サンタクロースパイ    作:COLK

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3.サンタクロースになる事を決意した少年

―ここで突然だが、情景が変わる―

 

 

 

 

 

季節は、今と同じ〝冬〟。

 

 

 

 

 

12月に入ったばかりの頃だった。

 

 

 

 

 

名札に名前が書いてあるが、

 

「網田謎留あみだなぞる」という名前の小学生の男の子が自分の両親に

 

「ねぇねぇ!今年のクリスマスは

 

サンタさんからギター(アコギ)を

 

もらいたい!」と言っている。

 

 

 

 

 

それに対し、

 

母親が「ギター?ずいぶんとぜいたくなモノが欲しいのね」と言う。

 

 

 

 

 

謎留は、

 

「だって、僕、小学校の音楽の授業で吹く

 

〝リコーダー〟は全然吹けないし、それだったら、何か別の楽器が出来るようになりたいし、テレビとかでギターを弾いてる人見てたら凄くカッコ良いもん!!」と言う。

 

 

 

 

 

隣の父親は、「そっか。もらえると良いな!!」と言った。

 

 

 

 

 

それから時間が経ち、クリスマスイヴの夜、「ギター、もらえると良いな!!」と思いながら謎留は眠りについた。

 

 

 

 

 

翌朝、

 

目が覚め、起き上がってみると、ギターケースがあった。開けてみると、

 

なんと、本当にギターが入っていたのだ!!

 

 

 

 

 

「わ~!やった~!!」謎留は大声を上げて興奮する。

 

 

 

 

 

「お父さんお母さん~!見てみて~!サンタさん、本当にギターくれたよ!!」と母親に言った。

 

 

 

 

 

「良かったわね!!」と

 

母親は微笑みながら言った。

 

 

 

 

 

父親も微笑み、

 

「良かったな!上手くなるように、しっかり

 

頑張るんだぞ!!」と言った。

 

 

 

 

 

謎留は

 

「うん!!」と嬉しそうに頷いた。

 

 

しばらくしてからの事。ある日、謎留の父と母は

 

謎留に少しの間だけ家の留守番を頼み、車で

 

料理の食材を買いに行った。

 

そこで対向車にぶつかり、交通事故に巻き込まれてしまった。2人は、運悪く即死。

 

ぶつかった車の運転手は、

 

飲酒運転をしていたのだ。もちろん、

 

その運転手は逮捕されたが、失われた2人の

 

命は決して戻ってこない・・・

 

 

 

 

 

その頃、謎留は

 

「それにしても遅いな~。どうしたんだろ?」と、何も知らずに待っていた。

 

だが、謎留の両親が死んでしまった事は、後に親戚から聞かされた。

 

 

 

 

 

謎留は、何日も何日も、泣き叫び、悲しんだ。もちろん、

 

両親が死ぬ原因にもなってしまった〝酒〟も

 

「大人になっても絶対飲まない」と決めた。

 

 

 

 

 

それから、謎留は、両親の死を謎留に教えた親戚の夫婦の家に移り住み、その親戚の夫婦に育ててもらう事となった。

 

 

そしてまた、

 

12月になり、クリスマスが近づいてきた。

 

 

 

 

 

その頃、その夫婦の旦那さんの方は仕事で外に出ていたが、おばさんは、

 

「もうすぐクリスマスだけど、サンタさんから何をもらいたいの?」と謎留に聞いた。

 

 

 

 

 

だが謎留は、

 

「う~ん・・・何かな~、もうサンタさんから何もらっても、すぐに自慢できるお父さんもお母さんもいないしな~。何でも良いや」と、なげやりな事を言った。

 

 

 

 

 

おばさんは、

 

「そうね~、もう、謎留君の両親は、謎留君にプレゼントをあげる事も出来ないしね~」

 

と、何か寂しがっているような表情で言った。

 

 

 

 

 

謎留は、その言葉の意味がどういう事なのか

 

気になった。

 

 

 

 

 

「おばさん、今言った事、一体、どういう事なの!?」と聞いた。

 

おばさんは、慌てて自分の口を手で抑え、

 

「しまった!口が滑っちゃった!!」と

 

思った。謎留は何度も聞いた。

 

 

 

 

 

「ねぇ、おばさん!答えてよ!!教えてよ!!何か知ってるんでしょ!?」と、大声で聞いた。

 

 

 

 

 

「仕方ないわね~。話すわ」と言って話してくれた。

 

 

 

 

 

おばさんの話によれば、

 

毎年、クリスマスに謎留にクリスマスプレゼントを渡していたのは、実は、

 

サンタクロースではなく、謎留の父親と母親だったのだ!!

 

謎留の父親も母親も、サンタクロースの存在を信じている謎留の夢を壊さないようにするために、毎年、謎留に

 

「クリスマスは毎年、サンタクロースが家に入って、プレゼントをくれる」と嘘をつき、

 

謎留が「欲しい」と言うモノを毎度用意し、それをクリスマスが来るまで家のどこかに隠して、

 

謎留が寝ている間の、ちょうどクリスマスの深夜に、枕元にプレゼントを置いていたのだという。

 

おばさんは、前からその事を本人達から聞いていたので知っていた。

 

 

 

 

 

それをおばさんの口から聞いた謎留は、

 

「サンタクロースは本当はいない」という事実を知ったショック以上に、

 

自分の夢を壊さないように、毎年、わざわざ嘘をついてバレないように気をつけながら、

 

密かにプレゼントを用意して、そっと渡してくれていた親の愛情と優しさに感謝、感動し、

 

嬉しさのあまり、大泣きした。

 

 

 

 

 

「あんな高いギターまで・・・!!お父さん・・・お母さん・・・うわあぁぁぁぁぁぁ!!!」と叫んだ。

 

しかし、もう、この感謝と感動は両親が亡き今、伝える事は出来ない・・・

 

 

 

 

 

おばさんは、泣き叫ぶ謎留を抱いて、

 

優しく背中をさすり、もらい泣きした。

 

「謎留君のお父さんもお母さんも、本当に

 

良い人だった・・・謎留君にプレゼントを

 

あげる事、毎年、楽しそうに話してたわよ」

 

 

やがて成長し、

 

高校生になった謎留は、冬のある日、かつての自分と同じように、サンタクロースを信じている子供達を見た。

 

 

 

 

 

「そうだよな~。良く

 

考えてみりゃ、魔法でも使えなきゃ、サンタクロースみたいに、どこかの誰かの家に入ってモノをあげるなんて出来ないよな~」と小声で言った。

 

 

 

 

 

しかし、数日経って、テレビのニュースで

 

「〝サムターン回し〟という手口で家の外から金属の棒を使ってカギをこじ開け家に侵入され、モノやお金が盗まれた」という事件があちこちで起こっていると知った。

 

 

 

 

 

謎留は、

 

(そうだ!大人になったら、このやり方で色んな家に入って色んな子供達にプレゼントを渡そう!そうすれば、自分が憧れのサンタクロースになれる!!)と思った。それと、

 

家のドアというのは、〝サムターン回し〟で開けられるモノばかりではないので、色々なピッキングのやり方も学んだ。

 

 

 

 

 

しかし、

 

何ともまぁ、狂った発想だった。いくら他人にモノを渡そうが、〝サムターン回し〟やピッキングは犯罪だ。だが、この時、

 

謎留は、そうやってたくさんの子供達に

 

プレゼントを渡せば、

 

両親が死んだ時にポッカリと開いてしまった、大きな心の穴を

 

埋められる気がしたのだ。

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