コナン君は同じ屋根の下で暮らしている毛利さんから僕の事を聞いたことがあるから僕の名前を知っていると言うが、それを聞いても僕の中の違和感は消えることはなかった。
確かに毛利さんとは同じクラスで今までにも何回か話したことがあるが、僕と彼女の関係はそれだけだ。特に親しく話したこともなく、とても家族の会話で僕の名前が上がるとは思えない。
それにこのコナン君の顔、僕はこの世界の時間がループする以前から知っている気がする。一体どこで見たのだろうか……?
「え、え~と……? さっきからどうしたの? 古城お兄ちゃん?」
気がつけば僕は再びコナン君の顔を凝視していて、コナン君は頬に一筋の汗を流していた。そうだな。ここはせっかくだから聞いてみるか。
「ねぇ、コナン君? 君と僕って前にどこかで……」
「お待たせしました、皆さん。……って、アレ? ジョジョ、どうしてここに?」
前にどこかであったことはないか、と聞こうとした時、警視庁から一人の若い私服の警官がやって来てこちらに声をかけてきた。その私服警官は僕のよく知る人物、この警視庁の捜査一課で刑事をしている叔父さん、高木渉だった。
ちなみに僕は叔父さんのことを「渉兄さん」と呼んでいる。最初は普通に「叔父さん」と呼んでいたのだが、叔父さんと呼ぶと地味に傷ついた顔になるので「渉兄さん」と呼ぶようになり、今ではその呼び方が定着していた。
「渉兄さんの着替えと差し入れを持ってきたんだよ。ほら」
僕は渉兄さんにそう答えると、着替えと差し入れのピッツァマルガリータが入った紙袋を見せる。
「ああ、そうだったんだ。いつもありがとう、ジョジョ」
「兄さん? 高木刑事の弟さんなの?」
「何でジョジョって言うんですか?」
「それよりなんか旨そうな匂いがしてこないか?」
渉兄さんが僕の持ってきた紙袋を見て嬉しそうな顔になると、コナン君と一緒にいた三人の小学生が黒髪の女の子、少し痩せている男の子、そしてかなり太っている男の子の順に口を開く。そしてそれに渉兄さんが律儀に答えていく。
「ああ、彼は弟じゃなくて僕の甥っ子なんだ。それで名前は古城静士郎っていって、名字と名前の『じょう』を繋げてジョジョってアダ名がついているんだよ。それで美味しそうな匂いはジョジョが焼いたピザのことだね。ジョジョはピザを焼くのが上手くて、いつも着替えと一緒に持ってきてくれるから皆楽しみにしているんだよ」
「そうなのか。なぁ、ジョジョの兄ちゃん。今度俺にもピザ焼いてくれよ」
渉兄さんの話を聞いて太っている男の子がこちらを見上げながら言ってくる。……どうでもいいけど涎垂れているよ、キミ?
「そうだね。今度会う日があったら焼いて上げるよ。まあ、僕が焼けるのはピッツァマルガリータだけだけどね」
僕は瞳を輝かせている太っている男の子にそう答えた。この子は毛利さんの家に居候しているコナン君の知り合いみたいだし、また顔を会わせる機会はあるだろう。
「ピッツァ……? まあ、いいや。約束だぜ、ジョジョの兄ちゃん!」
「分かったよ。それじゃあ渉兄さん、これ」
「ああ、ありがとう」
僕は太っている男の子と約束をすると、渉兄さんに着替えと差し入れが入った紙袋を渡して家に帰った。
そしてその日の夜。僕は夜のニュースで、今日この米花町で殺人事件が起こった事を知った。……というか、殺人事件が起きたのって僕が渉兄さんに着替えと差し入れを渡して別れた直後らしいのでちょっと怖い。
今日殺されたのは、三日前に銀行強盗に遭った銀行の支店長の奥さんで、犯人はなんと被害者の夫である銀行の支店長。
しかも三日前に起こった銀行強盗は、その銀行の支店長が計画したもので実行犯は支店長の友人。その事を奥さんに知られてしまったことから、支店長は自分の奥さんを殺害してしたのだという。
あとこれはその数日後に渉兄さんから聞いた話だが、殺人事件があった日、支店長は何食わぬ顔で警視庁にやって来ていたそうだ。
それでまるで手品のようなトリックを使って、奥さんがその時電話の相手であった渉兄さんと会話をしている最中に、奥さんを殺害したらしい。
その手品のようなトリックを解いて支店長が殺人事件の犯人だと見抜いたのが、どういう訳か渉兄さんと佐藤刑事について行って事件現場に潜り込んだコナン君なんだとか。
……コナン君。君は一体何者なんだ?