そう言って、彼女は、
ケーキやプリンやクッキーを買って、祖母に食べさせるが、
あまり美味しそうにしない。
次の日、窓河と彼女は、あの喫茶店で、
久しぶりに色んなお菓子を作った。もちろん、
ケーキもプリンもクッキーも。
それを、
病院へ持って行って食べさせると、
彼女の祖母は嬉しそうに笑い、少しだけ元気を取り戻した。
二人は揃って、「良かった~」と言った。
「あのさ」と窓河が言い、彼女が「ん?」と言った。
「俺、色々考えた。やっぱり、あの喫茶店、
もらっても良いかな?」
「え!?どうしたの!?前に話した時と言ってる事が真逆じゃない!?」
「いや、実は、昨日、言いそびれたんだけど、
俺、会社、クビになっちまったんだ」
「え!?何で!?」
「ハメられちまったんだ。俺の事を嫌ってるヤツが勝手にお客さんに届ける品を入れてる箱の中に一緒にクモを入れて、それを
〝コイツがやりました〟って言われてさ」
「大変じゃない!?窓河君だけじゃなくて、お客さんも凄く困ったでしょ!?ちゃんともう1回、話した方が良いんじゃない!?」
「いや、皆、誰も、俺の事を信じてくれないんだ。
いくら話したってムダだろ」
「そんな・・・・・・」
「でも、これで良い。俺、前から思ってたけど、あの会社で
働いてても、幸せにはなれなさそうだから。それに、
今だって、コンビニのお菓子で全く笑いさえしなかった
おばあちゃんがとても喜んでくれたろ!?今、それが
かなり嬉しかったんだよ!!!」
「そう?分かった。じゃあ、祖父の遺言通り、あのお店、
窓河君に譲るわ」
「うん!本当にありがとうね!!」
「いえいえ!じゃあ、名前はどうする?もう、これからは、
窓河君のお店だから、窓河君の好きな名前にして良いのよ」
「そっか。じゃあ・・・・・・〝窓際族〟!
〝喫茶窓際族〟で!!」
「え?ホントにそんな名前で良いの!?」
「あ~!良いさ~!!だって、君が〝窓際族〟って俺の蔑称を〝孤独のヒーローみたいでカッコ良い〟って言ってくれたんじゃねぇか!!それに、喫茶店って、窓から景色を見るのも楽しみの一つ
だから、そういう意味でも喫茶店には合う名前だろ?」
「そう・・・・・・?」
「じゃあ、この名前は、ありがたくもらうぜ!!これからバリバリ働くからよ!!そんで、稼いだ金の一部は、
君や君の家族に渡す!!
そしたら、家計も支えられて、一石二鳥だろ!?」
「そこまでしてくれるの!?なんて優しいの!?
ありがとう!!!」
「いやいや!!どうって事ないよ!!お礼なら、むしろ、
こっちが言いたいよ!!!」
「でも、言い忘れてたけど、
問題が一つだけあるけど、どうする?」
「ん?問題って?」
「誰かの建物を別の誰かに譲ろうと思ったら、
そこそこ税金がかかるでしょ?」
「あ、そっか~。でも、俺、実はギャンブルが好きで、
どのギャンブルでも、思いっきり当てた事はねぇけど、宝くじで
ちょっと、競馬でちょっと、株取引でちょっと儲けて、
これまでの仕事でのささやかな貯金もあるし、全部合わせれば、160万ぐらいはあると思うし、それで払うよ。
「そんな大事なお金を・・・ごめんね・・・ありがとうね・・・」
「良いよ良いよ!!」
「私も、たまに手伝うから!!」
こうして、窓河は、
彼女の祖父母が営んでいた喫茶店を譲り受け、店の名前を変えて、〝喫茶窓際族〟を開業した。
それから時間は流れ、彼女は、
とある洋菓子店で知り合ったという、日本語も堪能なフランス人と結婚し、フランスへ移り住んだのだ。
そして、彼女の祖母も、
今はもう、亡くなってしまっている。