッピングされた箱を覗いてみた。
その中には、ちゃんとマフラーが入っていた。そのマフラーには、
黒い服を着たサンタクロースとトナカイが一緒に印刷されていた。そう、コレはオーダーメイド。
愛はとても喜んだ。
「わ~!!とっても可愛いし、とってもカッコ良い!!!」
もちろん、その後、それを見た愛の母もまた、
「なんて事なの!?」と、とても驚いていた。
そう、愛の母はいつも、愛に「サンタさんなんているワケないでしょ」と言っていて、愛にも冷たく、クリスマスプレゼントを愛に
あげた事も一度もなく、それでも、「サンタさんはいて、いつか
ウチにやって来る」と信じ続けていたのだ。だから、
サンタクロースとして霧河が家にやって来た時も、他の子供達
よりも何十倍も喜んでいたし、ましてやその上、その
サンタクロースに会ったり話したり出来るなんて、まさか、夢にも
思っていなかったのだ。
愛の母は、
「不思議な事があるもんだね~」と言った。
それから、少しだけ、〝サンタクロース〟や
〝サンタクロース〟を信じている娘を馬鹿にしなくなり、少しだけ、
(考えを改めた方が良いかな?)と思ったのである。