三ノ輪銀は勇者である オラトリアの緋跡   作:大腿筋膜張筋

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鷲尾須美と私と犬っころ

 

 

鷲尾須美。

結城友奈は勇者であるの鷲尾須美の章での主人公であり、三ノ輪銀、乃木園子とバーデックスから街を守るために勇者としての日々を送っていた少女である。

何故このオラリアにいるのか、そしてなぜ車椅子に乗って生活をしているのか様々な疑問が頭の中をぐるぐると巡り、頭を抱えてしまいそうになる。

ともあれまずは自己紹介をしなければと思い、声をかける。

 

「こんにちはー。三ノ輪銀です!なんか歩いてたら道に迷っちゃって…。気が付いたらここにいたんだよねー。」

 

「なるほど?

こんにちは。鷲尾須美と言います。ヘファイストスファミリアで鍛冶師をしています。」

 

お互いに挨拶し、ぺこりと頭を下げる。

しかし本当に何故この世界にいるのか疑問である。もしかしたらほかの勇者もこの世界に流れ込んでいるのかもしれないと思うが今考えてもしょうがないと溜息を心の中でつく。

 

「そっか。ならここの武器とか防具って売ってるの?」

 

「はい。ここだとあまりお客さんは来なくて、ほかの鍛冶師の方に売ってもらうのが最近は多かったんですけど。」

 

「じゃあ、このグローブ?手袋?を買いたいんだけど?」

 

私が買いたかったのは赤と黒の2色で作られていたグローブである。

自己鍛錬やダンジョンに潜っていた時、手にマメができ、何度も破れて手がボロボロになっていたのでグローブが前々から欲しかったのだ。

 

「分かりました。2500ヴァリスになります。他にはありませんか?」

 

「んー、じゃあオーダメイドの斧とか作れる?」

 

インファント・ドラゴンとの戦いで桜花さんのお下がりである斧はダンジョンに置いてきてしまった。無くしたことを桜花さんに告げるとお古だから大丈夫と気前よく言ってくれたから良かったものの、自己鍛錬で使っているものは以前のものと比べ、扱いにくかった。

 

「大丈夫ですよ。お好みの形とかありますか?」

 

「こういう感じなんだけど…」

 

イメージするのはアニメで三ノ輪銀が使っていたもので、形状や重さなどを伝えると快く了承してくれた。

値段を聞くと同じ形のものを2つ作ることになるので値段は少々張ったが予想していたものより安かったので依頼することにした。

 

その後は雑談しながらメインストリートまで送ってもらい、その時に敬語は辞めてくれとお願いしたところだいぶ渋ったが、メインストリート付近に着く頃にはあだ名で呼び合い、砕けた口調で話すようになっていた。

 

「本当に送っていかなくて大丈夫?」

 

「大丈夫よ。鍛冶師は体力が結構いるから1人で帰れるわ。」

 

メインストリートにつき、この辺りで大丈夫ですと言うと1人で車椅子で帰るそうだ。

ここまで来る時は自分が車椅子を押して来たが、1人で帰るのはだいぶキツイのでないかと考えたがどうやら杞憂だったようだ。

 

「じゃあね銀、完成するのはだいたい1週間後になると思うからその時に私の店に来てね。」

 

「分かった!またね!すみ!」

 

今日もいい出会いがあったと喜びながらスキップをしてヘスティアファミリアのホームへ帰宅するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘスティア様!銀!」

 

「どうしたんだいベル君?」

 

勢いよく扉が開かれ入ってきたのはベル君だった。ベル君は早朝にダンジョンへ行ってくると笑顔で言いながらギルドへ向かっていた。

そして昼頃に帰ってくると言っていたので、昼食を作りながら待っているとベル君が帰ってきたのだが、なにやら顔をニヨニヨしながら帰ってきたのだ。

 

取り敢えず、ヘスティア様はベル君に体を洗ってこいと言い、ベル君はそれに従い、体を洗い終わり何が起こったのか話してくれた。

なんでも5層に潜っていたところ、出るはずのないミノタウロスに遭遇し、腰を抜かして逃げることも出来なかったところにロキファミリアのアイズ・バレンシュタインさんに助けて貰ったそうだ。その時に全身にミノタウロスの血を浴び、そのままギルドへ換金しに行くとエイナさんに説教されたそうだ。

 

「それでベル君はその、ヴァレン何某にデレデレしちゃったという訳だ。ふん!」

 

ヘスティア様はアイズ・バレンシュタインさんに嫉妬しているのか昼食のベーコンサンドをむしゃむしゃと勢いよく食べる。

 

「じゃあ、ベル君はそのアイズさん?に惚れちゃった訳だ。」

 

私がベル君にニヤニヤしながら弄るように話しかけるとベル君は顔を真っ赤にして頭を掻きながらニヤついていた。

それを見るとヘスティア様は残っていたベーコンサンドを八つ当たりするかのように食べあげるとベッドでふて寝を開始した。

 

じゃが丸くんのバイトには行かなくてもいいのかと思うが、今日はヘスティア様は休みだと言っていたのを思い出して、ベッドへ視線を向けると寝返りをうち、ブルンと揺れた胸を凝視し、全て栄養はあの胸に"行っているのかとベーコンサンドを食べながら戦慄していた。

 

ベーコンサンドを平らげると自己鍛錬の時間だと思い、ベル君と一緒に外へ行き汗を流しながら、斧を振るった。

 

自己鍛錬が終わり、夕暮れに差し掛かったのでヘスティア様を起こすとたまには外で食べようじゃないかと言い出し、ベル君がたまに食べている西のメインストリートにある【豊穣の女主人】という酒場へ行くことになった。

 

「それじゃあ、ヘスティアファミリア結成から一月を祝って!乾杯!」

 

「「乾杯!」」

 

私はジュースを、ベル君とヘスティア様はお酒を頼み、乾杯を交わした。私はカウンターに並べられた料理を食べながら今後のメニューに追加して行くものを想像しているとカウンターから乗り出し、1人の風格のある女将が話しかけてきた。

 

「アンタら冒険者かい?どんどん食べな!」

 

注文をしていないのにドンドン並べられていく食材を見て、これを全部食べきれるのか不安になりつつも食べていく。

金額についてはこの間の戦闘でだいぶ稼げたし、ベル君もダンジョンへ行き多くはないが稼いでいるので問題は無いだろうと次々に口へ運んでいく。

 

すると某忍者アニメの食堂のおばちゃん風の女性が話しかけているのをエルフの店員であろう女性がベル君に話しかけてきた。

 

「ベルさん、来てくれたんですね。いらっしゃいませ。

隣の方々は?」

 

「こんばんはシルさん。この人たちは僕のファミリアの神様、ヘスティア様と同じ団員の銀です。」

 

「こんばんわ。銀くんとベ ル 君と一緒に住んでいるヘスティアだよ。よろしく」

 

「こんばんは三ノ輪銀です!冒険者やってます!よろしくです!」

 

ヘスティア様ガルルと威嚇しながら挨拶し、私は立ち上がってお辞儀をする。そうするとシルさんはクスクスと笑いながらヘスティア様の威嚇をスルりと躱し、私たちに自己紹介をした。

私はよろしくお願いしますと再びお辞儀をするとシルさんは微笑みながら話しかけてくる。

 

「銀さん。そう固くならなくてもいいですよ。」

 

私は恥ずかしさのあまり顔を紅潮させながら着席した。

その後は私たちとシルさんが加わり、話しをしながら食事を楽しんでいると、突如、出入口の扉が開き数十人の団体のお客さんが入店してきた。

 

「ミーアさん!入るでー!」

 

団体のお客さんは私たちの対角線上のテーブルに座っていく。

ふと視線をベル君に向けると硬直し、あわわと言いながら団体のお客さんに目を向けていた。

 

ベル君の視線の先には金髪の端麗の女性がいる。もしやあれが噂のアイズ・バレンシュタインさんか?と考え、ならばあの団体のお客さんはロキファミリアなのかと確信する。

 

「な、なんでロキがここに…!」

 

そういえば以前、ヘスティア様はから聞かされていた仲が悪い神様がいるのだと。

 

「いつもならなん癖を付けに行くけど、今日の所は勘弁してやろう。」

 

ヘスティア様は目の前のお酒をごくごくと喉を鳴らしながら一気飲みする。

 

 

 

 

 

 

「今日は宴や!飲め飲めー!乾杯!」

 

「「「「乾杯!」」」」

 

ロキファミリアも乾杯するとガヤガヤと話しながら酒や料理に手をつけていた。

まぁいいかと私はジュースを飲みながら、食べ物を口に運んでいると一際大きな声で男性が喋り出した。

 

「おいアイズ!今日のあの話を聞かせてやれよ!」

 

「あの話?」

 

「あれだって、帰る途中で何匹か逃したミノタウロス!最後の一匹、お前が5階層で始末しただろう!?そんで、ほれ、あん時いたトマト野郎の!」

 

「ミノタウロスって、17階層で襲いかかってきて返り討ちにしたら、すぐ集団で逃げ出したやつ?」

 

「それそれ!奇跡みてぇにどんどん上層に上がっていきやがってよっ、俺達が泡食って追いかけていったやつ!こっちは帰りの途中で疲れていたってのによ~」

 

恐らくベル君のことだろうか。今日あった出来事らしいのとベル君の話だと辻褄が合う。

確かにベル君はミノタウロスを前にし、腰を抜かして逃げることも出来なかったが、そもそも5層までミノタウロスを逃がしたそちらの責任だろうと私はイラついてしまう。

 

ベル君は大丈夫なのだろうかと視線を向けると拳を握りしめ、ぐっと堪えて話を聞いていた。

 

「ベル君、気にしなくても…」

 

「そんでよ、いたんだよ、いかにも駆け出しっていうようなひょろくせえガキが!」

 

ヘスティア様が気遣い、ベル君に声をかけるが遮るかのように銀髪の男の話し声が大きくなる。

 

「抱腹もんだったぜ、兎みたいに壁際に追い込まれちまってよぉ!しかも、アイズがミノを細切れにしたからそいつ全身にくっせー牛の血浴びて…真っ赤なトマトになっちまったんだよ!」

 

そう言うと銀髪の男は腹を抱えて店内に響き渡る声で大笑いした。

その話を聞いていた他のお客さんもつられて笑いを噛み殺しながらニヤニヤと笑みを浮かべる。

 

 

「それにだぜ?そのトマト野郎、叫びながらどっかいっちまってっ…ぶくくっ!うちのお姫様、助けた相手に逃げられてやんのおっ!」

 

「……くっ」

 

「アハハハハハッ!そりゃ傑作やぁー!冒険者怖がらせてまうアイズたんマジ萌えー!!」

 

「ふ、ふふっ…ご、ごめんなさい、アイズっ、流石に我慢できない…!」

 

笑いを堪えきれなかったのかほかのロキファミリアの団員もクスクスと笑い出す。

 

ふざけるな。ベル君はダンジョンに潜り出して日も経っておらず、ミノタウロスを相手にできるわけが無い。なのになぜコイツらはモンスターを逃して知らぬ顔で笑っているのだと更に苛立ちが溜まっていく。

 

そんなやついたかぁ?まぁ、良いや。本当に情けねぇ奴だったよ、勘弁してほしいぜ」

 

「いい加減そのうるさい口を閉じろ、ベート。ミノタウロスを逃がしたのは我々の不手際だ。巻き込んでしまったその少年に謝罪することはあれ、酒の肴にする権利などない。恥を知れ」

 

「おーおー、流石エルフ様、誇り高いこって。でもよ、そんな救えねえヤツを擁護してなんになるってだ?それはてめぇの失敗をてめぇで誤魔化すための、ただの自己満足だろ?」

 

「これ、やめえ。ベートもリヴェリアも。酒が不味くなるわ」

 

「アイズはどう思うよ?自分の目の前で震え上がるだけの情けねぇ野郎を。」

 

「……あの状況じゃあ、しょうがなかったと思います」

 

「なんだよ、いい子ちゃんぶっちまって。…じゃあ質問を変えるぜ?あのガキと俺、ツガイにするならどっちがいい?」

 

「……私は、そんなことを言うベートさんとだけは、ごめんです」

 

「無様だな」

 

「黙れババアッ!…じゃあ何か、お前はあのガキに好きだの愛してるだの目の前で抜かされたら、受け入れるってのか?」

 

「……っ」

 

「そんなはずねえよなぁ。自分より弱くて軟弱な雑魚野郎に、他ならいお前がそれを認めねえ」

 

「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ」

 

最後の言葉が聞こえると同時にベル君は走り出して店の外へ出る。

 

「ベル君!」

 

ヘスティア様が声を掛けるが聞こえていないのかそのまま走って行くのをヘスティア様もベル君を追いかけるために走り出した。

 

私はベル君が飲んでいた飲みかけのお酒を持ってロキファミリアの元へ歩き出す。

 

「なんだぁ、今の?…あ?なんだてめぇ?」

 

私は持っていた飲みかけのお酒を銀髪の男性の頭の上にグラスを傾け、お酒をぶちまける。

 

「頭は冷えたか、犬っころ」

 

ベル君はヘスティア様に任せておけば大丈夫だろう。

私はこの犬っころに一発でもかまさないと気が収まらないと目の前の銀髪の男を睨め付けた。

 

 

 

 

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