八月→日
書店で欲しかったライトノベルを買って帰ろうとした時に毛利さんとコナン君と出会う。
それから三人でしばらく話していると近くのビルから悲鳴が聞こえてきて、慌てて悲鳴が聞こえてきた方に行くと、そこには胸を包丁で刺されて死んでいる男の遺体が。僕と毛利さんが死体を見て驚いていると、コナン君が冷静に「早く警察を呼んで」と指示してきた。
警察に電話してやって来たのは目暮警部と渉兄さんで、最初渉兄さん達は殺人強盗の線で調べていたのだが、すぐに殺人強盗ではなく最初から男を殺す目的の計画殺人だと分かった。
というかこの事件を解決したのは僕らしいのだけど、全く記憶にない。渉兄さん達の捜査を見ていると急に意識が遠くなって、気がついたら事件を解決していたのだ。
渉兄さんは「事件を解決してくれたのはお手柄だけど、解決してすぐ寝ちゃうなんてまるで毛利探偵みたいだね」と苦笑しながら褒めてくれた。
……前にもこんなことなかったっけ?
八月∈日
バイクを買うお金が欲しくて、渉兄さんの許可を取ってから、伊豆の旅館での泊まり込みのアルバイトを始めることにした。
アルバイト先の旅館には、僕と年齢が同じくらいの男のアルバイトがいた。年齢が同じくらいのアルバイト仲間がいるのは中々心強かった。
八月∋日
旅館で知り合った僕と同じアルバイトの人は京極真さんといって、杯戸高校の二年生なのだそうだ。
京極さんはとても気さくで落ち着いていて、とても一年だけ歳上とは思えない大人の人だった。
しかし偶然海に来ていた毛利さんとコナン君、そして鈴木さんの姿を見た途端、それまで柔らかい物腰だった京極さんの態度が一気に硬くなってしまう。
あれって怒っているのか? それとも緊張している? でも一体どうして急に?
そう考えていると鈴木さんが災難に巻き込まれた。同じ観光客の男性に誘われた鈴木さんが、その観光客の車に先に乗ると、急に車が動き出して下り坂を降り出したのだ。
幸いというか僕もその現場にいて、スロウ・ダウンで車の動きをスローモーションにして鈴木さんを助けることができたが、一歩間違えば鈴木さんは車と一緒に下り坂の先にある崖から落ちて死んでしまうところであった。これには本当に驚いた。助けることができて本当に良かった。
そして鈴木さんの災難はこれで終わりではなかった。
毛利さんとコナン君と鈴木さんは僕がアルバイトしている旅館に泊まったのだが、そこで鈴木さんは何者かに襲われたのだ。何とかその何者かを撃退して無事だった鈴木さんだが、その話を聞いて京極さんはとても険しい顔をしていた。
八月⊆日
昨日、鈴木さんを襲った何者かの正体が判明。
鈴木さんを襲ったのは、昨日彼女を誘った観光客の男性だった。
何でもその観光客は過去に茶髪の女性に酷いフラれ方をしたらしくて、茶髪の女性を見たら殺さずにいられなくなったそうで、今までにも何人もの茶髪の女性を殺害してきたらしい。
昨日の車の事故も鈴木さんを殺害するための計画的なもので、二回も殺害に失敗した観光客は鈴木さんを旅館の近くの森に誘いそこで直接殺害しようとした。毛利さんとコナン君と一緒に鈴木さんを探していた僕が見つけた時、彼女は殺される直前だったのだが、そこに別口で鈴木さんを探していた京極さんが現れた。
そしてそのまま観光客を一方的にボコボコにしていく京極さん。毛利さんが言うには京極さんは杯戸高校の空手部主将で「蹴撃の貴公子」の異名を持つ猛者なんだとか。
そして観光客を倒した後、京極さんは鈴木さんにまるで告白のようにもとれる忠告の言葉を残して旅館へと帰っていった。
ここで終わればとてもカッコ良かったのだが、その直後に鈴木さんが旅館に突撃してきて京極さんに「付き合って下さい!」と言い、それに反射的に「は、はい! 喜んで!」と答えた時の京極さんはちょっと見たことない顔をしていた。
八月⊇日
毛利さんとコナン君と鈴木さんの三人は、二泊三日の予定で伊豆に来ていたので今日で帰ることに。
そして京極さんなのだが、昨日告白されたと思ったら今日離ればなれになったことで完全に上の空になっていて、今日一日全く使い物にならなかったとだけ書いておく。
そして帰るときにコナン君に「ジョジョのお兄ちゃんって何者なの?」と聞かれた。どうやら昨日、僕が近づいた途端、鈴木さんを乗せた車がスローモーションになったところを見ていたようで、それで疑問を抱いたらしい。
コナン君が聞きたいのはスロウ・ダウンのことなのだろうが、生憎とそれを聞きたいのはこちらの方だ。
スロウ・ダウンの説明ができなかった僕は代わりに「警察官志望の高校生だよ」と答えてから、コナン君に「君こそ一体何者なの?」と聞き返す。するとコナン君は「江戸川コナン。探偵さ」と笑みを浮かべて答え、僕から去っていた。
あんな笑み、とても小学生にはできないって。江戸川コナン君、本当に何者なんだ?
「……スロウ・ダウン」
日記を読み終えて僕が小さく呟くと、すぐさま隣にブーメランを持ったロボットのような外見をしたスロウ・ダウンが現れた。
スロウ・ダウンは僕の力、僕の半身のような存在だ。それは間違いない。
そしてスロウ・ダウンの時間を遅くする力で自分、そして自分以外の人達を何度も守れたのも事実だ。この事に関してはスロウ・ダウンには感謝しかない。
しかしスロウ・ダウンがどこから来て、どの様な存在なのかは全く分からなくて、その事が少し歯痒く感じた。
「誰か、スロウ・ダウンのことを知っている人はいないのかな? いたら教えてくれないかな?」
この時、僕は何気なく呟いた今の言葉が現実になるだなんて夢にも思っていなかった。
スロウ・ダウンの正体を知っている人達。それは
☆
米花町にある一つの駅に一台の電車が到着して、その電車から四人の男達が降りた。
「おおー、仙台から電車で四時間。ようやく東京に着いたぜー。ここが米花町かよ」
四人の男達の一人、改造した学生服を着てオールバックのような髪型をした男が言うと、それに同じく改造した学生服を着て髪をリーゼントにした男が頷く。
「ああ、中々良さそうな町じゃないか」
「で、でも、この町って世界でも犯罪発生率がトップクラスらしいよ? ひったくりやら殺人事件、爆弾テロとかも毎日のように起こるって……。昨日も僕、米花町で殺人事件が起こったってニュースで見たよ」
リーゼントの男の言葉に学生服を着た小柄の男が周りを見回しながら言い、それを聞いたリーゼントの男が表情を引きつらせる。
「……グレート。マジかよ、何だかもうすでに杜王町に帰りたくなってきたんだけど?」
「今すぐ帰られては困るな」
リーゼントの男の呟きに答えたのは白いコートを着た男で、彼は駅から見える米花町の町並みを油断なく見つめながら口を開く。
「この町にいるはずなんだ。