拙い文章ってコメント貰ったので頑張らないと!
「えぇっ!? く、櫛を贈るって事は求こ……」
「しー! 命ちゃん、しー!」
昨夜全く寝付けなかった春姫はミスを連発して朝の炊事担もで先輩にメッタメタに叱られた後、街中で出会した幼なじみの命に相談を持ちかけた。元々春姫が住んでいた屋敷の近くに孤児院のような場所があり、色々あって仲良くなった後で出稼ぎのために他の仲間とタケミカヅチ・ファミリアとしてオラリオに来たのだが、件の一件でロキ・ファミリアに入団後直ぐに再会したのだ。
言葉遣いも素が出ている春姫が偶然立ち聞きした話を相談すると命は顔を真っ赤にして驚き、周囲の注目が集まる。もし此処で他の団員やタケミカヅチが居れば極東とオラリオの文化の違いに気付くのだろうが生憎不在。天然純情娘二人の間で話が進んでしまっていた。
「ま、まだ決定してる訳じゃないけど……受けるの?」
命の問いかけに対して春姫は羞恥で顔を真っ赤にしながらも頷く。命も釣られて顔を真っ赤にしながらも友人に対して笑みを向けた。
「そう。おめでとう、春姫ちゃん。結婚式には呼んでね」
「も、勿論!」
今まで恋愛相談を胸やけがするレベルで受けてきた命は心配せず、迷い無く祝いの言葉を贈る。彼女が選んだ相手なら間違いないと信じた結果だ。オラリオに来てから耳にした噂ではヘルメス・ファミリア団長の『
それでも盗賊から春姫以外にも多くの人を助け、身よりのない相手には仕事先を身銭を切ってまで探したというのだから善人の類いには間違いない。何より、同じ恋する乙女として友人の恋は応援したかった。
だが、此処で一つ思い出す。自分が誰に恋をしているか思い起こした事で、ある話題も思い出した。オッタルが上客な関係でフレイヤにそれなりに会うにも関わらず魅了された様子が無いことについて訊ねられた事があるのだが、こんな風に答えたというのだ。
『神と人とは全く別の存在だろう? 魅了とは恋心の一種なのだろうが、美を感じても神相手にどうすれば恋心を抱けるのか理解出来ん』
「春姫殿、もう少しゆっくり考えた方が良いのでは?」
タケミカヅチに恋心を抱く命からすれば面白くない意見であり、思い出した瞬間に口調を普段に戻して前言を撤回するのも致し方ないのかも知れない。そういった相手だと理解して関係を持っているのか、恋心ではないとしているのか、はたまた彼に理解など求めていないのか、有力な説としてフレイヤの意見かオッタル達は付き合いを変えないが、ヘファイストスに恋心を抱くヴェルフも暫くは口を利かなかったのだから。
だが、春姫も恋する乙女。盲目になったというか勘違いに気付いていない彼女は急に意見を変えた友人に驚きながらも予定のない求婚を受ける気なのは変わらなかった。
「ううん。昨夜一晩考えた結果だから。私はヴァルツ様の求婚をお受けします。確かに変わっているし、ネーミングセンスが壊滅的ですが、春姫にとってあの方は英雄なのです」
何度も記すが彼に求婚の意志はない。椿の悪戯は物事を予想以上に難しくしていた。だが、知らされても絶対に反省しないだろう。
「……実に素晴らしい時間だった。五百万ヴァリスは安かったな」
一日命懸けで一万ヴァリス程度の収入を得ている下位冒険者からすれば業腹物の事を呟きながらヴァルツはヘルメス・ファミリアのホームを後にする。他の派閥、それも朝からアポなしで来たとなれば叩き出されても穏便な対応だが、団長であるアスフィと彼が怪しげな打ち合わせをするのは見慣れた光景であり、得る物が多いので団員はスルーである。
全員の認識はただ一つ。これだから天才は……、である。
だが、主神には事後報告が多いのでヘルメスは兎も角ヘファイストスは頭を痛めるのは間違いない。だが、ヴァルツは反省しないだろう。技術や知識の探求のため、多少のお説教は平気だった。過去に一度暫く謹慎処分を受けた時は流石に反省したらしい。
彼の手には百円ライター程の大きさの金属板が握られており、ミスリルの様だが溶かした後で何かを混ぜ込んでいる。これが先程までアスフィと打ち合わせをしていた何かの制作に関わっているのだろう。手の中で弄んだ後で懐に大切そうに進んだ時、反対側から買い物途中のアイズ達がやってくる。その中には春姫の姿もあった。
「あ、あの、本当に良かったのでしょうか、ティオネ様。わざわざ服を買って頂くなんて申し訳無いのですが……」
春姫の手には服が入った紙袋が下げられており、ティオネが代金を出したらしい。アマゾネスの服屋の店名が書かれている事からして露出度が高そうだが。多分、これで迫ればイチコロ、とでも言われたのだろうが、後で絶対に鏡の前で真っ赤になって震える。絶対に迫るのは無理である。
「良いの良いの。春姫の魔法に慣れる為って何度もダンジョンに連れて行ってるし、ティオナなんて思いっきり力を使いたいからって話も聞かずに連れて行ってるじゃない」
「えー? 一応十八階層までで止めてるじゃん。彼処で水浴びすると気持ち良かったでしょ? ランクアップしたお祝いと思えば良いよ」
春姫の魔法は対象のレベルを上昇させる『ウチデノコヅチ』。主にティオナ(次点でアイズ)がランクアップした時の気持ちを味わいたいと水浴びにいく度に同行を強請り、遠征でも切り札となるので昇格した身体に慣れる為と他の幹部にも同行をさせられてサポーターといえども経験値は入っていった。そして先日の遠征で稼いだ経験値でランクアップに至ったのである。
「……大変でございました。ええ、本当に……」
一応装備は整え、ティオナが守っていてくれたものの、殆ど有無を言わさずにダンジョンに連れて行かれ、シルバーバックの群れに囲まれてそれをティオナが両断したり、ミノタウロスが一斉に向かってきてそれをティオナが一掃したり、ティオナに担がれて何階層も上級冒険者の全力の速度で駆け抜けたり、後はティオネの豹変ぶりというか本性を目の当たりにしたり、アイズの無茶に驚かされたり、主にティオナの破天荒さに振り回される日々だった。
無論、魔法に頼りきりでは駄目だとリヴェリアにスパルタで勉強を受けたり、接近戦の鍛錬として小刀の稽古をしたりなど頑張ってはいた。頑張ってはいたのだが、周りが凄すぎて本当に大変だったのだ。遠い目で明後日の方向を見ていた春姫だが、視界にヴァルツの姿を捉えた瞬間に耳と尻尾が動き恋慕の情が顔に浮かび上がった。
「……うわぁ。フィンに対するティオネみたい。ほら、行って来たら?」
「ひゃっ!?」
ティオナにやや乱暴に背中を押され春姫はバランスを崩しながら前方に向かうもついに転びそうになり、直前でヴァルツが身体で受け止める。丁度抱き止める形となり、近距離で彼の顔を見上げる彼女は既に言葉を吐く余裕すら無いらしい」
「あ、あぅぅ……」
「ああ、丁度良かった。約束した祝いの品だ。椿から紹介された職人に依頼した櫛だが……受け取ってくれるか?」
ヴァルスは春姫を抱き止めたまま包みを取り出して差し出す。この時、春姫は羞恥と嬉しさで完全にパニックに陥り、自分が今何処にいるのかを完全に忘れさっていた。包みを差し出したヴァルスの手を包み込むように手に取り、一杯一杯の様子で言った。
「あ、あのっ! 子供は何人作りましょうかっ!?」
周囲にはアイズ達以外にも買い物中の人や神、店員が沢山居て、大声で叫んだので注目が二人に集まっていた。暇を持て余している神々は叫んだのが誰か確認するなり走り去り、きっと噂を広めるのだろう。尾鰭背鰭は必ず付く。間違いなくだ。
「……すまない。話に着いていけないのだが……」
ヴァルツは色々な意味で困った顔をするのであった……。
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