鍛冶兄弟のダンジョン賛歌   作:ケツアゴ

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第十三話

 ダンジョン中層、早朝で霧が立ちこめるこの場所でアイズ・ティオナ・ティオネ・ベートはガレス相手に模擬戦を行っていた。

 

「てやぁああああああああああっ!」

 

「リル・ラファーガ!」

 

「せぇええええええええええっ!」

 

「がぁああああああああっ!!」

 

 超重量超威力を誇るオーダーメイド武器大双刃(ウルガ)を使ったティオナの剛撃も、アイズの風を纏った突進も、ティオネの二刀による連撃も、ベートのファミリア随一の脚力による蹴りも止められる。本来、この連係攻撃ならばLv.6であるガレスでも防ぎきるのは困難だろう。……そう、Lv.6であったなら。

 

 

「ふんっ!」

 

 オラリオでも最上位級である力を誇るガレスによる斧の振り払いで四人纏めて弾き飛ばされる。空で体制を整え着地するも四人には疲弊の色が見え、ガレスは未だ余裕が見て取れる。そんな彼の体には光の粒が付着して輝いていた。これこそが圧倒の理由。一時的なランクアップを与える春姫の魔法『ウチデノコヅチ』によるものだ。

 

「お主達、少し力が入りすぎとるぞ」

 

 拠点となるリヴィラの街が復興中の今、ダンジョン深部で稼ぐのは少々困難だと復興完了予定の明日まで鍛錬をすることになったのだが、宝玉について詳細を知らされた四人は少々気合いが入りすぎている傾向にあった。この様な時は倒れるまで暴れるのが一番だと言い出したガレスが相手になり、より上質の経験値を稼ぐ為と一時的にLv.7になってLv.5の四人を圧倒していた。

 

 先程から気合いが空回りしている四人に呆れたような視線を向けるも気持ちは理解している。今後遠征を続けていれば出会うであろう穢れた精霊の分身。神に最も愛されている種族という規格外の敵を想定した結果焦りが生まれているのだ。ガレスも同じだ。未知を求める冒険者として武者震いがする反面、恐ろしくはないと言えば嘘になる。実を言うと相手を申し出たのもジッとしていられないからであった。

 

 

「だって大人しくしてられないよ、ガレス! さ! 続き続き! 遠征前にランクアップを目指す位のつもりで張り切っちゃうからねー!!」

 

「……ふっ。それなら今の儂を倒すくらいせんとな!」

 

 だが、その中でも変わらずに脳天気なティオナは迷いを感じさせない笑顔で構え、三人もつられて僅かに無駄な力が抜ける。ガレスも思わず笑みを浮かべるのだが、此処からと言った所で周囲を舞っていた光の粒が消え失せる。ウチデノコヅチの効果時間が過ぎたのだ。十一の頃から主な特訓を魔法の持続時間向上と精神力の増量に費やした結果、効果時間は三十分に迄延び、インターバルも五分程度まで短縮された。

 

「やれやれ仕方無いのぅ……」

 

 水を差された結果になったガレスが遠くに目を向ければ余波に巻き込まれない距離で短刀の扱いの特訓中の春姫の姿が見える。攻撃魔法を覚えていない為、自衛の為に武器の扱いを学んでいる春姫はアルミラージの首を見事に撥ね飛ばしていた。持っているのは魔法剣士御用達、シリーズ『マジカル脳筋』の短刀。素材の関係で武器としての性能はそこそこの値段に見合った程度、第二等級に届かない程度だが、攻撃の際に魔力の数値が力に上乗せされる効果が有る。

 

 尚、制作者が誰かは丸分かりだ。使用者の殆どが武器の名前を口にしない。っと言うよりも他の装備の使用者も愛用はしても付けられた名前は口にしない。理由は恥ずかしいからだ。

 

 

 

「それじゃあ続きと行くぞ!」

 

「当然!」

 

「うん」

 

「お願い……」

 

「当たり前だ、ジジイ!」

 

 魔法が解けたから一旦休憩……な訳もなく、武器を構えたガレスに四人も容赦なく向かっていく。インターバルの間は四人が数の力で押し、再び魔法が発動すればLv.差が2になったガレスが圧倒する。こうして双方共に経験値を稼いでステイタスを向上させていくロキ・ファミリアの幹部達であった。

 

 

 

「て、てや!」

 

「踏み込みが甘い! 腕の力だけで振るな!」

 

「は、はい!」

 

 ガレス達の遠くで特訓する春姫の指導を行うリヴェリアはアルミラージを一刀両断する姿を観察する。まだLv.2に昇格したての上にステイタスの成長も後衛向きな春姫だが、一見した所全体の平均がFは有るように見られる。ロキから聞かされたスキルの影響だろうと思い当たった。

 

(……この前は手を繋いだと嬉しそうに語っていたが、それだけでこれか)

 

 今後急上昇する事も下降する事も視野に入れ、情報を入手しなければと思いつつも団員の恋愛事情を調べる事に僅かに抵抗があるリヴェリア(独身・彼氏無し)であった。

 

 

 

「……そう言えば弟が居ると言っていたがバベルの入り口で見掛けた者だろうか?」

 

 才能を無駄にし、誇りのために命を危険に晒す愚弟だとヴァルツがこぼしていたのを思い出す。その後で仕方ないから云々と誰に言っているのか言い訳をしながら世話を焼いているらしい発言もあったが、バベルの入り口で彼に似た男が仲間らしい少年と話をしていたのを思い出して彼が弟かと思い当たる。同時にもう一つの噂、同胞が過敏に反応しそうな内容だった物を思い出した。

 

 ヴァルツの弟は一族から失われたクロッゾの魔剣を作る力を持っている、そんな噂だった。

 

 

 

 

 

「……この前の一件だがかえって良かったのかも知れないな。冒険者さえ居ればモンスターも恐れるに足らんと民衆は判断しただろう。脱走騒ぎで迅速な動きがなければ……死人が出ていた」

 

「犯人だろう女神は都市でも特に厄介な神の一柱だっけか? 目を付けられたら迷惑この上ないって言ってた」

 

「眷属の前では言えないが……闇派閥と同じで巻き込まれる者からすればモンスターと何一つ変わらない。いや、眷属を増やせる分、神の方が面倒だな、正直」

 

「オレっちが言うのもアレだけど……お前、人間の中で浮いてねぇか?」

 

 そうなっていればモンスターへの恐怖が増していただろう、そう語るヴァルツに話し相手は微妙そうな顔になる。神をモンスターと同等呼ばわりなど地上の人間からすれば唖然物なのであるが、本人からすれば納得が行かなそうな顔だ。

 

「祖父母と両親と弟と友人……それと知人には大体言われているな。人では及ばない力を持つ人外の存在で害を成す存在……モンスターと何が違う? 特に侵略を続けるラキアのアレスなど被害者の数で言えば種族は兎も角関係する個体が出す被害数ならば上から数えた方が早いだろう?」

 

「……矢っ張りお前は変人だわ。……まあ、そんなだからオレっち達とも上手く行ってるんだろうけど」

 

「そうだネ、リド。ヴァルツが変人だったから受け入れて貰っていル」

 

「お前達、もう少しコミュ力を身に付けろ。……ほら、出来たぞ。悪いな、角を隠すとなれば兜が不自然な形になる。飾りだと言い張るのも無理が生じるしな」

 

 ヴァルツが向かい合って話をしているのは人ではない。リザードマンにセイレーン、モンスターであった。その瞳にモンスター特有の凶暴さも敵意もなく理性が見て取れる。神からしても理外の存在ではあるがヴァルツは平然として武器の整備を続け、角が根元から切り落とされたフォモールに武器を手渡した。素材からして彼の角が元であろう手斧、但し特殊な力は付与されていない。ちょっと工夫して普通の装備にしていた。

 

『クシャミを我慢し続ける感じだな』

 

 とは本人の談。因みに恋人である春姫も彼を変人だと呼んでいる。その上で好きだと言っているがネーミングセンスの悪さと変人である事は否定しないでいた。そんな彼が整備しているのは最近噂になっている正体不明の者達の装備品。尻尾を体に巻き付けて腹部が太いズングリとしたその鎧を装備して行動しているリザードマンのリドは都市の外での事を思い出す。

 

 

 

 

『ありがとう!』

 

『助かった!』

 

 

 都市の外の村で凶暴なモンスターを退治して村民達を守ったのだが、その際にお礼を言われ今手に持っている果物もお礼として貰った物だ。……太陽は眩しくて綺麗だった。正体を知らないとはいえお礼を言われ人と触れあうのは楽しかった。今使っているオーダーメイドの装備がなければ夢で終わっていた、そんな物だ。

 

 思い出す。武器を奪おうとして初めて出会った時の事を……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なんだ、その手入れの雑な武器は。貸せ』

 

『え? いや……』

 

『貸せ』

 

 余りの剣幕に持っていた装備を渡してしまい、手入れを任せてしまった。その途中で気付いたのだ。此奴、喋った自分に驚いてなかった、なと。

 

 

 

 

 

『ん? ああ、喋っているな』

 

『それだけかよ!? 他のモンスターと違ってて不気味とか有るだろ!?』

 

『神だって見た目が同じだが人とは全く別の存在だろう? 同じだ同じ』

 

 

 

 

 

 

 

(あっ、此奴矢っ張り変人だわ)

 

 リドは心の底からそう思った。

 

 




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お気に入りが千 感想が百を越えたら番外編書きます

  • 春姫との結婚生活
  • 別ヒロインルート アスフィ
  • 別ヒロインルート フィルヴィス^^
  • 別ヒロインルート 誰か募集
  • 一定以上経過する度に一個ずつ書けや、オラ!
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