彼女は些細なことに偽りを混ぜることをいつも忘れない。
昼食に何を食べたと訊けば、吊り上がった口の端にわずかにケチャップをつけながら、部品を食べたという。
好奇心から彼女の名を冠するライフルに触れた時には、大それた様子で爆発するかもと言われた。
―――――カルカノM91/38。彼女を副官に任命してから、日常でもほんの少し気を張る必要が出てきた。
副官としては申し分ない。命令した業務はしっかりこなしてくれるうえ、知らぬ間に仕事机を整理したりしてくれる時もあり、細かな気遣いも好印象だ。
ただそれだけに惜しいと思えてしまうのが、先の嘘つきの悪癖だ。
そのせいで部隊内でも若干浮いていると彼女の姉であるカルカノM1891も困り顔だったが、本人に自覚がないのか表に出さないだけか、今のところ改善されるような見込みは態度に表れていない。
しかしそんな彼女の飄々とした横顔でも崩れる時がある。それは嘘をつくような余裕がない場合だ。
「......私でなければダメなのですか」
例えば呼び出した彼女に後方支援の命令を下した時は、心底嫌そうな正直者の顔をした。
自らを殺しのためだけに生まれてきたという子もいるほどに、今の世界では殺伐とした戦闘は日常的なものになっている。そんな彼女たちからすれば後方支援は安全ではあるのだが、同時に退屈で面倒な任務でもあるのだろう。
今ならまだ他の者に頼めるが? と事実そこまで切迫した状況ではなかったため、忖度する意味合いでそう提案すると、眉根を寄せたまま彼女は首を横に振った。
「指揮官が最初に私を指名したのであればそれに従います。使命と矜持は分けるべきものですし、身勝手な欲が絡むのならばなおのこと」
いつの間にか培われていた感性によると、どうやら嘘は言っていない。後方支援を頼むときはやはり皆あまりいい顔はしないので、私はほっと胸をなでおろした。
机の一番下の棚から渡すべき資料を取り出し、では済まないが、などとつまらない言葉を送ろうと顔を上げた際に、ラベンダーの香りが鼻をくすぐった
「......でも、たまには傍に置いたままでいてくれてもいいのですよ?」
気が付けば彼女は机越しのまま、鼻に息が当たるほどの距離に顔を近づけていた。
「昼夜問わず副官の仕事はダミーでも務まりますが、やはりそれでは私の心は満たされませんから」
妙に色付けされた声音に、私は席をがたんと揺らして情けなく狼狽えながら、顔をそらして咳ばらいをする。
そして念のため改めて命令を下した。やってくれるか? と。
「かしこまりました。物資を全部破壊する任務ですね?」
するとダミーフラワーは、そう笑った。