鍛冶兄弟のダンジョン賛歌   作:ケツアゴ

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お気に入り千突破記念 春姫との結婚生活

 まだかな、まだかな、そう心待ちにしながら春姫は手鏡でもう一度、今の自分を確認する。化粧は濃すぎず、かと言って素っ気なくもなく、アクセサリーも派手ではなくてあくまで自分を飾りたてている範疇。服だって少し胸元を開けているが色気を強調した物ではない。

 

 欲情して欲しいとも思ったが、それはこの後にどうとでもなる……少なくとも本人は思っていた。実際はどうでも、春姫の中では誘惑の自信はある。しつこい様だが本人の中では。

 

「あっ……」

 

 門の前に立って雑踏を眺めていた時、通行人の中に目当ての人物を見つけ思わず顔がほころぶ。ダンジョンに向かう為に防具に着替えた冒険者や朝の市に向かう市民に混じって少し薄汚れた作業着に身を包んだヴァルツが春姫の方にと向かって来ていた。

 

「お、お帰りなさいま……ひゃっ!?」

 

 思わず駆け出しそうになるのをグッと堪え、余裕を持って歩み寄るも足下不注意で躓いて転けそうになった春姫であったが、ヴァルツが抱き止めて助ける。腕の中の彼女は恥ずかしそうにしながらも幸福そうな笑顔で見上げてきていた。

 

「お帰りなさいませ、()()()

 

「今帰ったぞ、春姫」

 

 そう言いながらヴァルツは春姫の額に口付けをする。嬉しい反面、どうせなら唇が良かったと思う春姫であった。尚、当然のごとく二人が居るのは外である。職種は違えど通行人が沢山居た。

 

 

 

 

「……むっ。どうも汗臭いな。すまない、こんな状態で抱き締めてしまった」

 

「春姫は構いません。……旦那様の全てを愛していますから」

 

 此処は二人の家、ロキ・ファミリアのホームのすぐ近くに建てられた新居。そう、春姫とヴァルツは結婚したのだ。恋人になるのに時間がかかった二人だが結婚は割とアッサリと話が進み、詳しく言うなら春姫が酔った勢いで申し込んだのだ。互いに派閥が違うのでどちらかのホームに住むのも憚られ、こうして家に住んでいる。此処から春姫はホームに、ヴァルツは工房に向かって丁度帰って来た所だ。

 

 

「流石に今日は俺が洗うぞ? 夫婦だから分担しよう」

 

「いーえ、旦那様はお仕事帰りなのですからゆっくりして下さい。今度手伝って下されば結構ですので」

 

 ヴァルツから汗臭い作業着を受け取った春姫は有無を言わさずに選択場まで持って行くとヴァルツが見ていないのを確かめ、そっと抱きしめながら鼻を近付ける。スンスンと数度臭いを嗅ぐと誤魔化すように咳払いをして洗濯籠に放り込んだ。

 

「……幸せとはこんな時間の事なのでしょうね」

 

 多分徹夜で作業していたのだから朝ご飯を早く用意しなくては、と、考えながら春姫は結婚を申し込んだ時の事を思い出していた……。

 

 

 

 

 

 

(……きっとはしたない女だと思うのでしょうね)

 

 この日、互いが忙しく久々に会ったヴァルツとの食事の最中に春姫はそんな事を考えていた。色々と立て込む少し前、遂に肉体関係を持つに到った二人。夢かと疑いつつも濃密な体験の記憶は濃く、思い出せば鼓動が高鳴る。今もヴァルツの顔を見ればその時の事が脳裏に浮かび上がった。

 

 二人が居るのはヴァルツの家で他に誰も居ないと思うだけで体が火照るのを感じるのだ。関係を結んでから会えない日々が数日続いたが思い起こしては自らを慰めていた。鎖骨を見ただけで気絶するからと自ら目隠しをしてヴァルツに主導権を渡し純潔を捧げ、数度果てた後は何時の間にか目隠しを自ら外して激しく求めていたのは赤面しかなく、その後も鎖骨を見たら気絶するのは変わらない。

 

 この日も何かあればと期待して懐に目隠しの布を忍ばせてはいるが流石に抱いて欲しいとは言い出せない。抱きたいと言って欲しいと願いながら鼓動の高鳴りを感じ酒で誤魔化す。でなくば顔の紅潮で悟られそうであった。

 

(お情けを……いえ、ベッドに行きませんか……無理、私をヴァルツ様の好きに……恥ずかしい)

 

 春姫は冒険者であり、命の危険を感じる仕事故に生殖本能が働くのは仕方ない。純情でも根っこがスケベで夢で関係を持ったのを現実と思うのが彼女だ。どうにか上手い誘い文句を考えるも向いていないし酒が進んで余計に頭が働かない。

 

 だが、此処で自分でも言えそうな言葉が閃いた。自分をヴァルツの物にして欲しいと、何とか言えそうだと春姫は思った。

 

 

 

 

「あ、あの! 春姫を貰って下さいませ!」

 

「……まさかお前から求婚を受けるとはな。待たしていたなら悪かった。明日にでも指輪を買いに行こう。……それとも俺が作るか?」

 

「え、ええ、お願いいたします……」

 

 春姫だって結婚は考えていた。以前から結婚した場合はクロッゾの名を捨ててサンジョウノの名を名乗りたいと言われていた。だが、流石にこれはない、出来ればもう少しロマンチックなムードでヴァルツから申し込んで欲しかったなぁ、と思いながらも結婚を幸せに感じている春姫。

 

 

 ただ、絶対に将来子供が出来てもこの失敗を口にすまいと心に誓うのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、お背中を御流し致します……」

 

 眠る前に汗を流すためにと風呂の用意はされており、ヴァルツが入ったのを見計らった春姫は湯浴み着に着替えて手探りで浴室に入っていく。何故手探りかと言えば目隠しをしているからだ。最初は見当違いの場所にお湯をかけたりしたが諦めずに繰り返して慣れたのか今では目隠ししたままヴァルツの背中を洗える。

 

 

「ひゃうっ!?」

 

 但し慣れたのは背中を洗うことだけで、目隠しして浴室の床を歩けば当然のように滑る。重りが前についているからか前のめりに倒れそうになり、予め待ちかまえていたヴァルツに抱き止められて難を逃れるが、今度はヴァルツが手を離そうとしなかった。

 

 

「……春姫、構わないか? 俺は今すぐお前が欲しい」

 

「ふぇっ!? は、はい! 私もずっと旦那様が欲しかったでしゅっ!?」

 

 思わず噛んでしまった春姫は湯浴み着が脱がされていくのを目隠しした状態で感じていた。

 

(念のために念入りに体を清めておいて助かりました……)

 

 経験から暫くの間は喋れば羞恥心が限界に達すると分かっているのでなすがままに身を任せ、待ちわびた瞬間を心待ちにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……その後、暫く経って。

 

「……少し休ませてくれ」

 

「ふふふ。春姫は大丈夫ですのでお気遣い無く欲望の果てるままに貪り下さいませ。次は趣向を変えて何か服を着ますか? ロキ様から色々とお聞きしまして……」

 

「いや、先程から貪り食われているのは俺なのだが……」

 

 少し窶れた様子のヴァルツは自分に跨がる春姫を抱き寄せて軽く口付けをする。仕事明けの体にこれ以上はキツかった。仕事明けでなくとも最終的にはこの様な感じになるのだが。Lv.は自分がずっと上なのに何故だろうと思いつつ眠りについた彼の顔を覗き込みながら春姫は微笑んでいた。

 

 

「では私も少し眠らせて頂きますが……起きたら続きをお願いいたしますね、旦那様」

 

 ヴァルツの腕枕で眠りにつく春姫。ヴァルツが先に起きないと大変な目に合うのだが彼がどうなったかは語らずにおこう。余所の夫婦関係に介入しすぎるのも野暮だろうから……。

 

 




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  • 春姫との結婚生活
  • 別ヒロインルート アスフィ
  • 別ヒロインルート フィルヴィス^^
  • 別ヒロインルート 誰か募集
  • 一定以上経過する度に一個ずつ書けや、オラ!
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