鍛冶兄弟のダンジョン賛歌   作:ケツアゴ

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第二十話

 ベッドの中、ドレス姿で俺の上に寝ころぶ春姫は緊張した面持ちで首に手を回して抱きついている。顔を見るのも無理なのか逸らすも愛くるしい照れ顔ははっきり見え、押し殺そうとするも声が漏れ出る。

 

「んっ……。あっ、あぁ……」

 

 右手は長い金髪を指先で掬った後で頭に向かわせる。絹のような手触りが指先を通るのが心地よく、思わず何度か繰り返してしまった。このままこれだけをとも思ったが、続きを期待する目を向けられては応えない訳にはいかないだろう。

 

「……俺としては我慢せずに声を聞かせて欲しい。今の姿も魅力的ではあるが、違うお前も見てみたいぞ」

 

「意地悪で御座います……」

 

 笑いながら告げれば少し拗ねたのかポカポカ胸を殴られたがステイタス差や本気でない事もあって痛くない。これでステイタスが逆だった場合は尻に敷かれるのだなと思うが、別に構わないだろう。十発ほど俺を殴った彼女は俺の蝶ネクタイを外し胸元のボタンを一個一個外した後で胸元に顔を押し付ける。

 

「ヴァルツ様の香り……」

 

 そういえば以前、俺の家に来た時に洗濯の手伝いをしてくれたのだが、来客の対応で席を外して戻ってみれば俺のシャツの匂いを嗅いでいたな。見られたくないと思ってスルーしたが匂いフェチなのか? 獣人特有のサガかも知れないし、女性に聞くのは問題だから猛者に訊ねてみよう。

 

 億体もない事を考えながら左手は腰の更に下に向かい、直接手で握って感触を楽しんだ後は何度も往復させながらさする。こそばゆいのか俺の手が動く度に春姫は身じろぎをして艶っぽい声を必死に押し殺していた。……此処まで来ると是非とも声が聞きたくなるが……。

 

「……そろそろだな。少し惜しい気もするが……」

 

 呟けば予感が当たって春姫の意識が途絶える。幾ら酔って大胆になっても根本は変わらず純情で、保った方だが限界が来たのだ。俺の胸を枕にスヤスヤ眠る春姫の尻尾を撫でていた左手を離し、そっと頬を撫でる。スベスベツヤツヤの手触りが伝わってきた。

 

 

 本人にも求められ俺も満更でもないが流石に酔って大胆になったのに付け込むのは気が引ける。尻尾も体の一部であるし勘弁して貰うとしよう。どのみち気絶している事だしな。

 

 ……いや、最初の時に一気に進めば更に先に進めただろう。少しだけ春姫の胸元に視線を向け、ドレスを脱がした彼女に覆い被さったり、俺の上で照れながらも腰を動かす姿や後ろから……下世話な妄想はこの辺りで止めるとして、気になっていた事を調べよう。

 

「……」

 

掛け布団を完全にはねのけ、正面の鏡をアナライズで調べる。結果が頭に流れ込んだ瞬間、俺は枕元の蝶ネクタイを握り締め振り抜く。大金剛は蝶ネクタイからモーニングスターに形を変えて鏡を破壊した。粉々に砕け激しい音を立てる鏡の裏には呆然として固まっているテリーと身なりの良い者達、その護衛らしき男達の姿があった。大金剛を引き戻し鉄球をキャッチした俺は彼らに近寄り粉々に砕けた鏡の破片を手にする。反対側はガラスになっていて向こうが見え、ガラス側のみの防音機能まで付いていた。

 

「説明を……する必要はないな」

 

 単純な話だ。この部屋は神フレイヤの為に準備したと聞いているが着替えを覗く予定だったのだろう。それが招待状を手にやって来たのが代理のアレンだったので俺と春姫をターゲットにして情事を覗く事にした、それだけだ。言い訳など出来ない状況で奴らが固まっていると廊下にいたらしい護衛達が慌てた様子で入ってきた。

 

「オーナー!」

 

「何事ですかっ!」

 

「む、むう。それがだな……あの女を捕らえろっ!!」

 

 絶体絶命の状況で禄な判断が出来なくなったのか春姫に指先を向けるテリー。護衛達は戸惑いながらも春姫に近寄ろうとするが、武器を持ったLv.4に勝てるはずもない。分かっているのか及び腰な所を悪いが刃を潰した剣を叩き込んで片付けさせて貰う。

 

「後二人……いや、俺が手を出す必要もないか」

 

 他の入り口から春姫に手を出されないように気を張りながら残った二人の護衛……それなりの使い手らしい男達を見るが俺が倒す必要もない。既に向こう側の入り口に彼女が立っていた。

 

見張っていたら好機が来た(何やら音がした)ので来てみれば……殴り飛ばす口実が出来ましたね」

 

「お、お前はマクシリミアン!? お、おい! あの男を人質に……」

 

 特殊な構造の鏡を見て状況を悟った彼女に対し、既に詰んでいると理解していないのか、人質にしろ、そう言い切る前に護衛の男二人……黒猫と黒拳を名乗っていた彼らは壁に激突する。俺や彼女が動くよりも早く怒り心頭の奴が死なない程度に殴り飛ばした。

 

 

「おい、クソ共。来なくて失敗したとはいえお前達程度の視線であの方を穢そうとは良い度胸だな。……ぶっ殺す」

 

 

 ……アレンの静かな声に残った男達は震え上がる。身を守る術を失った事で陥った状況を完全に悟ったからだ。都市の二大派閥を完全に敵に回した上で怒りで我を忘れそうな第一級冒険者に襲われそうなのだからな。

 

「……これは予定以上に骨が折れそうですね。さて、友人の情事を覗こうとしたのですので私も殴りたいのですが……流石に殺さないで貰えますか?」

 

「あぁ? 殴るなら勝手に殴れ、ゴミが。死んでなきゃ別に良いんだろ、別に」

 

 護衛を倒すよりもアレンがやりすぎないように止める、そんな想定以上の難度に辟易しながらも彼女は手加減無しにテリーの顔面を殴る。歯が何本も折れて鼻血が出ていた。……しかし、俺を友人と思っていたのか。うん、素直に嬉しいな。これで後少しで友人の数が二桁に到達する。

 

 

 

 

 

 

 

「……しかし全部押し付けて良かったのでしょうか?」

 

「俺達だけでは止められないから警備のガネーシャ・ファミリアにも手伝って貰った事だしな」

 

 あの後、アレンに事後処理を任せた事を悩む彼女の事情を知っている象神の杖(ラクーシャ)がテリーの背中のステイタスを調べ、派遣されてきた男ではなく過去に悪事を働いていたテッドという別人がなりすましていたと判明。今は治療中の為に取り調べは難しいがアレンに受けたダメージが回復すれば全容が明らかになるだろう。

 

 まだ目覚めない春姫を背負った俺は豊穣の女主人の前で一旦分かれる事になった。ヴェルフは何やら気疲れしたと寝に帰ったが何かあったのか?

 

 

「では、グレート・ザ・マスクマンGが必要な時は言ってくれ。友人だし何時でも貸そう、リオン」

 

「ええ、あの仮面は実に都合が良い。またお借りします」

 

 友人ではあるが他の友人も名字で呼んでいるので俺も名字で呼べば握手を求めるように手を差し出される。認められたと、そう言う事だろう。俺は軽く手を握り返すと彼女と別れてロキ・ファミリアのホームに向かっていった。

 

 

 ……しかし最後まで仮面としか呼ばなかったのはどうしてだろうか? 名前が覚えられなかったのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……二十四階層でモンスターの大量発生か。恐らく例の宝玉が絡んでいるな。奴を調査に向かわせるとして、Lv.6相当だという女も気になる。仲間も居るだろうな」

 

「じゃあ、事情を知っている者達から調査隊を出そう。第一級冒険者を中心に、都市に居るかも知れない協力者に気付かれない為に少数精鋭のメンバーで。……猛者は外せないがフレイヤがどう出るかが問題だ」




感想お待ちしています 

お気に入りが千 感想が百を越えたら番外編書きます

  • 春姫との結婚生活
  • 別ヒロインルート アスフィ
  • 別ヒロインルート フィルヴィス^^
  • 別ヒロインルート 誰か募集
  • 一定以上経過する度に一個ずつ書けや、オラ!
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