「……お前が居るとは驚きだな。ああ、それと一応謝罪しておこう。アレンと口論になったからな。場を弁えず互いのファミリアの品位を下げる行為だった」
テリーが実は成りすました別人であったと発覚し、後始末をギルドが引き受けてから数日経ったある日、俺は十八階層の酒場に来ていた。酒を飲むためではなく、極秘の任務の協力者と合流する為だ。
二十四階層でのモンスターの異常発生は少し前から耳にしていたが例の胎児が発見された三十階層でも起きていたらしく何らかの関連があると見た神ウラノスの指示で調査に向かうのだ。何分公に出来ない内容なのでロキ・ファミリアの面々は予想していたが、まさか猛者まで参加するとは思っていなかった。
「気にするな、アレンにも非がある。……フレイヤ様の指示があった。少し鬱陶しい、とな」
あの女神が猛者を動かすという事は胎児に関わる連中が居ては邪魔なのだろう。それが何かだが、どうも浮かない顔をしているのを見る限りでは女神はヴェルフとパーティーを組んでいるという少年への試練に予想外の事態が加わるのは避けたいのだろうが、此奴は眷属としては兎も角、個人として何も知らない相手を危険に晒すのに複雑、といった感じか。
「……来たか」
猛者は装備したゴリラアームDXを軽く触りながら入り口に目を向ける。今月のローンの支払いが未だだが今回の報酬で払えるだろう。何せカドモス以外にも貴重で上質な素材を使ったゴリラアームDXは力のアビリティ上昇だけでなく力の数値の上昇補正効果も付いているのがランクアップして上昇したステイタスでの魔法による鑑定で発覚した。……まさか俺でも把握しきれない効果があるとは驚きだな。……料金をもっと高く設定するべきだった。深層のドロップアイテムをあと一億ヴァリス分とか……。
「驚いたな。まさか君が来るとは……」
聞き慣れた声の方を向けば勇者に九魔姫に剣姫、そして千の妖精とロキ・ファミリア一行の姿。チームワークに難がある凶狼は当然として、大切断や怒蛇が居ないのは大勢だと目立つからか。そして後からはアスフィと……見知らぬ黒髪のエルフ。俺の血筋を知ってか良い印象を向けていない様子だが見覚えがない相手だ。
……そして店の隅にいた見知った鎧姿に猛者達の視線が集まった。
「よっ! オイラはリドってんだ宜しくな」
「……フール」
片方は陽気な声で、もう片方は籠もった声で名乗るが顔は見せない。詮索無用とギルドから前々から通達されているので訳ありと判断したのか詮索する気は無いらしいが気にはしている様子だ。
……さて、どうやらこれで全員の様だし向かうとしよう。矢張り猛者が居るというのは心強いな。
(フレイヤ様も相変わらずの様だ……)
敬服すべき女神の意志ならば今回の任務に参加することに異論はない。だが、その理由が例の少年の試練の邪魔になるかも知れないのと……ヴァルツ・クロッゾが落ち着いて恋愛をするのを眺めていたいから、と言われれば少しは思う所もある。顔にも口にも出さないが見抜かれて居るだろうな……。
「オッタル。一番強いのは君だけど指揮はどうする? 派閥の対立は今は忘れて一本化するべきだと思うけど」
「異論はない。ああ、それと俺は指揮官には向いていないからお前に任せるぞ、勇者」
「そうかい? じゃあ引き受けるよ」
俺も勇者も同等のファミリアの団長であり、この様な形とはいえ指揮下に入るのは良いとは言えぬだろうが、フレイヤ・ファミリアは自分が最も女神の寵愛を得るのだという意志の下で行動しているので共に行動することはあってもロキ・ファミリアの様なチームワークでの戦いには向かない。此度はフレイヤ様の意志で参加した以上は最善を尽くすのみだ。
俺の返答に予想していたのかさほど驚いた様子も見せず勇者は頷き出発を告げる。今回、ヴァルツ・クロッゾは魔法による情報集めを担当し第一級冒険者が例の女や居るかも知れない同格の仲間との戦闘を引き受けるが残った第二級以下はモンスターとの戦闘やサポーターを引き受ける。万能者は何やらとっておきの切り札が完成したと言っていたが……。
「……最初に言っておこう。私に何かあれば見捨てて結構だ。今回も無理に参加した訳だしな」
デュオニソス・ファミリア団長のフィルヴィス、二つ名は知らないが忌み名として『
「成る程。このメンバーならば壊滅の危険は低いから不幸など呼びはしないと思える為に派遣したのか」
「……本人には聞こえぬようにな」
道中、ふと気付いた事を口にするヴァルツを窘める。何で俺がとも思わんでもないが……本人には聞こえていないらしいが、少し距離を取っているのが気掛かりだ。秘密の任務故に死亡者が出ても公にはならぬがフレイヤが率いるファミリアの団長としてパーティーから脱落者が出るのは避けたい。
だが、相手は許した相手にのみ接触を許す者が居るほどに潔癖なエルフ。此処は王族に頼むことにして一言告げようとした時、先頭を歩いていた勇者が立ち止まる。
「これは凄いな……」
崖の下を見下ろせば数百を余裕で越えるモンスターの群れ。それが通路に犇めいて一方向を目指している。さて、どうするか……。
「俺が行くか? あの程度なら無傷で済む。魔法は温存すべきだろう?」
「……そうだね。じゃあ……」
「フィン、私に行かせて」
今回の騒動は食糧庫に端を発しているとギルドの使者から聞いている。ならばモンスター達がやって来た方向に向かえば何かあるのだろうが調査中に背後から来られても鬱陶しい。それにフレイヤ様の御側にいることが多い俺は体を動かす機会が少ないので勘を鈍らせないようにしたいが、剣姫もランクアップした肉体に馴れておきたいのか単騎での突撃を申し出る。
「……構わん。譲ろう」
此処で取り合っても時間の無駄だと譲れば自慢の風も使わずに剣姫が群れの中に飛び降りてモンスターを蹴散らしていく。少し譲った事を後悔すると思ったが、何時か敵対する可能性を考えれば戦闘を見る良い機会だっただろう。……その際、大きく関わりそうな男に視線を向けた。
「どうかしたか、猛者?」
俺を含め殆どの相手を二つ名でしか呼ばないこの男は客同士の争いに極力関わらないというスタンスを持っているらしい。つまり俺とロキ・ファミリアが抗争になったとして、ロキ・ファミリアと親しくしていても此方に魔剣や武具防具を用意するという事だ。……恋人が居るが、その時にどうする予定なのだろうか?
「……連れ去るかも知れんな」
この男ならするだろうと、そう思った。
俺がそんな益体もない事を考えた少し後、ヴァルツは他二名と共に俺と分断される事になった……。
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春姫との結婚生活
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一定以上経過する度に一個ずつ書けや、オラ!