お笑い界のブリザード
「へー! ヴェルフって十七階層まで行ったことがあるんだ」
主神同士の関係もあってか同じ様にダンジョンに潜る仲間が居ないからとパーティを組んだヴェルフとベル。手土産代わりと渡された短刀の牛短でキラーアントを解体して魔石を取り出す作業の中、ふと話題に上がった到達階層の話にヴェルフは少々気まずそうだ。
「……あー、いや、兄貴のサポーターとして同行させて貰っただけだからな。俺でも対処できる数やモンスター以外は全部倒して貰ってたし……」
「優しいお兄さんなんだね」
「憎まれ口が多い上に変人だけどな。……風評被害が来るのが悩みだ」
純粋なベルにキラキラとした瞳を向けられても、自分からすれば兄の優しさに甘えさせて貰っただけだと思っているので気恥ずかしい。別に本職のサポーターを卑下する訳ではないが自分に実力でもない事を感心されても自慢には思えなかった。
そうこうしている内に魔石は採取し終わり幾つかのドロップアイテムを入手した二人は次の獲物を目指してダンジョンを進む。この日は初めてのパーティと言うこともあって無理はせずに倒せる範囲のモンスターだけを狩っていたのだが、互いにソロで潜るよりも遙かに多くの魔石やドロップアイテムを集める事が出来た。
「矢っ張り仲間が居ると違うな、ベル」
「うん! じゃあ、明日も頑張ろうね!」
「おう! 明日はもうちっと奥まで進むとして……サポーターも欲しい所だよな」
モンスターが何時わき出てくるか分からない中での魔石の採取やアイテムや状況にあった武器の取り出し等、自分達だけでやるには精神的にも効率的にも悪い。サポーターの経験があるヴェルフや担当アドバイザーからサポーターについて学んでいるベルからすれば多少儲けが減っても必要な人材だと感じていた。
「でもフリーのサポーターって居るのかな? 大抵同じファミリアの人と組んでるんじゃない?」
「だよな。ギルドにでも聞いてみるか?」
取り敢えず保留として本日は解散となった二人。換金後にベルは冒険者に襲われていた小人族の少女を助け、ヴェルフは晩飯を外で食べようとして街中を歩いている途中で店の中から呼び掛けられた。
「おい、ヴェルフ。お前の分も出してやるから入って来い」
声の主はダンジョン内で話題に出たヴァルツ。別に自分で出すから良いと思ったのだが呼びかけに反応して入ってしまったから仕方ないと向かっていく。兄が座るテーブル席には極東の服装をした見慣れぬ者達まで座っていた。
彼らはタケミカヅチ・ファミリア。春姫とは同郷で古い顔なじみの者達だ。以前春姫が相談を持ちかけた命の他にも千草という少女や桜花という青年も所属しており、他の団員も含めてタケミカヅチに育てられた孤児であり、出稼ぎとしてオラリオに来ていた。
「へぇ。兄貴に極東の武術を見せてるのか。参考になりそうなら何でも食いつくからな、此奴。迷惑かけてねぇか?」
「いやいや、春姫が世話になっているし、こうして偶に飯を奢って貰っているからな。俺達としては大変助かっている。それはそうとヴァルツよ。春姫との祝言は何時の予定だ? その際は俺も手伝うぞ。まあ、極東の式なら兎も角、他の形式はよく分からぬがな」
折角なのでと同席することになったヴェルフだが、既に幾つかの皿が空になって酒も大分入っているのかタケミカヅチの顔は真っ赤で陽気に話をしている。その隣に座る命はヴェルフが来て数分後には酔いつぶれてテーブルに突っ伏し、桜花の隣に座った千草は祝言という単語を聞いた途端に彼の顔をチラチラと見ていた。
仕送りもしなければならない弱小ファミリアには満足に酒を飲む余裕など当然無く、主神でさえアルバイトをする毎日。そんな彼らにとって極東の武術を今後の鍛冶の参考にしたいという理由からの申し出は渡りに船だったらしく、最初の数回は遠慮していても最近では金銭的余裕の差に愕然としながらも奢りを受け入れていた。
「……ああ、凶狼にも言われたな。さっさと結婚しちまえとか何とか……」
「ロキ・ファミリアのベート・ローガがかっ!? 噂とは大分違うんだな……」
傍若無人で弱者を見下す発言が多く態度も悪いベートの悪評は届いているのかヴェルフやタケミカヅチ・ファミリアの者達も想像と違ってその様な話をしてくる事に驚きを隠せない。実際は乱暴な言い方であり、その際にはこの様な会話があった……。
『おい、あの狐人の雑魚はテメェの女だろ。さっさと結婚でも何でもして冒険者なんざ辞めさせちまえ。魔法は認めてやるが他はてんで駄目で目障りなんだよ。贅沢させてやれる程度は稼いでるんだろが、ボケ』
『成る程。春姫と俺の心配をし、嫁いできたら楽をさせてやれという事だな? 前から思っていたがお前は優しいな。自分が嫌われても弱者が強くなれるように、心を折ってでも危険から遠ざかるように、そうやって悪態を吐き損を引き受ける』
『勝手な妄想してんじゃねぇよ。頭沸いてんのか』
『大丈夫。お前の今までを無碍にするから誰にも言わない。しかし、お前も大変だな。この前もその様な感じで剣姫に言い寄ってフられたのだろう? もう少しコミュ力を身に付けた方が良いな』
『ぶっ殺す! ってか、テメェにだけは言われたくねぇよ!!』
「まあ、奴への印象はそうだろうな。それで構わんさ」
口に出し広まればベートが憎まれ役を背負ってきた意味が無くなると詳しい会話を話すのを避けるヴァルツ。その為に噂など当てにならずベートが少しお節介な所がある程度の認識しか与えずにこの話題は完了した。
尚、ヴァルツがベートの意図を見抜いた理由だが、弟に対して同じツンデレ(但しバレバレ)だからである。同じツンデレでもベートは年期も格も違うのだが、ツンデレ故にツンデレの意図を汲むことが出来ていた。
「そうそう。ミアハには何時か礼をせねばならんな。何時もポーションを貰ってばかりで……彼奴、借金が有るが大丈夫なのか?」
話は移り変わり、一本五百ヴァリス程のポーションを無償提供するミアハの話題となった。新米の一日の稼ぎが二千前後なので宣伝費としても少々お高い。少なくとも多額の借金を持つ貧乏ファミリアがする事ではないのだが。唯一の団員であるナァーザはミアハが泣くまで殴るのを止めなくても良いくらいだが、ミアハ目当てに来た女性のお客を追い返しているのだから同罪でもある。彼女もまた主神に恋する乙女であった。
「神は人とは違う。借金も何時か返済し終われば良い程度の認識なのだろう。……人とは何もかもが違うな、矢張り」
怪物趣味という蔑称が存在する。ラミアやハーピーの様に女性に近い姿のモンスターに欲情する者への最大限の侮蔑であるのだが、この話題を進めると神に恋する人も結局は同じなのでは、と、ヴァルツは思えて仕方がなかった。どちらも人に似ているが思考も根本も人とは違いすぎる。ヒューマンやアマゾネス以外の種族は同種族同士でしか子をなせず、それでも恋に落ちる者達に対しては其処まで思わないが神に恋する人の気持ちだけは理解できなかった。
「……それが俺が変人と呼ばれる由縁かも知れないな」
ヴァルツ自身、自分が普通の思考ではない自覚は存在する。だからと言って周囲に合わせる気は毛頭無いのだが。ビールを呑みながらの呟きは誰の耳にも届かず喧騒にかき消された。
それと変人と呼ばれるのは奇行による物が多いがそこは自覚がないらしい。今後も弟を巻き込んで変人の名を広める事だろう。
「……おい、ヴェルフ。今後は魔剣を準備しておけ」
酒場からの帰り道、ほろ酔い気分で月を眺めながら歩いていたヴェルフはヘファイストスや椿から何度も言われうんざりしている言葉に気分を台無しにされる。舌打ちと共に兄を睨むが眉一つ動かさずジッと見つめて来るだけであった。
「客は選んで構わん。だが、我を貫きたいなら腕をもっと磨け。冒険者としても鍛冶師としてもだ。腐るような相手には渡さなくても良いが、勝手に折れるのが嫌ならば絶対に壊れない魔剣を目指す程度の気概は持て、未熟者。……己の意地で危険に晒して良いのは自身の命だけだ。仲間と組むなら覚えておけ」
「……うっせぇ」
言葉一つで変わるような相手ではないと分かっていたのか背中を向けて呟くだけのヴェルフにそれ以上何も言わずにヴァルツは去っていく。月明かりの下、ヴェルフは暫く拳を握りしめて立ち竦んでいた。
その翌日の事である。明日から何日もダンジョンに潜るので顔を見に来たと合い鍵を使ってヴァルツの家に入ってきた春姫だが、服装は何時もの物とは違って露出があまりにも多い。ティオネから贈られたアマゾネスの衣装を着て、更に勇気を出して膝枕をさせていた。
「……大丈夫か? 顔が真っ赤だぞ」
「こここ、この位はさせて下さい! い、何時も私ばかり何かをして貰ってばかりで……」
「お前が恋人というだけで何より誇らしい。側に居るだけで何よりも幸せだ。……俺が貰いすぎている位だ」
緊張した顔から少し落ち込んだ表情に変わった春姫の頬に手を当てて静かな声で告げるヴァルツ。その手に春姫の手が優しく添えられ……。
「あ、あの! 春姫の初めてをお捧げしましゅ!」
噛んだ。
一方その頃、朝からダンジョンに潜るヴェルフだが、少々上の空。ともに戦うベルは彼を心配し、サポーターとして同行する少女は二人に獲物を狙うような目を向けていた……。
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しかし別作品の主人公であるネルガルとは相性が悪そうだ 互いに理解はしても同意はしないって感じで
お気に入りが千 感想が百を越えたら番外編書きます
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春姫との結婚生活
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別ヒロインルート アスフィ
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別ヒロインルート フィルヴィス^^
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別ヒロインルート 誰か募集
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一定以上経過する度に一個ずつ書けや、オラ!