神の犯した間違いを正すのは美しき薔薇色の断罪者   作:あららどろ

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神の犯した間違いを正すのは美しき薔薇色の断罪者

「突然じゃが、お前さんは死んでしまった」

 

 老人の声で、彼の意識は覚醒した。

 眼だけを動かしてあたりを見回す。そこは地平線すらない白い空間だった。

 自分の前には小さなちゃぶ台が1つ置かれており、その傍に白髪の老人が座っていた。

 

 黒い道着を着たその男は眉間にしわを作ると、老人に対して威圧するような鋭い視線を向けた。

 

「説明しろ……」

 

 警戒心の表れだろうか。その声色は低く、強い敵意を含んでいる。

 

 老人はそんな男の様子を気に留めるそぶりもせず、飄々とした態度でお茶をすすった。

 

「ほっほっほっ……威勢のいい奴だの」

「口を慎め……誰に向かって物を言っている」

 

 男は、嫌悪感を露わにしながら老人にドスの聞いた声で言った。

 老人は、まるで反抗期の我が子を見るような目でその男を見ると、穏やかな声でころころと笑った。

 

「ほっほっほっ……そんなことを言われるのはいつ以来か。お前さんが現世でどれほどの地位にいたのかは知らんが、わしは神じゃ。最も、ミスでお前さんを殺してしまったからあまり強くは出れんがの」

 

 どこか話が噛み合わない。道着の男は首を傾げた。

 自分の死は辺境の惑星を数個統治する程度の低級な神のミスによって引き起こされるようなものではない。

 

 あの時――もう1人の自分と1つになり、自分は唯一無二の存在となった筈だった。

 だが――愚かしく腹立たしい悪が、絶対の正義である我の前に立ちはだかった。

 その後のことは思い出したくもない。神の真似事をした下賎な人間如きに膝をつき、最後には人間の願いの結晶などという下等な力の前に屈した。

 

 切り裂かれた後の記憶は無い。記憶は無いが――少なくとも無事ではなかったはずだ。

 それがどうだ。今の自分は傷1つないどころか、合体する前の姿に戻っている。あれは不可逆の合体の筈だ。解除される筈もない。一体何故。

 

 男の思考は、老人――目の前にいる下等な神の言葉で中断させられた。

 

「すまんな。元の世界で生き返らせるわけにはいかんのじゃ。そういうルールなんでな。お詫びと言っては何だが、別の世界で生き返らせてやろう」

「別の世界……」

「何。ただでとは言わん。罪滅ぼしに、お前の求めるものをやろう。前の人間は、スマートフォンなる機械を持って異世界に行ったぞ。それだけではつまらんと思って少々神の力を授けたが……ほっほ。楽しそうにしているわい」

 

 それを聞いた男の顔が一層険しくなった。だが、その表情とは裏腹に口元には笑みが浮かんでいた。

 その笑みは、やさしさとは程遠い、どす黒い感情を含んだ邪悪な笑みだった、

 

「なるほど。どうやら大いなる意思が働いて俺に奇跡を起こしてくれたようだ」

 

 男は立ち上がり、まるで何かを決心したようにその拳を握りしめた。

 男の指輪が、妖しく煌めく。

 

「前の人間と言ったな……お前はその人間に神の力を与えたというのか?」

「そうじゃ。罪滅ぼしにな。ほっほっ。どうやらうまく使いこなしているみたいだぞ。お前さんにも授けてやろう」

「まだわからんのか。この俺を誰だと心得る」

 

 そう言って男は力を込める。すると、男の身体から膨大なエネルギーが溢れ出して暴風を巻き起こした。

 極限まで解放されたエネルギーが起こす風に煽られ、老人が尻餅をつく。

「な、なぜ……人がそれほどまでの力を…………」

 

 老人は目を見開き、震える声で言った。

 目の前にいる人間の力は神である自分を遥かに超えている。否、自分の上に立つ上級神すらも凌駕している。あれはそう――破壊神の域にまで到達しているのではないだろうか。

 

 男はかすかに笑うと、老人に手をかざした。

 

「俺が人間だと? 二度とそのような不愉快な間違えをするな。俺はザマス。界王神にして、この世の歪みを正す絶対の正義だ」

「界王神……!?」

 

 老人にはその言葉に聞き覚えがあった。自分の上司に当たる界王。出会う機会すらないその偉いお方のさらに上に位置する大界王。その大界王のはるか上に位置する神にとっての神――それが界王神。

 

「俺がここに来た理由ははっきりした。俺は理想郷の為――美しい宇宙を創る為――俺がすべきことは1つだ」

 

 そう言ってザマスと名乗った男は――ゴクウブラックは、神へ向かってその手から闇色の気弾を打ち出した。

 

 正義の粛清を受けた罪深き神は、悲鳴をあげる暇もなく消滅した。

 

 主を失った空間が、音を立てて崩れていく。闇へと変わっていくその空間の中で、1つの光が輝いていた。

 ゴクウブラックの手につけていた時の指輪だ。

 指輪は進むべき道を示すようにある1点を指している。

 それを見てブラックは笑う。

 

「俺に奇跡をもたらした存在がいるとするならば、それは俺にこう言っているのだ。『異次元を救え』と。いいだろう……救ってやるさ。悍ましき下等な人間の魔の手から……神の力を自らの力と勘違いし、私利私欲の為に神の力を使う罪人から……!」

 

 男は笑うと、次元の亀裂に身を投げた。

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