慌てふためくスロウ・ダウン   作:兵庫人

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#008

 時は少し遡る。米花町の道を四人の男達が歩いていた。

 

 その四人の男達は白いコートを着た長身の男、改造制服を着たリーゼントの青年、同じく改造制服を着たオールバックの青年、改造されていない普通の制服だが背丈がかなり低い青年と、全員かなり特徴的な外見をしていて通行人達から注目を集めているのだが、彼らはそれを気にすることなく歩きながら会話をしていた。

 

「それで……承太郎さん? 俺達が探しているのって一体どんな奴なんです?」

 

 改造制服を着たリーゼントの青年、東方仗助は自分の隣を歩く白いコートを着た長身の男、空条承太郎に話しかける。仗助と他の二人がこの米花町にやって来たのは数日前に承太郎に「ある人物を探すのを手伝ってほしい」と頼まれたからだ。

 

 仗助達が承太郎と出会ったのは今から一年程前で、その時に起こった「とある事件」を通じて彼らは承太郎のことを頼りになる人物として信頼しており、承太郎の言うことならばこの「人探し」が重要な用件だと感じて協力することにしたのだ。……もっとも? 東京までの旅費と、「人探し」が終わった後で向かう予定の全国的に有名な遊園地「トロピカルランド」が承太郎の奢りであるという理由もあるが。

 

「そうだな……。そろそろお前達にも教えておくか。これを見てくれ」

 

 そう言うと承太郎は懐から一枚の写真と手帳を取り出し、写真の方を仗助達へと渡す。……その写真には一人の男子高校生の姿が写されていた。

 

「この人が承太郎さんが探している人ですか?」

 

「なんつーか、大人しそうな奴だな」

 

 背丈がかなり低い青年、広瀬康一と改造制服を着たオールバックの青年、虹村億泰が仗助と一緒に写真を見て呟く。そして承太郎は手帳に書かれている、事前に調べていたその写真の男子高校生についての情報を読み上げる。

 

「その写真の男の名は古城静志郎。

 古い城と書いて古城、静かに志と書いて静志郎。あだ名は名字と名前を繋げて『ジョジョ』。……昔の俺と同じだな。

 19○○年八月二十二日生まれ。獅子座。血液型はB。出身はH県K市M町。家族構成は母、義父、妹の四人家族。

 高校に進学するまではずっと家族と地元にいたが、高校に進学すると東京に上京して、警視庁の刑事である叔父の家に居候している。

 学校の生活態度は大人しく真面目で、週に一回か二回は警視庁にいる刑事の叔父に着替えと差し入れの手作り料理を届けに行っているそうだ」

 

『『………』』

 

 承太郎から聞かされる写真の男子高校生、古城静志郎の情報に、仗助と康一と億泰の三人は顔を見合せた後、仗助が代表となって承太郎に話しかける。

 

「……あの、承太郎さん?」

 

「何だ、仗助?」

 

「なんつーか、その……古城静志郎? 話を聞く限りじゃ、絵に描いたようなイイ子ちゃんっぽいんスけど、わざわざ東京まで来てまで何を調べるつもりなんスか? というかもうすでに充分調べているッスよね?」

 

 仗助の言葉に康一と億泰が頷き、そして承太郎もまた仗助の言葉に頷く。

 

「そうだな。確かに資料を見た限りじゃこの古城静志郎は何の問題もない、大人しい優等生だ。……だが、それでもこの男が『DIO』の息子であることは無視できない問題なんだ」

 

 DIO。

 

 それはかつて強大な「力」と尋常ならざる他者への影響力で「裏」の世界でその名を轟かせた男の名である。

 

 承太郎は数年前、自分の母親の命を救うために仲間達と共にDIOとその一味と対峙し、多くの犠牲を伴って最終的にDIOを滅ぼし、DIOに忠誠を誓っていた勢力も消滅していった。しかし一年くらい前から承太郎の元に「DIOには数人の子供がいる」という情報が入ってきたのだ。

 

 そして今承太郎達が探している男子高校生、古城静志郎は承太朗が情報を手に入れた「二人目」のDIOの子供なのであった。

 

「『一人目』のDIOの息子はお前達と同じくらいの年齢……高校生でありながらヨーロッパでも有数のマフィアのボスとなり、裏社会の権力者として君臨している。父親にも劣らないカリスマとも言える凄まじい影響力だ」

 

「『彼』ですね」

 

 承太郎の言葉に康一が呟く。

 

 康一は以前、承太郎からの依頼で「一人目」のDIOの子供を調査する為にイタリアまで行ったことがあった。そして康一はイタリアについてすぐにその一人目のDIOの子供と出会い、いくつものトラブルはあったが彼と接触することができた。

 

「そうだ。それに古城静志郎は『能力』に目覚めている可能性もある」

 

「ええっ!?」

 

「能力って!」

 

「マジでかよ?」

 

 承太郎が口にした「能力」という単語に仗助と康一と億泰の三人が同時に驚いた顔となる。承太郎はそんな三人の顔を見てから再び手帳に書かれている古城静志郎の情報に目を通す。

 

「古城静志郎はこの米花町で何件ものひったくり事件の犯人を取り押さえていて、警察からも感謝状を受け取っている。

 それ事態はイイコトなんだが、その時の目撃者の証言が『まるで人間とは思えない動きで取り押さえた』と『急にひったくり犯の動きが遅くなった』の二通りあるんだ。

 ……これは明らかにおかしい。まず間違いなく古城静志郎は『能力』を身につけている。本人が自覚しているかどうかは別としてな」

 

『『………』』

 

 仗助達三人は黙って承太郎の話を聞いており、承太郎は手帳を懐にしまうと少し考えるように黙ってから口を開く。

 

「お前達も知ってのとおり『能力』は使い方次第で大きな災いを生む。もし古城静志郎が『能力』の他にDIO譲りのカリスマを持ち、それを悪用する奴だったら厄介なことになる。……だから実際に会って古城静志郎の性根を確かめてみたいのさ」

 

『『………』』

 

 承太郎がそう締めくくると仗助達三人は真剣な顔となって頷いた。彼らも承太郎の言う「能力によって生れた大きな災い」……能力の使い手による凶悪犯罪を目にした経験があり、それを未然に防げるのなら防ぎたいと思っているからだ。

 

「よし。まずは古城静志郎が居候している叔父の刑事の家に「おいおい! 見ろよあれ!」……ん?」

 

 承太郎が最初の目的地を言おうとしたとき、そこに若い男の声が割り込んできた。承太郎達が声がしてきた方を見ると、そこにはガラの悪そうな若い男が三人、承太郎達を指差しながら笑っていた。

 

「あのガキ、今時リーゼントだぜ?」

 

「あんな古くてダッセェ髪型初めてみたぜ!」

 

「よくあんな頭で恥ずかしげもなく外歩けるよな?」

 

『『…………!?』』

 

 どうやら三人の男達は仗助の髪型を見て笑っているようであり、その声が聞こえた承太郎達に緊張が走る。

 

「い、今彼ら……!?」

 

「マズイ……マズイぞ、おい!」

 

「やれやれ……」

 

 康一と億泰は表情を強張らせ、承太郎は疲れたようにため息を吐く。そして髪型を馬鹿にされた当人である仗助は……。

 

「テメェー! 今なんて言ったコラァッッ!!」

 

 と、まるで爆音のような怒声を周囲に轟かせたのであった。

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