鍛冶兄弟のダンジョン賛歌   作:ケツアゴ

21 / 24
お気に入りは順調 感想もう少し来たらモチベーション上がるけどなあ

後少しで外伝投稿


第十九話

 ヴァルツさんによると始まりは些細な口論だった様です。慣れないダンスに手間取っている彼をアレンさんが馬鹿にして、猫舌だの、変人だの、仲の悪さからか語彙力の低い低レベルな罵り合いに発展。最後の理性なのか殴り合いにはならなかったのですが周囲はハラハラしながら見守ります。

 

 ……都市でも有数の冒険者と鍛冶師が何をやっているのでしょうか?  幾人か神の姿も見えますし、明日には噂が尾鰭付きで広まって流石に主神の小言を食らうでしょうね。

 

「も、もう我慢できません! 私とアレで勝負です!」

 

「はっ! だったら俺が勝ったら糞鍛冶師が謝りやがれ。テメェが勝ったら糞鍛冶師に何でも言うことを聞いて貰ったら良いじゃねぇか」

 

「その勝負乗りました!」

 

 最後に事態をややこしくしたのが春姫さん。酔っ払って理性が明後日の方向にすっ飛んでアレンさんにポーカーの勝負を挑んだそうです。彼も挑まれたからには逃げるわけにも行かず受けたのですが、自分が負けたときのペナルティーを回避した条件を飲ませる辺り、彼の方が一枚上手のようですね。

 

 

「……所で結構な額のチップの様ですが春姫さんにそんなお金があるのですか?」

 

「俺が出したが? 恋人だし俺のために怒ってくれたのだから、遊興費位は負担する。ああ、それにしても惚れ直すとは何度も起きるのだな。いや、正確には会う度にだ」

 

 証文を書いて互いに五百万ヴァリスを初期の手持ちにしたそうです。遊興費という額ではない気がするのは気のせいではない筈。この人、子供を必要以上に甘やかしそうな気がします。

 

 それはそうと流れるようにのろけるのは止めて欲しい。いえ、エルフが基本潔癖なのを無視してもこれはない。見れば周囲の人も似たり寄ったりの反応で、私と同じ事を言いたいのでしょう。

 

「……早く結婚すれば如何ですか?」

 

 さて、言いたいことは言いましたし、金銭感覚がどうなっているのかと問いただしたくなりますが、今回は勝っているので止めておきましょう。視線を送れば結構な額をベットした春姫さんに対してアレンさんは残ったチップの全額を賭ける大勝負に出た所です。あの表情、かなりの手札が来たと見えて周囲がざわ…ざわ…とどよめき始めました。

 

「はっ! どうした、降りるなら今の内だぜ? 糞鍛冶師の女の雑魚狐」

 

 元々このポーカーはヴァルツさんを侮辱されたことで春姫さんが怒って始まった物。此処での更なる侮辱を行うことで一気に逆転を狙っているのでしょう。それだけ自信がある手札という事であり、春姫さんは冷静になって勝負を下りる必要が……。

 

「……受けましょう」

 

「駄目だ、春姫さ……」

 

 その静かな声にアレンさんは笑みを浮かべ、ヴァルツさんは冷静に見守る。会場のボルテージが一気に上昇する中、私は制止しようとした言葉を止める。彼女も勝利を確信した目をしていた。

 

「……驚いたか? 春姫は酔っぱらうと大胆になるが、勝負勘と度胸が急上昇して凄腕の賭博師にもなる。別に賭事が好きになるわけではないので対して心配もない」

 

 ヴァルツさんは負ければ嫌う相手に頭を下げるというのに臆した様子もなく春姫さんを信じている。ですが、相手が出したカードは……。

 

「ストレートだ。俺の勝ちは決まったな」

 

 此処に来て構成難度の高い役を完成させるなんて天運としか言えません。これがLv.6の冒険者まで上り詰めた男の力なのでしょうか……。私もハッタリや相手の表情を読む力などポーカーに自信が有ったつもりですが……。

 

 

 

 

 

「ロイヤルストレートフラッシュで御座います」

 

「んなっ!?」

 

 上には上が居るという事ですね。少なくてもこの場では幸運の女神は春姫さんの味方だったらしく、アレンさんは驚いて口を開けた後、面白くなさそうに立ち上がってテーブルを後にします。第一級冒険者の不機嫌な姿にギャラリーは左右に分かれて道を開き、恐怖からか歓声すら上げる様子が有りません。そして私の横を通り過ぎる時、不機嫌を隠さずに小声でこう囁かれました。

 

 

「くだらねぇお節介で周りに心配かけるな、雑魚が」

 

 ……豊穣の女主人の誰かが話したのでしょうか? あの人は時々姿を見せますし、アーニャが頼んでくれたのかも知れません。

 

「……周囲が心配、ですか」

 

 巻き込まれることではなく、私自身への心配だと理解しているので殊更心が痛む。では、一刻も早く奴の化けの皮を剥がすとしましょう。周りに極力心配をかけない方法で……。

 

 

 

 

 

「ヴァルツ様、少し酔い過ぎた様なので春姫を運んでくださいませ」

 

「……仕方ないな。少し夜風に当たりに行こう。それと水を飲め、水を」

 

 甘えるように両手を伸ばす春姫さんを躊躇無くお姫様抱っこして運んでいくヴァルツさん。確か春姫さんは酔いが醒めても全部覚えているそうですし、少し同情するので爆発して下さい。……私がそんな事を考えているとテリーが部下に何やら指示を出しています。

 

「フレイヤ様にご用意した例の部屋があっただろう。ご案内して差し上げろ」

 

 だいぶ酔っているからか、それとも二人が恋人だからこの後で致す為の場所を用意するつもりか、どちらかかは知りませんがヴァルツさん達に客室を用意する様子。ですが親しげにしている者達と同時に浮かべた下卑た笑みが気になった私は様子を伺うことにしました。……そして聞き耳を立てていた人がもう一人。

 

 

 

 

 

 

 

「流石は神フレイヤに用意した部屋だけあるな。一流ホテルの様だ」

 

 酔っ払った春姫を休ませる為と通された部屋は豪奢な作りだった。一流の調度品に窓から見える夜景。巨大なベッドにシャワールーム、ドレスルームには客人に貸し出している高価な衣装や装飾品。壁一面の巨大な鏡が気になったが、着替えた姿を見る為だろう。

 

「……普通の鏡ではないな」

 

 何やら違和感を感じていた時、背後から袖を引かれる。振り返ると春姫が抱きついてきた。俺の胸に頭を預け背に手を回してギュッと抱き締める。押し付けられた胸の感触は……俺の胸の内に留めておこう。まあ、神ロキが頻繁に触りたがる気持ちが分からなくもない。寧ろ俺も触りたい。……頼めば可能な気もするが酔ってるのを良いことに頼むのは抵抗があった。

 

 柔らかい、とだけ言っておこう。

 

「ヴァルツ様、私達は恋人……で宜しいのですね?」

 

「ああ、お前は美神より美しく愛しい……俺の恋人だ。鍛冶師としての名誉よりも誇らしいと思っている」

 

 俺も春姫の腰に手を回して抱き締める。驚いた声を出されるが力が強かった訳でもないのか嬉しそうだ。ああ、本当に俺は幸せ者だな。此奴と出会った事が今までの人生で一番の幸福だろう。

 

 

 

「あの……春姫はポーカーで勝ちました。ご褒美を頂きたいです」

 

  ほんのり赤くなった頬に潤んだ上目遣いの瞳。甘えるような声で何を期待されているか言葉にせずとも分かる。さて、どうすべきか? 俺にだって興味はあるが……。

 

 

 

 

「据え膳食わぬは男の恥、そんな言葉が御座います。私は愛しいお方に恥をかかせたくはありません……」




感想お待ちしています

次くらいに本編2巻かオラトリア三巻に入ります

お気に入りが千 感想が百を越えたら番外編書きます

  • 春姫との結婚生活
  • 別ヒロインルート アスフィ
  • 別ヒロインルート フィルヴィス^^
  • 別ヒロインルート 誰か募集
  • 一定以上経過する度に一個ずつ書けや、オラ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。