「この機会に聞きたいんだけど、アイズが腕輪を借りたがるのってアンタの成長速度に関係しているの?」
ヴァルツの交際の申し込みを春姫が受ける一部始終を見せられてげんなりとした気分のティオネ。見ていただけにも関わらず恥ずかしさで気絶していたレフィーヤの頭を膝に乗せた所、何やら感じる物があったらしい表情のアイズであったが思わず反応してしまう。
慌てたようにビクッと身を竦ませ明後日の方向を向きながら口笛を吹く姿など肯定しているに等しく嘘をつき慣れていないのが伺える。誤魔化すのは無理な状況であった。
「……何でそう思う? 俺もダンジョンに向かっているが?」
「頻度が違うでしょう、頻度が。時々ダンジョンの下層とかで会う時も有るけどフレイヤ・ファミリアの連中にサポーターとして同行させて貰ってる時位で、他は日帰りで帰ってこられる深さでしょ?」
一応探ってはみたヴァルツだが言われてみれば行き当たるのも納得だ。モンスターの生態を観察する為にオッタルや小人の四つ子達にサポーターとして同行を願い出て、彼らもファミリア構成員間の仲が悪いので彼らのLv.5という力、連携すれば更に一個上の段階に相応しい稼ぎ場所に連れていける力量のサポーターは居ない。誰しも抜きん出て主神の寵愛を、と思っているのだから。
故に魔石やドロップアイテムをそのまま渡せば良いので誰か雇って分け前の分が減る事もなく、ランクは下だが自衛もある程度出来るヴァルツの申し出は都合が良い。後は料金を踏み倒すために見殺しにしたという主神の名に泥を塗る事態にならないように最低限守りながら経験を積むだけだ。ヴァルツも発展系アビリティ上昇の為にランクアップの経験値は稼ぎたいし、実践での動き方を知って動かしやすい武器防具の制作の役に立てる。
だが、あくまで彼らに手持ちの金が無い時とヴァルツが奥に潜りたい時が重なった時のみであり、他の上級冒険者と比べれば潜る深度も頻度も違う。故にアイズが何度も借りたがる事と合わせてティオネは答えを導き出した。
「……それで確かめてどうする? 既に神ロキも存在は知っているし階層主のレアドロップを使っているから制作は難しいのだが?」
「別にどうもしないわよ。逆に量産可能でフレイヤ・ファミリアに渡ってたら面倒って思っただけ。春姫から聞いたけどアンタが相手を二つ名で呼ぶのは鍛冶師と顧客としての線引きで制作に私情を挟んで腕が鈍らない為でしょ?」
「ああ、探りを入れた訳か。確かに、鉄遊びでもしていろ、等と述べたので絶対に客として扱わないアレンを除き、二つ名で呼ばない上級冒険者は協力者のアスフィ位だ。……春姫、お前は名前で呼ぶぞ。愛する相手だからな」
「嬉しいです、ヴァルツ様。愛するお方に名を呼んで貰えぬなど想像するだけで……」
「……あのさぁ。イチャイチャするなら二人きりの時にしてくれない? 取りあえず帰るわよ、皆。春姫も今日は晩御飯も当番だから遅れるとどやされるわよ?」
未だ気を失っているレフィーヤを担ぎ上げたティオネに言われるがまま帰って行く一行。玄関を出る直前、名残惜しそうに振り返った春姫は勇気を振り絞った。
「あ、あの! 恋人になった事ですし、今度、で、でぇとを致しましょう!」
「所で
「うっせぇなっ! 俺には俺の都合ってのがあんだよ、兄貴! 自分に恋人が出来たからって、つーか今まで恋人じゃなかったのかよっ!?」
「現状に満足しているような事を言ったが……一歩進んでみると良いものだぞ? 明日、早速デートの約束だ。お前との先約がなければ今日行っていた」
未だLv.1であるヴェルフだが同僚と不仲なので一緒にダンジョンに行く仲間が居ない、ヘファイストスから弟の問題を聞かされたヴァルツはソロで潜っている他のファミリアの冒険者を誘いやすいようにと中層まで同行させていた。
ヘルハウンドという業火を吐くモンスター対策の装備もお古と言ってわざわざ古びた見た目に作った物を渡し、あくまで哀れだから中層での鉱石採掘を手伝ってやる、弟には本心が見抜かれているにも関わらず上から目線で言いながらだ。実際兄であるしファミリアでの立場も鍛冶師としても上なのでヴェルフも指摘はせず、不承不承と言った演技を兄より上手にこなしている。
「せいっ! ……しまった」
既に十六階層まで到達した二人だがミノタウロス四体とアルミラージ複数と遭遇、ヴァルツが前方のミノタウロスを担当するも三体は大金剛の横一閃で腹部を両断するが最後の一体に放った突きが魔石を直撃したらしく名にも残らなかった。付けた名前がお洒落すぎて(と兄弟間では思っている)性能が良くても尻込みされて売れず、禄な素材が購入できない弟の為に少しでも買い取り金額が欲しかったヴァルツからすれば痛恨の失敗だ。
「おい、兄貴! こっち手伝ってくれっ!」
「やれやれ仕方ない。鍛冶も戦いも未熟な弟め」
正直、照れ隠しにしても言い方をもう少し考えろと思うヴェルフの目の前で石斧を持った巨大な兎のモンスターが剣の一振りで絶命する。扱い方を知らなければ扱いやすい武具など作れないという持論による鍛錬と自分の制作物を扱う時に補正がかかるスキルによってヴァルツの剣の腕は冴えていた。当然、アイズ達のように本職の達人には劣るが、鍛冶師が本職なのだから十分だろう。
「兄貴、もう鉱石は結構採掘したけど帰らなくて良いのか?」
戦闘後にダンジョンを進み十七階層。地図を頼りに採掘場所を回り運良くドロップアイテムも道中で大量に集まったので鞄も一杯だ。ランクアップして意気揚々と乗り込んだ冒険者を死に誘う中層での経験は役に立つだろうと思いつつヴァルツは考える。この頑固な弟に取り分を多く渡すにはどうすべきかと。
「ああ、そろそろ帰る頃……いや、ちょっと待て」
遠くから聞こえてくる何かが崩れる音と怪物の咆哮、大勢の冒険者達の騒がしい声。階層主ゴライアスが復活する周期でありリヴェラの街の住民が邪魔だからと討伐に出たのだと察するなりヴァルツは駆け出した。
「着いて来い! 上質な経験値を稼ぐ絶好の機会だっ!!」
「ゴォオオオオオオオオオオオッ!!」
十八階層に続く道の直前に存在する嘆きの巨壁から唯一生み出される巨人型モンスターのゴライアス。Lv.にして四相当とされる難敵に挑む中心となったのは一同の中で二人だけLv.3のヴァルツとリヴェラの街を仕切るボールスだ。耳をつんざく大声を上げながら駄々を捏ねる子供の様に地団太を踏む足をかいくぐってヴァルツが大金剛で右の足首を斬りつければボールスも反対側に武器を突き刺す。
無視できない苦痛を与えた人間を潰そうと振り下ろされた拳を跳んで避けたヴァルツは腕を足場に駆け上がり、掴み掛かった手を再び跳んで避けると顔面間近まで一気に迫る。
「
巨人の口内に収束される魔力。空飛ぶ魔法でもない限り回避不能の一撃は不意に起こった魔力爆破によってゴライアスの口内を焼いて終わった。相手の魔法などの発動にあわせて発動、魔力を暴走させるヴェルフの魔法だ。そして柄を持って振り上げたヴァルツの大金剛の刃は変形し大剣から巨大な戦鎚へとなっていた。人体の急所である眉間に叩きつけられる超重量の一撃に骨が砕け怯むゴライアス。苦し紛れに振った手が空中で落下中のヴァルツを捉える瞬間、再び変形して巨大な盾に変化、地面に叩きつけられるも直撃は避けた。
眉間に受けたダメージが深くゴライアスの足がフラフラと頼りなく揺れた瞬間、詠唱を終えた後衛の魔法の一斉放射が叩き込まれる。炎、雷撃、氷、様々な魔法を喰らい続けたゴライアスの意識が朧気になって深手を負った右足だけで身体を支えた刹那、ヴァルツの持つ金属の長い鞭が手首に絡みついた。
これが彼が制作した第一等級武具『大金剛変化自在丸秋雨雲水δⅢ』、略して大金剛の能力である形態変化。使い手の意志で形状、質量、体積が違う複数の形態に自在に変化させられるのだ。
「今だっ! 引けぇぇええええええええええっ!!」
その叫びと同時に冒険者達は鞭を掴んで一斉に引っ張り巨人を引き倒すと死んだ虫に群がる蟻のようにゴライアスに武器を構えて襲い掛かった。暫く振動と悲鳴や怒声が響き、最後に巨人が絶命すると同時に歓声が上がる。皆、それなりに怪我を負ったが達成感に満ち溢れていた。
その後、魔石を取り出した所で場を仕切っていたボールスにヴァルツは近寄って最近完成したばかりの魔具を見せた。ユニコーンの魔石と角を加工した特性の籠手、痛いの痛いの飛んでい拳である。
「所でボールス。実はこういった物があってな。俺の取り分は要らないから実験に付き合ってくれ。モンスターで何度かは試した」
「痛いの痛いの飛んで行けー! 痛いの痛いの飛んで行けー!」
殴った威力がそのまま回復力に変換されるが、そう叫ばないと効果が落ちる上に衝撃はあるので転んだらダメージが有るからと怪我人を左右から掴んで支えた状態で殴っている。怪我は実際に治っているので治療行為の一環だが傍目にはリンチにしか見えない。
「……酷ぇ光景だな、おい」
ヴェルフの呟きはその場にいた者全員(但しヴァルツ除く)の共通の想いだった……。
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お気に入りが千 感想が百を越えたら番外編書きます
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春姫との結婚生活
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別ヒロインルート アスフィ
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別ヒロインルート フィルヴィス^^
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別ヒロインルート 誰か募集
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一定以上経過する度に一個ずつ書けや、オラ!