慌てふためくスロウ・ダウン   作:兵庫人

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#010

「何だテメェ……? どけコラァ!」

 

 僕が殴られた男を庇うように立つと、リーゼントの人がこちらに鋭い視線を向けて怒鳴ってくる。

 

 こ、怖い……! でもここで引いたら傷害事件が起きそうだし引くわけにはいかないよね。勇気を出せ、古城静士郎。怯えた表情を表に出すな。

 

「ひ、ひいぃ! 助けて! 助けてぇ!」

 

「待てお前! ……!?」

 

「行かせないよ」

 

 殴られた男は這うように逃げ出し、それをリーゼントの人が追いかけようとするが、そこを僕がスロウ・ダウンと一緒に立ち塞がる。するとリーゼントの人が怒りを爆発させる。

 

「どけって言ってんだろうがぁ! 『クレイジー・ダイヤモンド』!」

 

 リーゼントの人が叫ぶと彼の側に浮かんでいた奇妙な人影が僕に殴りかかってくる。

 

「スロウ・ダウン」

 

 僕がスロウ・ダウンの名前を呼ぶと時間を遅くする空間が発生してリーゼントの人と奇妙な人影、クレイジー・ダイヤモンドのスピードが十分の一になる。しかしそれでもクレイジー・ダイヤモンドは常人よりも若干遅いくらいのスピードで拳を振るってくる……って!? 時間を「減速」させてもこれって、本来はどれくらい速い拳なんだよ!?

 

「くっ!」

 

 僕がクレイジー・ダイヤモンドの拳を避けると、クレイジー・ダイヤモンドの拳は地面にと当たり、そのままアスファルトで舗装された地面を容易く砕いてみせた。

 

 僕のスロウ・ダウンとは比べ物にならないくらいの凄いパワー……! それに驚異的なスピード。もし時間を減速させていなかったら今頃は顔の原型がなくなるくらいボコボコにされて倒されていただろう。

 

「な、何だ!? 急に地面が砕けた……!」

 

 少し離れた所からコナン君の驚いた声が聞こえてくるが生憎と今は彼に構っている暇はなく、僕は目の前のリーゼントの人とクレイジー・ダイヤモンドの動きに意識を集中する。

 

「ドララララッ!」

 

 リーゼントの人の怒声に応じてクレイジー・ダイヤモンドは僕とスロウ・ダウンに向けて拳を何度も振るってくる。スピードを十分の一に「減速」してはいるが、その一発一発に込められた破壊力は凄まじく、もし一発でも拳を受ければスロウ・ダウンは耐えきれないだろう。

 

 だから僕はクレイジー・ダイヤモンドの拳を慎重に全部避けると、スロウ・ダウンをリーゼントの人の背後に移動させた。

 

 今のリーゼントの人は怒りに我を忘れており、止めるには背後から一撃を与えて気絶させるしかない。それに本体であるリーゼントの人を気絶させたらクレイジー・ダイヤモンドも止まるはずだ。

 

「ごめんなさい」

 

 僕はそう呟くと、スロウ・ダウンにリーゼントの人の後頭部を目掛けて手に持っている大型ブーメランを振るわせた。スピードが遅くなっているリーゼントの人にこの一撃が避けれるはずがなく、リーゼントの人はスロウ・ダウンの一撃を受けて気絶する……はずだった。

 

「………え?」

 

 しかしさっきまで目の前にいたリーゼントの人は急に姿を消してスロウ・ダウンの一撃は空を切り、それを見た僕は思わず目を見開いた。それから慌てて周囲を見回すとリーゼントの人は、彼の仲間だと思われる改造制服を着て髪型をオールバックにした人の隣で尻餅をついていた。

 

 何だ? 今の一瞬でどうやってあそこまで移動したんだ?

 

「た、助かったぜ億泰」

 

 リーゼントの人は立ち上がってオールバックの人にそう礼を言うとこちらを睨みつけてきた。

 

「それにしてもかなり速いスタンドだな。まぁ、『レッド・ホット・チリ・ペッパー』ほどじゃねェけどよぉ〜」

 

「ち、違うぜ、仗助……」

 

「仗助君……。彼が『速い』んじゃなくて、君が『遅い』んだよ……」

 

 リーゼントの人の言葉を億泰と呼ばれたオールバックの人と、かなり背が低い学生服を着た人が否定する。

 

「俺が遅い? どう言うことだ、康一?」

 

 仗助と呼ばれたリーゼントがかなり背が低い人、康一に話しかけると、彼は顔に冷や汗を流しながら僕を見て口を開く。

 

「僕達はさっきまで彼に殴りかかる仗助君とクレイジー・ダイヤモンドを見ていたけど、その動きは全部遅かったんだ。パンチの動きだけじゃない……。『ジャンプして地面に着地するまでの動き』も『クレイジー・ダイヤモンドが砕いた地面の破片が宙に浮く動き』も……全部遅かったんだ……! まるで『ビデオのスロー画面』のように……!」

 

「っ!? 何!」

 

 康一の言葉にリーゼントの人、仗助は驚いた顔となってこちらを見てくる。そしてそれと同時に今まで無言で様子を見ていた白いコートを着た長身の男が口を開く。

 

「なるほどな……。目撃者の証言から予想はしていたがやはりそうか。あのスタンド……確かスロウ・ダウンだったか? その能力は『自分の周囲の時間を遅くする』で間違いないらしい」

 

『『…………!?』』

 

 白いコートを着た長身の男の言葉に、コナン君を初めとするこの場にいる全員が驚いた顔となって僕を見てくる。

 

 まさかほんの少し戦っているところを見ただけでスロウ・ダウンの能力に気づくだなんて……。あの白いコートを着た人、一体何者なんだ?

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