慌てふためくスロウ・ダウン   作:兵庫人

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#007

 着火装置を道路に投げ捨てて何とか倉庫の爆破を防いだ後、僕達は警察に通報した。そして警察が来るまでの間に倉庫にいた男を助け出すと、男は気絶していること以外、特に外傷とかはないようだった。

 

 警察が来ると色々な事が分かり、僕達が助けた男はこのバイクショップを経営している店長で、倉庫を爆破して彼を殺害しようとした犯人は、二ヶ月くらい前からバイクショップにアルバイトとして入った店員であった。犯人がバイクショップの店長を殺害しようとした理由は、犯人の友人がこのバイクショップで買ったバイクが故障して事故死したことによる逆怨みというもの。

 

 何だか拍子抜けするくらいあっさりと事件は解決したのだが、途中で現場検証に来た佐藤刑事に「なんて危険な事をしたの!」と凄い剣幕で怒られたのには驚いた。

 

 とりあえず今日はもうバイクを買うどころではないので僕達はその日は家に帰る事にした。

 

 ☆

 

「ねぇ、コナン君? 一体どこまでついてくるの?」

 

 バイクショップから自宅への帰り道。僕は後ろをついて来るコナン君に声をかけた。他の子供達は全員自分の家に帰ったのだが、コナン君だけは居候している毛利さんの家とは別方向へ行く僕の後をついて来るのだ。

 

「………」

 

 僕が声をかけてもコナン君は答えず、ただ鋭い視線をこちらへ向けてくるだけ。……正直に言って少し怖かった。

 

「コナン君……?」

 

「ねぇ、ジョジョのお兄ちゃん」

 

 何か声をかけようとした時、コナン君が急に話しかけてきた。

 

「前にも聞いたと思うけどさ、ジョジョのお兄ちゃんって何者なの?」

 

 コナン君の言葉は八月の伊豆で聞かれたのと同じ質問であった。

 

「……前にも答えたと思うけど、警察官志望の高校生だよ。それじゃあいけないかい?」

 

「バーロォ。そんな訳あるか」

 

「……!?」

 

 僕が伊豆の時と同じ答えを言うと、コナン君は半眼になって今までとは全く違う口調となり、それを聞いた僕はコナン君に一人の知り合いの姿が重なって見えた。

 

 工藤新一。

 

 僕と同じクラスのクラスメイトで、大人顔負けの推理力でこれまでに様々な難事件を解決していった高校生探偵。現在は外国で大きな事件を追っているらしくて「去年」の秋ぐらいにいきなり休学となったはずだ。

 

 確か工藤君もバレバレの嘘をつかれた時、今のコナン君のように半眼と口調となっていたな。

 

 ……というかこうして気づいてみるとコナン君と工藤君って共通点が沢山あるよね? 事件が起こると真っ先に首を突っ込んでいくところとか、普通は気づかない小さな違和感に気づく注意力とか、何より大人顔負けの推理力とか。

 

 正直な話、コナン君と工藤君が同一人物だと言われても違和感がないくら……い……?

 

 僕が内心でそんなことを考えている間にもコナン君はこちらに鋭い視線を向けながら話しかけてくる。

 

「八月の伊豆、園子が乗った車が動いて下り坂を降りた時、お前が近づいたと思ったら車のスピードが落ちた。あの時の車はブレーキがかかって動きが鈍くなったという感じじゃなくて、まるで『スローモーションになった』という感じだった。

 そして今日のあの動き……。あんな『ビデオの早送りのような素早い動き』、あんなの普通の人間ができるもんかよ。

 元太達は『まるで仮面ヤイバーみたいだった』とはしゃいで全く不思議に思っていなかったが……。お前が普通の高校生のはずがない」

 

 ビデオの早送りのような素早い動き、か。倉庫でバイクショップの店長を助ける時、僕はスロウ・ダウンの「時間が遅くなる空間」を作り出し、コナン君達もその範囲内にいた。時間の流れが十分の一となっていたコナン君達には、僕の動きがそんな風に見えていたのだろう。

 

 しかし本当に似ている。この証拠を次々と出して相手を追い詰めていくところ、やっぱり工藤君にそっくりだ。

 

「それで? コナン君は僕の『秘密』を知りたいと?」

 

「ああ、知りたいね」

 

 僕がわざと自分の秘密、スロウ・ダウンの事を匂わせるとコナン君は小学生とは思えない挑戦的な笑みを浮かべてみせた。

 

「……そうだね。別に教えてあげてもいいけど、代わりに君の秘密を教えてくれないか? そう、どうしてそんな姿になったのか、その理由をね。江戸川コナン君。……いいや『工藤新一』君?」

 

「……………!?」

 

 僕がコナン君を工藤君と呼ぶと、コナン君はこれ以上ないくらい驚いた顔となった。そしてその直後にコナン君は、左手首につけていた腕時計の側面を僕向けると、まるで親の仇を見るかのような表情で叫ぶ。

 

「お前、何でその事を知っている!? まさかお前もあいつらの……『黒づくめの組織』の仲間なのか!?」

 

 えっ? 何それ? 当てずっぽうで言ったのに、もしかして本当にコナン君って工藤君と同一人物なの? クラスメイトの工藤君が子供の姿になったのがコナン君?

 

 というか黒づくめの組織って何? 工藤君が今の……コナン君の姿になっている事と関係があるの?

 

「答えろ!」

 

 凄い剣幕で大声を出すコナン君(それとも工藤君?)に僕が何か答えようとしたその時……。

 

 

「テメェー! 今なんて言ったコラァッッ!!」

 

 

 と、コナン君(もう今はコナン君でいいや)の声とは比べ物にならないくらいの怒声が近くから聞こえてきた。

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